質問:
シティバンクの株価が下がり、2016年、2020年の安値に近づいてきました。どのような理由から株価がここまで下がっているのですか?NY株式の天井が近いからでしょうか?
回答:
シティバンクの株価下落はロシアへの貸出が多いことが理由です。また、シティバンク株はNY株式全体の下落の先駆けでもあります。NY株式の天井は半年以内になってきたと思っていいでしょう。
解説:
シティの大幅下落の原因はロシア問題だけではない
シティバンクの株価は図1にあるように、かなり下がってきました。同社の株価は2016年2月と2020年3月に安値をつけており、その価格に近づいています。投資家がシティバンクに対して悲観的であることがわかります。
同社はロシアとウクライナの両方に実際の支店やオフィスを持つ数少ない米国銀行の一つです。したがって、ロシア関連の貸出は巨額にのぼり、100億ドル(1.4兆円)程度あるだろうと推定されています。それでも、同社の株主資本である2094億ドルからすれば、100億ドルのすべてが焦げ付いたとしても、株主資本の5%を失うだけで済むのです。
それにもかかわらず、現在の株価はコロナ後につけた高値から約半分になっています。ここまで株価が下がるのはロシア問題だけではないからです。
シティバンクは大手米国銀行の中では、脆弱(ぜいじゃく)の代表格と思われている銀行です。従って、市場に比べて早くから天井を打ち、下げ幅も大きいのが特徴です。わかりやすい例はリーマンショックの時です。最大手のJPモルガン銀行が市場の5か月前に株価の天井を打ったのに対し、シティバンクは9か月も前でした。シティバンクの現在の株価は同社が2000年代につけた最高値から10分の1のレベル(90%下落)です。
中堅銀行でも株価低迷が続く
このような株価低迷がシティバックだけでなく、ほかの銀行にも広がっていることに株式市場の危うさが示されています。代表例は中堅銀行のパシフィック・ウエスタン銀行(図2)です。
同行は2023年春のシリコンバレー銀行、シグニチャ―銀行、ファーストリパブリック銀行の破たんの影響で、取引先や預金者から、「次はパシフィック・ウエスタンだ!」と噂されるようになりました。2022年1月に最高値51ドルに達した株価は急落し、2023年5月の最悪時には3ドル(94%の下落)となってしまいました。
問題はここからです。「噂で下がった」というだけならば、数か月も経つと噂が薄れ、株価は戻っていくのが普通です。ところが、この銀行の株価は低迷したままです。いまだに高値から84%下のレベルにとどまっています。つまり、投資家は「この銀行の問題は本物だ」と考えていることがわかります。
パシフィック・ウエスタンは破たん回避を目指して、優良行バンク・オブ・カリフォルニアと合併することにしました。合併は年内か来年初めです。合併先の銀行の規模(株主資本)はパシフィック・ウエスタンの4割弱なのですが、合併後の銀行名はバンク・オブ・カリフォルニアと決まりました。パシフィック・ウエスタンという名称では世間受けが悪いと判断したのでしょう。
さらに、合併の際に投資会社から4億ドルの資金を調達することも決まりました。パシフィック・ウエスタンの株主資本は6月末現在で25億ドルですから、この資本増強は同行にとって大きなインパクトのあるものです。
こうした明るいニュースが7月下旬に発表されたにもかかわらず、株価は低迷したままです。なぜか?簡単にいえば、投資家はこのニュースを信用していないからだと言えます。要するに、「合併や資本増強という救済策を取っても、この銀行の破たんは避けられない」と考えているのでしょう。
この銀行が破たんするとすれば、現状のようにNY株価が上昇していく局面ではないでしょう。つまり、破たんの条件はNY株式市場が大きく下がることです。投資家はそれを予期しているのだろうとぼくは推論しています。
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