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【重要】林則行さんファンクラブの会員管理システムが変更となります。

2022年12月16日

詳しくはサイトの「ホーム」から
「【重要・フォーム再入力のお願い】林則行さんファンクラブ 会員管理システム変更のお知らせ。」をご覧ください。

定例発信: ニュース

【重要・メールアドレス変更】
林則行さん質問用アドレス変更のお知らせ。

林則行さんファンクラブ事務局です。​この度、諸事情につき林則行さんの質問用メールアドレスが変更となるため、ご連絡させていただきました。

(旧)questionhayashi@yahoo.co.jp

(新)hayashinori884@yahoo.co.jp

今後ご質問のある方は、上記メールアドレスへ送付するようお願い申し上げます。

第百五十回 日本の長期金利の高騰が続いています。景気上向きのサインでしょうか?

2024年6月1日

質問:

日本の長期金利は12年ぶりの高い水準に達したとの報道がありました。これは景気上向きのサインでしょうか?それとも悪化のシグナルでしょうか?

 

回答:

TV報道に惑わされないことが大事です。長期金利の高騰はG7各国共通の現象であり、日本の上昇幅は大きくありません。

 

解説:

世界の長期金利は連動しており、通常は日本の金利だけが突出して動くことはありません。図表1には日米独の長期金利を示しました。ここからわかることは、「世界の金利が上昇傾向にある。日本もそれにならった動きをしている」ということです。特筆すべきものではありません。

 

G7の中で、最も落ち着いた動きをしているのが日本です。日本の長期金利は12年ぶりの高値になっているのかもしれませんが、各国に比べてまだ低い段階です。

 

日本の金利が諸外国に比べて低いということは、債券価格が高いということと同じです。つまり、日本政府の債券はG7の中で最も信頼性が高いということになります。最優等生です。

 

金利水準が大きく上昇しない限り、(別の言い方をすれば、債券価格が大幅安にならない限り)、特に心配する事態ではありません。

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第百七十四回 金価格急落の意味

​2024年11月16日

安い時に買い増すチャンス

今日は、NY時間6日の金価格の急落の理由についてお話しします。11月6日ニューヨーク金先物市場で価格が79ドル下がって、前日の2750ドルから2671ドルに下がりました。下げ幅は2.9%です。この理由は、トランプの勝利によるニューヨーク株式市場の上昇です。NYダウは、1508ドル上がって47,730ドルとなりました。3.6%の上昇です。

これだけ大きく株価が上昇すると、投資家の多くが、「ゴールドを売って株を買おう」という動きに出ることがあるということです。

しかし、もうひとつ重要な理由があります。それは機関投資家の金の買いポジションです。図表1を見ればわかるのですが、機関投資家買いポジションと、金相場とは逆相関をしています。

つまり、機関投資家の買いポジションがピークとなった場合、相場が下げに入るという傾向が見てとれます。また逆に、機関投資家が買いポジションを全て売り払い、純粋な売りポジション(空売り)に転換すると、金価格が底値となって上昇が始まります。

具体的に図表1を見てみましょう。黒丸で示したところが、機関投資家の買いポジションのマイナス(つまり、空売りポジション)のところです。すなわち、機関投資家が空売りを始めると、直近の底値となり金価格が上昇に転じています。

これに対して、青丸で示したところが、買いポジションのピークに当たるところです。この直後、もしくは少ししてから、金価格が低下局面に入っていることがわかります。

直近の機関投資家の買いポジションは赤丸で示しました。買いポジションの高さが過去に比べても、決して引けを取らないレベルになっています。つまり、機関投資家がここまで買いを進めてしまうと、「これ以上の価格で買おう」という機関投資家が少なくなり、需給の観点から価格が下がってしまうのです。

 

昨日の79ドルの下げは、こうした機関投資家のポジションによるところが大きいと思われます。別の言い方をするなら、こうした下落相場が当面続く可能性はあります。ただし、これはどちらかというと、数ヶ月単位で見た短期的な金価格の流れです。

今日は、図表を載せませんが、金の需給に最も詳しい鉱山会社は未だに売りポジションを増やしていません。つまり、これからまだ価格が上がることを見越しているので、先物売りのポジションを積み増していないのです。これが金価格長期の姿を示しているといえます。

しかも、「NYダウが大幅上昇した日に、金価格が下がった」というのは、私たち金投資家にとっては、喜ばしいことかもしれません。逆に、NYダウが下がれば金が上がる」という見方ができることになります。

これから大きな株式市場の下落を予想しているのですから、その際に、金価格が大幅上昇する可能性が高いと言えるかもしれません。こうした状況を踏まえて、皆さんは金価格の安いときに少しずつ買い進めていくことをおすすめします。

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第百四十九回 NYダウが4万円を超えました。米国景気は上向くでしょうか?

2024年5月26日

質問:

NYダウ平均株価が4万円を超えました。米国の株式投資家は大変喜んでいると思います。これを機会に米国景気は上向きの速度を加速していくでしょうか?

 

回答:

NYダウ4万ドル超えは金持ちがより裕福になることにつながるでしょうが、庶民には縁の薄い話です。庶民は物価高に悩んでいるのが現状です。

 

解説:

最近の注目ニュースはマクドナルドのランチセット新メニューです。従来のランチセット(11ドル台)に加えて、5ドルのメニューを発売することにしました。同じ商品を値下げすることは企業戦略上できませんが、格安新商品を投入することはできます。事実上の値下げです。

 

米国のビックマックは5.69ドル(850円)です。ビックマックは世界中で価格が違い、2024年1月現在、米国は高い方から数えて55か国中、5位にランクしています。(ちなみに、日本は450円で45位です)

 

ランチにビックマックだけを食べてもおなかはいっぱいにはなりません。そこで、セットを注文することになりますが、この価格が従来だと11ドル台なのです。日本円に換算すると1600円超になります。

 

焼肉とかパスタのセットメニューであれば、1600円のランチはたまにはいいかもしれませんが、マクドナルドで1600円は高すぎです。こう感じるのは日本人だけでなく、米国人でも同じでしょう。

 

それでも今までは、11ドル台でも大きな客離れが起きてはいませんでした。事実、マクドナルドの第一四半期(2024年1~3月期)の決算(一株当たりの利益)は2.66ドルとなり、前年同期比9%増と好調でした。

 

客離れは春ごろから進み始めたようです。実際、米国の小売業の実質売上(インフレの影響を除く)は2024年4月現在-0.3%となり、不調の色が濃厚になり始めています。

 

マクドナルドは客のニーズに敏感に反応する会社です。それが同社を世界最大の外食チェーンにのし上げた理由のひとつです。事実、リーマンショック時の株価大暴落発生中の2008年3月期~12月期の3四半期において、同社は前年同期比で大幅増益を達成しています。株価大暴落は2007年10月~2009年3月でしたので、この間は大抵の会社が大幅減益を計上しています。マクドナルドの増益はごく稀なケースです。

 

上で説明したことを図を用いて再度確認しましょう。

図表1にはリーマンショック時の同社の株価を示しました。最高値で65ドル程度、安値50ドル程度ですから、20%強の下落で済んでいます。青シャドーの時期が市場暴落時期です。市場が6割下がったことに比べれば、値下がり率は驚くほど小さいです。

 

図表2の赤シャドーの時期は同社が前年同期比にて好調に推移した時期です。図表1の青シャドー時期と見比べれば、市場が大暴落する中、同社が増益を確保していることがわかります。

 

マクドナルドの値下げ発表は何を意味するのか?

11ドル台を5ドルに実質値下げすれば、客数が伸び、減収・減益が避けられるのではないかと、経営陣は判断しているものと思います。別の言い方をするならば、同社はこれから厳しい時期が訪れると考えていることになります。

 

マクドナルドはリーマンショック時同様に、今後も減益を避けることができるかもしれませんが、大抵の景気敏感企業は減益が避けられないでしょう。それがリーマンショック時に起きたことです。値下げニュースは市場株価の大天井につながっていく動きだと解釈できます。

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第百四十八回 中小企業の倒産が増えていると聞きました。本当でしょうか?

2024年5月19日

質問:

TV報道を見たら、中小企業の倒産が増えていると言っていました。本当でしょうか?これは、景気が悪化する前兆でしょうか?

 

回答:

中小企業の倒産は事実拡大傾向にあります。景気は現時点では決して良くありません。日経平均の4万円超えに騙されてはいけません。

 

 

解説:

日経平均が一時4万円を超えました。これは1989年の高値を超える画期的なものでした。ただし、その恩恵に預かっているのは投資家などのごく一部の人たちだけです。

 

中小企業の倒産件数は2021年を底に上昇傾向にあります。具体的には2021年6030社(倒産金額1.2兆円)から2023年8497社(倒産金額2.4兆円)に増えています。

 

図1の月次データを見ると、倒産件数は2021年を底に2022年、23年、24年と徐々に増加しているのがわかります。(2020年5月はコロナ融資の開始直後で、倒産件数が特別に低くなっているので、景気のトレンドを示してしません。)

 

大事な点は、図2にあるように、日本の株価(日経平均)との比較です。株価は2023年に入り上昇基調にあります。特に23年末からは大幅上昇しています。株価が上昇しているということは、通常は景気が良くなっていることを意味します。事実、日経平均が38,915円の史上最高値に達した1989年は皆が好景気に浮かれていました。

 

しかし、2024年にはこのような過熱状態を見出すことができません。それどころか、倒産が増えています。その理由は何か?

 

簡単に言えば、人々の暮らし向きが良くなっていないからです。消費者信頼度指数は、株価が史上最高値であるにもかかわらず、下降の方向になっています。

 

この傾向は米国も同じです。株や不動産といった資産価格が高騰する中、庶民の暮らしが物価高で困窮し始め、両者の乖離が激しくなっています。

 

こうした状況から考えると、日本の企業倒産増加はまだ緒についたばかりで、今後も増加の一途をたどるでしょう。

 

それは2020年に始まったゼロゼロ融資と関連があります。

ゼロゼロ融資とは、新型コロナウイルスの影響で売上が減った個人事業主や中小企業に対して、実質無利子・無担保で融資を行う制度です。

 

この制度の新規募集は終了し、企業によっては利子の免除期間(3年)が終わって、利子の支払いを始めています。

 

つまり、倒産件数の増大は、利子の支払いが始まり、それが払えないことが原因で倒産し始めたということです。元本の返済が始まらないうちから、利子返済負担だけで倒産してしまうのですから、景気はのっぴきならない状況に置かれているということでしょう。

 

しかし、ゼロゼロ融資の返済に困った場合は、コロナ借換保証(2023年1月開始)という制度を利用することができるはずで。コロナ借換保証を利用すると、ゼロゼロ融資の残高を新たに借り換えることができ、金利が引き下げられたり、返済期間が延長されたりします

 

こうした新制度があるにもかかわらず、倒産件数が増えているのは、中小企業、個人事業主の置かれた状況が厳しさを増しているということが窺(うかが)えます。

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第百四十七回
賃金上昇で日本の景気は良くなっていきますか?

2024年5月11日

質問:
春闘では大幅な賃金上昇が実現したと聞いています。庶民の懐が暖かくなれば、今後とも景気の上向きが続くのでしょうか?

回答:
庶民の懐は暖かくなっていません。インフレの影響を除いた実質賃金は2024年4月時点でマイナス2.5%です。こうしたマイナスが続くと、景気は改善どころか、悪化の方向をたどるでしょう。


解説:
TVや新聞では、今年の賃上げ率は近年の最高水準に達していると報道しています。日経新聞には次のような記事(2024年3月15日)が掲載されています。

連合は15日、2024年春季労使交渉の第1回回答の集計結果を公表した。基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ率は平均5.28%で、前年の同時点(3.80%%)から1.48ポイント上昇した。過去の最終集計と比較すると5.66%%だった1991年以来33年ぶりに5%を超えた。

実際の統計はどのようになっているのか?
毎月勤労統計ではインフレを除いた実質賃金を2024年4月時点でー2.5%だったと発表しています。4月の統計ですから、ベアの上昇分が反映された数値のはずです。

また、実額ベース(名目ベース)では+1.7%の上昇に過ぎません。5.28%を達成した労働者はごく一部に過ぎず、全国平均では1.7%だったということになります。

何故このような相違が生じているのか?
TV・新聞発表は大本営発表のようなものだからです。政府は実態以上に、「景気がいい。庶民の暮らしが良くなっている」と人々に信じさせたいし、これに一部の企業や労働組合が調子を合わせています。

企業や労働組合の代表者たちの中には、「政府にすり寄っておこう」と考える人たちが少なくありません。そうすれば、経営者団体や労働組合団体の中で、さらに高い地位や上位の勲章が得られると発想するからです。体制側の人間はいつの時代でもこのような状況になっています。

ということで、庶民の暮らしは楽になっていません。今後この状況がだんだんと株価に反映されてくるでしょう。

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第百四十六回 世界の中央銀行が大量の金を買っている理由は何ですか?

​2024年5月7日

質問:世界各国の中央銀行が大量の金買いを進めているという話をテレビの報道で知りました。どうして中央銀行は金を買うのですか。これは、金価格の高騰に繋がる。ニュースなのでしょうか?

 

回答:中央銀行の金購入は、金価格高騰に繋がるニュースです。

 

解説:

中央銀行は投資家の一つです。私達が金を買う理由は、唯一、これから金の価格が上がるからですよね。一般に、投資家が投資物件を買うのは、その価格が上がると思うからであって、下がると思っているものを、買う人は、いません。

 

中央銀行も全く同じように考えていて、「これから金が上がる」と思うから金を購入しているわけです。図表1に、どのような中央銀行が買っているかを示しました。

 

2007年までは、中央銀行は大量の売り越しをしていました。主な売り越しは先進国でした。2008年にはそのトレンドはピタリと止まりました。理由は何か手持ちの金資産をほぼ売ってしまったからです。

 

これに対して、2009年以降、新興国が大量の買い越しをし始めました。2010年代は、最高で約600トン程度の買い越しをしていましたが、2022年―23年には1000トン以上の買い越しを行っています。世界的に景気が良くなり、新興国も豊かになって、巨額の買い越しが可能になったものと思われます。現在では、金の需要の20%以上が中央銀行の買いになっています。

 

新興国が金の大幅買い越しをする理由は何か。それは、ドル暴落を懸念しているからです。新興国の多くは、過去に自国の通貨暴落を経験してきました。つまり、通貨とは脆弱なものだということを肌身をもって知っているわけです。

その観点から、世界最大のGDP国、米国でも、ドルが暴落するリスクがあるということを、肌感覚でわかっています。このためその日に備えて、金を増やしているのです。

 

図表2において、どのような国が大量の買い増しをしているかを記しました。30トン以上の買い越しを行った国の一覧表です。3種類に大きく区分しました。第一に、常連として金をたくさん買っているロシア、中国、インド、トルコ。第二がアジア諸国。第三がそれ以外の国々です。

 

注目は常連以外の国々です。2018年―19年のカザフスタン、2022年のイラク、ウズベキスタンといった新興国が顔を出していますし、非アジア圏では2019年のポーランド、エクアドル、2021年のハンガリー、2022年のエジプト2023年のポーランド、リビアといった新興国が顔を出しています。

 

皆さんもご存知のように、これらの国は決して豊かだということではありません。しかし、お金が少しでもあれば、自国の資産を金に変えているのです。その理由は、ドルを保有していると、ドル資産が暴落によって大幅に目減りしてしまうからです。

 

なお、日本も2021年に大量の金を買っています。この理由も明白です。日本もドル安に備えて、金をこっそり買ったわけです。

 

皆さんの中にも、「今月はお給料から支出を引いたら黒字が出た。だから金を買おう」と実行している方がいるでしょう。同じことを新興国がやっていると思って下さい。ドル暴落、金価格の大幅高騰が近いと新興国は読んでいるのです。

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第百四十五回 米国株価がやや軟調になっています。経済への影響が見えますか?

​2024年4月27日

質問:

最近のNYダウ株価指数は最高値からやや低めになっています。そこで伺いたいのですが、経済には何らかの影響が出ているのでしょうか?

 

回答:

中小銀行の焦げ付き(クレジットカードローンの30日以上の延滞比率)が過去最高を更新しています。株価が下がればこうした銀行は株式市場から脆弱銀行と認定され、株価が下落し、同時に預金の大量引き出しが始まる可能性が高いです。

 

解説:

図表1に中小銀行の焦げ付き比率の推移を記しました。これによると、ITバブルが崩壊し、景気がどん底をつけた時期には、焦げ付き率が6.5%にまで上がりました。また、リーマンショックのどん底期には5.6%にまで上がっています。

 

これに対して、最近の焦げ付き率は7.8にまで上がっています。現在は株価が史上最高値を更新しており、景気のどん底期とはかけ離れた時期なはずです。にもかかわらず、焦げ付きが多いのは何故か?

 

株価高騰の好影響を庶民が受けていないからに他なりません。米国では男性の実質給与(インフレの影響を除いた値)は1970年からほぼ横ばいです。むしろ、庶民は物価高に悩んでいるのが実情です。

 

今後NYダウが軟調に転じると、真っ先に悪影響を受けるのが脆弱銀行です。2023年春にあったように、口コミによって脆弱銀行の預金引き出しが始まる可能性が高いです。倒産の憂き目を見たファーストリパブリック銀行は株価暴落時に4割の預金が引き出されてしまいました。誰だって自分の預金が手元に戻らないという事態は避けたいですから、我先にATMに向かったものと思われます。同じことが中小脆弱銀行で起きるでしょう。

 

米国には2000社を超える銀行があります。資産規模100番以下はごく小規模な銀行です。それでも、破たんとなれば、TVで大きく報道され、人々の不安心理を掻き立てるでしょう。母数が多いだけに破たん数も多くなると予想されます。

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第百四十四回 
海外に銀行口座を持つことは意味がありますか?

​2024年4月21日

質問:

日本の銀行が将来どうなるか心配です。そこで海外の銀行に口座を持つことを考え始めています。これは意味ある行動でしょうか?

 

回答:

ある程度のまとまったお金をお持ちの方は海外に口座を持つことに意味があります。

 

解説

金融危機が来た場合、日本の多くの銀行は倒産状態となり、預金の引き出しができなくなります。その際に、銀行は預金者の預金の収奪を行います。過去の事例でいえば、日本振興銀行は1000万円以上の預金者の預金39%を収奪しました。正確に言うと、1000万円以上の預金金額に対して、39%を取り上げたということです。同じようなことが多くの銀行で起こる可能性が高いです。

 

倒産状態にならないような銀行に口座を持てば、預金を守ることができます。その一つが海外の銀行です。お薦めは香港にあるHSBC銀行です。

 

ただし、2つの留意点があります。第一に、現地まで行かないと預金口座を開くことができません。第二に、口座の開設には英語でのやりとりが必要です。

 

英語については、難しい内容を話すわけではないので、簡単な英語ができれば問題ありません。

こんな会話が行われます。

 

「どうして香港に口座を作りたいのですか?」

「将来は香港で暮らしたいから」

「ほかにも多くの国がある中でどうして香港に移住したいのですか?」

といった感じに会話が流れていきます。

この回答は

「中華料理がうまいから」

と言えば問題ありません。相手は笑って対応してくれるでしょう。

 

銀行側は預金が欲しいので、顧客の口座開設理由など本当は興味がありません。ただ、それを聞くようにと当局から指導されているので、マニュアルに従って聞いてくるだけのことです。

 

すべてがこんな調子ですから、口座開設が難しいということはありません。

 

それでも、渡航には費用がかかります。また、パスポートの切り換えの際には再度渡航が必要です。時には、何らかの理由で銀行側の人と連絡を取る必要が出てくる場合があるでしょう。この連絡も英語になります。

 

このように考えると、必要経費と横文字の煩わしさがあるので、海外口座の開設はまとまったお金がある人にしか薦めません。

 

海外口座のメリットについては他にもありますので、別途機会を設けてお話しします。

第百四十三回 米国の消費はどのような状況になっているのでしょうか? 

​2024年4月13日

質問:

米国ではインフレが落ち着きを見せ始めている一方、賃金は上昇傾向にあると聞きました。何が起きているのか、説明して頂けないでしょうか?

 

回答:

消費は減速傾向です。株価には悪影響を及ぼすでしょう。

 

解説

経済には数多くの指標があり、時には矛盾した兆候を示すことがあります。従って数多くの指標を見ることで、かえって混乱してしまうことになります。

 

例えば、カリフォルニアではマクドナルドなどの外食従事者の最低時給が20ドルにまで引き上げられました。20ドルとは3,000円です。日本の約3倍です。給与が増えれば、労働者の購買意欲にはつながりますが、外食の価格高騰で、外食需要減少が進む可能性があります。どう読むべきなのか?わからなくなってしまいます。

 

こうしたことを避けるには、自分が見る指標の数を絞るのが賢い選択です。

その中で、どうしても見ておきたい指標のひとつが消費動向です。

 

図表1を見ると、昨年の秋ごろから、消費(インフレを除いた実質消費)は前年比でマイナスの時期が多くなっています過去に消費がマイナスとなった時期はITバブル崩壊時とリーマンショック時の2回です。

 

図表2では、株価と消費のグラフを重ねました。消費がマイナスということは、景気が悪いと読み替えることができます。今後も消費マイナスが続けば、株価はマイナス方向に動いていくものと思います。

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第百四十二回 上昇率の低いプラチナに投資するのはどうでしょうか?

2024年4月6日

質問:

金価格が史上最高値を超えましたが、プラチナは安値に放置されています。プラチナの方が今後の上昇幅が高くなると考えられないでしょうか?

 

回答:

プラチナ投資は安物買いの銭失いです。ゴールド一本でいきましょう

 

解説

プラチナはゴールドと同様、貴金属に属し、金が上がるとプラチナも上がる傾向があるとされています。投資家の中には、「だったら、上がっていないプラチナの方が、今後の上昇幅が大きくなるのではないか」と考える人が出てきます。図表1にあるように、プラチナは低位に放置されています。

 

しかし、安物買いは投資にはそぐわない発想です。所謂、出遅れ銘柄の発掘の考え方です。しかし、「出遅れ銘柄を探す」という投資法は存在しないと思ってください。

 

例えば、銀行株が皆急上昇したとします。そんな中、「あれ、よく見てみると、A社だけ上がっていないではないか?これは掘り出し物をみつけたぞ」などと思って買い、実際にその銘柄が急上昇した、ということがありうるでしょうか?

 

投資家は儲かりそうな銘柄を見出そうそして日々躍起になっています。鵜目(うのめ)鷹の目で探しているわけです。出遅れ銘柄の発想の根本は「投資家は見落としが多い」ということになります。私たちはそんなに馬鹿ではありません。

 

他の銘柄が上昇しているにもかかわらず、当該銘柄が上がっていないとしたら、それは投資家の見落としではありません。上がらない理由があるはずです。

 

プラチナが上がっていないのは、需要の先細りが心配されるからです。需要の45%は自動車向けの触媒であり、これはEV自動車などの台頭で先行きが不透明になっています。

 

投資では上がった順番に人気があると思って下さい。高いものを買うのが投資成功の秘訣です。

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第百四十一回 NYの株価上昇は今後も続きますか?

​2024年3月30日

質問:

NYではダウ平均株価が4万ドルを超える活況になっています。この傾向は今後も続くと考えますか?

 

回答

近いうちに株価は天井をつくでしょう。

 

解説

天井を付けた後、下落相場に入ります。その後のシナリオが2つに分かれます。

 

➊下落相場が半年程度の短期間に終わり、株価は再び上昇軌道に入り、史上最高値を再度更新する

❷下落相場の下落幅が大きく、その後暴落相場が始まる

 

現状では➊の可能性が強いと思いますが、❷の可能性が高まってきました。その理由がNY先物市場の過熱感です。

 

図表1ではS&P500とファンドマネージャの先物ポジションを示しました。これまで先物ポジションが80%あたりで株価が天井をつけることが多いことがわかります。80%とは買いポジション80%、売りポジション20%という意味です。

 

3月30日に発表された先物ポジションを見ると、ファンドマネージャは85%の買いとなっています。最近にはないレベルの熱狂ぶりです。

 

先物ポジションが最も高かったのは、リーマンショックの前の天井をつけた時点で、この時は90%を超えました。人々がここまで買うことに熱狂的になったら、下落相場が途方もないものになってしまいます。

 

現状ではまだ➊の可能性が高いと考えますが、だんだんと❷の可能性が高まっていると言えます。

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第百四十回 米国景気の実態をよく現わしている指標は何ですか?

​2023年3月25日

質問:

米国の景気は実態的には悪いと聞きます。それがよくわかる指標を教えてください。

 

回答

住宅は一生の買い物ですから、人は自分の置かれた状況をよく見極めた上で慎重に決定します。現在の米国は住宅が低迷しています。

 

解説

住宅の統計には3つあります。

住宅許可件数

住宅着工件数

住宅竣工件数

です。許可を得てから建設に入り、やがて竣工します。この中で一番早くから景気の強弱を現わすのが住宅許可件数です。

 

図表1は許可件数と株価を示したものです。株価は伸びが大きいので対数グラフにしました。これを見ると、両者は綺麗に相関しています。リーマンショックの前には、住宅が先に天井を打ち、その後株価が天井となった様子がよくわかります。

 

問題は最近です。株価は史上最高値に進んでいるものの、住宅許可件数は低迷したままです。リーマンショックの前の時のように、住宅が先に天井を打ち、株価が後を追いかける展開になっていると考えられます。

 

では、株価のピークはいつ頃なのか?

2005年9月に住宅許可件数は226万件でピークとなり、株価は2007年10月にピークとなりました。この間、26カ月の差がありました。

 

これに対して、最近では住宅許可件数のピークは2021年12月195万件でした。ここから26カ月というと、2024年の2月になるので、株価のピークが起きてもおかしくない状況にはなっています。

 

しかし、経済指標と株価にはそこまでの強い相関性はありませんから、「遠くない将来に株価がピークに達する」と考えておくのが適切です。

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第百三十九回 米国の失業率は危険な水準に達しつつありますか?

​2023年3月13日

質問:

米国の失業率が3.9%となり、2年ぶりの高水準に達したとの報道がありました。これは株価に悪影響を及ぼすレベルなのでしょうか?

 

回答

3.9%は高いですが、株価の暴落につながるようなレベルではありません。

 

 

解説

失業率と株価とは相関性が強いです。正確に言えば、逆相関です。失業率が上がると株価が下がるという意味です。

米国失業率は3.9%にまで達したので、株価に悪い影響を与えるのは確かですが、現状ではその度合いはまだ小さいでしょう。

 

図表1には最近2年間の失業率を記しました。確かに最高値ですが、3.9%は2023年10月にも到達したレベルです。昨年10月から株価が軟調になったのかというと、それは違います。9月末から今年の2月末までに株価は19%も上昇しました。このレベルの失業率では、投資家は「失業率が危険水域に達した」と認識しないレベルなのです。

 

長期的には、失業率が株式相場に与える影響は大きいです。その様子を図表2に示しました。失業率が底を打って上昇に転じ始めた頃、株価は天井を打ち下落に転じているのがわかります。こうした時期は近いとは思いますが、近日中に株価の天井となるとは考えにくいです。

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第百三十八回 LINEヤフーのような株の底値買い投資はどうでしょうか

​2023年3月13日

質問:

LINEヤフーは株価が低位で推移しています。このような会社を底値買いするという投資法は成果につながるでしょうか?

 

回答

やめておきましょう。一般に、底値買いは実を結ばないことが多いです。

 

解説

株式投資を行う際には、必ず長期のチャートを見ましょう。図表1がそれです。上場以来の株価を一言でいえば、横ばい圏です。当社は成長株ではありません。インターネットや通信を事業分野としているので、成長性を感じる人がいるかもしれせんが、この会社の株価は上がっていません。

 

図表2に、一株あたりの利益(EPS)の推移を示しました。2016年3月期までは順調に拡大していましたが、その後は低下傾向にあります。例外は2023年3月期だけです。

 

こうした会社は体質的に成長しないと思った方がいいです。

 

さて、ここまでで筆を置いてもいいのですが、最近起きた行政指導について重要な話を付け加えておきましょう。

 

日経新聞2024年3月5日版では以下のように書かれています。

 

総務省は5日、情報漏洩が相次いでいるLINEヤフーを行政指導した。LINEアプリの利用者情報など約51万件が流出した事案について、業務委託する韓国ネット大手ネイバーの管理監督が不適切だったと判断した。委託を見直さなければ、ソフトバンクが関与を強める形で資本関係を変えるよう求めた。

 

ここで重要なことは国が民間企業の資本関係に変更を求めたという点です。国としては情報漏洩が起きなければ、それ以上の立ち入った指導を行う権限はないはずです。にもかかわらず、なぜここまで強く出たのか?

 

LINEヤフーを韓国に取られないようにしたいという国の意向が反映されたものです。LINEヤフー社の親会社の50%は韓国企業が保有しています。YAHOOやLINEは今や日本の重要なインフラであり、これを韓国に牛耳られてはたまりません。

 

日産をフランスから引き離す目的で、国はカルロス・ゴーン事件を大きく扱いました。同じようなことが今回の指導の背景にあります。今回の情報漏洩についても、ハッカー集団のような悪人が仕掛けたものではなく、日本国が意図的に行った可能性すら否定できません。

 

その場合、情報漏洩自体、会社が国に命令されて行ったことになります。総務大臣がLINEヤフー社長を呼びつけて行政指導を行うシーンがTVで報道されてしましたが、あれはお芝居だったということになるでしょう。政治の世界には偶発的なことは少なく、大抵は意図的に仕組まれたものだということを頭に置いておいてください。

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第百三十七回 株価の天井を示唆するテクニカル指標はありますか?

2023年3月2日

質問:

株価の天井がわかるようなテクニカル指標はないでしょうか?

 

回答:

ぼくが開発した方法に、「売り逃げ」を見極める方法があります。

 

解説

下がると思えば、持ち株を売りたいのが人情です。逆に、上がると思えば、買いたくなります。特に、私たち投資家は下げに敏感です。買わなければ、利益は取れませんが、それは機会損失に過ぎません。一方、持っている株が下がれば、それでは実損になってしまいます。

このことを考慮したのが「売り逃げ」です。具体的には次のように考えます。

 

通常は株価が上がると出来高が増えます。期待感から多くの人が買い始めるからです。しかし、株価が天井付近になると、株価が下がる日に出来高が増えることがあります。人々が下げに敏感になってくるからです。

 

この心理を計算式にすればいいわけです。つまり、昨日より株価が下がった日に出来高が増えた日を売り逃げの日と定義します。英語ではディストリビューションと呼ばれているものです。これが過去5日の間に3日起きているとしたら、それは売り逃げが本格化した証拠です。

 

実例は図表1にあります。注目してほしいのは、リーマンショックの前の天井期です。売り逃げ(5日のうち3日)が起きたところに縦の線を引きました。

 

売り逃げは時々起きるのですが、通常は株価が下げ局面や底値付近で発生します。これに対して、株価が高い局面ではあまり起きません。図表1の注目点は、リーマンショック前の天井期で多数発生していることです。

 

なお、図表1では太い青線と細い青線があります。太い線は何日も連続して細い線が重なり、太く表示されたものです。

 

では現状はどのようになっているのか?図表2は2024年2月28日までのS&P500と売り逃げを示したものです。高値更新中に売り逃げはほとんど発生していないことがわかります。このことからすると、米国株価の天井はまだ先だと判断できます。

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第百三十六回 
日経平均は今年上昇を続けるでしょうか? 

2023年2月24日

質問:

最近の日経平均は米国や欧州に比べてパフォーマンスが高いです。この基調は今年継続していくでしょうか?

 

回答:

日経平均の継続的な上昇は難しいのではないでしょうか。業績が追いついていません。

 

解説

日経平均が最近になって大幅に上昇しているのは、1989年の最高値38,915円超えに対する期待です。実際に2月22日に更新しました。投資家や市場関係者は日経平均4万円を夢見ています。そのため、欧米の指数に比べて上昇率が圧倒的に高いです。

     年初来の上昇率

日経平均   16.8%

S&P500     4.4%

ナスダック    3.8%

ドイツDAX.     2.2%

英国FTSE100 0.6%

 

 

ここで時価総額トップ25銘柄について見てみることにします。時価総額の大きい順番に40社を抜き出し、そのうち、今期予想の発表していない会社と金融業を除いたものです。

 

25社の前期(主に2023年3月期)については、決算(EPS)の平均値(中央値)は8%増益であり、第3四半期までの増益幅は5%、今期12カ月の増益予想は1%でした。これに対して2023年1月から2024年2月20日までの約14カ月の株価パフォーマンスは49%で、日経平均の48%とほぼ同じです。

 

増益幅が一桁台にしては株価の上昇が大きいという印象です。

しかも、詳しくみると、さらにおかしなことが起きていることがわかります。

 

まとめを表1に掲示しました。

今期第3四半期までの決算について増益会社と減益会社の2つに分類します。前者が14社、後者が11社でした。その業績変化率は増益会社が+29%で、減益会社がー29%でした。

 

これに対して、過去14カ月の株価上昇率は増益会社が+49%で、減益会社が+61%でした。「増益会社の方が株価パフォーマンスが低いのはおかしい」という意味ではありません。統計の母数が少ないので、こうした不釣り合いは生じがちです。

 

これが意味するところは、「社数を増やしていけば、おそらく株価パフォーマンスは同じようになる」というものだと思います。つまり、減益でも増益でも似たような株価パフォーマンスになっているということです。これは株価が業績を軽視して、加熱していることの現れです。

 

相場がこうした状態になった場合は近いうちに反動が起き、ファンダメンタルを反映するような動きになります。つまり、株価が全体的に下げ基調となり、減益会社の下げがきつくなるのが常です。

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第百三十五回
米国最大手銀行が史上最高値を更新しています。株式市場はまだまだ高値が続くと考えていいでしょうか? 

​2023年2月17日

質問

林さんは米国の銀行は株式市場の先行株になっていると言っています。米国最大手のJPモルガンは従来の高値を超えて史上最高値になっています。このことからすると、米国の暴落は先になったと考えていいでしょうか?

 

回答:

その通りです。ただし、シティバンクが新高値になっていません。こちらは既に先行株の役割を果たしていると考えて良さそうです。

 

解説:

米国最大手のJPモルガン銀行は2023年12月に新高値を更新しましたが、シティバンクは更新していません。リーマンショック前においてはJPモルガンが株式市場の5か月前に天井を打ち、シティバンクは9か月前に打ちました。4か月の差がありました。今回も同様に脆弱銀行から天井を打っていくと思います。それが既に現れたのがシティバンクです。

 

ただし、今回もJPモルガンとシティバンクの天井の差が4か月だということではありません。この期間差はずっと長くなっていると思います。その理由は両行の業績差にあります。JPモルガンの利益(一株当たりの純利益)は史上最高を更新していますが、シティバンクの場合は既に下落傾向にあります。図表2です。

 

JPモルガン銀行とシティバンクの差は顧客層の差にあります。前者には優良顧客が多く後者には庶民が多いです。米国庶民の暮らしを早くから反映するのがシティバンクです。

 

米国ではクレジットカードや自動車ローンの事故率が拡大しています。2023年3~5月の米国中堅銀行(シリコンバレー銀行、シグニチャ銀行、ファーストリパブリック銀行)が破たんした際にはこうした状況が影響していました。優良顧客を中心とするJPモルガンにはこうした影響は及んでいませんが、シティバンクは米国経済悪化の影響を大きく受け始めています。

 

では、最優良行のJPモルガンの業績に暗雲が立ち込めるのはいつ頃か?これは現時点では明確にはわかりませんが、まだ数四半期先になると思います。そこから数か月後に米国株が天井を打つという構図になるでしょう。

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第百三十四回 欧州は景気が良くないのでしょうか。

2023年2月10日

質問

TV報道で欧州は景気が良くないという話を聞きました。正しいのでしょうか?

 

 

回答:

その通りです。欧州は景気が悪いです。

 

解説:

ロシアのウクライナ侵攻(2022年2月)が始まったあと、欧州ではロシアからの天然ガス供給が止まりました。庶民は寒い冬に耐えなくてはならず、ドイツの消費者信頼度指数は過去最低にまで落ちこみました。

 

さらに、欧州向けの天然ガスのスポット価格は大幅上昇となりました。具体的には2020年には1ドル台だった価格が2020年5月には8ドル台になりました。ドイツはこの価格で天然ガスを輸入するはめとなり、景気が一気に悪化してしまいました。

 

景気の悪化が最も端的に現れている指標が不動産価格です。図1を見ると、2022年4月につけたピーク129.7から下がり、現在では98.3にまでなっています。下落率は24%です。

 

不動産価格24%の下落は大きなものです。リーマンショックの際に、欧州の不動産価格は100から81.9にまで下がりました。下落率28.1%です。ここまではまだ下がっていませんが、これに迫る勢いです。

 

問題は、株価が史上最高値付近で推移している高いままなのに、不動産価格が大幅下落しているところにあります。これはどうしてなのか?

 

株価が下落を始めたら、景気はさらに悪化します。不動産価格は現在のレベルからさらに下落するという構図になるでしょう。不動産を担保にお金を借りている人たちの多くが倒産や破産の運命をたどることになります。欧州史上過去最大の下げになってしまうでしょう。ひいては、世界恐慌の引き金を欧州が引くことになるかもしれません。

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第百三十三回 中国の不動産市況が世界経済を危機に追い込むことはないでしょうか? 

2023年2月3日

質問:

中国では大手不動産会社が倒産に追い込まれていると報道されています。これが世界経済の危機の引き金になることはないでしょうか?

 

回答:

現時点ではその心配はないと思います。中国の住宅価格はピークから9%下落したに過ぎません。

 

解説:

不動産不況は政府の意図的な政策の結果

図1にあるように、中国の住宅価格(インフレの影響を除いた実質価格)は2021年9月のピークから9%下がりました。2005年の統計開始以来、最高の下げ幅ですが、9%は決して大きな下落ではありません。1990年代の日本のバブル崩壊時に不動産価格が半値以下になったのとは比較にならないほどです。

 

中国において、大手不動産開発企業の倒産が相次いでいるのは、当局の政策が要因です。具体的には、2020年に金融当局が不動産会社への融資に総量規制を設け、財務体質の強化を指導し始めたためです。狙いは不動産バブルの発生を抑えることにありました。これ以上、イケイケどんどんで不動産開発を進めると、バブルが発生してしまうことを恐れたわけです。

 

バブルが発生すると、価格が大幅に高騰します。当初はそこで利益を得て資産が大幅増となった人たちが支出を増やし始めます。日々の生活の中で大盤振る舞いを行うようになるわけです。景気全般の好調が加速します。

 

しかし、それでは、不動産は庶民には手の届かないものとなってしまいます。また、最終的にはバブルは崩壊する運命にあります。不動産価格が急激に崩れ、投資家や住宅購入者、ディベロッパーなど広範囲にわたって大きな被害が生じます。金融危機や経済危機につながってしまうかもしれません。これを避けるのが中国の金融政策でした。

 

この政策の結果、借金漬けの大手不動産企業は運転資金を捻出するために物件を大幅値引きして販売せざるを得ませんでした。これが倒産につながってしまいました。

 

一言でいえば、中国政府はバブルを防ぐために小規模の不況を受け入れたということになります。それでも、不動産不況を引き金とする中国経済全般の不況につながってしまいました。このあたりは予想外の展開だったのではないでしょうか?

 

そのため、中国政府は2023年7月以降、景気浮揚を最優先とする政策に転じています。ここには住宅購入の制限緩和や住宅ローンの優遇政策が含まれています。時間の経過とともにこれらの政策が功を奏し、不動産市況は底入れをするでしょう。経済全般も回復に向かうと考えられます。

 

こうした見方から、ぼくは中国の不動産市況が世界経済を危機に追い込む可能性は低いと判断しています。

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第百三十二回
株価のピークを確認する方法を教えてください。 

2023年1月27日

質問:

株価が天井をつけた場合、チャート上で確認する方法を教えてください。

 

回答:

チャートの定石は「過去につけた安値を割ると相場が陰転したと判断する」というものです。具体的にみていきましょう。

 

解説:

2000年以降の2実例

図1はITバブルの天井(2000年)です。

2000年3月にS&P500は1527ポイントをつけて天井となりました。図中では①で示した点です。ただし、その時点では誰もその日が天井だったということはわかりません。

 

「天井だった」と認識できるのは過去の安値を割った時点です。具体的には2000年2月に1333ポイントをつけてから最後の上昇が始まっています。ここが過去の安値になります。このポイントを割ったのが2000年10月です。黒矢印で示した地点です。ここで相場が陰転したと判断できるわけです。

 

1527ポイントから1333ポイントまで下がったのですから13%の下げ幅です。また、3月の天井から、10月までは203日(営業日以外も含む)でした。

 

同じことをリーマンショック前の天井で見てみましょう。図2です。

2007年10月にS&P500は1565ポイントをつけて天井となりました。図中では②で示した点です。この場合の安値は1406ポイントでした。①と②の間にある地点で2007年8月です。

 

この安値を割ったのが2008年1月です。天井から安値までは10%の下落です。また、この地点は10月の天井から81日後です。

 

10%超下落して初めて認識できる

過去のいろいろな事例を見てみると、天井から10%ちょっとの時点で、「あれが天井だったのだ」と認識できるシグナルが出ることが多いです。

 

日数から考えた場合、2000年の場合は203日後、2007年の場合は81日後とバラつきがあります。この理由は天井の構成にあります。

 

両者の例とも2つのピークをつけてから株価が下がっています。このように2つの天井を構成する場合とひとつの大きな天井を構成する場合があります。例えば、大恐慌や1989年の日経平均大天井はひとつの大きな天井でした。図1と2の話に戻れば、この2例は2つの天井の例でした。

 

違いはここからです。2000年の例では一つ目(①)の方が高いので、ここを天井としてとらえ、日数を数えています。②の二番天井から数えれば、12%の下落でかつ42日後となります。

 

これに対して2007年に場合、二つ目の天井(②)の方が高いので、ここから日数を数えています。

 

チャートから見る天井の確認方法にはいろいろありますが、これが最もシンプルでわかりやすいと思います。

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第百三十一回 
日経平均は史上最高値を更新するでしょうか? 

2023年1月20日

質問:

日経平均が日々高値を更新しています。1989年12月の大納会につけた38,915円を抜いて史上最高値を更新していくことはあるでしょうか?

 

回答:

史上最高値の更新はないと思います。

仮に更新したとしても、長くは続かないでしょう。

 

解説:

1980年代の上昇と現在の上昇とは全く性質が異なります。それを理解することが最も重要です。1980年代は業績好調な日本企業が世界から注目を集めて株価が大幅上昇した時期です。これに対して、現在の株高はマネーの増量(お金の刷り過ぎ)から株式市場が活況を呈しています。一言でいえば、業績対マネーという違いです。

 

1989年の日経平均大天井について経験していない人が多いと思いますのでイメージがつかめるように解説します。

 

1989年までの5年間については、GDPが年平均で6.1%伸びました。インフレを除いた実質では5.0%の伸びでした。これに対して、2023年までの5年間ではGDPの年平均成長率は1.1%、インフレを除いた実質の伸びは0.1%でした。

 

ひとりあたりのGDPも大きく異なります。1989年では日本は米国の約1.5倍でした。2023年では逆に米国が日本の2.2倍です。

 

民間給与(国税庁民間給与実態統計調査)は1984年307万円から1989年360万円に伸びました。しかし、その後は1998年に伸びがピークとなり下落に向かいました。2020年は364万円です。その後、景気の上向きを受けて2022年では390万円になっています。

 

1989年代の伸びが強烈だったことがわかるでしょう。PERはこうした日本の成長を受けて、70倍に達しました。PERが70倍とは株価が70年分の利益の高さになったという意味です。現在の15倍と大きく異なります。

 

1989年の経済は活況そのものでした。ぼくは金融業界の若手アナリストでした。外資系金融機関の中には海外出張は若手でもファーストクラスが利用できました。銀行にいけば、ぼくのような社会人数年目の若造にも融資してくれました。接待には最高級店を利用し、バーへの2次会がつきものでした。満席でした。

 

夜の銀座や新宿ではタクシーを捕まえるのが大変で、乗り場には長い列ができていました。中には大通りに向かって1万円札を掲げている人がいました。「自分は1万円かかるところまで帰るのだから、タクシーに止まって欲しいという合図でした。それでも新宿から20分以上も歩いて四谷まで行かないとタクシーがつかまらない状況だったのです。

 

株価が元のレベルに近づいても、現在の時代の雰囲気は1989年とは全く違います。最大の理由は、私たち個人の給与が上がらないことです。図1にあるように、給与は1989年の419万円をピークに下落し、今では横ばい圏から若干の上昇に転じた程度です。

 

根本の理由は新興国にあります。新興国は日本に比べて賃金の低く、多くの労働人口が存在するので、経営者は日本人に高い給与を払う必要がありません。仕事を新興国に移してしまえばいいわけです。これは構造的な問題ですから、日本と新興国の賃金が同じレベルになるまで続きます。米国の賃金(男性)が1970年代からほとんど上がっていないのも同じ理由です。

 

給与が増えなければ、散財できません。街が以前のように活況を呈することはありません。マネーは庶民ではなく、資産家のもとに集まります。それが株に向かい、今の株高が起きているわけです。こうしたことから、実体の伴わない株高はいつまでも続かないでしょう。

第百三十回 2024年の株価の見通し
を教えてください 

2023年1月7日

質問

2024年の株価見通しを教えてください。

 

回答

2024年は下がったり上がったりの横ばい圏になると考えます。暴落の開始は年の後半以降になったと思います。

 

債券市場の安定で株式は大きく崩れないだろう

解説

これまで、「数か月のうちに、NYダウは大天井を打つ」と予測してきましたが、その時期が遅くなっていると修正します。理由は債券市場の安定です。図1にあるように、ジャンク債の金利(正確には、ジャンク債と国債との金利差)が縮小してきました。

 

現在は3.7%です。これは1997年からの平均である5.0%に比べても低い数値です。つまり、現在は債券投資家が明るい見通しを持っているという解釈をすることができます。

 

今週のウイズでは当面の株式市場の見通しを述べました。近いうちに下落相場に入るというものです。それでも大きな暴落につながることはなく、相場が下がれば、ファンドマネージャが極度に弱気になり、それをきかっけに株価が戻すという展開になると思います。

 

経済諸統計をみると、多くは景気の天井圏を示しているのですが、失業率の悪化は緒についたばかりで、悪化が本格化するのにしばらくの時間がかかるでしょう。

 

こうしたことを考えると当面は暴落が始まることはないと思います。

今後の展開のイメージを示すとすれば、それは図2にあるようなリーマンショック前の天井圏での動きです。2007年7月にピークを迎えた後、相場はいったん下落しますが、すぐに持ち直し、10月にピークを再度打ちます。ここから大きな下落相場が始まりました。

ぼくが持っている今年の株式市況のイメージは、「近いうちに下落相場が始まり、それが落ち着いた後、秋には再び高値に向かう」というものです。これは米国のイメージですが、日本は米国の写真相場であり、似た展開になるはずです。暴落の開始はそののちになるでしょう。

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第百二十九回 先進国がデフォルトを回避する可能性はないのでしょうか? 

2023年1月7日

質問:
林さんの著作によれば、先進国は負債(国債)の重さから近い将来にデフォルトするだろうと予測しています。これが回避されることはないのでしょうか? 

回答:
デフォルトが回避される可能性はあります。その場合は、インフレが一層厳しくなるでしょう。不況の期間も長引くと思われます。


解説:
会計原則を変更してしまえば、当面のデフォルトは回避できる

先進国がデフォルトを回避するとすれば、会計原則を先に変更してしまう場合でしょう。会計には「保守性の原則」があり、「入ってくるかどうか明確ではないお金は入ってこないと仮定する」というものです。「取らぬ狸の皮算用」をやってしまうと、資金繰りに窮してしまうことになりかねないからです。

具体的には、債券、借金の利払いが約束通りに行なわれなかった場合は債券価格をゼロとみなします。仮に、「半年遅らせて欲しい。そうしたら払うから」という通達があったとしても、それを鵜のみにせずに、会計上はゼロ評価にします。

国債の評価額がゼロになってしまうと、保険や銀行、大手証券は軒並み債務超過となってしまいます。つまり、倒産です。これを回避するには、保守性の会計原則を変えてしまえばいいわけです。

つまり、「国は民間企業と違って信用が高い。国が1年後から払うと言っているのだからそれをゼロ評価する必要はない。」といった解釈をさせます。例えば、従来の会計原則に従えば額面100をゼロにするところを、30と評価することにします。そうすれば、銀行や保険の中には債務超過状態にならないところが出てきます。

「会計原則の柔軟な変更は国民にとってはいいことだ」と政府は言うでしょう。銀行はペイオフを実行しないことになるので、1000万円以上の預金者が預金を取られてしまう事態は避けられます。また、保険会社も破たんしないので、保険金の減額が起きることはありません。

誰もが喜ぶシナリオのように感じるかもしれません。

将来にはより厳しい試練が待っている
現実は甘くはありません。国は万策尽きて利払いの延長や金額の変更(低下)を行うのですから、それが魔法のように解決したのではありません。つまり、現実には国債は不良債権となってしまったのです。

金融機関は不良債権を抱えて経営を行っていくことになります。これは私たち日本人が辿ってきた道です。1990年に株価が大天井を打ち、不動産価格も暴落を始め、景気が急速にし始めました。銀行には不良債権が山のように積まれていきました。

7年後の1997年には金融危機が生じます。証券会社や銀行の倒産が相次いだのです。具体的には、1997年11月に、三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券が破たんし、98年6月に日本長期信用銀行、日本債券信用銀行が破たんしました。経営がトップクラスに安定していた言われる住友信託銀行ですら、株価が史上最高値から98%下落した次第です。

破綻しなかった銀行も不良債権に苦しみ、最終的に経営体質の改善が完了したのは2010年代の半ばです。1997年の危機のどん底から15年以上の期間がかかったことになります。

今回も同じ道をたどることになるでしょう。金融機関は長期に国債の重圧に苦しみ、そこから解放されるのに10~20年かかることになるでしょう。その過程の中で経営体質の弱い銀行・証券・保険会社は破たんしていくことになるでしょう。

1997年の金融危機ではインフレは生じませんでしたが、次回の国債デフォルト(またはその未遂)においてはインフレが起きるものと考えます。デフォルトをしない場合は、不況期間(危機の時期)が長引くことになり、インフレの期間も長く、一段と厳しいものになるでしょう。

第百二十八回 株価が暴落を始めた場合、社会的な影響として大きいものは何でしょうか? 

2023年12月30日

質問:
株価が大きく下がった場合、日本経済の中で大きな打撃を受けるのは何でしょうか?

回答:
体力のない人が風邪の大流行に最も影響を受けるように、経済の悪化で大打撃を受けるのは経済的な弱者です。具体的に言えば、高齢者であり、地方の人たちです。つまり、地方に暮らすお年寄りは厳しい生活を強いられることになるでしょう。


解説:
地方の生活の厳しさは既に始まっており、景気の悪化とともにそれが加速するものと思われます。

例えば、地方紙やローカルTVの存在感が薄くなりつつありますが、景気悪化時には消滅しかかるまでになるでしょう。ネット銀行の台頭で地方銀行の経営はさらに厳しくなっていくものと思われます。農村では存続危惧集落の数が増えていくことになります。無医地区が増え、買い物に苦労する人たちが続出するようになるでしょう。

バス路線は既に9割以上が赤字で、この廃止に加速度がかかるでしょう。ローカル鉄道も同様で、赤字路線は次々に廃止されていくでしょう。

住民数が減れば、地方自治体が運営する水道は料金を上げざるをません。水道料金は都心安・地方高が定着していくものと思います。

小中学校は児童生徒数が減少しつつあります。学校の統廃合が進み、10キロ以上も通学に要する小中学生が増加していきます。

また、森林は間伐を行うことができず流木災害が頻繁に発生するようになるでしょう。

地方の県庁所在地レベルの都市でも、繁華街のシャッター通り化が進んでいます。銀行の支店閉鎖がさらに進めば、その傾向はさらに加速します。これにより、地方の中心街の地価下落が進むことになるでしょう。

高齢化が進めば、檀家数が減少します。そのため、寺院は経営困難となり、消滅していくことになります。葬儀の直葬化が進んでいることもその要因です。

人口の年齢別分布をみると、30代以下が少なくなり60代以上が増加することになります。このため、住宅の新築物件は30代の購入者が多いため、売れ行きに陰りが出てくるでしょう。また、増え続ける宅配注文に対応するのが、60代や70代のドライバーになるでしょう。

定年を迎えても、退職金やその後に支給される年金では生きていけない貧乏老人が増えていくでしょう。高齢者の中には万引きを行い、食事付きの刑務所暮らしを選択する人が出てくるでしょう。そうした人たちが80代を迎えれば、介護が必要になる人も少なくないでしょうから、刑務所は介護施設の様相を呈するようになるでしょう。

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第百二十七回 株価と金は逆相関ですか?株が上がったら金は下がりますか?

2023年12月23日

質問:

「株価が上がると金が下がる」、「株価が下がると金が上がる」と聞きました。逆方向に動くものなのでしょうか?

 

回答:

逆方向に動いてきた時期が多いですが、常にそうだったわけではありません。現状ではゴールドも株式も上昇しています。

 

解説

長期で株価と金価格を見ると、1960年からの63年間の伸び率は次のようになります。

 

株価              80倍超

金                  55倍超

 

株価の方が高い伸び率ですが、両者とも高くなったのは事実で、この点からは両者とも同じ上昇方向にあったと言えます。

 

ただし、過去63年間には株価の方が大きく伸びた時期と金の方が大きく伸びた時期がありました。図1にその様子が描かれています。図中の青いシャドーの時期は株式パフォーマンスが優勢だった時期で、赤いシャドーの時期は金が優勢だった時期です。

 

この図を見ると、片方が大きく伸びる時期には片方のパフォーマンスが低いことがわかります。これをもって「逆相関が高い」という言い方をすることができます。

 

最近は株も金も同じように上がっている

重要なのは最近の動きです。両者とも上昇しています。S&P500はまだ史上最高値を更新していませんが、ゴールドは史上最高値を更新しました。これはゴールドの人気が高いことを示しています。

 

なお、ダウ平均株価(30社)は史上最高値を更新しました。S&P500(500社平均)が史上最高値になっていない段階で、30社平均が最高値を更新しているのは、一部の銘柄に人気が集中していることを示しています。これは株価の将来性に陰りが見え始めた現れだと解釈できます。この点は先週解説しました。)

 

株も金も高いという局面は図1からわかるように比較的珍しい現象です。米国のマネーの大量供給(金余り)から、金融商品価格が全般的に大幅に上がっているものと思われます。

 

マネーの大量供給が続けば、この現象は長く続くでしょう。マネーの供給が絞られれば、株価は天井を打ち下落局面に入るでしょう。これに対して、ゴールドは金融不安から一気に人気が増すことになると思います。

 

つまり、今後株価が上がっても下がっても金価格は上がっていくのではないかというのがぼくの現状での見方です。

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第百二十六回  
株式市場の当面の見通しを教えて下さい

2023年12月16日

質問:

林さんは11月に「米国や各国の株価の上昇はあと数か月 暴落のサインを読み取れ」という講演を行っています。株価の上昇は本当にそんなに短い間しか続かないのでしょうか?

 

回答:

株価の上昇が近い将来に終わりそうだというサインが出始めています。騰落レシオとジャンク債金利に注目してください。

 

 

解説:

歌謡曲でもクラッシック音楽でも、曲の終盤に差し掛かってくると演奏が高鳴り、「いよいよ最後だな」と気づくことが多いです。同じようなことが株価にも言えます。それが騰落レシオです。株価は2023年7月につけた高値を抜きましたが、騰落レシオは低迷したままです。今回の両者の上昇度の違いは大きいです。

 

つまり、比較的少数の銘柄が株価指数の上昇を押し上げているのです。そのため、最近ではS&P500(500銘柄の平均株価)に比べて、ダウ指数(30銘柄)の方が上昇の度合いが高いです。この傾向が続けば、株価は天井をつけて下落局面を迎えることになるでしょう。

 

音楽の場合なら、演奏の高鳴りの後でも、歌謡曲なら1番から2番に進むことがあるし、クラッシックなら第一楽章から第二楽章に進むことがあります。株価でも同様に、これから迎える下落は次の上昇の前の一休みに過ぎないということも考えられます。事実、リーマンショックの底値(2009年3月)からは、その繰り返しにより株価は上昇を続けてきました。

 

現時点ではどちらになるかは明確な回答はできません、このような時に注目すべきはジャンク債金利(正確にはジャンク債の金利と国債の金利の差)です。図2に示しました。ジャンク債金利は3.9%となり、少しずつ下がってきました。現状では投資家は金利上昇についての不安を抱えていないことになります。6%を超えなければ株価が大きく暴落してしまうリスクは低いと言えます。

 

失業率などの経済情勢から考えて、ぼくは株価の天井が近いと考えていますが、経済は株価の大きな構図を決めることができたとしても、数か月単位の動きにまで影響を与えることはできません。天井を決めるのは金融取引を行う市場参加者です。

 

市場参加者がジャンク債金利に対して悲観的な方向に動けば(金利上昇を容認すれば)株価は大天井をつけることになるでしょう。ここがこれからの最重要注目点です。

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百二十五回 自民党の派閥資金問題は経済にも大きな影響を与えるのでしょうか?

2023年12月10日

回答:

これは自民党内の権力闘争の現れであり、最近の国内政治スキャンダルの中で最大です。政治の機能がストップする可能性があります。株価の暴落などの経済上の激変が起きた場合には対応が後手に回るようになるでしょう。

 

解説:

本質は自民党総裁をめぐる権力闘争の現れ

自民党内の権力闘争が本格化しています。それが今回の政治資金管理問題が発覚したことと大きく関係しています。

どうして政治資金不記載問題が自民党内の権力闘争だとわかるのか?それは、こうした実態を知っているのが自民党の議員だけだからです。

 

時系列でニュースをまとめます。

 

  • 自民党の各派閥が開いた政治資金パーティーについて、収支報告書に記載されていない収入があったとして、告発状が提出された。具体的に述べると、各派閥は所属議員にパーティー券の販売ノルマを課しており、ノルマを超えた分の収入を議員側に還流させるキックバックを続けてきた。安倍派、岸田派、二階派、石破派、麻生派の政治団体が合計約4000万円分のキックバックを収支報告書に記載していなかった。

  • 特に、最大派閥である安倍派(清和政策研究会)が問題視され始めた。過去5年間に約1億円の資金を議員側に還流したという多額の金額がメディアを賑(にぎ)わせた。

  • メディアは収支報告書不記載の問題として取り上げてきたが、最近では「裏金問題」と言い始めた。問題が大きくなる兆しが出始めた。

 

収支報告書不記載の事実を知っているのは派閥議員やその関係者です。また、現在は無派閥でも過去にはどこかの派閥に属していた議員も知っています。さらに、各派閥の金額まで把握しているのは大物政治に限られます。

この中の誰かが告発状を地検特捜部に提出した模様です。提出者は現在無派閥で活動している議員でしょう。

 

ここで大事な指摘をしておかなくてはなりません。こうした告発は気軽にできるものではないということです。提出者が誰だか特定されればその人は命の危険にさらされることになります。過去には、交通事故や自殺、病死を装って殺された政治家がたくさんいます。政治家になれば、政治の怖さが身に染みていることでしょう。

 

以上のことを踏まえると、この告発状を提出できるのは、大きな派閥を敵に回しても勝てるだけの力がある人だということになります。自分を殺せるものなら殺してみろ。お前を先にやってやる。と言えるだけの力を持つ人です。用意周到に根回しを行い、機が熟すのを待つ。そうしたことに長けた大物です。さらに具体的に述べると、次回の自民党総裁になれるだけの力をつけた人に限られます。

 

自民党の岸田総裁の任期は2024年9月までで、その際に総裁選挙が行われます。今回の派閥資金還流問題は大きくなれば、現政権の支持率(人気)は落ち、総裁継続は難しくなります。その際に現職を抑えて、総裁になれそうな人物が今回の黒幕だということになります。

 

なお、この原稿では「黒幕」という書き方をしていますが、中枢にいる政治家たちはそれが誰であるか皆知っているはずです。中枢の政治家とは多く見積もっても数十人しかいないでしょう。その中の誰の仕業(しわざ)かは長年その世界にいる人たちはわかっているものです。

 

 

どこで問題を収めるかについて調整されつつあるだろう

 

メディアでは、裏金問題という言い方に変わってきました。

記載のないお金ですから裏金です。そもそも裏金というのは、領収書の受け渡しが無くやりとりされる現金のことで、表に出せない支援、選挙買収などに使われます。

 

今回の派閥資金還流問題はそのキックバックを用いて選挙上の不正な行為を行った議員たちにも及ぶ可能性が出てきました。あまりに不正行為を暴(あば)くと自民党自体が崩壊してしまいます。どの程度のところで矛(ほこ)を収めるかは安倍派や各派閥のトップと今回の黒幕の間で調整が行われることでしょう。

 

安倍派が狙い撃ちされている理由は何か?

黒幕は安倍派を切り崩し、崩れた派閥の議員たちを自分の傘下に収めようとしています。この計画は少し前から進んできました。安倍元首相の暗殺(2022年7月)もその一環として計画された可能性が高いということです。別の言い方をするなら、暗殺も今回の黒幕(たち)の仕業(しわざ)だったということになります。

 

安倍暗殺も誰が黒幕だったか?そのことに中枢の政治家たちは気づいていたのか?その通りです。政治は命のやり取りをする厳しい世界です。そうした者を罰することをしないのも政治世界の掟(おきて)です。

第百五十回 日本の長期金利の高騰が続いています。景気上向きのサインでしょうか?

2024年6月1日

質問:

日本の長期金利は12年ぶりの高い水準に達したとの報道がありました。これは景気上向きのサインでしょうか?それとも悪化のシグナルでしょうか?

 

回答:

TV報道に惑わされないことが大事です。長期金利の高騰はG7各国共通の現象であり、日本の上昇幅は大きくありません。

 

解説:

世界の長期金利は連動しており、通常は日本の金利だけが突出して動くことはありません。図表1には日米独の長期金利を示しました。ここからわかることは、「世界の金利が上昇傾向にある。日本もそれにならった動きをしている」ということです。特筆すべきものではありません。

 

G7の中で、最も落ち着いた動きをしているのが日本です。日本の長期金利は12年ぶりの高値になっているのかもしれませんが、各国に比べてまだ低い段階です。

 

日本の金利が諸外国に比べて低いということは、債券価格が高いということと同じです。つまり、日本政府の債券はG7の中で最も信頼性が高いということになります。最優等生です。

 

金利水準が大きく上昇しない限り、(別の言い方をすれば、債券価格が大幅安にならない限り)、特に心配する事態ではありません。

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第百五十一回 
定額減税には景気の浮揚効果がありますか?

2024年6月8日

質問:

6月に定額減税が実施され、一人当たり4万円が戻ってくると聞いています。このニュースからわかることは何でしょうか?

 

回答:

政権与党の人気取り政策であり、実態を反映していない説明を国民に示しています。また、景気効果は低く、実質的な意味は薄いでしょう。

 

解説:

定額減税の仕組みがTVで解説されていました。政権与党のずるさが如実に現れていました。どこがずるいのか?6月4日朝のNHKの解説「標準家庭」のモデルケースから説明します。

 

**政府が示したモデルケース**

1人あたり年間で所得税が3万円、住民税が1万円減税される。

納税者本人だけでなく扶養している子どもや年収103万円以下の親族らも減税の対象となる。

 

単身世帯の場合:

月額給与30万円+ボーナス(6月支給)60万円

6月の所得税額3.7万円が0.7万円に減る

 

結婚世帯の場合

月額給与40万円+ボーナス(6月支給)80万円

6月の所得税額7.9万円がゼロになり、翌月は税額が1.1万円減少する

 

これらが標準世帯であるとの報道でした。

この報道が公平さを欠ける点は給与額です。単身世帯の場合、年間の給与総額は480万円となり、結婚世帯の場合は、640万円になります。

 

ところが、現実の民間の平均給与は458万円です。注意したいのは、平均には1億円の給与所得者も含まれているため、この単純平均値は実態を反映していません。実態は中央値(給与所得者を給与順に全員を並べて真ん中に位置した人の所得)の370万円程度だと言われています。

 

モデルケースを作るならば、370万円を前提に構築する必要があるのですが、政府が示した値はそれとはかけ離れた給与を元に算出したものとなっています。

 

給与370万円をもとに結婚世帯(子供2人のケース)の場合を計算します。

 

給与所得は給与総額370万円から控除額30万円を引いた340万円となります。そこから基礎控除(誰でも個人ひとりあたり)48万円と社会保険料控除(健康保険や厚生年金)55万円を差し引きます。

 

また、子供が2人いる場合は扶養控除が76万円あります。各人38万円の2人分です。(配偶者に一定の所得がある場合は配偶者控除はないので、ここではゼロとします。)

 

これらを控除すると、課税所得は161万円となります。この課税所得に基づいて、この人が支払う所得税は年間8万円ちょっとです。政府の説明では、扶養家族が2人いる場合は、定額減税額(所得税に関わる部分)は9万円(本人と子供2人×3万円)ですが、所得税8万円の人は所得税がゼロにはなるだけで、9万円まるまるの恩恵は受けられません。

 

そこで、こうした恩恵不足が生じる人には、埋め合わせの給付が行われます。上で示した人の場合は、8万円と9万円の差額となる1万円の補填がなされます。そのような意味ではどのような所得レベルの人でも3万円の恩恵が受けられるのですが、そこまで制度を詳しく説明すると、複雑になり過ぎて一般の人には理解しにくいでしょう。

 

本当の意味での標準家庭をモデルケースにした場合は、制度の複雑さが現れてしまうので、制度に対する国民の理解が進みません。そこで、所得額を実態より大きくしたケースを作ったのでしょう。TV報道は実情を映していないことがわかります。

 

また、過去の減税からすると、全体の4分の3は貯蓄に回り、4分の1のみが消費に回るとのことです。景気の浮揚効果も限定的です。

 

******************************

100万円以下    108.3万人    3.54%    316.8万人    14.34%    425.1万人    8.07%
100万円~    204万人    6.67%    497.1万人    22.5%    701.1万人    13.3%
200万円~    321万人    10.49%    460.8万人    20.86%    781.8万人    14.84%
300万円~    517.2万人    16.9%    397.3万人    17.99%    914.5万人    17.35%
400万円~    537万人    17.55%    251.2万人    11.37%    788.2万人    14.96%
500万円~    422.1万人    13.79%    130.6万人    5.91%    552.7万人    10.49%
600万円~    287.2万人    9.38%    65.4万人    2.96%    352.6万人    6.69%
700万円~    206.7万人    6.75%    36.6万人    1.66%    243.2万人    4.62%
800万円~    134.2万人    4.38%    17.6万人    0.8%    151.8万人    2.88%
900万円~    90.7万人    2.96%    9.8万人    0.44%    100.4万人    1.91%
1000万円~
1500万円    166.5万人    5.44%    18.5万人    0.84%    185万人    3.51%
1500万円~
2000万円    38.9万人    1.27%    4.3万人    0.2%    43.2万人    0.82%
2000万円~
2500万円    12.2万人    0.4%    1.4万人    0.06%    13.6万人    0.26%
2500万円以上    14.8万人    0.48%    1.8万人    0.08%    16.6万人    0.32%
合計    3060.8万人    100%    2209.1万人    100%    5269.9万人    100%
 

【給与階級別の年収データ】日本人の年収別の割合分布がわかる|年収ガイド (nenshuu.net)

 


年収が300万円の場合、手取り収入は所得税、住民税、社会保険料を差し引いた金額です。具体的には以下のように計算されます:

  1. 所得税:所得税は、給与収入から給与所得控除と所得控除を差し引いた課税所得に、所定の税率を掛けて算出されます。給与所得控除は速算表により98万円1です。所得控除は基礎控除と社会保険料控除だけがある場合、合わせて93万9000円です。課税所得は300万円 - (98万円 + 48万円 + 45万9000円) = 113万1000円です。この場合の所得税は108万1000円 × 5% = 5万4050円です。

  2. 住民税:住民税も所得税と同じ手順で計算されます。基礎控除は43万円で、所得控除は基礎控除と社会保険料控除を合わせた88万9000円です。課税所得は300万円 - (98万円 + 43万円 + 45万9000円) = 113万1000円です。住民税額は所得割の10%と均等割の5000円を合わせたもので、11万8100円になります。

  3. 社会保険料:社会保険料は給与の金額に健康保険料率11.64%、厚生年金保険料率18.3%を掛けた額を労使折半します。健康保険料と厚生年金保険料を合わせた従業員負担分は45万9000円です。

したがって、手取り収入は給与収入300万円から所得税5万4050円、住民税11万8100円、社会保険料45万9000円を差し引いた236万8850円となります。2 税金のしくみを理解し、節税の方法を活用することで、手取り収入を最大限に増やすことができます。

  1.  

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給与所得:340万円

控除:   基礎控除48万円

              社会保険料控除55万円

課税給与所得237万円

税額:単身者14万円弱

子供が2人いる場合:76万円

201万円 

税額:10万円強

月額8625円3.5か月かかる

 

 

この金額が3万円少なくなる(住民税の減額1万円を加えて4万円少なくなる)という計算です。

第百五十二回 日本の倒産件数が著しく増加したのは本当ですか?

2024年6月15日

質問:

日本の倒産件数が著しく増加したという報道を聞きました。これは本当なのですか? 

 

回答:

2024年5月の倒産件数は1009件と11年ぶりの高水準となりました。日経平均が最高値を更新する中、倒産が劇的に増加するという異常事態が発生しています。

 

解説:

東京商工リサーチによれば、2024年5月の倒産件数は1009件となりました。これは2013年7月ぶりの高い水準です。

 

2021年には月間500件前後で推移していた倒産件数が2023年後半から徐々に増加を始め、ついに1000件を突破しました。

 

大事な点は、図1にあるように、日本の株価(日経平均)との比較です。株価は2023年に入り上昇基調にあります。特に23年末からは大幅上昇しています。株価が上昇しているということは、通常は景気が良くなっていることを意味します。

 

しかし、経済の現実は違うようです。2023年後半から倒産が増えているからです。その理由は何か?

 

簡単に言えば、人々の暮らし向きが良くなっていないからです。消費者信頼度指数は、株価が史上最高値であるにもかかわらず、下降の方向になっています。

 

倒産の増加は2020年に始まったゼロゼロ融資と関連があります。

ゼロゼロ融資とは、新型コロナウイルスの影響で売上が減った個人事業主や中小企業に対して、実質無利子・無担保で融資を行う制度です。

 

この制度の新規募集は終了し、企業によっては利子の免除期間(3年)が終わって、利子の支払いを始めています。

 

つまり、倒産件数の増大は、利子の支払いが始まり、それが払えないことが原因で倒産し始めたということです。元本の返済が始まらないうちから、利子返済負担だけで倒産してしまうのですから、景気はのっぴきならない状況に置かれているということでしょう。

 

しかし、ゼロゼロ融資の返済に困った場合は、コロナ借換保証(2023年1月開始)という制度を利用することができるはずで。コロナ借換保証を利用すると、ゼロゼロ融資の残高を新たに借り換えることができ、金利が引き下げられたり、返済期間が延長されたりします

 

こうした新制度があるにもかかわらず、倒産件数が増えているのは、中小企業、個人事業主の置かれた状況が厳しさを増しているという事情を反映していることが窺(うかが)えます。

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第百五十二回 日本の倒産件数が著しく増加したのは本当ですか?

2024年6月15日

質問:

日本の倒産件数が著しく増加したという報道を聞きました。これは本当なのですか? 

 

回答:

2024年5月の倒産件数は1009件と11年ぶりの高水準となりました。日経平均が最高値を更新する中、倒産が劇的に増加するという異常事態が発生しています。

 

解説:

東京商工リサーチによれば、2024年5月の倒産件数は1009件となりました。これは2013年7月ぶりの高い水準です。

 

2021年には月間500件前後で推移していた倒産件数が2023年後半から徐々に増加を始め、ついに1000件を突破しました。

 

大事な点は、図1にあるように、日本の株価(日経平均)との比較です。株価は2023年に入り上昇基調にあります。特に23年末からは大幅上昇しています。株価が上昇しているということは、通常は景気が良くなっていることを意味します。

 

しかし、経済の現実は違うようです。2023年後半から倒産が増えているからです。その理由は何か?

 

簡単に言えば、人々の暮らし向きが良くなっていないからです。消費者信頼度指数は、株価が史上最高値であるにもかかわらず、下降の方向になっています。

 

倒産の増加は2020年に始まったゼロゼロ融資と関連があります。

ゼロゼロ融資とは、新型コロナウイルスの影響で売上が減った個人事業主や中小企業に対して、実質無利子・無担保で融資を行う制度です。

 

この制度の新規募集は終了し、企業によっては利子の免除期間(3年)が終わって、利子の支払いを始めています。

 

つまり、倒産件数の増大は、利子の支払いが始まり、それが払えないことが原因で倒産し始めたということです。元本の返済が始まらないうちから、利子返済負担だけで倒産してしまうのですから、景気はのっぴきならない状況に置かれているということでしょう。

 

しかし、ゼロゼロ融資の返済に困った場合は、コロナ借換保証(2023年1月開始)という制度を利用することができるはずで。コロナ借換保証を利用すると、ゼロゼロ融資の残高を新たに借り換えることができ、金利が引き下げられたり、返済期間が延長されたりします

 

こうした新制度があるにもかかわらず、倒産件数が増えているのは、中小企業、個人事業主の置かれた状況が厳しさを増しているという事情を反映していることが窺(うかが)えます。

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第百五十三回 日本の各企業の株価動向わかることは何でしょうか?

2024年6月22日

質問:

日本の株式市場において、最近の個別銘柄の動きには特徴があるでしょうか?

回答:

半導体一極集中の相場展開です。活況業種が広がっていないという点で、相場は末期的な状況を呈しています。

 

解説:

日本の株式市場を見ると、活況になっている銘柄群に特徴があります。それは製造業が中心になっていることです。図表1~2に時価総額上位50銘柄を記しました。黄色がサービス業、グレーが製造業です。色分けでわかるように、図表2ではグレーが圧倒的に多いです。

 

数でいえば、50社中30社が製造業です。つまり、全体の6割が製造業だということになります。GDPにおいては、サービス業の割合が7割超であり、製造業は2割超でしかありません。仮に、株式市場がGDPを忠実に反映しているのであれば、時価総額上位50社中、製造業は10社超しかないことになります。

 

製造業が多い理由は、製造業の株価が上がっているからです。それは何故か?

 

半導体を中心に業績が好調だからです。図表3の野村證券の調査によれば、2024年度の増益率が最も高い業種は素材関連(増益率11.5%)であり、次がエレクトロニクス(10.1%)となっています。この両者をけん引しているのが半導体です。

 

簡単にいえば、相場が一極集中型になっていることがわかります。上昇する産業の分散が進んでいれば、全産業が活況であると言えるわけですが、一極集中の場合は、その業種がストップした場合は相場全体が腰折れしてしまうことになります。末期的な環境でよく見られる現象です。

 

こうした状況では市場全体の活況が続くことは考えにくいです。むしろ、米国の株価が天井となった場合は、共倒れとなっていく公算が強いと言えます。

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第百五十四回 
米国の消費者は景気をどのように見ていますか? 

2024年6月30日

質問:

NYダウが一時4万ドルを超え、カリフォルニアの労働者の時給が20ドル(3000円)に達するなど、米国経済に関して明るいニュースが出ているようです。米国の消費者は景気の先行きをどのように見ているのでしょうか? 

 

回答:

2024年3月をピークに消費者信頼度指数は低下傾向になっています。株価が上がり、時給は上がったのですが、それ以上に物価が上がったので、生活が苦しくなっている模様です。

 

解説:

図表1に過去5年間の消費者信頼度指数の動きを記しました。消費者信頼度指数とは、庶民にアンケートを実施し、「暮らし向きが良くなっている」と答えた人の数から「悪くなっている」と回答した人の数を引いて作った指数です。

 

2024年3月に指数はピークを打ち、4月、5月と低下傾向になっています。物価上昇のため、賃金上昇では追いつかずに生活苦が深まっていることがわかります。

 

3月がピークといっても、そもそもその水準は高くはありません。指数はコロナ騒動が一段落を始めた2022年6月に底打ちし、株価の上昇とともに、上がってきました。

 

図表2は長期での指数の動きを示したものです。

これによれば、2024年3月のピークはコロナ前のピークから底までの下落幅の半分も戻していません。さらに過去を振り返れば、指数は2000年のITバブル絶頂期や2007年のリーマンショック前の超金融緩和絶頂期、2018年のコロナ前の絶頂期と3回のピークをつけていますが、だんだんとピークのレベルが下がっていることがわかります。

 

この間、株価は上昇基調にあったので、株価は庶民の暮らしに対する思いとは全く別に動いてきたことになります。簡単に言えば、高株価は株を保有する金持ちには好影響をもたらしたのですが、庶民には恩恵が少なかったということになります。

 

しかし、最終的に経済を動かすのは少数の金持ちではなく、多勢の一般庶民です。この人たちの暮らし向きに対する思いが悪化すると、株価はほどなくしてピークを迎えることになります。

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第百五十五回 
農林中金はどうして1.5兆円の赤字になったのですか?

2024年7月6日

質問:

農林中金が今年度1.5兆円の赤字になるとの報道がありました。外貨建て運用の失敗だとのことです。どうしてこのようなことになってしまったのでしょうか? 

 

回答:

昨年春から夏にかけて、米国で多くの中堅銀行が経営難に陥ったのと全く同じ理由から、巨額赤字が発生することとなりました。問題は米国短期金利の上昇でした。

 

米国短期金利のさらなる上昇が起これば、農林中金の含み損はさらに拡大するでしょう。また、米国内でも再び経営難に陥る中堅、弱小銀行が発生するでしょう。


 

解説:

2年前から大きくなってきた外国債券の含み損

 

農林中金が発表した2024年3月期決算は黒字決算です。経常利益+1342億円、純利益+636億円になっています。この決算からは農林中金が巨額の赤字(含み損)に苦しんでいる様子は伺えません。同社が5月22日に発表した「決算のお知らせ」の中の「業績の概要」の項目の頁からは今年度大きな赤字を計上するような兆しを読み取ることは全くできません。概要の中では巨額赤字発生の可能性には全く触れていないからです。

 

では、巨額赤字が突然発生したのか?

そうではありません。同社が提供する別の資料、決算概要説明資料にその記載があります。この資料は全体で21頁ありますが、その中の1ページに外貨建ての赤字が拡大していることが小さく記されています。

 

その記述によれば、外貨建て運用の赤字は2年前から始まっています。外貨建て資産の含み損は2022年3月期-0.3兆円から徐々に拡大し、2023年3月期-1.7兆円、2024年3月期-2.2兆円にまで膨らんでいます。

 

農林中金は2.2兆円ある含み損のうち1.5兆円赤字分を売却する予定なのでしょう。残りの0.7兆円分はそのまま保有する方針なのだと思います。

 

昨年の米国の中堅銀行破たんと同じ失敗

 

昨年の春には米国で3つの中堅銀行の破たんが起きました。破たん金額としては米国史上2,3,4位の大型となりました。

 

また、破たんには至らないものの、数件の銀行は独立して経営をすることができずに、他行と合併したり、買収されたりするはめになってしまいました。

 

理由はいずれも同じで、過度な米国債への投資でした。短期金利の方が長期金利よりも高い状態(=逆ザヤ)となり、短期で資金調達し、長期で運用成績を出すという構造が崩れたからです。

 

農林中金の赤字も全く同じ理由です。外貨建ての保有額は2023年度で19兆円でした。これが2.2兆円の赤字となったのですから、12%の含み損だったことになります。債券の赤字幅としてはかなり大きいと言えます。

 

米国短期金利のさらなる上昇が起これば、農林中金の含み損はさらに拡大するでしょう。また、米国内でも再び経営難に陥る中堅、弱小銀行が発生するでしょう。

 

農林中金のずさんな経営

 

農林中金はひどい会社です。1.5兆円の赤字を計上するというのに、理事長は退任せずに役員報酬を3割減で済ますというのです。また、NHKでは「大幅赤字の見通しは6月19日に農林中金からの発表」として報道されていますが、同社のホームページの「ニュースリリース」の項目を見ても、何の発表もありません。

 

最もひどい点はアクションの遅さです。米国の銀行は昨年の時点で債券ポートフォリオの損切りを進め、巨額の損失を計上していますが、農林中金は2023年度においては何らの対策も打っていません。

 

その理由は、農林中金が非上場企業であり、市場からの圧力がなかったため、必要に迫られなかったからです。「損切りは早めに行う」のが投資の鉄則ですが、この鉄則を守らなかった農林中金は2022年3月期から2024年3月期に含み損の金額を増やしています。

第百五十六回 日本近海にレアメタルが眠っているのは本当ですか?金価格に影響がありますか?

2024年7月13日

質問:

日本の近海にレアメタル(希少金属)が大量に眠っているとの報道を耳にしました。日本は資源大国になることができますか?希少金属の発掘が進むと金価格に影響が及び、価格下落につながってしまうリスクはないでしょうか? 

 

回答:

日本の近海にレアメタルが眠っているのは本当のようです。ただし、採掘のコストがどの程度になるのか、全く見当がつかないのが現状です。商業化には5年以上の月日は必要でしょう。

なお、希少金属の発掘によって金価格が下がるリスクは全くありません。

 

 

解説:

希少金属の商業生産はまだ先の話

日本の排他的経済水域内(南鳥島周辺海域)において、レアメタル(希少金属)が高密度で広範囲に分布する有望海域が特定されました。コバルトは国内消費量の約75年分以上、ニッケルは約11年分以上の資源量であると見積もられています。

明るいニュースですが、簡単に進むという話ではないようです。鉱物資源が眠るのは水深5500メートルの海底下だからです。希少金属を引き上げる実証実験を2027年度中に行ないたいとのことでしたので、商業化はそこから最低数年はかかるはずです。

この種の話は夢を語っているのであって、現実はかなり先の話となることが多いです。

 

私たち人類は日々の経済活動によって、比較的安価に堀り出せる場所は掘り尽くしており、偶然の幸運が働くチャンスはごく稀です。大発見があるとするなら、それは技術的に手の届きにくい範囲にある場合がほとんどです。

このことをもう少しわかりやすく言い換えましょう。

 

例えば、ゴールドです。

ゴールドの採掘は古代においては露天堀りが中心でした。穴を掘って地下深く進む技術がなかったからです。露天掘りは安価です。従って人類は近代に入る前の段階で、露天で掘れる個所はほぼ堀り尽くしました。

 

その次は地下を掘り始めました。地下を掘るといっても最初のうちは数メートル、数十メートルがやっとでした。その技術の及ぶ範囲は掘り尽くしてしまいました。

 

さらに、数百キロ地下まで掘る技術が確立すると、その範囲に眠るゴールドはほぼ掘り出してしまい、今では数千メートル地下まで掘っています。人類は努力に努力を重ねて、自分たちが力の及ぶ範囲は制覇してきています。

 

このような状況下において、今さら露天で掘れる場所や地下数メートルのところに大量のゴールドが見つかるという確率はほぼゼロになっています。

 

これはすべての資源の発掘に言えます。水深5500メートルの場所に見つかったという事実が意味することは、「現状では水深5500メートルの地点で採掘できる技術が確立していない」ということです。確立した技術の範囲はほぼ制覇されているのです。

 

全貌が明らかにはなっていないので、何とも言えませんが、この程度では資源大国にはなれないと思います。

ゴールド価格が下がることはない

今回見つかった希少金属はコバルトとニッケルです。これらが大量に採掘されても金価格に影響を及ぼすことはありません。代替関係がないからです。

 

代替関係とは何か?

たとえば、金歯はセラミックスへの代替が進んでいます。金色と白色の歯があるとしたら、誰だって、歯は白い方がいいです。ただし、金歯に比べてセラミックスは壊れやすいので、当初は代替がなかなか進みませんでした。近年、強度の大きいセラミックスが開発されるにつれて、金歯からの代替が進み始めました。2010年には金歯需要は全世界で46トルありましたが、今では10トンを割っています。

 

コバルト、ニッケルとゴールドとの間ではこのような代替関係はありません。従って、コバルトやニッケルが生産されるようになっても、金の需給には全く影響しません。

第百五十七回 きらやか銀行が破綻しました。連鎖倒産が起きますか?

2024年7月21日

質問:

じもとホールデングス傘下のきらやか銀行が破綻しました。このことは日本の金融界に大きな影響がありますか。連鎖的にほかの地方銀行にも破綻が広がる事態が予想されますか? 

 

回答:

地方銀行の多くが経営難に陥っており、きらやか銀行の破綻はその象徴です。景気に陰りが生じ始めれば、多くの銀行後を追うように破綻していくでしょう。時間の問題だと認識すべきです。

 

解説:

全国の地銀の経営状況は悪化の一途

 

7月10日、金融庁は、山形を地盤とする「きらやか銀行」について、経営の再建に向けたアドバイスを行う専門チームを設置すると発表しました。公的資金の返済が困難になったのが直接の理由です。

 

このニュースを簡単に翻訳すれば、「きらやか銀行は破綻した」ということになります。

 

きらやか銀行の業績悪化に伴い、親会社にあたる金融グループ「じもとホールディングス」は、昨年度、大幅な最終赤字に陥り、国が保有する優先株への配当ができず、国の実質的な管理のもとで経営再建を進めていました。したがって、こうした事態が起きるのは時間の問題でした。

 

地方にお住いの方ならばご存じのように、地方の経済状況は脆弱化の一途をたどっています。いい例は駅前のシャッター通りです。中心市街地の衰退は広がりをみせています。県庁所在地のような都市でも夜は誰も歩いていないようなひっそりとした状況になっています。

 

地方銀行は地元に融資していますから、地元経済の揺らぎは経営に甚大な影響を及ぼします。

 

図表1に東洋経済が発表した地銀の衰退度ランキングを載せました。これは収益力、健全性、運用力から、地銀の衰退度を判断するものです。

 

東洋経済の衰退度の測り方が充分に正当なものであるか否かついては、ここでは論じないことにしましょう。重要なことは、同じ指標によって、2023年3月期と2024年3月期を計測した場合、2024年3月期の方が圧倒的に悪化しているという事実です。

 

それは図表2に示した通りです。

東洋経済のランキングでは高得点の方が衰退度が低く、低得点の方が衰退度が高くなっています。棒グラフが全体的に左寄りになっているのがわかるでしょう。

 

図表2を詳しく見ると、2023年の段階では90点台の銀行が存在し、80点も7行ありました。2024年には90点台は姿を消し、80点台も5行になっています。

 

一方、低得点の銀行が増えています。2023年では40点未満の銀行は存在しませんでしたが、2024年では3行になっています。また、45点未満も1行から3行に増大しています。

 

事態の悪化は日経平均の暴落後

 

図表3に最も衰退度の高い地方銀行、ワースト10を記しました。きらやか銀行は第二位です。きらやか銀行が破綻したからといって、第一位の長野銀行や40点台前半の銀行がすぐに破綻するわけではありません。

 

しかし、衰退度の高い銀行は極めて厳しい状況に置かれているといっても過言ではありません。

 

経済に陰りが生じ始めれば、「自分が預金するあの地銀は大丈夫か?」という不安の声が大きくなるでしょう。誰だって破綻には巻き込まれたくないですから、預金を引き下ろす人が少しずつ増えていきます。そのうち、それが雪崩(なだれ)現象のようになり、あっという間に脆弱銀行の破綻につながります。それをニュースで知った人は、比較的安全と言われる銀行預していたとしても、安全をとって預金引き出しにかかります。

 

こうして、「完全に安全圏にある」と思われる銀行以外は破綻の道を歩むことになります。

 

鍵は日経平均の下がり方です。

今はまだ日経平均が史上最高値付近にあります。だから、きらやか銀行の破綻が他行に及ぶ可能性は低いです。

 

一般に、株価が天井から20%程度の下がり方の場合、人はまだ、「経済は近いうちに回復する」と思いがちです。しかし、30%の下落に達すると、そういった楽観論は姿を消します。恐怖心が経済の根幹を支配するようになってしまいます。

 

日経平均が下がれば、経済上の問題がさらに大きくなっていくと心得ておいてください。

第百五十八回 米国株が暴落を始めた場合、証券取引所は閉鎖しますか? 

​2024年7月27日

質問:
NYダウが暴落を始めた場合、取引所が閉鎖されてしまう可能性はありますか?その場合、株式の売却は長期でできなくなってしまうのでしょうか?

回答:
人為的にシステム障害を引き起こし、取引所を閉鎖する可能性が高いです。1週間くらい閉鎖している間に、株価引き上げ策を発表し、閉鎖を解除するでしょう。気分一新で株価の反発を狙うのでしょうが、その程度の小手先政策では暴落は止まらないでしょう。

解説:
株価の暴落が生じた場合に、取引所を閉鎖すると、それ自体が大きなニュースとなってしまいます。中国では閉鎖は日常茶飯事で、欧州でもリーマンショックの際に、取引所を閉鎖した実績があります。それらも、世界的なニュースとして私たちのように日本に住む人にまで取引所の閉鎖は伝わってしまうほどでした。

これに対して、米国は「資本主義の砦(とりで)だ」という意識があるので、戦後に関しては閉鎖の実績がありません。従って、閉鎖は簡単にはできません。

しかし、為政者が「取引所を閉鎖すれば、株価が下がらない」という誤った考えを持っているのも事実です。

そこで、どのような手を使うのか?
システム障害が最適な方法でしょう。「システム障害のため、現在サービスが利用できません」という不具合に私たちはずいぶん我慢しています。銀行や航空機のような大勢が利用する公共サービスですら、停止することがよくあります。

為政者はシステム障害(例:ハッカーによる大規模な閉鎖)を起こし、取引所を停止するでしょう。取引停止はG7同時になると思います。

本番は1週間くらい閉鎖するでしょう。週末までに、株価の反発が期待できるような政策を打ち出し、市場の雰囲気が週明けに一新するのを待ちます。

しかし、株価が引き上がるような政策は存在しません。

日本株は1989年の38000円台から2009年の7000円台まで8割以上の下げを記録しました。株価引き上げ政策が機能するなら、そうした長期の低迷はなかったはずです。

為政者はこうした過去の軌跡を覚えているはずなのですが、「目の前の暴落を何とか止めなくてはならない」という切羽つまった事情によって、期待薄の政策を打ち出すでしょう。それによって数週間の株価反発はあるかもしれませんが、本質的な解決策にはなりません。

閉鎖された取引所はいつかは再開します。その際の売り圧力は閉鎖がなかった際に比べて巨大なものになります。投資家は自分の資産が減ってしまうことが何より嫌なので、株価引き上げ政策には何らの興味を持たずに、大量の売りを行なう可能性が大きいです。為政者にはこうした心理は全くわからないでしょう。

最初から大きなシステム障害を起こすと、インパクトが大きいので、最初は練習(1,2日の短期的な閉鎖)から入ると思います。そこで、大衆の反応を見極めてから本番につなげるでしょう。

第百五十九回 米国では倒産が増えているのでしょうか?

2024年8月3日

質問:

米国では倒産が増え始めたと聞いています。これは経済に大きな影響を与えるレベルなのでしょうか? 

 

回答:

米国の倒産件数は2年前に底を打ち、拡大方向に入っています。最大の問題点は、過去最低の倒産件数(12,700件)水準を起点とした悪化が始まっていることです。一般的に、「悪化」は変化率の点から人々に意識されやすくなっています。リーマンショックの前に起きたことと同じ現象が起き始めています。これは今後、経済に大きな影響を与えることになります。

 

解説

米国の倒産件数は底を打ち、拡大傾向に移っています。

最も少なかった四半期は2022年第二四半期で12,700件、現在(2024年第一四半期)はそこから6割増となり、20,300件になっています。

 

投資分野に詳しくない人は、「まだ倒産件数のレベルが低いじゃないか。リーマンショック前の絶頂期と同程度にすぎない」と思うかもしれません。事実、リーマンショック前の絶頂期(2006年第4四半期)では倒産件数が19,700件であり、数においては現状とあまり変わりません。

 

しかし、この考え方は間違いです。投資は変化率に注目するものだからです。

2006年第4四半期の絶頂期を見れば、米国の倒産統計上、過去最善の件数を記録しました。にもかかわらず、その後起きたことは、戦後最悪の不況でした。

 

その後、倒産件数は2010年第1四半期に61,100件でピークとなりました。この数字は1993年のレベルであり、取り立てて大きな件数ではなかったかもしれません。倒産件数がそれほど大きくなかったにもかかわらず、米国の金融市場が崩壊寸前にまで達してしまったのは、「変化率が大きかった」というのが最大の理由です。実際に、倒産件数が直上的にせり上がっています。

 

これから倒産件数が増大していきます。その際の最大の問題点は、「スタート地点の件数が過去最低だった」ことになるでしょう。人々はそこからの変化を「悪化」ととらえます。

 

たとえ話になりますが、優等生が試験に落ちると劣等生が落ちるよりも、クラスの仲間たちの注目を集めてしまうでしょう。

同じようなことが米国経済に起こりつつあると考えられます。

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第百六十回 今後の日米の株価はどうなるのでしょうか?

2024年8月10日

質問:
日本株は史上最大の下げ幅を記録しました。今後の株価はどのようになるのでしょうか?

回答:
日米ともに天井圏の動きです。日本は7月につけた高値を抜くことなく、下落相場に入るでしょう。米国は新高値を更新する可能性がありますが、一時的です。これからはすべての株式ポジションをゼロするのが賢い投資戦略です。

解説
ぼくの予想は図表1(日本株),図表2(米国株)の通りです。

一般に株価が天井をつけた後、それを示すサインが発せられます。日本株の場合は「過去最大の下げ幅」がそれにあたります。過去に起きたことがないということは、新しいことが起こっているという意味です。

事実を素直にとらえましょう。すなわち、「日本株は天井を打った」と思うべきです。NISAによる株式購入が過去にないレベルに達しました。これも株価の天井期に起きやすい大量の買いです。

それでも、米国が上がれば日本株は上がります。日本株は米国の株式の写真相場だからです。
では、米国はどうなっていくのか?

米国株も天井圏に入っています。「天井圏」という単語を用いたのは7月中旬につけた高値(7月17日 ダウ平均41,198ドル)が史上最高値になるのか、これから再度上昇を続けて、高値を更新しそれよりもやや高い天井価格をつけるのかが未確定だということです。

図表3を見ればわかるように、ファンドマネージャの先物ポジションは87%(87%が買い、23%が売り)となり、過去最高水準に達しました。過熱感が出ており、ファンクラブ通信でも天井を警戒すべきだという論調を何回も書いてきました。

景気減速の観点からは「天井を既に形成した」と判断すべきかもしれませんが、相場には行き過ぎがあります。現状では、まだ債券市場に危険に兆候が見られていません。ジャンク債は上がりましたが、上昇幅は限定的です。

このため、株価の天井はやや先となり、NYダウは高値に向かって数か月上り基調になることも考えられます。ぼくはこのシナリオの方が、このまま下げ相場に入るというシナリオよりもやや確率が高いと思っています。その場合、日本株も上昇しますが、7月11日につけた高値(42,224円)を抜くことはなく、2番天井を形成することになるでしょう。

しかし、長期投資家にとってはそのような目先の動きはどちらでもいいことです。この時点からは、株式ポジションはすべて手仕舞うのが賢い投資戦略となります。株式ポジションのある人は、ここが最高の手仕舞い時期だと思って躊躇すべきではありません。「あとOO%上がったら、トントンになるからそれを待ちたい」と思う人は多いでしょうが、それは危険な考え方です。相場は自分の都合で動いてくれるものではありません。自分の思惑通りに動かないものだと思って行動してください。

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林則行さんファンクラブ事務局です。

この度、諸事情につき林則行さんの質問用メールアドレスが変更となるため、ご連絡させていただきました。

(旧)questionhayashi@yahoo.co.jp

(新)hayashinori884@yahoo.co.jp

今後ご質問のある方は、上記メールアドレスへ送付するようお願い申し上げます。

第百六十一回 米国の株価はどうして新値更新する可能性があるのですか?

2024年8月18日

質問:先週の記事によれば、日経平均は天井を打ったとの見解でしたが、米国は今後も高値更新をする見込みがあるとの話でした。どのような理由からそのように考えるのでしょうか?

 

回答:

米国を代表する主力株が強いチャートを示しているのが理由です。これが投資家の総意であると考えるべきです。

 

解説

株価と景気との相関は高いですが、常に同時に天井を打つわけではありません。ある時は景気の方が先だったり、株価の方が先だったりします。そのタイムラグも3か月だったり半年だったりします。

 

ファンダメンタルを基本とした判断からは「いつが株式市場の天井なのか」という回答を得ることはできません。そこで、株価自体が語っていることを聞き取るようにするのが賢い方法です。株価は投資家の総意として形成されるので、株価を読むことは投資家の総意を読むことと同じです。

 

米国の主力株を見てみましょう。

株価が強いか弱いかの最も一般的な判定方法は、「直近の安値を抜いたか否か」にあります。具体的には図表1にある通りです。

 

弱い株は直近の安値を割り込んでしまいます。弱い株の代表としてシティバンクを図表2に挙げました。

 

これに対して、強い株は安値を割らずに反発します。図表3と4では強い株を挙げています。米国の主力株として君臨する銘柄で、グーグル、アップル(図表3)、メタ、JPモルガン(図表4)を表示しています。多くの主力株がこれら4銘柄と同様に、直近の安値を割っていない段階ですので、米国株はまだ上値があると考えられます。

 

「安値を割ったか否かといった違いがどこまで信頼の置けるものなのか」という疑問を持つ人が当然のことながら出てくるでしょう。しかし、経済指標からは読み解くことができない以上、この方法以外に短期の相場を判断する方法はないと思って下さい。

 

NYダウ平均に今後大きな転換点が訪れた場合は、早急にお知らせします。

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第百六十二回 米国不動産20%下落

2024年8月26日

米国の商業用不動産は最高値から20%超の下落となっています。図表1です。リーマンショックの際に天井から底値まで最大で36%下落しました。つまり、リーマンショックの際の下り坂の半分の道を現在既に歩んでいるということになります。簡単にいえば、米国の不況はかなり進展しているということです。

 

コロナの際も不動産価格が下がりましたが、大きな下落には至りませんでした。今回の下落局面には、コロナのようなショック性のきっかけはありません。景気がだんだんと悪化しているのが理由だと考えていいでしょう。

 

図表1にもう一度戻ります。米国不動産価格は2022年5月に天井をつけました。ダウ平均は2021年末がピーク(中規模の天井)です。つまり、ここまでの道のりにおいては、この2つの市況価格は呼応して動いていたことになります。

 

ただし、そこからが違います。株価は2022年9月下旬まで下げた後反発に転じ、現在に至っています。一方、不動産はその後も下落を続け現在に至っています。金融緩和で、だぶついたマネーが流動性の高い株式市場に流れ、換金性の低い不動産には流れなかったためだと考えられます。

 

だぶついたマネーの行先としての代表は不動産か金融市場かです。そのひとつが大きな下落を始めているという事実を重く受け止める必要があります。不動産が2割以上の下落に見舞われた以上、株式市場にも同様のことが起こると考えるのが自然です。

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第百六十三回 牛丼の吉野家は負け組

2024年8月31日

8月27日、吉野家はダチョウの肉を使った丼(どんぶり)の販売を始めると発表しました。これはバカげた取り組みです。皆さんは「上場会社とは優秀なものだ。優秀な人が社長をやるものだ」と思っているかもしれません。そうではないということをわかっていただくために、今日の話をします。

 

劣悪な新ビジネス

吉野家のダチョウビジネスは失敗必至です。理由は次の通りです。

➊ダチョウ丼1650円。吉野家に来る客の単価は600円前後でしょうから、1650円のものを食べる客はまずいないです。

 

❷日本にダチョウを食べる文化が根付くとは思えません。鴨や羊は世界的にみれば、大人気の食材です。消費量から考えると、中国では豚鶏の次は鴨ですし、インドでは鶏の次が羊です。にもかかわらず、日本では鴨も羊も人気がありません。

 

こうした牛豚鶏に続く第三の食肉については、日本で過去にも多くの食肉業者、レストランが試みたでしょう。味や食感をあれこれ工夫したでしょう。それでも成功しませんでした。同じことになるでしょう。

 

❸吉野家はダチョウ丼だけでなく、ダチョウを使った化粧品の開発・販売も始めました。ダチョウが食材だけでは採算が取れないためです。これはさらにバカげた取り組みです。

 

吉野家には化粧品についてのノウハウもないし、ブランド力や販売力もないからです。「現状では採算が取れないから新しいビジネスをする」というのは、自分中心の発想であって、お客様を軸とした発想になっていません。

 

冴えない株価

吉野家がこうした新規ビジネスを模索する裏には、これまでのビジネスの行き詰まりがあります。それは株価パフォーマンスに良く出ています。

 

吉野家の株価パフォーマンスを外食大手7社(合計8社)と比較します。図表1です。2009年から現在までの株価パフォーマンスでは8社中7位、2020年からは8社中5位です。

 

この中で、パフォーマンスが圧倒的にいいのがゼンショーで、2009年、2014年、2020年という、どの時期からのパフォーマンスをみても1位です。2位は松屋です。今後外食を買う機会がある場合は、この2社の中から選ぶことになるでしょう。

 

一方、最悪なのは全期間中最下位となったワタミです。会社に本質的な課題を抱えているのでしょう。

 

これに対して、他の5社(吉野家、ロイヤル、モス、コロワイド、マクドナルド)は中程度のパフォーマンスです。その1社が吉野家だということになります。

簡単にいえば、市場並みの株価パフォーマンスでしかありません。冴えない株価パフォーマンスと言ってもいいでしょう。会社としての卓越性がないということです。

 

だから、新規ビジネスの成功に必死だという意気込みはわかります。しかし。ダチョウでは成功は見込めません。こうした会社を買ってはいけません。

 

では、空売り対象にすべきか?

ここは難しいところです。

 

当社の強みは、客単価を低い客層をつかんでいるところにあります。不況になれば、人はより単価の低い外食を選ぶようになります。その意味では不況に強い株なのです。株価暴落時には当社も大きく下げるでしょうが、日経平均の下げよりも小幅にとどまる可能性があります。

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第百六十四回 メルカリ:悪い株の典型例

2024年9月7日

日本人の綺麗好きは世界最高

メルカリは先週、「越境取引」を通じて台湾へ進出すると発表しました。台湾在住の顧客がWeb版「メルカリ」を通じて、日本で出品された商品を購入することができるというものです。

 

日本の中古品は海外では「高品質」という評判が高いです。

例えば、賃貸マンションにくぎ一本打たないのは日本人だけです。「そうしないと法外な修理代を退去時に取られるから、日本人は仕方なくしている」と思う人がいるかもしれません。つまり、日本人は綺麗(きれい)好きなのではなくて、規則によって縛(しば)られているから従っているだけだ、というのです。

 

これは間違いです。

規則で縛ることができるのならば、中国、インド、欧米でも規則を導入すればいいだけのことになります。そうしたら、世界中の賃貸物件が日本と同じように、退去時はくぎ一本打っていない状態になるはずです。

 

ところが、それができずに、他の国々では退去時の部屋に清潔感がありません。わかりやすく言えば、誰も守ることができない規則は導入のしようがないということです。

 

話を簡単にまとめると、日本人は綺麗好きなのです。だから、今後も日本の中古品には高値をつくということになります。この分野は今後も大きく花開く分野でしょう。中古ビジネスの海外展開については、注目すべきです。

 

メルカリのビジネスモデルは評価できない

メルカリの優れたところは、台湾から中古ビジネスを始めたところです。台湾は3人に1人は訪日経験があり、日本の商品が受け入れられやすいという土壌があります。実際、メルカリの越境取引で台湾は、取引金額・取引件数ともに中国に次ぐ2位(2024年1月1日から2024年6月30日)となっています。

 

では、これが」成功するのか?

難しいでしょう。理由は輸送費です。

メルカリが作った今回のPR用画面では次のような価格が示されていました。

 

商品価格 420

手数料  63

運送料 304

合計 787

(数字は台湾ドル、1ドル約4.58円:合計金額は3600円程度)

 

問題は「420台湾ドルの商品を買うのに304台湾ドルの運送料を払う人がいるのか」という点に集約されます。商品代金の7割を超える金額を運送料にかけるくらいならば、台湾で新品を買うでしょう。

 

一般に、企業は日本の本業が行き詰ると海外に進出するものです。宝石のように、「小さいが高価な品」を中心にビジネスを展開しない限り成功は難しいでしょう。3600円をビジネスの中心価格帯だと認識している限り、成功は無理です。

 

株価:教科書に載せたい悪い見本

当社の最大の問題点は業績の伸びの低さです。2024年6月期では売上9%、純利益3%の伸びにとどまっています。これでは誰も株を買いたくありません。

 

それはチャートにしっかり現れています。図表1に当社の株価チャートを示しました。2つの問題点があります。

問題点1:現在の株価は2021年につけた高値に比べてあまりに低いです。人気がない証拠です。

問題点2:株価が底値をつけたかどうか、まだ未確定の状態です。別の言い方をするならば、底練り(横ばい圏)の期間が短すぎます。

こうした株には手を出してはいけません。

 

では、いつどのような状態になったら買うことができるのか?

それは図表2に示しました。

条件1:底練りの期間があと1年程度は必要です。底練りのイメージは赤丸に示しました。

条件2:底練り(横ばい圏)の株価が2000円台ではなく、3000円台になってやや高く推移することが必要です。

 

最も重要なことは何といっても業績です。利益が20%以上の伸びになっていくことが必要です。

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​第百六十五回 チャートの名人佐々木英信

2024年9月15日

林則行の師匠のひとり

今週はウイズにて双子波動を紹介しました。

これは師匠である佐々木英信さんらが開発したものです。今日は佐々木さんについてお話ししたいと思います。

 

佐々木さんは、日本経済新聞が実施するアナリスト人気ランキングのテクニカルアナリスト部門で、1995年から2003年まで9年連続で1位でした。しかも、他を寄せ付けないダントツでした。2008年に死去、享年58歳でした。

 

9年もの長い間、連続して1位だった理由は佐々木さんの的中率にありました。

佐々木氏の業績でよく知られるのは、1989年のバブル相場崩壊予測です。ぼくはこのことをよく覚えています。何故なら、佐々木さんと知り合ったのが1989年の大納会の午後だったからです。佐々木さんは、「今日の高値が今世紀中の最高値になる」と話していました。見事、的中でした。その日から日経平均は下がり始め、最終的には8割超下がりました。

 

当時は「売り推奨」がしにくい証券会社にあって、投資家のために自らの信念で売りを奨め、「弱気の佐々木」と呼ばれました。このほか、1995年のドル・円相場の1ドル=80 円を予測し、2003年4月の株式市場の底打ちも予測していました。さらに、佐々木さんは政治や社会の動向分析も抜群でした。

 

これだけの実力者でしたから、信奉者が数多く存在しました。ぼくもその一人でした。知り合って数年後には、信奉者たちが集まって、「佐々木会」を結成しました。メンバーは20名超でした。1か月に1回集まり、佐々木さんの講義を2時間ほど聞きます。そのあとは、飲み会に移り、佐々木さんから、相場のみならず、政治経済の見方・考え方を教えてもらいました。

 

ノウハウは脈々と継承されていく

 

佐々木さんは生前、「ぼくの後は林君だよ」と言っていたそうです。これは佐々木さんの逝去後、佐々木さんの一番弟子から聞きました。ぼくは、「いつになったらこの天才に追いつけるのだろう。そもそも、追いけるのだろうか」と思っていましたので、そのようにぼくのことを思って下さったことが嬉しくてなりませんでした。ただし、今なお、佐々木さんの足元にも及ばないという自覚はあります。

 

皆さんに今日佐々木さんの話をしたのは、「ノウハウには開発者が存在して、それを習得し発展させていく弟子たちがいる」ということです。双子波動はシンプルで使いやすいツールになっていますが、これをわかりやすくまとめるには大変な苦労があったことと思います。

 

ぼくは皆さんに自分の知っているノウハウをお伝えしています。皆さんがぼく弟子としてこれを継承し、発展させていってくださることを期待します。

 

ありし日の佐々木英信

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​第百六十六回 停滞した日本経済を打ち破る秘策

2024年9月22日

​ユニコーン企業の輩出が鍵

日本が低成長・停滞気味の国から抜け出し、高成長を目指すにはどうしたらよいのか。人々の賃金をより高くするにはどうしたらいいのか。今日はこの考察をしたいと思います。

 

ぼくはユニコーン企業に鍵があると思っています。

「ユニコーン企業」という言葉は、2013年にベンチャーキャピタリストのアイリーン・リーによって提唱されたものです。ユニコーンは馬に角が生えた神話上の生き物です。見つけるのが難しいことから、このような企業を「ユニコーン企業」と呼ぶようになりました。未上場企業で、企業価値が10億ドル(1400億円)以上のスタートアップ企業を指します。

ユニコーン企業数(7月現在)

米国 666社

中国 167社

インド  70社

日本   8社

と見積もられています。

日本の企業数が極端に少ないことがわかります。

 

では、日本人は米中インドの人たちに比べて優秀ではないのか?

これは全く違うとぼくは思っています。

それどころか、「日本人は非常に優秀で努力家である」というのがぼくの根本的な考え方です。

 

なぜか。

それはオリンピックの金メダル数を見ればわかります。パリ・オリンピックにおいての金メダル数を示しましょう

1位 米国  40

1位 中国 40

3位 日本 20

となっています。

 

これは驚異的な数字です。なぜかというと、人口数が全く違うからです。中国は日本の10倍の以上の人口がおり、米国は3倍の人口がいます。肉体的に優れた素質を持つ人が生まれる確率が各国で同じだとすると、中国のメダル数が日本の10倍、米国のメダル数が日本の3倍あってもおかしくないわけです。にもかかわらず、日本はここまでの成果を出しています。努力が違うのでしょう。

 

これはスポーツに関する報道に起因するのでしょう。TVを見て、子供たちが、「大谷は格好いい。自分もああなりたい」と闘志を燃やしているので、優秀なアスリートが生まれやすくなっているのだと思います。

 

全く同じことがレストランについても言えます。東京はミシュランの星の数で世界一番です。本場のパリを抜いているなんて信じられないと思いませんか?テレビを見ればわかるように、日本は食事に関する番組が圧倒的に多いです。今、第一線で頑張っているシェフたちは、若い頃からこうした番組を見て育ってきた人たちです。小さいときから料理に興味を持ち、高校を出た頃にはもう既に自分の道をしっかり決めているのです。

 

こうした状況に対して、「自分で起業をしよう。起業して、世の中を変えていこう」と思っている人たちが、あまりに少ないようです。日本では、「末は博士か大臣か」という言葉があるように、博士と大臣が出世頭のように言われています。両者とも大学または政府という既存の組織に属する人であり、自分で何かを一から創り出すという起業家ではありません。

 

また、起業家に関するTV番組は少なく、世の中で大きな脚光浴びていません。例えば、「さかなAI」という会社はユニコーン企業の一つですが、日本人のほとんどは知らないでしょう。

 

マインドが変化してくれば、日本でもユニコーン企業が多く出てくるのではないかと思います。起業家となっていれば大成功を収め、世の中を変えるような技術やサービスを生み出せるような力を持っている人がたくさん存在するのではないかと思います。そうした人たちが既存の企業や大学に埋もれてしまい、才能を発揮しないまま一生を終えているのではないかとぼくは危惧しています。

第百六十七回 米国政策金利を見ても意味がない

2024年9月22日

米国の中央銀行にあたるFEDが政策金利を0.5%引き上げました。ウオール街の証券アナリストの予想では引き上げ幅が0.25%だったり、0.5%だったりしていたようです。

 

こんな予想をしてどんな意味があるのだろうか?引き上げ幅の大小には全く意味がないーというのがぼくの見解です。

 

その理由は、図表1を見れば、明確にわかります。図表1は米国株価(S&P500)と政策金利とが描かれています。赤いシャドーで示した時期が政策金利の上昇期です。

 

この赤シャドー時期をよく見てください。株価が期を通じて上がっている局面、下がっている局面、最初は株価が下がっていたが後半で上がり始めた局面、最終期になって株価が下がり始めた局面など様々です。

 

つまり、政策金利を見ても、株価の動向がわかるわけではありません。相関がないのです。

 

株価は景気を敏感に感じて動くものなので、FEDの金利引き下げ(引き上げ)は景気にはほとんど影響しないということになります。

 

経済を動かしているのは、大多数の庶民であり、働く人たちです。短期金利をちょっと動かしただけで何かが変わるというわけではないことは、簡単にわかるでしょう。

 

マスコミの発言に騙されないようにしましょう。

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第168回 石破内閣は短命に終わる

2024年10月5日

米国に嫌われる石破の本音

政治家の建前と本音は全く別物です。

石破新首相が日米地位協定の改定に言及しました。内閣成立当日に言及するのですから、重要方針です。

 

改定の意図について次のように述べています。「陸上自衛隊や航空自衛隊は、日本の国土が狭いせいで、十分な訓練ができる環境が整っていない。アメリカ国内に訓練場を作ることが、軍事的な効率性が上がるものと考えている」

 

これは建前の世界です。本音は全く違うところにあります。日米地位協定は、日本と米国の不平等条約の最たるものです。日本国憲法に優先される規定です。

 

日本の空は米国のもの

具体的な例を挙げましょう。図表1は、「横田空域」と言われるものです。横田空域は羽田空港の西側から富山県あたりにまで広がっており、高さも2400メートルから7000メートルまで、場所によっていろいろです。この領域には日本の飛行機が入れず、アメリカ軍のみが入れる領域になっています。

 

そのため、羽田を発着するJALやANAなどの国内外の民間機はすべて図表1に記したようなルートを飛ぶようになっています。制限区域がなければ、まっすぐ飛べるはずで、不自然なルートが形成されていることがわかります。自衛隊機も米軍の許可なしでは飛べません。日本人が自国の空域を管理できないなんて変ではないでしょうか?(なお、ドローンは低空を飛行するので問題はありません。)

 

反対に、米軍はこの境界内ならどんな軍事演習をすることが可能です。日本政府からの許可も必要ありません。この空域内でオスプレイが墜落して死者が出ても、事故の原因が日本側に公表されることはありませんし、正当な補償がなされることもありません。


 

さらに、図表2です。岩国にも「岩国空域」と呼ばれる空域があります。岩国空域もまた、山口県、愛媛県、広島県、島根県の4県にまたがり、日本海上空から四国上空までを覆う、巨大な米軍管理空域です。

 

この空域内の松山空港に発着する飛行機は、米軍・岩国基地の管制官の指示どおり飛ばなければなりませんし、空域のすぐ西側にある大分空港へ向かう民間機も、高度制限など大きな制約を受けています。

 

石破の狙いは日本の独立

日米地位協定の改定とは、日本の米国に対する従属を減らすこと(またはなくすこと)を意味します。敗戦直後に制定された不平等条約を改定して、日本を本当の意味での独立国にすることが石破の狙いです。

 

政治の世界では、経済問題は二の次であり、最重要課題は国家間の力関係の確立(つまり、軍事力)にあります。軍事オタクと言われている石破氏がこの問題に取り組もうとするのは当然でしょう。

 

石破首相はこうした本音を隠しながら、表面的には問題の少ない事項を挙げて、改定を狙っているわけです。しかし、「政治家の建前と本音が全く違う」ということは、政治の間では当たり前のようにわかっていることです。したがって、石破新首相がこの問題に触れ始めた以上、米国は石破首相を非常に警戒し始めるでしょう。米国は今ある既得権益を失いたくないのです。

 

米国は今後石破内閣が短命に終わるようなマスコミ・世論誘導、スキャンダルの創出を行っていくでしょう。日本の首相は米国の庇護があってこそ存在しています。米国に嫌われた鳩山内閣(在任9か月)のように、首相の在任期間が短くなってしまうでしょう。

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第百六十九回 日本の弱みを認識せよ 

​2024年10月14日

工業製品はもはや強くない

今回は、日本人の強み・弱みというテーマでお話しします。(定例発信では弱みについて語ります。ウイズでは強みについて語ります。)日本の輸出産業といえば、従来は電気・機械が中心でしたが、その傾向は既に崩れつつあります。強みとは言えない状態になってきたでしょう。

 

一例を挙げると、家電業界は日本を代表する輸出産業でした。日立、東芝、三洋、シャープ、松下など群雄割拠の状態でしたが、どの会社にも勢いがありました。今では海外勢に押され、また買収され、実質的な日本企業は、松下(現パナソニック)だけになってしまいました。

 

携帯電話やPCの世界に占める日本勢の割合は低いし、EV自動車でも大きく出遅れました。ドローンの生産については、日本勢はほとんどシェアがない状態です。

 

新幹線のスピードについても、日本の最高時速320キロ(東北新幹線)です。

東海道新幹線では285キロです。これに対して、中国は350キロです。

 

日本の工業製品が海外勢に比べて出遅れている理由は何か?それは、製品を企画し、デザインする力が海外勢は強いからです。

 

工業製品は仕様が決まればあとは製造する工程になります。製造は機械が行います。機械の性能はかなり上がっており、各国とも大きな差はなくなりました。ここが日本勢の勢いが陰ってきた理由です。

 

企画やデザインは一部のエリート社員が担います。ここに優秀な人材を引き抜くことができれば、世界で大きなシェアを獲得できます。エリート社員には法外な給与を支払います。日本円で億単位は当たり前でしょう。海外の企業では、そうしたことが当然のように行われています。

 

これに対して、日本人は「チームワークで働く、上司の指示を仰ぐ」という意識が強いです。給与も一部の社員が突出することを好みません。海外に比べてCEOの給与が低いこともそうした理由からです。

 

こうした風土のもとでは創造性に長けた人材を抱えにくく、活かしきることができません。また、そのような人材が育ちにくいです。

ウイズでは日本人の強みについて語っています。

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第百七十回 勝てないチャートの実例

​2024年10月14日

業績がよくても買えない

「業績が良くても、買ってはならない株」というものはたくさんあります。今日はその一例をご紹介します。

 

10月8日、3086 Jフロントリテイリングが、半期の決算発表を行いました。とても良い数字です。直近の四半期は同期比で経常利益155%の増加となりました。図表1にあるように、過去4四半期とも30%を超える増益です。

 

この理由は2つです。

➊日経平均が上昇するにつれて、資産家がより豊かになり、百貨店をさらによく利用するようになっている。

❷円安の進行により、インバウンド需要が高まっている。

 

申し分ない業績なのですが、この会社の株を買うことはできません。その理由は何なのか。それは図表2のチャートに表れています。

 

一言で言うと、このチャートには魅力がありません。図表2には、赤線で、J.フロントリテイリングの株価を示し、青線で日経平均の株価を示しました。図表の左右半分ずつで大きく動きが違うことがわかります。

 

グラフの左半分は、J.フロントリテイリングが日経平均と似たように動いていることがわかります。これに対して、右半分になるとJ.フロントリテイリングの株価は、日経平均に劣後していることがわかります。特に問題なのは、2024年の7月以降の動きです。日経平均が大幅な下落をした際、この会社の株価も大きく下落しました。

 

そのあとに注目してください。日経平均が大きく戻ったにもかかわらず、当社の株価は、低迷したままだということです。これが何を意味するのか。

 

投資家は当社の大幅好業績を評価していないということです。その理由は何なのか。大幅な増益が永続に続かないであろうということに、投資家が気づき始めたのでしょう。

 

また、「景気がいいから業績がいい」というのであれば、宝石業界、旅行業界といったように他にも贅沢消費の景気敏感株はあります。「どうしてもこの会社でないといけない」という理由はありません。投資家はJ.フロントリテイリングへの投資から降り始めていると言っていいでしょう。

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第百七十一回 米国政府の裏帳簿

2024年10月26日

今日は「米国政府には裏帳簿が存在するのではないか」という話をします。

 

政府は企業(特に上場企業)に対して明朗会計をするように指導しています。損益計算書、キャッシュフロー、貸借対照表といった様々な資料を取引所に開示するように取り決めています。

 

では、自分たちが率先して同じことを実行しているかというと、それは違います。政府が国民に開示しているのは、歳出・歳入の表くらいです。これは企業の損益計算書に近いです。政府には損益がないので歳入(売上に近い)と歳出(コストに近い)を公開しているわけです。

 

キャッシュフローや貸借対照表に近いものは公開していません。つまり、秘密主義なのです。

 

一般に、提出する書類が多いほど裏帳簿は作りにくくなります。各種の会計表の整合性が取れなくなってしまう恐れがあるからです。これに対して、政府は歳入と歳出のみを開示しているので、裏帳簿の作成は比較的容易でしょう。

 

裏帳簿が存在していそうな形跡が、米国政府発表資料から読み取れます。それが図表1です。これは毎年の財政赤字と債券発行額(純増額)を示したものです。例えば、この図表の最終年度にあたる2023年度(9月末決算)においては、米国債は2.6兆ドル増加しました。(表にはないですが、前年度の31.4兆ドルから34.0兆ドルに増加しました。差額が2.6兆ドルです。)

 

一方、2023年度の財政赤字は1.7兆ドでした。両者の差は差し引き0.9兆ドルとなります。

 

理論的には、財政赤字は債券の発行で補うことになります。ですから、この二つの金額は毎年大体同じになることが予想されます。にもかかわらず、0.9兆ドルの差が出ています。1ドルを150円換算すると、135兆円の大きさです。日本の国家予算より大きな金額差が出ているのは何故なのか?

 

こうした差額が図表上に現れているのは2023年だけではありません。長年にわたって、青い棒線で示した債券発行額が赤い棒線で示した財政赤字額より多いです。

 

図表2はこの差額をよりわかりやすくするために、債券発行額から財政赤字額を引いた金額を示したものです。これを見れば明らかなように、コロナ後の2021年を除いては、プラスの年度が圧倒的に多く、金額の大きさは近年ほど大きくなっているようです。

 

ここまで大きな差額が毎年のように続くのは何故か。歳出のある部分を隠して財政赤字額を過少に公表していると言えないでしょうか?

 

個人には、人には言えないような支出があることがあります。同じように政府にもあるのでしょう。米国の場合ならば、海外の政府や地域を不安定な状態にするために多額の費用を支出しているかもしれません。

 

たとえば、イスラエルとパレスチナの戦争においても、パレスチナ側に資金援助を行っている可能性は大いにあります。それでないと、資金難にあえぐパレスチナが早めに白旗を上げ、戦争終結となってしまうからです。

 

また、隠された歳出の中には、政治家やその利益団体に対する寄付などが含まれているのかもしれません。

 

内緒の歳出は国を亡ぼすことがあります。2009年のギリシャがその例です。国家の財政赤字額が従来の公表額4%は嘘で、本当は13%もあったことを白状してしまいました。株価が大暴落し金利は30%にまで上昇しました。

 

米国にもそうしたリスクがあることは頭にいれておく必要があります。

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第百七十二回 非公認への2000万円、誰が暴露したのか

2024年11月2日

日本の政治を裏で動かす米国

10月27日に行なわれた衆議院議員選挙において、自民・公明の与党が大幅に議席を減らし、過半数を維持できなくなりました。

政治の大きな流れは、偶然で起きるものではありません。シナリオに従って、その通り動いていくのです。

政治は裏で国を動かしている人間たちによって操(あやつ)られています。その中心にあるのは米国です。日本は敗戦国であり、国家の重要な意思決定は米国の同意なしには決めることができません。総理指名は最重要事項のひとつです。

それを垣間見ることのできる証拠を示しましょう。

➊今回の情勢が自民党に対して、大きく不利に傾いたのは、非公認候補に対する2000万円の活動費支給が明らかになった時点でした。これは赤旗が報じたことで、全国的なニュースとなりました。しかし、そもそも、赤旗が投票日直前になってどうしてこの事実を知ることになったのか。自民党の会計に詳しい者が内部情報を渡したとしか考えられません。

ここで、政治の世界の常識について述べておきます。「殺し合いが珍しくない」ということです。自分が反対派に回ってしまった場合、安倍総理のような大物でも殺されてしまいます。

ましてや、情報漏洩者は殺されるのが必至です。やくざの世界をイメージすればわかりやすいです。政治ではやくざのように銃で撃たれることは少ないですが、自殺に見せかけた首つり・毒殺、または駅のホームからの転落事故といった方法で殺されます。本人が殺されない場合でも、秘書や部下が殺され、本人に対して口封じが行われることも多いです。

ぼくがここで言いたいのは、「政治の世界ではやくざと同様、組織への忠誠が絶対だ」ということです。その原則を崩した者は命の保証がありません。ここでわかることは、「情報漏洩は国を裏で動かす人間たちの命令によって行われた」ということです。

❷選挙戦終盤になって、「高市早苗氏の人気が急浮上している」という報道が目立つようになりました。これは不自然だと思いませんか?

高市氏は多数の裏金議員の選挙区を回り、応援演説を行いました。裏金議員は私たち庶民からすれば、「けしからん」存在であり、それを応援するのは「けしからん」やつのはずです。どちらかといえば、高市氏は世間から批判されても仕方がないでしょう。さらにおかしいのは、過去の選挙において、選挙戦の途中からある特定の有力議員の人気が沸き上がってきたという事実がないということです。

高市人気はマスコミによってつくられたものだからです。上からの命令で、そのようにマスコミが描き始めたのです。

日本の政治を裏で動かしている勢力は米国です。少し前の「今日の気づき」で述べたように、石破首相の持論である日米地位協定の改定は米国にとっては許せないものでした。

地位協定は日本国憲法の上に位置し、日米の上下関係を規定しています。石破首相が「日米を対等な関係に持っていきたい」という思いは、政治家として立派な姿勢だとは思います。しかし、それは現実政治の中では受け入れられるものではありません。

米国の意志は石破退陣です。次の首班は高市の方向で動いていくでしょう。政治はこのようにシナリオによって進んでいくものです。

第百七十三回 トランプ勝利の真相

​2024年11月10日

民衆の力が不正を破った

米国大統領選挙において、ドナルド・トランプ候補が次の大統領となることが決定しました。これは米国民にとって、また、日本をはじめとする世界の人々にとって素晴らしいことです。今日はこのことについて話をしましょう。

皆さんは大統領選挙を巡る米国の報道がおかしいと思いませんか?これまでの報道によれば、トランプ対ハリスの人気はほぼ五分五分であり、開票には数日かかる可能性があると言われてきました。

ところが、実際のところは、投票が終わって数時間後には、トランプ勝利が見えてきました。ところが、トランプの得票が全体の52%、ハリスが48%であり、大きな差となっています。

報道機関の予測と現実との間にどうしてこのような大きなギャップが生じたのか。それは、報道機関の予測そのものが、嘘偽りだったからです。

論理的に考えれば、ハリスが勝つことはあり得なかったわけです。当初は、バイデン(現職大統領)が立候補することになっていました。この現職は、以前から認知症が進んでいていました。それは、政界内では、誰もが知る事実だったわけです。

にもかかわらず、現職大統領を引退させずに立候補させたのはどうしてだったのか。「トランプに勝てる最善の候補者だ」と民主党側が考えたからです。ところが、民主党は途中で候補者をすり替えました。それは、「現職大統領ではどうも勝てない。だとしたら、別の候補を出すしかない」と考えを変えたからでした。

一言で言うならば、「最善が駄目なので、次善の手を尽くす」ということになります。しかし、誰が考えても考えてわかるのは、最善が駄目な場合は、次善はもっと駄目なはずです。ということで、ハリスの敗北は最初からわかっていたことでした。

そこで、2度にわたってトランプの暗殺を実行しました。暗殺計画にはシークレトサービスの一部が加わっていました。そうでなければ、至近距離に銃を持ち込むことは不可能です。そうした大がかりな暗殺計画も見事に失敗しました。

残る手段は不正選挙の挙行です。まず、ハリス候補の人気が非常に高いことをマスメディアで宣伝して、「次の大統領はハリスだ」という風潮を作り出そうとしました。実際に、4年前の選挙でバイデン候補を勝たせた時のように、数千万秒の投票の不正操作を行いました。

それでも、今回はトランプ勝利となってしまったのです。不正ではごまかし切れないほどの票差が出てしまったからです。

実際の人気は7対3ぐらいで、トランプが圧倒的に優勢だったのです。皆さんがアメリカ国民だったらどのように考えるでしょうか?「自分の生活を何とか良くしたい。そのためには、どちらの人が大統領になったら良いのか。企業経営に長けた指導力のある人がいいのか。それとも、そうした経験のない法曹界出身の官僚がいいのか」となった場合、誰でも選択肢は明らかでしょう。

暗殺や選挙不正を乗り越えることができたのは、民衆の支持が圧倒的に大きかったことに尽きます。だから、前回の選挙で行った郵便投票の不正を行わずに、開票集計を早めに終了させたのです。

ぼくが冒頭で、「トランプ勝利は素晴らしいことだ」と言ったのはこの点です。不正がはびこる世の中がいいわけがありません。日本でも不正選挙が減って来ることになるでしょう。

さて、最後に話を戻します。民主党側が不正や暗殺を計画してまで権力にしがみつこうとしてきた理由は何なのか?このあたりについてはまだ解説していませんでした。それについては後日お話ししましょう。

第百二十四回 APEC直前に行なわれた米中会談では何が話し合われたのでしょうか?

2023年11月18日

質問:
米国のバイデン大統領と中国の 習近平国家主席がサンフランシスコで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて会談しました。何が話し合われたのでしょうか?今後の経済を考えるうえで重要な話し合いだったのでしょうか?


回答:
米国が中国に対して、BRICs新通貨の発行を遅らせるように要請したというのが会談の中心議題であったと思います。なお、テレビ報道で、会談の成果として話されているような半導体や軍同士の意思疎通は重要性の低い議題だったでしょう。

解説:
テレビでは全く報道されていないようなことが、どうして中心テーマであったのかがわかるのか。それは首脳会談の準備段階の動きに現れているからです。

11月の9日~10日にかけて、イエレン財務長官と何立峰中国副首相が会談を行いました。この会談は、米中首脳会議の前哨戦として行われたものです。イエレンは財務長官ですから、半導体問題や、軍事的な問題は担当外です。財務長官の中心的な課題は、ドルをいかに安定させ続けるかということです。

従って、今回も中国に対して、「今後も米国債を買ってほしい」、または「米国債を売らないで欲しい」と要請したものと思います。

今回はこれに加えて、さらに重要な議題が加わりました。それは中国などのBRICsが創立するという新通貨です。新通貨ができれば、相対的に米国のドル通貨の国際的価値が下がります。世界の大半の資産はドルで構成されていますが、新通貨ができると、多くの投資家たちが、ドルを売って、新しい通貨を買おうという動きに出るはずです。その場合、ドルの価値が大幅に下がるリスクが生じます。イエレンが一番避けたいのは、ドルの雪崩現象です。

それでは、米国の要請(新通貨の創設を遅らせること)を中国側が承諾したのか?おそらく、拒否したのでしょう。

その理由は中国側の担当者が何立峰だったという事実からわかります。何立峰は国家副主席ですが、24名いる中央政治局委員の一人にすぎず、序列は7名いる常務委員の下になります。中国が大きな決断を行う場合は、権限のある常務委員が登場することになります。前哨戦を中央政治局委員に任せたということは、「それ以上の話は自分には権限がありませんから、バイデン大統領が直接習近平国家主席に談判してください」と言って、事実上はねのけたのだと考えられるでしょう。

第百十六回 
株価が暴落を始めたら、
銀行株を空売りするのはどうですか? 

​2023年10月4日

質問:
林さんは、数か月から半年以内にNY株、日本株が天井を打つと言っています。その時点で銀行株を空売りするのはどうでしょうか?
林さんは銀行が最終的には倒産状態になると言っているので、銀行株は大幅安が期待でき、空売りの利幅が大きく取れそうです。 


回答:
銀行株の空売りは当初は控えた方がいいでしょう。確かに、銀行株は株価指数暴落時の最高の空売り銘柄です。ただし、問題は、私たちが株価指数の天井の日を正確に読み取れるとは限らないということです。仮に1か月の誤差が出た場合、その間は株価指数が上昇することになり、銀行株も勢いよく上がります。大きな含み損が生じてしまいます。

解説
安全第一が空売りの鉄則

空売りに際して最も大事なことは、できるだけ安全に売ることです。建設現場に貼ってあるスローガンのように、「安全第一」です。利幅が大きく取れそうな銘柄を売ることではありません。

図1にはリーマンショック前の米国株の天井の様子を示しました。2つの天井が示されています。S&P500は2007年7月に天井を打ったあと、いったん下落しますが、その後復活します。07年に10月に再度天井を打ち、そこから長期下落相場に入りました。このようなケースがこれから起きる天井でも出現する可能性があります。

場合によっては、天井が3回になるケースがあります。3回になるケースは三尊天井という名前がついているほど、よくあるパターンです。(本尊釈迦如来の両脇を菩薩が占める釈迦三尊という仏像の安置形式から取った名前です。)

私たちは最初に現れた天井直後で売りがちです。複数回天井が出現する場合、株価指数が上がってしまい、空売り銘柄に含み損が生じてしまいます。空売りは信用取引ですから、現物買いの場合と違い、損失が大きくなってしまうことがあります。

損が拡大し、「もう耐えられない」と思って手仕舞ったら、そこが2回目の天井だったということも少なからずあります。


空売りは上昇局面での低パフォーマンス銘柄に限る

「天井が複数回来るから注意しなさい、という話ならば、銀行株に限らずすべての銘柄に関係があるのではないか。何故銀行株に特に注意しなくてはならないのか」という疑問が聞こえてきそうです。

その理由は、銀行株が株価指数の上昇局面で大きく上がるからです。図2に三井住友ファイナンシャルグループ(8316)と日経225の株価を示しました。これを見ると、同行の株価が大きく上がっているのは、2003年5月~06年1月までと最近(2022年10月以降現在まで)です。

自分が株価指数の天井だと思って空売りを始め、不幸にも株価指数がさらに上がり始めてしまった場合、どのような事態が起きるでしょうか?株価指数が上がる局面では銀行株はそれ以上に強く上がるので、含み損は大幅に増えてしまうでしょう。

つまり、株価指数の天井圏(だと自分が思った時期)において銀行株を空売りするのは「安全第一」の原則に反することになります。

ではどのような株を売るのがいいか?
銀行株とは逆に、株価パフォーマンスが芳しくない銘柄です。株価指数が上がっても、そうした銘柄は大きく上がることがないからです。

では銀行株は空売りしないのか。
それも違います。銀行株は株価指数が下落局面に入ると、下げ幅が急激に大きくなります。その時点まで待つのがいいでしょう。「そんなことをしたら、儲けが小さくなってしまう」と考える人はいませんか?先にも述べたように、空売りは安全第一で取り組んでください。

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今週のツイッターのお知らせ
報道の真実を見抜く! G20の真実
(5) さくらインベスト on X: "【ブックマーク必須】 🎦先進国と新興国の序列に変化? 取引前に知っておきたい『G20の真実』 伝説のファンマネ「林則行」 今月開催されたG20の裏側を徹底解説🥊 インドをはじめ、新興国動向をみる上で 欠かせないお話です🤔 🔽動画はコチラ https://t.co/TYejXfMmzs https://t.co/REEaZeAKcZ" / X (twitter.com)

講演のお知らせ
関西地区にお住まいの方でまだぼくの顔を直接見たことのない方は是非おいでください。講演のあとに質問会を実施します。至近距離でぼくと対話してください。
直接会って話すことはとても極めて大切です。
ぼくも楽しみにお待ちしています。

実施要項
10月28日(土)10時から1時間
『株価の上昇はあと数か月 暴落のサインを読み取れ』
投資戦略フェアEXPO2023大阪
パンローリング主催
場所:マイドームおおさか
第21回ご愛顧感謝祭 投資戦略フェア EXPO2023 in 大阪 (panrolling.com)

東京地区の講演会:11月23日(祝)
 

第百十七回 
日本で富裕税が導入されるリスクはありますか? 

​2023年10月6日t

質問

富裕税(銀行預金額のうち一定割合を政府が取り上げる資産税)が導入されるリスクはありますか?

 

 

回答

ぼくは導入されると思います。その実施は株価が大きく下がった時点、つまり、金融危機の入り口に立った時点でしょう。

 

富裕税の目的は預金のペイオフ対策

 

解説

富裕税は金融危機が佳境に入る直前に実施されるでしょう。

 

株価がどんどん下がると、景気が急速に悪化します。倒産企業が増え、銀行から借りたお金が返せなくなります。破たん企業が増えれば、最終的には銀行自体が傾いてしまいます。

 

銀行が破たんすれば、私たちの預金が無事では済まなくなります。そんな時に、預金を守ってくれるのがペイオフ制度です。

 

この制度では、普通・定期預金が1000万円未満の口座ならば全額が保護されます。また、利息のつかない決済性預金口座(法人の場合は当座預金)は全額保護の対象です。

 

ただし、ここで大きな問題が生じてきます。

ペイオフ制度の中核を担うのは預金保険機構です。この機構にあるペイオフのための資金は現時点では5.2兆円です。預金保険機構が保護しなくてはならない預金総額が1303兆円(2022年度)ですから、総額の0.4%しか資金がありません。

 

つまり、預金保険機構が制度設計通りに機能するには、預金総額ベースで考えた場合、日本の銀行のうち0.4%しか破たんしないという前提になっているということです。

 

誰が考えても、この資金を増やす必要があるのがわかります。

そのための一番楽な方法は国債を発行することですが、それは難しいでしょう。なぜかというと、金融恐慌が近い状況下では金利水準が高くなっている(=債券が大きく売られている)可能性が高いからです。国債を追加で発行すれば金利がさらに高くなってしまいます。それでは国家財政の破たんにつながってしまいます。

 

 

200兆円規模の富裕税になる

 

そこで、政府が手をつけるのが富裕税ではないかとぼくは見ています。

具体的にはどの程度の規模になるのか?

 

それは預金保険機構の資金をどこまで増やそうとするかによって異なります。さらに言えば、日本の銀行がどの程度破たんすると政府が考えるかによって異なります。

 

この金額の見当をつけるのが難しいのですが、ぼくは200兆円程度の増税を見込むのではないかと危惧しています。

 

理由はこうです。

1997~98年に起きた金融危機を参考にします。銀行の不良債権の総額は100兆円だとされています。1997年当時のマネー(M2)が570兆円程度でしたから、100兆円はマネー総額の17.5%になります。

 

現在のマネーは1238兆円(2023年8月)あります。これに17.5%を掛けると、217兆円となります。これが想定される不良債権の総額です。ペイオフで守らなくてはならない預金総額が1303兆円ですから、217兆円はその17%弱になります。

 

この金額がペイオフ制度を守るために徴収される税金(概算)ではないかと思います。この税金は少額の預金者(例:300万円未満)には課税しないでしょうが、それ以上の人たちには預金総額の大きさに応じて、累進的に課税していくものと思います。

 

ペイオフ(1000万円未満は全額保護)とは言うものの、最初に預金を奪っていくので、本当の意味でのペイオフは大不況の前には働かないということになります。

 

217兆円は過去に例を見ない超大型の税金です。私たちが払った税金(2022年度)は総額71兆円でした。(内訳:消費税23兆円、所得税22兆円、法人税15兆円など)これらに比べて将来実施される富裕税は71兆円の3倍規模になるであると考えます。

 

富裕税を導入している国は多い

 

「富裕税は憲法違反だ。資産の収奪は許されない」と思う方がいるでしょう。その通りだとは思うのですが、政府は国家体制を守るためには何でもするものです。

 

富裕税の歴史は古く1892年に世界で初めてオランダで導入され、現在はノルウェーやフランス、スペイン、スイス、コロンビアなどにおいても課されています。

 

アルゼンチンは2020年12月、コロナショックの経済復興策として1回限りの徴収を実施しました。対象は2億ペソス(約2億5,4000万円)以上の資産に対し、税率は国内資産が2%~3.5%、国外資産が3%~5.25%でした。

 

日本で行なわれるのはアルゼンチンのように1回限りの富裕税でしょう。ただし、アルゼンチンとは規模が全く違った大型のものになるでしょう。

 

 

:::::::::::::::::::::::::::::::

この話にはさらに続きがあります。

政府が国債のデフォルトを念頭に起きながら、富裕税を実施するとしたら、規がさらに大きくなるといことです。その場合は、1300兆円規模の増税になるわけです。この場合は、庶民の預金を取り上げておき、国債をデフォルトさせ、ペイオフで1000万円未満の預金を守るという流れになります。簡単に言えば、高額預金者の預金を低額預金者に振り分けるという位置づけになるものです。

第百十八回 
金価格が下がると、心配で眠れません。

2023年10月13日

質問
最近ゴールド価格が下がっています。ほぼ全財産をゴールドにしているので、心配です。眠れないほどです。どうしたらいいでしょうか?

回答
投資が初めての方の中には眠れなくなる人が出てきます。珍しい現象ではありません。ぼくがファンドマネージャになった当初も、責任の重圧でそうなりました。皆さんもそのうちに、慣れてきます。

だんだんと慣れます。ただし、値動きはもっと激しくなってきます。

解説:
投資は銀行預金とは違い、日々値段が動くものです。上がる日もあれば、下がる日もあります。下がると心配になってきます。「せっかく積み上げた利益が減ってしまう」とか「コストを割ったらどうしよう」とか思い始めます。

心配のあまり、手持ちのゴールドを売ってしまう人も出てきます。そうすればもう心配からは解放されますが、そのあたりが価格の安値になって上がり始めることは珍しくありません。

ぼくは多くの人からメールをいただいているので、心配症の人からメールが増え出す時期があります。そんな時は、そろそろ相場が反転して、金価格が上がり出すだろうと思うわけです。

投資は利益を求めるものです。この点では皆さんが従事している職業と同じです。職業においては、最初のうちは先輩たちと同様のパフォーマンスを上げることができずに、悔しい思いをしたり、眠れぬ夜を過ごしたりした人も多いことでしょう。それと似たようなものだと思って下さい。

ただし、職業の場合と一つ大きく違うところがあります。
それは上昇相場が富士山に似た形状になるということです。もう少し具体的に言うと、1,2,3合目あたりは傾斜が緩やかで、ゆっくり上ります。これに対して、5合目以降は傾斜が急で坂道が険しくなります。金価格も同様で、上昇が進むにつれて、値動きがはすます激しくなっていくと予想されます。図1には金価格(1979~1984:赤線)を記しました。青線は一日あたりの値動き(30日平均)です。前日から当日の上昇幅(下落幅)を値段で割った数字です。

注目は1979~80の上昇期です。この時期は金価格が短期間に最も大きく値上がりした時期です。青線も上がってきているのがわかります。最高では5%を超えています。

1日5%とは10,000円の金価格が1日あたり500円動くことを意味します。これは30日平均なので、動きの大きい日はもっと大きな幅で動いたはずです。

今後、金価格が本格的な上昇期に入るでしょう。それに伴い、価格の動きは今とは比べ物にならないほど大きくなります。ぼくは、この1979~80年頃の値幅に似てくると思っています。ガンガンと上がる時期が来るという意味です。

現時点で、「眠れないほど怖い」と思っている方はこのことを心得ておいてください。現状の値動きはまだ予行練習程度の緩慢なものに過ぎません。上昇相場が始まれば日々ジェットコースターに乗っている気分になってしまうでしょう。


これから金を買い増す方へのアドバイス

今回の質問者の方は既に大きな金ポジションを築かれていらっしゃいますが、中には、「これから金を買おう」、「買い増そう」と思っている方も多いことと思います。

その方には少しずつ買っていくことを薦めます。
その理由は高値で買ってしまうことを避けるためです。金価格が上がってくると、「さあ、早く買わないからここまで上がっちゃった。急いで買おう」と思うものです。実際に買ってみたら、その日から価格が下げ始めた、ということはよくあります。その場合、心配は買った翌日から始まってしまいます。

これに対して、少しずつ買ってく戦法ならば、買値が高い時もあれば低い時もあるでしょうが、平均すれば、市場価格に近いものになるはずです。翌日から心配が始まることはまずありません。

図2は少しずつ長期で買っていくメリットを示したものです。
ある株式があり、ある人は1年を通じて毎月買いました。つまり、価格が高かった1月の1万円の時も。4月の底値の6,500円の時も、12月の11,000円の時も平等に10万円ずつ投資しました。総額120万円の投資です。

これに対して、別の人はタイミングを狙って5月から投資を始めました。図中にある安い時期(5月、価格7,063円)から始めています。5月から12月まで8か月間15万円ずつ投資していきました。総額120万円です。

さて、早く投資を始めた人と5月に始めた人ではどちらの資産が大きくなっていたか?

直観的に、「5月から始めた人ではないか?安い時期から始めたのだから」と思う人がいることと思います。答えは図3にあります。1年を通して投資した人の資産は約154万円になり、5月から投資した人の資産は149万円になりました。

このケースの場合、長期投資のメリットがよく現れています。「明日はもう少し安くなるかもしれない。でも、考え過ぎずに買っておこう」という発想によって、ぼく自身もだいぶ救われたことがあります。少しずつ、定期的に買っていくことをぜひご検討ください。

****
なお、金価格の値動きが激しくなってきたら(=本格的な価格上昇が始まったら)、ぼくは今まで以上に金価格に関する情報発信を行うようにします。皆様の不安軽減の一助になるように心がけます。

第百二十一回 米国のジャンク債
の状況はどのようになっていますか?

2023年11月3日

質問
現在のジャンク債の金利状況を教えてください。林さんはジャンク債金利が上がり始めると、株式市場が天井を打つと言っていました。天井を知らせるサインが出ているのでしょうか? 

回答
ジャンク債の金利は落ち着いています。そこから考えると米国株価の天井はまだ先です。ただし、気になるのは、米国国債の金利です。二等国イタリアと同じような高水準になっています。

金融市場から嫌われ始めた米国債


解説:
ジャンク債の金利(正確には、ジャンク債の金利-米国債10年ものの金利)は現在4.5%あたりです(図1)。2023年9月の時点では4.0%超でしたので、2か月の間に0.5%上がったことになります。それでも、水準はまだ低く、株価天井のサインとみなす必要はないでしょう。米国の国債金利が上がっている割には、ジャンク債金利の上昇幅が小さいです。そのため、その差額はあまり大きくなっていません。ジャンク債の金利マイナス米国債10年ものの金利が6%に至らなければ、安定状態にあると言えます。

ただ、心配なのは米国国債の金利です。イタリアの国債金利とほぼ同じです。

米国        4.8%
イタリア    4.9%

米国債は10月の時点で日中の取引時間において5%を超えたことがありました。

図2では1992年からの米国、イタリアの金利を示してします。イタリアは以前から債務が重く、2010年代の欧州危機においても、「ギリシャが破たんした。次はイタリアだ」と噂されたほどでした。その際にイタリア国債の金利は7%になりました。市場では「現状の先進国は国債金利が7%を超えたら、債務が返済出来なくなる」と言われています。イタリアはその攻防ラインの7%ギリギリで金利上昇が止まり、破たんを避けることができました。

図2を見ると、米国とイタリアの金利が同じ時期は長いのですが、金利上昇期は決まってイタリアのみが突出していました。ところが、今回は米国金利も同じように上がっています。投資家は米国の負債が大きいことを懸念しているようです。

米国国債の金利については警戒しておく必要があります。


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大阪講演の際、ぼくの新しいメールアドレスを御存知でない
方が何名かいらっしゃいました。
ご連絡を頂く際は、ファンクラブに掲載した
新メールアドレスまでお願いします。

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第百二十二回
ゴールドの直近の生産量を教えてください。

2023年11月11日

質問:
ゴールドの最新の生産量を教えて欲しいです。ゴールド価格が最近上昇基調にありますが、今後も続くのでしょうか? 


回答:
ゴールドの上昇基調は変わらないでしょう。ただし、生産量の観点からすると、上昇スピードは緩やかなものになるでしょう。

解説
最新の生産統計が11月1日に発表になりました。それによると、2023年第3四半期(6-9月期)は前年同期比2.3%の増加となりました。ゴールドは野菜と同じように生産量が増加に転じれば価格が下がるか横ばいになります。この傾向は図1をみれば、一目瞭然です。

ここで2023年第2四半期(4-6月)の生産額についても説明します。ぼくが8月の時点で皆さんに示した際は3.9%増と発表されていました。3.9%増は過去2年間の最大値です。これが第2四半期の発表とともに見直され、2.6%の増加に変更になっていました。

ゴールドの統計は最初の発表後数字が変わることが多いです。一言でいえば、ゴールドの統計はいい加減だとも言えます。統計を発表するワールド・ゴールド・カウンシルはそのような団体だと認識していいでしょう。

しかし、それ以外に四半期統計を発表している機関はないので、投資家の多くがこの統計を見ているのも仕方ないことです。

現在、ゴールドの価格が上昇基調にあるのか何故か?その理由は、ウイズ第9回(10月13日:今後の金価格の見通しを教えて下さい)に記した通りです。鉱山会社が売りポジションを絞り、機関投資家が空売りを始めています。これは、金価格の上昇の好条件が揃ったことを意味しています。これだけの条件が揃うことはめったにありません。

したがって、今後もゴールドは上昇を続けるものと思います。ただし、生産量の統計を見ると、ゴールド価格は横ばい圏に入ってもおかしくはありません。緩やかな上昇が続くものと思います。

第百二十三回 アンティークコインへの投資はどのように思いますか?

2023年11月18日

質問:
ゴールドはリーマンショックの際に3割下落しましたが、アンティークコインは下がらなかったと聞いています。価格の安定性という点で優れているのではないでしょうか?

回答:
アンティークコインはお薦めしません。理由は、よくわからない投資対象だからです。自分が投資するものには十分な知識が必要です。私たちのほとんどはアンティークコインについてよく知りません。


解説:
ゴールド価格がリーマンショック時に3割下がりました。

不況が訪れると、金需要の5割以上を占める宝飾需要が落ち込みます。それを懸念して金価格が下がることがあります。「下がることがあります」と書いたのは必ずしも下がるというわけではないからです。不況時に下がらなかった時期もありました。

これに対して、アンティークコインは下がらずに継続的に上昇してきたというのです。ぼくはネットに表示されたアンティークコインの長期価格のチャートを見ました。確かに、長期的に上昇傾向でした。しかし、このチャートが本物かどうかを検証することができません。金価格と違い、公の取引システムがないので、実際の価格がどう動いたのか、立証することができないからです。

しかも、そのチャートにはアンティークコインとだけ書かれていました。アンティークコインには数千以上の銘柄があります。そのどれかの価格チャートなのかもしれませんが、特定されていませんでした。

日本のわかりやすい例を挙げるなら、江戸時代の小判といっても製造年代によって、製造量が違うので、希少性が異なります。金貨の例ではないですが、天保銭(江戸から明治にかけての銅銭)はアンティークコインのひとつですが、現在でも1億枚から2億枚が存在していると言われ、アンティークコインとしての価値はゼロです。

大事なことは、アンティークコイン(金貨)の場合、現在の市場流通価格は金の含有量によって決まっていないということです。わかりやすい言い方をするなら、金の含有量だけで計算すると、流通価格の1000分の1未満になってしまうという代物です。

私たちが金投資をする最大の理由は自分の財産を守るためです。金融危機が起きた際に、思ってもみないようなことが起きるかもしれません。そうした際に頼れるのは家族とか親友、旧友といった人たちだけになるかもしれません。よく知っている人たちです。投資先についても全く同じで、自分がよく知っているものだけに限ることが大切です。

なお、今週はさくらインベストのツイッター最終回です。

第百二十五回
今は江戸時代末期のような衰退期ですか?

2023年12月2日

質問:
林さんはセミナーで、「古今東西の王朝の衰退の原因はすべて浪費にある」と言っています。それに似た現象が今起きているということでしょうか?江戸時代が滅んだように現代文明が滅ぶという意味ですか? 

要約:
米国を中心とした今の世界態勢は終焉となるでしょう。米国に追随してきた先進国も一緒に転落します。

解説:
図1には江戸時代の小判の金含有量を示しました。当初は15.5グラムあったのですが、17世紀末期には10グラム程度に落ち、さらに8グラム弱になってしまいました。

この衰退トレンドを改革したのが8代将軍徳川吉宗でした。享保の改革と呼ばれています。その後、金含有量は8.6グラムに落ち、19世紀には徐々に下がり、1859年には1.9グラムになってしまいました。江戸幕府崩壊は1868年ですから、9年後には江戸時代の終焉となってしまったわけです。

江戸時代には3大改革があったと習ってきました。
徳川吉宗     享保の改革
松平定信    寛政の改革
水野忠邦    天保の改革
でした。ところが、図1を見ると本物の改革は徳川吉宗だけだったようです。

図1のような通貨の側面からみた江戸時代の解説は中学や高校の教科書には載っていません。これを載せてしまうと、「今の世の中も同じような事態になっているのではないか」と推論する人たちが出てくるのが怖いからでしょう。

図2は米国のマネーの伸びをみたものです。GDPが増えればマネーが増えるのは自然なことなので、図2ではマネーをGDPで割った数値を示しています。これによると、1960年から2000年まではマネー(対GDP比)は下がり気味で推移していました。GDPの伸びの方がマネーの伸びより大きかったからです。いい時代でした。

その後波乱の時代が始まります。米国では2000年にITバブルがはじけ、その後株価が5割下がりました。2008年にはリーマンショックを発端に大不況が到来しました。2020年にはコロナショックで一時的に世界経済がストップしてしまいました。

これらからの脱却を図るため導入されたのがマネーの増刷です。お金を配って人々の財布を豊かにすれば、景気が戻るだろうという意図でした。

こうした政策は一時的には効果があります。しかし、図2を見ると、あまりにマネーの価値が薄まっていることに気づきます。もっとわかりやすくするために、図3を用意しました。これは図2を逆メモリにしたものです。グラフの形が図1の江戸時代の小判含有量と似ていないでしょうか?江戸末期を思い起こします。

あまりのやり過ぎに、「やばい」と思ったのでしょう。米国の通貨当局はマネーを絞り始めました。しかし、そんなことでは米国の株価の暴落はもう止められないでしょう。やり過ぎはリーマンショック脱却時に既に始まっており、今ではそのレベルのマネーのレベルに戻すことは不可能だからです。

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第百二十回 
米国の銀行破たんは落ち着いているのでしょうか? 

2023年10月28日

質問
米国の銀行破たんは落ち着いているのでしょうか?春に大型銀行が3行破たんした後、銀行破たんの報道は目にしません。改善傾向にあるのでしょうか?

回答
小型銀行における融資の焦げ付きが過去最高に達しています。破たんには至っていませんが、事態は極めて深刻です。

景気の悪化は庶民から始まる


解説:
私たち人間の体調が悪化する時、からだの弱い個所が最初にシグナルを出します。例えば、目が疲れやすい人は、疲れがたまり始まると、まず目に症状が出るといった感じです。

経済についても全く同じで、景気の悪化は、弱い立場に置かれている庶民が先に影響を受けます。特に、収入の高くない人たちが最初に被害を受けます。その人たちの動向を見れば、今後ミドルクラスや高額所得者に影響が広がり、経済全般を覆(おお)うようになっていくことが予想できるでしょう。

お金がないからと言って盗みをしてはいけないのですが、現実は違います。日本の刑法犯の件数は日経平均が7000円台にまで落ち込んだ2003年、10万人あたり年間2855件もありました。株価が3万円近くにまで達した2021年には4分の1以下の683件に落ち着いています。

図1は米国の自動車盗難件数です。盗難件数が2020年を底に増えて続けています。景気悪化の兆しです。

 

図2は米国の小型銀行における貸出の焦げ付き状況を記したものです。具体的には銀行資産上位101番以下の全銀行(どん尻は2124位)の平均値です。

順位101番以下の銀行をイメージする際、日本の消費者金融を頭に浮かべればいいでしょう。大手では貸してくれないので、金利の高めの弱小銀行からお金を借りるという構図です。

図2を見ると、現在の焦げ付き率はITバブル崩壊後やリーマンショック後の景気どん底期を抜いて、過去最高になっています。注目はこの数値が2015年を底に上がってきたことです。2021年にはコロナ給付金により、一時大きく減少しましたが、これは特殊要因です。それがなければ、焦げ付き率は2015年から絶え間なく上がってきたことでしょう。

つまり、2015年以降の景気回復期にも低階層の人たちには恩恵がなかたことになります。

この焦げ付きは徐々に大手銀行にも広がっていくものと思います。その過程で景気はピークをつけ、株価の暴落へと発展していくことになるでしょう。

第百十六回 
株価が暴落を始めたら、
銀行株を空売りするのはどうですか? 

​2023年10月4日

質問:
林さんは、数か月から半年以内にNY株、日本株が天井を打つと言っています。その時点で銀行株を空売りするのはどうでしょうか?
林さんは銀行が最終的には倒産状態になると言っているので、銀行株は大幅安が期待でき、空売りの利幅が大きく取れそうです。 


回答:
銀行株の空売りは当初は控えた方がいいでしょう。確かに、銀行株は株価指数暴落時の最高の空売り銘柄です。ただし、問題は、私たちが株価指数の天井の日を正確に読み取れるとは限らないということです。仮に1か月の誤差が出た場合、その間は株価指数が上昇することになり、銀行株も勢いよく上がります。大きな含み損が生じてしまいます。

解説
安全第一が空売りの鉄則

空売りに際して最も大事なことは、できるだけ安全に売ることです。建設現場に貼ってあるスローガンのように、「安全第一」です。利幅が大きく取れそうな銘柄を売ることではありません。

図1にはリーマンショック前の米国株の天井の様子を示しました。2つの天井が示されています。S&P500は2007年7月に天井を打ったあと、いったん下落しますが、その後復活します。07年に10月に再度天井を打ち、そこから長期下落相場に入りました。このようなケースがこれから起きる天井でも出現する可能性があります。

場合によっては、天井が3回になるケースがあります。3回になるケースは三尊天井という名前がついているほど、よくあるパターンです。(本尊釈迦如来の両脇を菩薩が占める釈迦三尊という仏像の安置形式から取った名前です。)

私たちは最初に現れた天井直後で売りがちです。複数回天井が出現する場合、株価指数が上がってしまい、空売り銘柄に含み損が生じてしまいます。空売りは信用取引ですから、現物買いの場合と違い、損失が大きくなってしまうことがあります。

損が拡大し、「もう耐えられない」と思って手仕舞ったら、そこが2回目の天井だったということも少なからずあります。


空売りは上昇局面での低パフォーマンス銘柄に限る

「天井が複数回来るから注意しなさい、という話ならば、銀行株に限らずすべての銘柄に関係があるのではないか。何故銀行株に特に注意しなくてはならないのか」という疑問が聞こえてきそうです。

その理由は、銀行株が株価指数の上昇局面で大きく上がるからです。図2に三井住友ファイナンシャルグループ(8316)と日経225の株価を示しました。これを見ると、同行の株価が大きく上がっているのは、2003年5月~06年1月までと最近(2022年10月以降現在まで)です。

自分が株価指数の天井だと思って空売りを始め、不幸にも株価指数がさらに上がり始めてしまった場合、どのような事態が起きるでしょうか?株価指数が上がる局面では銀行株はそれ以上に強く上がるので、含み損は大幅に増えてしまうでしょう。

つまり、株価指数の天井圏(だと自分が思った時期)において銀行株を空売りするのは「安全第一」の原則に反することになります。

ではどのような株を売るのがいいか?
銀行株とは逆に、株価パフォーマンスが芳しくない銘柄です。株価指数が上がっても、そうした銘柄は大きく上がることがないからです。

では銀行株は空売りしないのか。
それも違います。銀行株は株価指数が下落局面に入ると、下げ幅が急激に大きくなります。その時点まで待つのがいいでしょう。「そんなことをしたら、儲けが小さくなってしまう」と考える人はいませんか?先にも述べたように、空売りは安全第一で取り組んでください。

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今週のツイッターのお知らせ
報道の真実を見抜く! G20の真実
(5) さくらインベスト on X: "【ブックマーク必須】 🎦先進国と新興国の序列に変化? 取引前に知っておきたい『G20の真実』 伝説のファンマネ「林則行」 今月開催されたG20の裏側を徹底解説🥊 インドをはじめ、新興国動向をみる上で 欠かせないお話です🤔 🔽動画はコチラ https://t.co/TYejXfMmzs https://t.co/REEaZeAKcZ" / X (twitter.com)

講演のお知らせ
関西地区にお住まいの方でまだぼくの顔を直接見たことのない方は是非おいでください。講演のあとに質問会を実施します。至近距離でぼくと対話してください。
直接会って話すことはとても極めて大切です。
ぼくも楽しみにお待ちしています。

実施要項
10月28日(土)10時から1時間
『株価の上昇はあと数か月 暴落のサインを読み取れ』
投資戦略フェアEXPO2023大阪
パンローリング主催
場所:マイドームおおさか
第21回ご愛顧感謝祭 投資戦略フェア EXPO2023 in 大阪 (panrolling.com)

東京地区の講演会:11月23日(祝)
 

第百十七回 
日本で富裕税が導入されるリスクはありますか? 

​2023年10月6日t

質問

富裕税(銀行預金額のうち一定割合を政府が取り上げる資産税)が導入されるリスクはありますか?

 

 

回答

ぼくは導入されると思います。その実施は株価が大きく下がった時点、つまり、金融危機の入り口に立った時点でしょう。

 

富裕税の目的は預金のペイオフ対策

 

解説

富裕税は金融危機が佳境に入る直前に実施されるでしょう。

 

株価がどんどん下がると、景気が急速に悪化します。倒産企業が増え、銀行から借りたお金が返せなくなります。破たん企業が増えれば、最終的には銀行自体が傾いてしまいます。

 

銀行が破たんすれば、私たちの預金が無事では済まなくなります。そんな時に、預金を守ってくれるのがペイオフ制度です。

 

この制度では、普通・定期預金が1000万円未満の口座ならば全額が保護されます。また、利息のつかない決済性預金口座(法人の場合は当座預金)は全額保護の対象です。

 

ただし、ここで大きな問題が生じてきます。

ペイオフ制度の中核を担うのは預金保険機構です。この機構にあるペイオフのための資金は現時点では5.2兆円です。預金保険機構が保護しなくてはならない預金総額が1303兆円(2022年度)ですから、総額の0.4%しか資金がありません。

 

つまり、預金保険機構が制度設計通りに機能するには、預金総額ベースで考えた場合、日本の銀行のうち0.4%しか破たんしないという前提になっているということです。

 

誰が考えても、この資金を増やす必要があるのがわかります。

そのための一番楽な方法は国債を発行することですが、それは難しいでしょう。なぜかというと、金融恐慌が近い状況下では金利水準が高くなっている(=債券が大きく売られている)可能性が高いからです。国債を追加で発行すれば金利がさらに高くなってしまいます。それでは国家財政の破たんにつながってしまいます。

 

 

200兆円規模の富裕税になる

 

そこで、政府が手をつけるのが富裕税ではないかとぼくは見ています。

具体的にはどの程度の規模になるのか?

 

それは預金保険機構の資金をどこまで増やそうとするかによって異なります。さらに言えば、日本の銀行がどの程度破たんすると政府が考えるかによって異なります。

 

この金額の見当をつけるのが難しいのですが、ぼくは200兆円程度の増税を見込むのではないかと危惧しています。

 

理由はこうです。

1997~98年に起きた金融危機を参考にします。銀行の不良債権の総額は100兆円だとされています。1997年当時のマネー(M2)が570兆円程度でしたから、100兆円はマネー総額の17.5%になります。

 

現在のマネーは1238兆円(2023年8月)あります。これに17.5%を掛けると、217兆円となります。これが想定される不良債権の総額です。ペイオフで守らなくてはならない預金総額が1303兆円ですから、217兆円はその17%弱になります。

 

この金額がペイオフ制度を守るために徴収される税金(概算)ではないかと思います。この税金は少額の預金者(例:300万円未満)には課税しないでしょうが、それ以上の人たちには預金総額の大きさに応じて、累進的に課税していくものと思います。

 

ペイオフ(1000万円未満は全額保護)とは言うものの、最初に預金を奪っていくので、本当の意味でのペイオフは大不況の前には働かないということになります。

 

217兆円は過去に例を見ない超大型の税金です。私たちが払った税金(2022年度)は総額71兆円でした。(内訳:消費税23兆円、所得税22兆円、法人税15兆円など)これらに比べて将来実施される富裕税は71兆円の3倍規模になるであると考えます。

 

富裕税を導入している国は多い

 

「富裕税は憲法違反だ。資産の収奪は許されない」と思う方がいるでしょう。その通りだとは思うのですが、政府は国家体制を守るためには何でもするものです。

 

富裕税の歴史は古く1892年に世界で初めてオランダで導入され、現在はノルウェーやフランス、スペイン、スイス、コロンビアなどにおいても課されています。

 

アルゼンチンは2020年12月、コロナショックの経済復興策として1回限りの徴収を実施しました。対象は2億ペソス(約2億5,4000万円)以上の資産に対し、税率は国内資産が2%~3.5%、国外資産が3%~5.25%でした。

 

日本で行なわれるのはアルゼンチンのように1回限りの富裕税でしょう。ただし、アルゼンチンとは規模が全く違った大型のものになるでしょう。

 

 

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この話にはさらに続きがあります。

政府が国債のデフォルトを念頭に起きながら、富裕税を実施するとしたら、規がさらに大きくなるといことです。その場合は、1300兆円規模の増税になるわけです。この場合は、庶民の預金を取り上げておき、国債をデフォルトさせ、ペイオフで1000万円未満の預金を守るという流れになります。簡単に言えば、高額預金者の預金を低額預金者に振り分けるという位置づけになるものです。

第百十八回 
金価格が下がると、心配で眠れません。

2023年10月13日

質問
最近ゴールド価格が下がっています。ほぼ全財産をゴールドにしているので、心配です。眠れないほどです。どうしたらいいでしょうか?

回答
投資が初めての方の中には眠れなくなる人が出てきます。珍しい現象ではありません。ぼくがファンドマネージャになった当初も、責任の重圧でそうなりました。皆さんもそのうちに、慣れてきます。

だんだんと慣れます。ただし、値動きはもっと激しくなってきます。

解説:
投資は銀行預金とは違い、日々値段が動くものです。上がる日もあれば、下がる日もあります。下がると心配になってきます。「せっかく積み上げた利益が減ってしまう」とか「コストを割ったらどうしよう」とか思い始めます。

心配のあまり、手持ちのゴールドを売ってしまう人も出てきます。そうすればもう心配からは解放されますが、そのあたりが価格の安値になって上がり始めることは珍しくありません。

ぼくは多くの人からメールをいただいているので、心配症の人からメールが増え出す時期があります。そんな時は、そろそろ相場が反転して、金価格が上がり出すだろうと思うわけです。

投資は利益を求めるものです。この点では皆さんが従事している職業と同じです。職業においては、最初のうちは先輩たちと同様のパフォーマンスを上げることができずに、悔しい思いをしたり、眠れぬ夜を過ごしたりした人も多いことでしょう。それと似たようなものだと思って下さい。

ただし、職業の場合と一つ大きく違うところがあります。
それは上昇相場が富士山に似た形状になるということです。もう少し具体的に言うと、1,2,3合目あたりは傾斜が緩やかで、ゆっくり上ります。これに対して、5合目以降は傾斜が急で坂道が険しくなります。金価格も同様で、上昇が進むにつれて、値動きがはすます激しくなっていくと予想されます。図1には金価格(1979~1984:赤線)を記しました。青線は一日あたりの値動き(30日平均)です。前日から当日の上昇幅(下落幅)を値段で割った数字です。

注目は1979~80の上昇期です。この時期は金価格が短期間に最も大きく値上がりした時期です。青線も上がってきているのがわかります。最高では5%を超えています。

1日5%とは10,000円の金価格が1日あたり500円動くことを意味します。これは30日平均なので、動きの大きい日はもっと大きな幅で動いたはずです。

今後、金価格が本格的な上昇期に入るでしょう。それに伴い、価格の動きは今とは比べ物にならないほど大きくなります。ぼくは、この1979~80年頃の値幅に似てくると思っています。ガンガンと上がる時期が来るという意味です。

現時点で、「眠れないほど怖い」と思っている方はこのことを心得ておいてください。現状の値動きはまだ予行練習程度の緩慢なものに過ぎません。上昇相場が始まれば日々ジェットコースターに乗っている気分になってしまうでしょう。


これから金を買い増す方へのアドバイス

今回の質問者の方は既に大きな金ポジションを築かれていらっしゃいますが、中には、「これから金を買おう」、「買い増そう」と思っている方も多いことと思います。

その方には少しずつ買っていくことを薦めます。
その理由は高値で買ってしまうことを避けるためです。金価格が上がってくると、「さあ、早く買わないからここまで上がっちゃった。急いで買おう」と思うものです。実際に買ってみたら、その日から価格が下げ始めた、ということはよくあります。その場合、心配は買った翌日から始まってしまいます。

これに対して、少しずつ買ってく戦法ならば、買値が高い時もあれば低い時もあるでしょうが、平均すれば、市場価格に近いものになるはずです。翌日から心配が始まることはまずありません。

図2は少しずつ長期で買っていくメリットを示したものです。
ある株式があり、ある人は1年を通じて毎月買いました。つまり、価格が高かった1月の1万円の時も。4月の底値の6,500円の時も、12月の11,000円の時も平等に10万円ずつ投資しました。総額120万円の投資です。

これに対して、別の人はタイミングを狙って5月から投資を始めました。図中にある安い時期(5月、価格7,063円)から始めています。5月から12月まで8か月間15万円ずつ投資していきました。総額120万円です。

さて、早く投資を始めた人と5月に始めた人ではどちらの資産が大きくなっていたか?

直観的に、「5月から始めた人ではないか?安い時期から始めたのだから」と思う人がいることと思います。答えは図3にあります。1年を通して投資した人の資産は約154万円になり、5月から投資した人の資産は149万円になりました。

このケースの場合、長期投資のメリットがよく現れています。「明日はもう少し安くなるかもしれない。でも、考え過ぎずに買っておこう」という発想によって、ぼく自身もだいぶ救われたことがあります。少しずつ、定期的に買っていくことをぜひご検討ください。

****
なお、金価格の値動きが激しくなってきたら(=本格的な価格上昇が始まったら)、ぼくは今まで以上に金価格に関する情報発信を行うようにします。皆様の不安軽減の一助になるように心がけます。

第百十九回 金融危機が来たら、
年金はどの程度下がるのでしょうか? 

2023年10月21日

質問
林さんはご著書の中で、「年金は良くて3割減」と記されていました。もう少し具体的に教えてください。良くて3割と言っても、そこには5割も7割の可能性もあるわけです。少し前の定例発信では、金融危機の規模を200兆円超だと書かれていたので心配になりました。


回答
現在、ぼくは年金資産の6割減が起こりうると考えています。その場合は、年金支給額は6割減になってしまいます。

年金資産は株価に敏感
解説
世界最大の年金、GPIFを用いて年金の資産減について解説しましょう。GPIFとは年金積立金管理運用独立行政法人のことで、英語名を「Government Pension Investment Fund」と言うため、その頭文字を取って「GPIF」と呼ばれています。国民年金の管理・運用を行っています。

GPIFの2022年度末の運用資産額は200兆円で、世界第二位の年金がGPF-G(ノルウェー政府年金基金-グローバル)125兆円(2019年12月末)なので、ぶっちぎりのトップであることは明らかです。

日本の他の年金はGPIFを見習うようになっています。簡単に言えば、GPIFの資産構成が日本の年金全体の資産構成だと言えます。

図1には日経平均とGPIFの資産全体の利回りとを記しました。これを見ると、株式指数が上がる時は運用資産の利回りが上がり、株価指数が下がる時は運用資産の利回りが下がっています。

年金の資産は国内外の株式と債券で構成されていますが、利回りに大きく影響を与えるのは株式です。

年金の運用方針が大きく変更。海外資産の影響大

図1の中の2008年度(2008年3月末)に注目してください。リーマンショック暴落期の最終年度です。この年度の運用成績は次の通りです。

運用資産の利回り        ―8.0%
日経平均変化率        ―35%
米国株価変化率        ―40%

株価が下がった割には、GPIFの資産全体の下がり方が極端に小さいです。GPIFのファンドマネージャが運用上手だったのか?そうではありません。株式の組み入れ比率が小さかったからです。

具体的には国内株式が9.7%、外国株式が7.7%しか組み入れられていませんでした。両方で17%超しかないので、国内株式の資産運用パフォーマンスが日経平均と同じで、外国株式のパフォーマンスが米国株価指数と同じだったとしたら、資産全体へのインパクトは両者でー6.5%だったことになります。

ファンド全体の運用成績がー8.0%だったので、この仮定のもとでは、残りのー1.5%は債券での運用成績から来ていたことになります。

GPIFは2010年度以降、運用方針を大きく変更しています。図2にあるように、それまでは70%内外だった国内債券の比率を大きく下げ始め、2018年度にはほぼ各資産を25%均等になるようにしました。

仮に現在の資産構成のもと、リーマンショックが再来したら、ファンド全体のパフォーマンスは2割弱のマイナスになったでしょう。

一般に、海外資産の方が国内資産よりもリスクが大きいです。現地でのリスクに加えて為替のリスクがあるからです。年金はそうしたリスクを覚悟のうえで、リターン拡大を求めているのでしょう。
金融危機の際の年金:ここまで減額になる

今後、金融危機が起きた場合、年金資産はどうなるのか?
①    国内外株式は7割の暴落になると考えます。国内外の株価資産は全体の半分ですから、ファンド全体の資産は株式評価損だけで35%減になっています。

②    債券については、金融危機のクライマックスとして日本やG7各国が国債の利払いを停止する措置(デフォルト)を発表するでしょう。これがどの程度の規模になるかは現時点では明確にはわかりません。

そこで、2010年に始まるギリシャ金融危機が参考にします。2012年に債務再編を行い、民間債権者に対して債券の額面を53.5%割り引くとともに、残りの債券を低利で長期化することで、債務の約75%を削減しました。

一方、EU諸国や欧州中央銀行(ECB)に対しては、ギリシャ国債の割引を要請せずに、返済期限の延長や利率の引き下げを求めました。

つまり、力の弱い者には大幅値引きを求め、力の強い者には小幅値引きを求めたということです。平均した債務免除の減額幅は5~6割になるものと思います。

なお、2001年のアルゼンチンのデフォルトにおいては、事情はもっと過酷でした。外国人投資家に対して、国債を紙切れ同様の価値(ゼロ)にまでしてしまいました。

③    先進国はアルゼンチンのように国債を100%のデフォルトにするとは考えにくいです。自国民に大きな犠牲を強いる政策ですから、できるだけ傷の少ない方法を選ぶでしょう。それでも、3割程度の債務削減を求めて済む話にはならないでしょう。その程度ならば、最初から自助努力で何とか全額返済にこぎつけようとするからです。

④    こうした事情を踏まえて考えると、債券の価値を5~6割減にすると想定すべきです。国内外の債券資産は全体の半分ですから、ファンド全体の資産は債券の評価損だけで25~30%減になっています。

⑤    株式と債券を合わせた資産減額幅は65%~60%と計算されます。

第百十六回 
株価が暴落を始めたら、
銀行株を空売りするのはどうですか? 

​2023年10月4日

質問:
林さんは、数か月から半年以内にNY株、日本株が天井を打つと言っています。その時点で銀行株を空売りするのはどうでしょうか?
林さんは銀行が最終的には倒産状態になると言っているので、銀行株は大幅安が期待でき、空売りの利幅が大きく取れそうです。 


回答:
銀行株の空売りは当初は控えた方がいいでしょう。確かに、銀行株は株価指数暴落時の最高の空売り銘柄です。ただし、問題は、私たちが株価指数の天井の日を正確に読み取れるとは限らないということです。仮に1か月の誤差が出た場合、その間は株価指数が上昇することになり、銀行株も勢いよく上がります。大きな含み損が生じてしまいます。

解説
安全第一が空売りの鉄則

空売りに際して最も大事なことは、できるだけ安全に売ることです。建設現場に貼ってあるスローガンのように、「安全第一」です。利幅が大きく取れそうな銘柄を売ることではありません。

図1にはリーマンショック前の米国株の天井の様子を示しました。2つの天井が示されています。S&P500は2007年7月に天井を打ったあと、いったん下落しますが、その後復活します。07年に10月に再度天井を打ち、そこから長期下落相場に入りました。このようなケースがこれから起きる天井でも出現する可能性があります。

場合によっては、天井が3回になるケースがあります。3回になるケースは三尊天井という名前がついているほど、よくあるパターンです。(本尊釈迦如来の両脇を菩薩が占める釈迦三尊という仏像の安置形式から取った名前です。)

私たちは最初に現れた天井直後で売りがちです。複数回天井が出現する場合、株価指数が上がってしまい、空売り銘柄に含み損が生じてしまいます。空売りは信用取引ですから、現物買いの場合と違い、損失が大きくなってしまうことがあります。

損が拡大し、「もう耐えられない」と思って手仕舞ったら、そこが2回目の天井だったということも少なからずあります。


空売りは上昇局面での低パフォーマンス銘柄に限る

「天井が複数回来るから注意しなさい、という話ならば、銀行株に限らずすべての銘柄に関係があるのではないか。何故銀行株に特に注意しなくてはならないのか」という疑問が聞こえてきそうです。

その理由は、銀行株が株価指数の上昇局面で大きく上がるからです。図2に三井住友ファイナンシャルグループ(8316)と日経225の株価を示しました。これを見ると、同行の株価が大きく上がっているのは、2003年5月~06年1月までと最近(2022年10月以降現在まで)です。

自分が株価指数の天井だと思って空売りを始め、不幸にも株価指数がさらに上がり始めてしまった場合、どのような事態が起きるでしょうか?株価指数が上がる局面では銀行株はそれ以上に強く上がるので、含み損は大幅に増えてしまうでしょう。

つまり、株価指数の天井圏(だと自分が思った時期)において銀行株を空売りするのは「安全第一」の原則に反することになります。

ではどのような株を売るのがいいか?
銀行株とは逆に、株価パフォーマンスが芳しくない銘柄です。株価指数が上がっても、そうした銘柄は大きく上がることがないからです。

では銀行株は空売りしないのか。
それも違います。銀行株は株価指数が下落局面に入ると、下げ幅が急激に大きくなります。その時点まで待つのがいいでしょう。「そんなことをしたら、儲けが小さくなってしまう」と考える人はいませんか?先にも述べたように、空売りは安全第一で取り組んでください。

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今週のツイッターのお知らせ
報道の真実を見抜く! G20の真実
(5) さくらインベスト on X: "【ブックマーク必須】 🎦先進国と新興国の序列に変化? 取引前に知っておきたい『G20の真実』 伝説のファンマネ「林則行」 今月開催されたG20の裏側を徹底解説🥊 インドをはじめ、新興国動向をみる上で 欠かせないお話です🤔 🔽動画はコチラ https://t.co/TYejXfMmzs https://t.co/REEaZeAKcZ" / X (twitter.com)

講演のお知らせ
関西地区にお住まいの方でまだぼくの顔を直接見たことのない方は是非おいでください。講演のあとに質問会を実施します。至近距離でぼくと対話してください。
直接会って話すことはとても極めて大切です。
ぼくも楽しみにお待ちしています。

実施要項
10月28日(土)10時から1時間
『株価の上昇はあと数か月 暴落のサインを読み取れ』
投資戦略フェアEXPO2023大阪
パンローリング主催
場所:マイドームおおさか
第21回ご愛顧感謝祭 投資戦略フェア EXPO2023 in 大阪 (panrolling.com)

東京地区の講演会:11月23日(祝)
 

第百十七回 
日本で富裕税が導入されるリスクはありますか? 

​2023年10月6日t

質問

富裕税(銀行預金額のうち一定割合を政府が取り上げる資産税)が導入されるリスクはありますか?

 

 

回答

ぼくは導入されると思います。その実施は株価が大きく下がった時点、つまり、金融危機の入り口に立った時点でしょう。

 

富裕税の目的は預金のペイオフ対策

 

解説

富裕税は金融危機が佳境に入る直前に実施されるでしょう。

 

株価がどんどん下がると、景気が急速に悪化します。倒産企業が増え、銀行から借りたお金が返せなくなります。破たん企業が増えれば、最終的には銀行自体が傾いてしまいます。

 

銀行が破たんすれば、私たちの預金が無事では済まなくなります。そんな時に、預金を守ってくれるのがペイオフ制度です。

 

この制度では、普通・定期預金が1000万円未満の口座ならば全額が保護されます。また、利息のつかない決済性預金口座(法人の場合は当座預金)は全額保護の対象です。

 

ただし、ここで大きな問題が生じてきます。

ペイオフ制度の中核を担うのは預金保険機構です。この機構にあるペイオフのための資金は現時点では5.2兆円です。預金保険機構が保護しなくてはならない預金総額が1303兆円(2022年度)ですから、総額の0.4%しか資金がありません。

 

つまり、預金保険機構が制度設計通りに機能するには、預金総額ベースで考えた場合、日本の銀行のうち0.4%しか破たんしないという前提になっているということです。

 

誰が考えても、この資金を増やす必要があるのがわかります。

そのための一番楽な方法は国債を発行することですが、それは難しいでしょう。なぜかというと、金融恐慌が近い状況下では金利水準が高くなっている(=債券が大きく売られている)可能性が高いからです。国債を追加で発行すれば金利がさらに高くなってしまいます。それでは国家財政の破たんにつながってしまいます。

 

 

200兆円規模の富裕税になる

 

そこで、政府が手をつけるのが富裕税ではないかとぼくは見ています。

具体的にはどの程度の規模になるのか?

 

それは預金保険機構の資金をどこまで増やそうとするかによって異なります。さらに言えば、日本の銀行がどの程度破たんすると政府が考えるかによって異なります。

 

この金額の見当をつけるのが難しいのですが、ぼくは200兆円程度の増税を見込むのではないかと危惧しています。

 

理由はこうです。

1997~98年に起きた金融危機を参考にします。銀行の不良債権の総額は100兆円だとされています。1997年当時のマネー(M2)が570兆円程度でしたから、100兆円はマネー総額の17.5%になります。

 

現在のマネーは1238兆円(2023年8月)あります。これに17.5%を掛けると、217兆円となります。これが想定される不良債権の総額です。ペイオフで守らなくてはならない預金総額が1303兆円ですから、217兆円はその17%弱になります。

 

この金額がペイオフ制度を守るために徴収される税金(概算)ではないかと思います。この税金は少額の預金者(例:300万円未満)には課税しないでしょうが、それ以上の人たちには預金総額の大きさに応じて、累進的に課税していくものと思います。

 

ペイオフ(1000万円未満は全額保護)とは言うものの、最初に預金を奪っていくので、本当の意味でのペイオフは大不況の前には働かないということになります。

 

217兆円は過去に例を見ない超大型の税金です。私たちが払った税金(2022年度)は総額71兆円でした。(内訳:消費税23兆円、所得税22兆円、法人税15兆円など)これらに比べて将来実施される富裕税は71兆円の3倍規模になるであると考えます。

 

富裕税を導入している国は多い

 

「富裕税は憲法違反だ。資産の収奪は許されない」と思う方がいるでしょう。その通りだとは思うのですが、政府は国家体制を守るためには何でもするものです。

 

富裕税の歴史は古く1892年に世界で初めてオランダで導入され、現在はノルウェーやフランス、スペイン、スイス、コロンビアなどにおいても課されています。

 

アルゼンチンは2020年12月、コロナショックの経済復興策として1回限りの徴収を実施しました。対象は2億ペソス(約2億5,4000万円)以上の資産に対し、税率は国内資産が2%~3.5%、国外資産が3%~5.25%でした。

 

日本で行なわれるのはアルゼンチンのように1回限りの富裕税でしょう。ただし、アルゼンチンとは規模が全く違った大型のものになるでしょう。

 

 

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この話にはさらに続きがあります。

政府が国債のデフォルトを念頭に起きながら、富裕税を実施するとしたら、規がさらに大きくなるといことです。その場合は、1300兆円規模の増税になるわけです。この場合は、庶民の預金を取り上げておき、国債をデフォルトさせ、ペイオフで1000万円未満の預金を守るという流れになります。簡単に言えば、高額預金者の預金を低額預金者に振り分けるという位置づけになるものです。

第百十八回 
金価格が下がると、心配で眠れません。

2023年10月13日

質問
最近ゴールド価格が下がっています。ほぼ全財産をゴールドにしているので、心配です。眠れないほどです。どうしたらいいでしょうか?

回答
投資が初めての方の中には眠れなくなる人が出てきます。珍しい現象ではありません。ぼくがファンドマネージャになった当初も、責任の重圧でそうなりました。皆さんもそのうちに、慣れてきます。

だんだんと慣れます。ただし、値動きはもっと激しくなってきます。

解説:
投資は銀行預金とは違い、日々値段が動くものです。上がる日もあれば、下がる日もあります。下がると心配になってきます。「せっかく積み上げた利益が減ってしまう」とか「コストを割ったらどうしよう」とか思い始めます。

心配のあまり、手持ちのゴールドを売ってしまう人も出てきます。そうすればもう心配からは解放されますが、そのあたりが価格の安値になって上がり始めることは珍しくありません。

ぼくは多くの人からメールをいただいているので、心配症の人からメールが増え出す時期があります。そんな時は、そろそろ相場が反転して、金価格が上がり出すだろうと思うわけです。

投資は利益を求めるものです。この点では皆さんが従事している職業と同じです。職業においては、最初のうちは先輩たちと同様のパフォーマンスを上げることができずに、悔しい思いをしたり、眠れぬ夜を過ごしたりした人も多いことでしょう。それと似たようなものだと思って下さい。

ただし、職業の場合と一つ大きく違うところがあります。
それは上昇相場が富士山に似た形状になるということです。もう少し具体的に言うと、1,2,3合目あたりは傾斜が緩やかで、ゆっくり上ります。これに対して、5合目以降は傾斜が急で坂道が険しくなります。金価格も同様で、上昇が進むにつれて、値動きがはすます激しくなっていくと予想されます。図1には金価格(1979~1984:赤線)を記しました。青線は一日あたりの値動き(30日平均)です。前日から当日の上昇幅(下落幅)を値段で割った数字です。

注目は1979~80の上昇期です。この時期は金価格が短期間に最も大きく値上がりした時期です。青線も上がってきているのがわかります。最高では5%を超えています。

1日5%とは10,000円の金価格が1日あたり500円動くことを意味します。これは30日平均なので、動きの大きい日はもっと大きな幅で動いたはずです。

今後、金価格が本格的な上昇期に入るでしょう。それに伴い、価格の動きは今とは比べ物にならないほど大きくなります。ぼくは、この1979~80年頃の値幅に似てくると思っています。ガンガンと上がる時期が来るという意味です。

現時点で、「眠れないほど怖い」と思っている方はこのことを心得ておいてください。現状の値動きはまだ予行練習程度の緩慢なものに過ぎません。上昇相場が始まれば日々ジェットコースターに乗っている気分になってしまうでしょう。


これから金を買い増す方へのアドバイス

今回の質問者の方は既に大きな金ポジションを築かれていらっしゃいますが、中には、「これから金を買おう」、「買い増そう」と思っている方も多いことと思います。

その方には少しずつ買っていくことを薦めます。
その理由は高値で買ってしまうことを避けるためです。金価格が上がってくると、「さあ、早く買わないからここまで上がっちゃった。急いで買おう」と思うものです。実際に買ってみたら、その日から価格が下げ始めた、ということはよくあります。その場合、心配は買った翌日から始まってしまいます。

これに対して、少しずつ買ってく戦法ならば、買値が高い時もあれば低い時もあるでしょうが、平均すれば、市場価格に近いものになるはずです。翌日から心配が始まることはまずありません。

図2は少しずつ長期で買っていくメリットを示したものです。
ある株式があり、ある人は1年を通じて毎月買いました。つまり、価格が高かった1月の1万円の時も。4月の底値の6,500円の時も、12月の11,000円の時も平等に10万円ずつ投資しました。総額120万円の投資です。

これに対して、別の人はタイミングを狙って5月から投資を始めました。図中にある安い時期(5月、価格7,063円)から始めています。5月から12月まで8か月間15万円ずつ投資していきました。総額120万円です。

さて、早く投資を始めた人と5月に始めた人ではどちらの資産が大きくなっていたか?

直観的に、「5月から始めた人ではないか?安い時期から始めたのだから」と思う人がいることと思います。答えは図3にあります。1年を通して投資した人の資産は約154万円になり、5月から投資した人の資産は149万円になりました。

このケースの場合、長期投資のメリットがよく現れています。「明日はもう少し安くなるかもしれない。でも、考え過ぎずに買っておこう」という発想によって、ぼく自身もだいぶ救われたことがあります。少しずつ、定期的に買っていくことをぜひご検討ください。

****
なお、金価格の値動きが激しくなってきたら(=本格的な価格上昇が始まったら)、ぼくは今まで以上に金価格に関する情報発信を行うようにします。皆様の不安軽減の一助になるように心がけます。

第百十四回
米国で預金が減っているのは本当ですか?

2023年9月16日

質問:米国では預金量が減っているという報道を目にしました。本当でしょうか?このことは、米国景気にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

回答:
預金が減っているのは本当です。庶民の懐(ふところ)が小さくなっているわけです。お金が少なくなれば、景気は悪い方向に動いていくことになるでしょう。

解説:
債券利回り上昇で預金が減った

図1は米国の預金量の四半期ごとの変化を記したものです。これを見ると、2022年第二四半期から預金量が減ってきているのがわかります。この金額の減少は過去にないレベルです。

2008年~09年のリーマンショック時と対比してください。米国が戦後最大の不況に襲われていた時期でも預金量はほとんど減っていません。

対照的なのが最近の預金減です。合計で1.2兆ドル(180兆円)ものお金が消えてしまったのです。

最大の理由は何か?
債券の価格下落(金利上昇)です。米国の債券市場は全体では55兆ドル(8200兆円)あります。米国債24兆ドル、不動産担保ローン12兆ドル、会社債10兆ドルといった内訳で、その他を含めて55兆ドルになります。

図2にあるように、米国債(10年債)の利回りは2020年に底を打ち、その後上昇に転じています。しかも、2022年に入ると急速に利回りが上昇しています。預金減少時期と重なっています。

仮に10年債の利回りが1.0%から3.75%にまで上昇した場合、債券価格は100から80に下がります。(表面利回り1%の場合)つまり、自分が保有している債券の価値が2割も減額になってしまうのです。

債券先物を取引している人、金融機関は大きな損失を出したはずです。また、債券の現物保有をしていた人が債券を売って現金に戻しても、元の8割の現金にしかなりません。これが預金量減少の主な理由です。

図2を見ればわかるように、債券は1981年から長期トレンドとして利回り低下が続いてきました。そのトレンドが昨今の物価高により逆方向に動くようになってしまいました。

債券を中心に米国金融市場は大きな変化を遂げています。近い将来、株式市場にも影響が及ぶでしょう。

第百十五回 
大暴落の開始を高い精度で予測できますか?

2023年9月24日

質問:

林さんは米国を中心とする株式市場の天井は半年前後だと述べています。もう少し高い精度の予測はできないでしょうか?

 

 

回答:

恐怖指数から相場を読むことができます。それによれば、天井までにはまだ時間がありそうです。

 

株価は日々の政治上、経済上の様々な出来事によって動くので、高い精度で天井の到来日を予測するのは難しいですが、恐怖指数の動きから考えると、天井が数か月以内に訪れることはなさそうです。

 

まだ先。株式市場には「嵐の前の静けさ」がまだ訪れていない

 

解説:

恐怖指数について、「初めて聞いた」という人も多いと思います。解説しておきます。これはVIXとも呼ばれているものです。S&P500のオプション取引の値動きをもとに算出される指標です。投資家の心理を反映する指標とされ、簡単にいえば、「株が上昇基調の時は指数が低迷する。株が暴落を始めたら、指数は急上昇する」というものです。一般の人は計算式まで知る必要はありません。

 

図1には2003年からの恐怖指数の動きを示したものです。これによれば、リーマンショック時の2008年とコロナ暴落時の2020年に大きく指数が上がっています。

 

重要なのは、大きく上がる以前の底値の位置です。

リーマンショックが始まる前、株価は2006年に天井をつけました。その際、恐怖指数は11台にまで下がりました。コロナ暴落前には恐怖指数は12台にまで下がりました。(正確には12.1にまで下がりました。11台ではないですが、それに近い値です。)

 

「嵐の前の静けさ」という言葉があります。これは株式市場にも当てはまるものです。人々が「今後も株価の上伸が続くだろう」と安堵し切ったあとに、暴落はやってくるものです。

 

1990年から約8500日の営業日があり、恐怖指数が日々計算されています。この数値が小さいほど、人々の満足度(つまり、油断)が大きいことになります。図2に示すように、9台、10台、11台(つまり、12未満)で全体の9.4%を占めます。つまり、100日のうちに、恐怖指数が12未満になるのが9回ちょっとだということです。

 

「嵐の前の静けさ」って不気味なほど静かですよね。不気味なほど安堵が広がっている状態というのは、指数が12未満になった時点ではないかと思います。

 

現状の恐怖指数は13.8です。

この数値が12未満になるにはまだ時間が必要です。数か月はかかるだろうというのがぼくの読みです。

 

なお、この指数は日々調べることができます。検索画面に「VIX」と入力すると、そのチャートを含んだサイトが表示されます。

第百十三回 関東大震災級の地震が東京を襲うような事態となった場合,ゴールド価格はどう動きますか?

2023年9月8日

質問:
毎年9月になると、関東大震災で多くの方が亡くなったという報道がTVを賑(にぎ)わします。仮に、東京に同じような規模の地震が起きた場合、ゴールド価格はどうなるのでしょうか?

 

回答:
現在の価格の2倍(2万円)以上に跳ね上がるでしょう。試算では26,000円程度になるものと考えます。

解説:
ゴールド価格はドル建ての国際価格と円建て価格(ドル円相場で決まるもの)から成ります。

1.    ドル建ての価格にはほとんど影響しないでしょう。
インド洋大津波(スマトラ島沖地震、2004年12月 マグニチュード9.1)が好例です。有史以来の自然災害の中で10本の指に入る大規模自然災害となってしまい、23万人の人が命を落としました。関東大震災(11万人死亡)に比べて2倍以上の人的被害が発生しました。

にもかかわらず、インドネシアの株価にはほとんど影響がなかったばかりか、原油やそのほかの国際商品価格にも全くいっていいほどの影響は見られませんでした。

日本で大きな地震が起きた場合でも同じようなことになるでしょう。日本からの金需要は国際社会の中では微量なレベルですから、その国に何が起きてもドル建て金価格には影響しないでしょう。

 

2.    ドル円為替相場は100%以上の下落になる
ドル円相場は少なくとも100%の下落に見舞われるでしょう。

東京が地震によって破壊されると、被害は200兆円以上に及ぶと試算されています。これが為替にどの程度の影響を与えるかは、正直に言えば、起きてみないとわかりません。

敢えて推論すれば、1997年~98年に起きた日本の金融危機が事例として役立つかもしれません。北海道拓殖銀行(拓銀)、日本長期信用銀行(長銀)、日本債券信用銀行(日債銀)、山一證券、三洋証券など大手金融機関が、不良債権の増加や株価低迷のあおりを受けて倒産したのです。

不良債権の金額は100兆円に上ったと言われています。ドル円相場は1995年81円から1998年147円まで80%超の下落となりました。

これから起きる関東大震災が200兆円規模の損失になれば、2倍の大きさになります。単純な計算が成り立つとすれば、160%の下落と考えられます。現在のゴールド価格(田中貴金属)を約1万円ですから、26,000円になる計算です。

なお、皆さんの中には1923年の関東大震災の時に、為替相場が実際にどのくらい動いたか、値動きの幅が参考になるのではないかと思っている方がいるでしょう。為替相場は地震前の1ドル2.1円から2.6円へと下落しています。24%の下落幅です。

甚大な被害のあった関東大震災において、為替レートに大きな影響がなかった理由は、当時のレート自体が金本位制のもと、固定相場が中心だったためです。したがって、1923年の為替レートは参考にはなりません。

 

●林則行宛てに直接質問をお送りくださる方は、従来のアドレスではなく、以下のメールアドレスにお願いします。
hayashinori884@yahoo.co.jp
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第百十二回 米国のインフレが収まりつつあります。景気は改善していきますか??

2023年9月1日

質問:
米国では最新の消費者物価上昇率が3.1%(前年同月比)まで下がってきました。ここまで下がると、景気や株価への悪影響が減っているのではないでしょうか? 景気が改善する方向になってくるのではないでしょうか?

回答:
消費者物価上昇の悪影響はまだ続きます。
その理由は、昨年までに既に上がっているのに、その上にプラスしてまた3%上がっているからです。庶民は我慢の限界に近づいています。


解説:

自動車価格とローン審査に現れた米国経済の窮状

3.1%(2023年6月)という上昇率は確かに低く、ここ2年間では最低です。上昇率でいえば最高を示した2022年6月(8.9%)から、かなり下がってきました。

しかし、景気に関して大事なことは、その物価の下で人々が暮らしやすいか否かです。消費者は前年比を気にしていません。実際に高いかどうかが気になります。

消費者物価上昇の出発点は2021年5月でした。現在の物価はここから約2割の上昇になっています。2割は消費者にとって大きな値上がりです。「こんなに上がってはもう耐えられない」という悲鳴が聞こえています。

この傾向が明確に現れているのが自動車価格です。自動車は米国生活には欠かせない耐久消費財で、しかも、住宅の次に大きな出費となっています。

図1には自動車価格の推移を示しました。これを見ると、2021年春から、過去にないスピードで急速に価格上昇が起きていることがわかります。現在までの上昇率は20%です。(消費者物価全体の上昇幅とほぼ同じです。)

消費者団体コンシューマー・リポートは2023年1月21日、提携する自動車市場調査会社トゥルー・カーなどの最新データを公表し、新車の平均価格が昨年12月に史上初めて4万7000ドル(約660万円)を突破したと報告しました。ここまで来ると自動車は高嶺の花になってしまいます。

そこで消費者は自動車購入にローンを組むのですが、審査で失格する人が2023年に入り急増し始めました。図表2にあるように、2013年の統計開始以来、最高の14%にまで上昇してしまいました。庶民の生活が苦しくなっていることがわかります。

このように物価上昇の悪影響があちこちの分野に現れているのが米国経済の現状です。ぼくが「近い将来に米国株が天井を打つ」と考えているのも、こうした現象をもとにした予測です。

第百十一回 中国の不動産問題が引き金となって世界の株価暴落が始まるリスクはありませんか?

2023年8月26日

質問:

中国の不動産大手恒大が米国で倒産の申請をしたと聞きました。このニュースが世界の株価に大きな悪影響を与えることはないでしょうか?

 

回答:

じわりじわりと悪影響が米国の不動産市場に広がっていくでしょう。米国の不動産自体が大きな問題を抱えているためです。

 

 

解説:

米国の住宅は年収比で過去最高値

恒大(負債規模48兆円)のような大手不動産会社が倒産すると、業界全体が疑心暗鬼となって、「ほかも危ないのではないか?」といった恐怖心が一気に不動産業を覆います。従来なら、「倒産まではいかないだろう」と思われていた灰色企業の資金繰りが急速に悪化してしまうことが起こります。

 

具体的には碧桂園(負債規模23兆円、現状の株価:高値から92%下落)や融創中国(20兆円、98%下落)が次の倒産候補ではないかと囁かれるようになっています。

 

中国の不動産業界に倒産の大波が立ち始めると、いずれは米国不動産業界をも揺るがすようになるでしょう。

 

その最大の理由は、米国の不動産価格が高くなり過ぎたことにあります。特に住宅用不動産です。庶民の年収に比べて価格が高くなり過ぎました。

 

図は不動産価格を年収で割ったものです。2004~5年頃は、サブプライムローン(返済能力のない人への住宅購入資金貸出)が全盛だったので、不動産価格が大きく上伸しました。リーマンショック前の2006年秋には、このレシオは7.9にまで上がりました。

 

しかし、リーマンショックと共にレシオは下落し、2013年には5.9にまで下がりました。

 

ここから不動産価格が再び上昇を始めました。量的緩和政策により、株式や債券、不動産といった資産価格が軒並み上がったのです。レシオはリーマンショック時の高値を抜き、昨年秋には9.0にまで上がってしまいました。史上最高値です。ここまで来ると、一般の人には住宅用不動産に手が出ないようなレベルになってしまいました。

 

このような状況ですから、米国不動産市場は下がる理由を捜していると言っても過言ではないでしょう。中国では2021年夏、不動産価格が株価に先行してピークをつけたように、米国でも不動産が株価に先行して下がるリスクが高まり始めています。

定例発信: ニュース

第百十回 日本は人口が減って経済はさらにへこみますか?

2023年8月18日

質問:

日本の人口減は日本経済をますます暗いものにすると聞いています。これは正しい認識なのでしょうか?


回答:

半分は正しいです。人口が減れば経済は縮小しますが、一方で、経済が縮小しているから人口が減っているという側面もあるからです。



解説:

人口問題について多くの識者が、「人口が減れば経済が縮小してしまう」と述べています。ここまでは正しい認識です。GDPは個々人が生産・消費活動を行った総合計の数値です。人口が多いほどGDPは大きくなります。例えば、中国のGDPは日本の3倍ありますが、これは人口が11倍違うところが大きく関係しています。


ここからが問題です。多くの識者は「人口が減るのは経済が縮小しているからだ」という別の観点を見逃してします。

今日はこの点について解説しましょう。


1.子供が少なくなったのは、結婚が少なくなったから


人口が減るのは子供の生まれる数が少ないからです。事実、女性の出産率(統計用語:合計特殊出生率)は1977年には一人当たり1.80人でした。これが2021年には1.30人にまで低下しています。つまり、0.50人減少したわけです。


ところが、結婚したカップルが持つ子供数はそこまで減少していません。図1にあるように、1977年には一組あたりの夫婦に2.19人の子供が生まれました。2002年には2.23人とやや増加しています。


ここから一組の夫婦に生まれる子供数の減少が始まるのですが、2021年でも1.90人にとどまっています。1977年からみれば、2021年の減少幅は0.29人です。


女性全体の出産率が0.50人減少する中、夫婦に生まれる子供数が0.29人しか減少していないとはどういうことか?独身の女性が増えているということになります。


実際、図2にあるように、未婚率は1990年までは、大きな変化はありませんでした。男女のよってやや差はあるものの、未婚率は戦前の1~2%から1990年の4~5%へと上がりましたが、その上昇幅は限られていました。


1990年は日本経済にとって大きな意味のある節目です。日経平均が1989年12月末に史上最高値をつけ、その後8割以上の下落を迎えてしまったからです。「失われた30年」の始まりの年です。


1990年から未婚率は徐々に上昇を始め、2000年には男性13%、女性6%、2010年には男性20%、女性11%、2020年には男性27%、女性18%になっています。



2.結婚しない背景には経済上の不安がある

未婚率の上昇が起きる理由はどこにあるのか?

男性が、「この収入では家族を養えない」と思っていることが背景にあるようです。


男性の意識調査を見てみましょう。結婚していない男性に聞いたところ、収入がない人、400万円未満の収入の人、400万円以上の収入の人では未婚の理由が大きく違うことがわかります。


図3にあるように、「素敵な相手に巡り合わないから」といった理由を挙げているのは、収入が大きい人ほど多いです。一方、経済的な不安から結婚をしり込みする人は収入が低い人ほど多いのです。


なお、女性についてもこのような調査結果がありますが、収入よる意識の差はあまりありませんでした。


簡単に言えば、結婚はお金がかかるのです。だから経済が萎むと結婚を避け、子供を持たない人が増えてしまうわけです。



3.移民受け入れは消費減をもたらす


「経済回復には海外から移民を受け入れて人口を増やすべきだ」と唱える人がいます。先ほども述べたように、人数が増えればGDPは大きくなるので、ここまでは正しい認識でしょう。


ところが、日本人の人口はますます減少の方向に進んでしまうかもしれません。日本に来て働きたい人は、「自国(新興国)にいるよりも、日本で働く方が収入が増える」という理由の人がほとんどでしょう。こうした働き手が増えれば、労働市場では賃金が低くなる方向に動きます。今まで従業員に年収400万円を払っていた企業が「380万円でも海外から人が雇える」とわかれば、全従業員の賃金を380万円にする方針を取り始めるでしょう。


移民の受け入れは日本人の収入減をますます促すでしょう。そうなれば、日本人は結婚や子供を持つことをさらに諦めるようになるでしょう。また、移民の人たちは海外送金に重点を置き消費をできるだけ避ける傾向になるでしょう。加えて、日本人の収入減は、消費減をももたらすので、全体として、景気にマイナスの側面があります。

第百九回 景気が良くなっても給与が上がらないのはどうしてですか?

2023年8月11日

質問:

景気がいいという実感が湧きません。給与が上がる日が来るのでしょうか?生活は厳しくなっていく一方なのですか?



回答:

日本人の給与は今後も上がらないでしょう。景気が下がれば給与はぐんと下がります。景気が良くなっても給与は横ばいがいいところでしょう。


解説:

1.給与が上がらないのは今の水準が高いから

日本人の給与が上がらない理由は給与が高いからです。「何言っているんだ!こんな給与が高いはずがない」と反論したい人が多いのはわかります。


しかし、新興国や途上国の人たちの給与と比較してみて下さい。中国人の平均は191万円/年なのですから、中国に発注できる仕事は発注してしまいます。


図1を見ると、1997年をピークに民間の平均給与は横ばい圏に入りました。新興国の台頭時期と重なっていることがわかります。


なお、最新のデータ、2021年日本人(民間)の平均給与は443万円です。この数値が「高すぎではないか」と思う人がいるかもしれません。これは1億円の給与を得ている人も含んだ上での平均値なので、肌感覚の数字とはかけ離れた値になっている可能性が高いです。実際の平均値は380万円前後だろうと言われています。統計上、実際の平均値を見るには、中央値*を用います。これが380万円前後のようです。(中央値*:この場合は日本人の給与を高い順に並べた時に真ん中に来る人の給与)


給与が横ばい圏に入ったのは日本が初めてではありません。図2にあるように、米国では1970年代以降の所得に同じ傾向が現れています。ピークは1973年です。当時の新興国の代表は日本でした。日本は安い人件費を武器に輸出王国にのし上がりました。米国の労働者は日本をはじめとする新興国に仕事を奪われました。米国人(男性)の実質所得(インフレ考慮後)は横ばい圏に入りました。


ここで大事な注釈があります。1973年から現在まで米国経済(GDP)は25倍になりました。経済がそこまで大きくなったのにもかかわらず、実質所得が横ばい圏に入ってしまったです。


日本のGDPは今後25倍になることはないでしょう。それどころか、1990年代以降、GDPは横ばいが続いています。こうした状況下では給与の上昇はさらに厳しいでしょう。つまり、不況が来れば給与は下がるし、好況時でさえインフレ考慮後の給与は横ばいが精一杯というところでしょう。


2.年功序列が賃金下げ圧力になっている

日本人の給与が下がり気味・横ばい圏にある理由は、新興国・途上国の給与における割高感のほか、非正規雇用労働者の増加と年功序列の仕組みが大いに関係しています。


非正規雇用労働者は全体の38%(厚生労働省 2019年)です。1990年には20%だった割合は着実に増え続け、今後も長期的に大きくなっていくでしょう。雇い主としては賃金の安い非正規雇用労働者の方が正社員に比べていいに決まっているからです。こうした事実を見るだけでも、日本人全体の賃金が下がる傾向にあることがわかります。


さらに重要なポイントは図3に現れています。正社員は年齢とともに賃金が上がる年功序列が明確に現れています。これに対して非正規雇用労働者の賃金の上昇幅はそこまで大きくありません。実務経験の長さが習熟度の向上を生み、それが賃金に反映されている程度です。


日本は労働力の高年齢化が進んでいます。低めの賃金に甘んじなければならない非正規雇用労働者の高齢化も進んでいるということです。この人たちの割合が高くなっていくのですから、日本全体の平均給与がますます下がる傾向になるのは明らかでしょう。


なお、本日のこの解説は『給与半減のサインはありますか?』2022年(7月16日第24回ウイズ)の最新版です。

定例発信: ニュース

​第百八回 ゴールドの最新の需給状況を教えてください。

2023年8月6日

質問:

ゴールドの最新の需給状況を教えて欲しいです。ゴールド価格はここのところ、ドスンと下がることがなく、堅調に推移しているようです。そうした底堅い動きを裏付けるような統計値が発表になっているのでしょうか?



回答:

最新の生産統計が8月1日に発表になりました。それによると、2023年第2四半期(4-6月期)は前年同期比3.8%の増加となりました。


図表1をみると、最近の前年同期比の推移がわかります。3.8%は2021年7~9月期以降、最大の大きさです。最大の理由はゴールド価格の上昇にあると思います。2021年秋にはまだ1700ドル台だった金価格は2023年に入って1900ドル台が定着してきました。鉱山会社は価格が上がれば、できるだけ生産してたくさん売りたいと考えます。そこで可能な限りの方法を使って増産を始めたのでしょう。


これはゴールド価格にはマイナスの要素のはずです。ゴールドは野菜と同じように生産量が増加に転じれば価格が下がるか横ばいになります。この傾向は図表2をみれば、一目瞭然です。


では、何故ゴールド価格が堅調なのか?

価格は需要と供給から決まります。供給は増えているのですが、それと同等かまたはそれ以上の需要があるからでしょう。

需要増のひとつは中央銀行の買いが増えていることです。これについては、本日同時に掲載したウイズ『世界の中央銀行が金の買い増しを行っていると聞きました。本当ですか?』をご覧ください。


ゴールドの増産は当面続くと考えるべきです。そのため、需要が増えていても価格が一途に上がっていくと考えてはいけません。時には、価格が軟調になる時期があるかもしれません。その時は買い増しのチャンスと思って対応してください。

定例発信: ニュース

第百十七回 NY株価大暴落への最新の信号点滅状況を教えてください

2023年7月29日

質問:

6月に掲載された定例発信やウイズにおいて、NYの株価大暴落が近づいているという指摘がありました。その後、暴落はますます近づいているという感じでしょうか?



回答:

株価の大天井まで3か月程度でしょう。1か月前にも「あと3か月」と言ったので、期間が延びているということになります。暴落の開始は天井の後すぐではなく、そこから3か月くらい先になるでしょう。今日はやや延びている理由を説明します。



解説:

定例発信 第111回(6月18日)において、「暴落を示唆する赤信号がひとつ増えた」という話をしました。具体的には、「株式市場の騰落レシオが弱気に転じた」と報告しました。


今回の変更は、「騰落レシオはその後回復して、ふたたび中立の立場に戻った」ことです。つまり、信号の色の一つが赤から黄色になったということです。図表1に全信号の赤黄青の状態を示しました。


騰落レシオを具体的に見てみましょう。図表2です。株価が前回の高値(2023年2月)を5月に抜けたのに、騰落レシオは抜けていませんでした。これが7月になって高値更新をしました。株価の高値更新に比べて2か月近く遅れたこと自体が市場の弱さを物語っています。それでも、高値更新となったので、赤信号と言えるほどの危険性はなくなりました。


ひとつひとつの信号の点滅状態が変わることは珍しいことではありません。大きな視点で考えれば、全体的な方向性は全く変わっていないと言えるでしょう。

定例発信: ニュース

第百十六回 金融危機の際、生活の困窮以外に困ることが起きますか?

2023年7月21日

質問:

金融危機が起きた時に、どのような事態が起きますか?これまでファンクラブ通信で掲載された預金の収奪、景気悪化、賃金低下、失業増加といった以外に想定される問題があれば、教えてください。



回答:

いよいよ、国庫の財源が確保できなくなった時に、国家を運営するため、為政者たちが考えることは何でしょうか?


経済を立て直して歳入増を図る代わりに、私たちの財産や所得をあてにするでしょう。そうしないと、国家が持たないと為政者たちが考え始めるからです。


不況克服の手段として戦争を起こすかもしれません。その場合、政府からの収奪の度合いはなおさら増えるだけでなく、参戦国としての被害は甚大なものとなるでしょう。



解説:

大不況に襲われると私たちの暮らしは困窮します。しかし、困窮するのは私たちだけではありません。政府も困窮します。私たち庶民は少なくなった財産や所得をやりくりして、なんとか食いつないでいかなくてはなりませんが、政府にはいい手があります。足りない分を国民から取り上げればいいわけです。国民の預貯金残高の総額についてニュースでもよく言及されるのは、政府が虎視眈々(こしたんたん)と狙いをつけているからでしょう。


私たちは政府には逆らうことはできないので、大不況と重税の二重苦にあえぐようになります。ここでは実例を挙げてみましょう。


1.大不況は増税の始まり

①欧州金融危機のギリシャ

最近の好例は欧州金融危機の引き金となったギリシャです。2009年10月、政府は財政赤字額がそれまでの公表額(GDPの4%)はウソで、実は13%に達していたと白状しました。その結果、株価が9割下がり、インフレは30%、失業率は28%にまで上昇しました。大不況が始まりました。


ギリシャ政府は消費税を2010年に19%から23%に引き上げただけでなく、全般的に税収を増やしました。その結果、国民所得に対する税負担比率は2010年の32%から2019年には39%まで上昇しました。



②経済が破たんしたベネズエラ

ベネズエラ政府は財政赤字を賄うために貨幣の増発や債券発行を行い、ハイパーインフレ(2020-21年にかけて1兆倍のインフレ)を起こしてしまいました。お金持ちは皆ベネズエラから脱出し、難民、移民は人口の2割、約600万人に達しました。国内に残された人々の95%が貧困層となり、中でも極貧層が77%に達しました。


それでも、ベネズエラは国家を何とか立て直さなくてはなりません。2006年9%だった消費税を現在では16%にし、国民の税負担率も2006年の50%から2019年には73%にまで上げています。



③大恐慌時代の米国

米国株は1929年に大天井をつけ、その後9割の下落となりました。1929年には3%だった失業率は1933年には25%にまで上昇しました。


税収がガタ落ちになったので、政府は増税に走りました。1932年には所得税の最高税率を従来の25%から63%に引き上げ、36年には73%に引き上げました。1945年(第二次大戦の終了年)には94%にまで引き上げました。


また、1933年にはゴールド保有禁止を打ち出し、庶民の持つゴールドを強制的に買い上げました。価格は1オンス当たり20.67ドルでした。違反者には最高で禁固10年、10万ドル(現在の1800万円)の罰金を科しました。ゴールドの買い取りが一巡した1934年にはゴールドの固定価格を35ドルに上げました。この価格改定で国家のゴールドの資産価値を69%上昇させました。なお、金保有禁止は1974年まで続きました。


2.戦争で締め付けがさらに強固に

①戦争は税金の始まり

税金の歴史は戦争の歴史と切っても切れない関係にあります。国民への課税は戦争を機に始まったものが多いからです。例えば、イギリスの所得税の始まりは1799年、ナポレオン戦争の戦費調達が目的でした。米国では1861年に所得税が徴収されています。これは南北戦争の戦費調達が目的でした。


日本では日露戦争を機に相続税を取り始めました。戦争中の特例「期間限定の約束」として始められたものですが、今なお続いています。なお、日本では1937年の戦時体制下で所得税の最高税率が従来の20%から30%に引き上げられ、1938年には40%に引き上げられました。第二次大戦がスタートした翌年の40年には総合所得税の最高税率を65%としました。



②株価大暴落は戦争につながる

米国の株価、債券価格が暴落し、大不況が始まると、米国はそこからの脱出のために戦争を起こすかもしれません。


米国は景気浮揚のために数多くの戦争を起こしたり、関与したりしてきました。21世紀に入ってからの戦争を挙げてみましょう。アフガン紛争への介入(開始年2001年)、イラク戦争(2003年)、リビア内戦への介入(2011年)、イスラム国との戦争(2014年)、イエメン内戦への介入(2015年)です。最近ではロシアをけしかけて、ウクライナ戦争(2022年)を始めさせました。


こうした経緯を一覧すると、米国の本音が「戦争をすることで、軍需産業を盛んにし、景気浮揚を図っている」にあることがわかります。「世界の警察官としてより良い国際秩序形成のために尽力している」というイメージは虚像に過ぎません。


国際法上はすべての国が平等だとしていますが、それは建前であり、実際は米国が国際法を超越した地位にあります。だから、国連が承認していない軍事侵攻(例:アフガン紛争への介入、イラク戦争)を繰り返すことができるのです。


こうした経緯を考えると、大不況脱出に向けて、大きな戦争を始めたいと願うのは必須でしょう。台湾をめぐり、中国や日本を巻き込んだ紛争を画策しているようですが、ブリンケン国務長官の訪中失敗で遠のいているようです(定例発信112回、2023年6月23日参照)。それでも、仮に日本が巻き込まれることになれば、増税は避けられないでしょう。日本は戦争を機に新たな税制(例:資産税)を導入するかもしれません。

定例発信: ニュース
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地金5年未満の保有でも税金を低くできる工夫はありませんか?

2023年7月15日

質問:地金の売却益にかかる税金は、保有期間が5年超の場合と5年以下の場合では大きく違うことを知りました。保有期間が5年未満の人が税金を少なくするテクニックはないでしょうか?


回答:先物取引を用いると、地金の4年間保有者が5年の税的な長期特典を受けることができます。1キロ単位で売却する場合に限ります。


解説:

地金の税額が保有期間5年で大きく変わるのを知れば、誰でも5年以上保有してから売却したいと思うでしょう。例えば、地金売却で1000万円の利益を得た人は、下の表のような税額になります。(地金の利益以外に全く所得がない場合です。)

税額が100万円以上も違うのですから、長期保有の魅力は大きいです。しかし、短い間に大きく値がりしたら、そのタイミングを逃したくはありません。1年待っているうちに、100万円超も下がってしまうくらいならば、高額の税金を払う方がましだと思うかもしれません。


そんな時にいい方法があります。先物取引を用いると最長で1年後の売買契約を結ぶことができます。現時点であれば、最長で2024年6月28日に売却することができます。例えば、2023年6月30日に、その日の最終価格8887円で取引(売り)を成立させたとしたら、翌年6月28日の価格がいくらになっていたとしても、8887円で買い取ってもらうことができます。1キロの取引を行った場合、地金価格888.7万円の他、消費税も手にします。売買にかかる手数料は数千円で、田中貴金属よりずっと割安です。


私たちがすることは、2024年6月28日に手持ちのゴールドバーを先物業者に渡すことだけです。


なお、消費税ですが、888.7万円の10%ではありません。2024年6月28日の市場価格に対する10%です。これはどうしてか?


1年前に8887円で売却すると約束し、1年後にゴールドバーを渡すと決めたのですが、実は、この決心はいつでも翻意(ほんい)することができます。1年間ある予定売却日までの好きなタイミングで、買い注文を入れることができるという意味です。この場合は差額の損益が出ます。例えば、8887円より100円高い価格で買い注文が成立したら10万円の損が出ます。100円安い価格で買い注文が成立したら、10万円の儲けが出ます。


つまり、8887円の売り注文が成立した時点では、それから1年の間に買い戻してもいいし、最終日にバーを渡して決済してもいいわけです。何も確定していません。確定していないのだから、税務署はこの日の時点で「売却が成立した」とみなすことができません。税務署が売却の成立を確認できるのは、私たちがバーを先物業者に渡す2024年6月28日です。ですから、この日の価格によってバーにかかる消費税も決定します。


先物取引の最長の取引期間は約1年ですから、4年間既にゴールドを保有した人はこの仕組みを利用して5年間保有者と同等の税的なメリットを受けることができます。


なお、先物は1キロ単位での取引です。500グラムやそれ未満のバーでは売却できません。


合法的な方法ですが、これを利用する人は多くはありません。先物取引に詳しい人が極端に少ないからでしょう。業者によっては、「自分のところで買ったゴールドバーしか売ることができない」と言っている場合があります。詳しくは業者に聞いてみるといいでしょう。

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第百十四回 ETFと地金ではどちらが節税できますか?

​2023年7月7日

質問:

ゴールドを売却し利益が出て場合は、税金を払わないといけません。ETFと地金ではどちらが税金を少なくできるのでしょうか?



回答の要約:

  • 大量にゴールドを保有している人にはETFが有利です。つまり、ETFの方が納税額が少なくて済みます。

  • 地金の税金は保有期間が5年超なのか5年以下なのかによって大きく異なります。

具体的に見ていきましょう。


1.ゴールドの売却益だけが所得の場合

所得がゴールドの売却益のみの場合、次のような金額が算定されます。


➊地金の保有期間が5年以下の人は900万円超が分岐点になります。すなわち、利益が900万円以下の場合は、地金が有利で(税金が少なく)、それ以上の場合はETFが有利になります。

❷地金の保有期間が5年超の人は約5800万円が分岐点になります。すなわち、約5800万円以下の利益がある場合は、地金が有利で(税金が少なく)、約5800万円以上の場合はETFが有利になります。



解説:

ETFにかかる所得税は一律15%です。これは分離課税ですから、ほかの所得がいくらあっても(なくても)、同じ税率が適用されます。


一方、地金の売却で得た利益(譲渡所得)は総合課税の対象になります。これは表1のような累進課税(所得が増えると、税率がだんだんと高くなる税率)が採用されています。


地金については、譲渡所得というカテゴリーになります。その場合は、表2のように、保有期間が5年をはさんで、税額が異なります。5年以下の保有については、ゴールドの売却益から50万円を引いた金額を所得とみなすのに対し、5年超の保有に対してはその半額を所得とみなします。


この課税方法のもとで税額を比較したのが短期保有の場合の表3です。税金だけを比較すると、利益が900万円ではETF、地金の税額が130万円超となります。赤い列で示すように地金の納税額が31000円低く抑えられます。一方、長期保有の場合が表4です。5800万円でETF、地金の税額が870万円程度となります。ここで地金有利からETF有利へと逆転します。


やや細かい注:

上で示した金額は目安です。仮にゴールド価格が2倍になって売却した場合、地金とETFとでは利益金額が若干異なります。ETFの手数料が小さく、地金の手数料が大きいからです。


2.ゴールドの以外の所得がある場合

ゴールド以外に所得(例:給与)がある人は全く違った算定結果になります。どちらが有利になるかの分岐点は、ゴールド以外の所得の大きさによって異なります。以下ではわかりやすい2つの例を挙げておきました。



➊地金短期保有の場合

330万円の所得がある人がゴールドで利益を出した場合、200万円までは地金が有利です。それ以上はETFが有利です。


330万円以上の所得がある人は総合課税の税率が20%になってしまいます。この時点で、ETFの15%の税率を抜いていますが、ゴールドには特別控除の50万円があるので、上のような金額が算定されます。


❷地金長期保有の場合

900万円の所得がある人がゴールドで利益を出した場合、550万円までは地金が有利です。それ以上はETFが有利です。


900万円以上の所得がある人は総合課税の税率が33%になってしまいますが、地金は利益の半分に税金が課されるので、実質は16.5%の税率です。これに加えて、ゴールドには特別控除の50万円があるので、上のような金額が算定されます。

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第百十三回 米国経済は崩壊を回避できるのではないでしょうか。

2023年6月30日

質問:

米国経済は崩壊を回避できるのではないでしょうか。

そう考える理由は、米国が従来の海外生産から国内回帰の方向に進めているからです。例えば、アップルに何らかのサプライ品を提供する 180 社のうち、2 年前には23 社 のみが米国で生産を行っていましたが、去年は 48 社となり、今年はもっと増える予定だそうです。国内生産が増えれば、米国の貿易赤字は減少し、米国のGDPは押し上げられ、借金も比較的早期に解消できるのではないかと思っています。



回答:

米国が国内生産を増やす方向に動いたとしても、経済崩壊を回避できないでしょう。

米国が国内生産を増やせば、貿易赤字は減るかもしれませんが、GDPは増えないでしょう。米国民がアップルのスマートフォンを買う時、その部品が米国産か海外産かにはほとんど興味を示さないはずです。欲しければ買うし、そうでなければ買いません。つまり、GDP(=売上に近い概念)は不変です。


しかも、今まで海外で生産してきた最大の理由は、その方が国産に比べて安かったからです。国内生産に戻せば、コストが増え、最終小売価格は上がってしまうでしょう。商品が高くなれば、人々の購買意欲を下げてしまいます。つまり、国内生産回帰はGDPの押し下げ要因になるものと思われます。


それ以上に大事なことは、こうしたトレンドの変化は構造的なものです。図1には米国の貿易収支のグラフをつけました。リーマンショックやコロナ発生時といった景気後退期に悪化するだけでなく、好景気においても悪化しています。どう見ても、改善の傾向に向かっているようには見えません。


貿易収支が改善するとすれば、それは構造的な変化になります。時間がかかります。国内生産が本格化するのに5年以上はかかるでしょう。これに対し、米国の株価・経済崩壊はもっと早いスピードでやってくるでしょう。仮に、国内生産への回帰が米国にとって素晴らしい解決策だとしても、時間切れになってしまうでしょう。

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第百十二回 米国の凋落を示す最近の事例がありますか?

2023年6月23日

質問:

米国ではファーストリパブリック銀行などの破たんなど、金融危機が迫っている印象が強いですが、力が弱まれば、来る経済危機を乗り切ることができずに、奈落の底に落ちていくリスクが高いと思います。最近の事例の中に、米国の凋落を示すものがありますか?



回答:

ブリンケン国務長官の訪中に米国の凋落が如実に現れていました。米国としても後々まで悔いが残るようなものでした。屈辱的な姿を世界中の目にさらしてしまいました。


解説

➊最も印象的だったのは、習近平との会談です。図にあるような座席配置になっていました。米国側代表(ブリンケン国務長官)と中国側代表(王毅政治局員)とは対坐して座っていたのですが、習近平国家主席は別格の形で座りました。


これを見た人は、「ブリンケンより習近平の方が格上だ」と思ったことでしょう。事実、ブリンケンは外務大臣格なのに対し、習近平は大統領格ですから、地位に差があるのは当然なのですが、米国の国務長官が諸外国を訪れた際には、大統領格として扱われるという不文律があります。米国が世界の覇権国だからです。


従って、米国では外務長官という言い方はしないで、国務長官(Secretary of States)という言い方をします。英語のStatesとは諸外国という意味で、国務長官とは、「諸外国を管理する」といった意味です。


しかも、習近平との会談時間は35分間だったと報道されています。通訳の時間を除くと実質の会談時間はその半分になります。わざわざ遠くからやってきて、わずかな時間しかもらうことができませんでした。


❷ブリンケンが最も長い時間会談したのは秦剛外相でした。報道では7時間半(夕食会2時間を含む)だったと言われています。しかし、秦剛は中国内では外交関係者の序列2位に過ぎません。

外交のトップは王毅政治局員で、この会談は2時間半だったと言われています。


中国では行政機関のトップよりも党の同職者の方が地位が高いです。例えば、北京市長より北京市書記の方が偉いです。同じように、外相よりも党の外務トップの方が偉いわけです。


序列2位の人間と一番長い間、打ち合わせをさせられたということは、中国がブリンケン国務長官をその程度に扱ったという証拠です。


❸ブリンケン国務長官訪中の狙いは国防相の間でホットラインを築く(再開する)ことにありました。


そもそも、米国が中国を訪れる形で今回の対話が行われたということ自体、米国側が中国にお願いがあって、それを実現するのが狙いだったということです。私たちが誰かを訪問する場合、格下(またはお願いがある側)が格上を訪問することになります。外交も同じです。お願いとはホットラインの再開でした。


どうして米国はそれを願ったのか?有事に備えて国防相同士が話し合い、「これは意図した攻撃ではない。エスカレートさせないで、穏便にしてくれ」と、お互いの腹を確認するためです。別の言い方をするならば、米国はそうしたエスカレート行為を誘引する攻撃を行う密かな意思があったということです、それを中国に見抜かれてしまいました。


コロナを湖北省武漢に撒かれ、世界の悪者にされた中国は米国に対して腹が煮えくり返るほど憤(いきどお)っているはずです。そんな米国が台湾をめぐって危険行為を行うなど決して許すはずがありません。「手を出したら戦争をする」と言い切ったのでしょう。


米国は中国を相手に戦争はしないでしょう。核戦争は困るからです。今回の訪中で、経済危機時に中国有事を演出する作戦はできなくなったことになります。


米国は自国で金融危機が始まった際に、国民の目をそらすために、危機が必要だと考えています。ところが、ウクライナ戦争はウクライナの敗北でほぼ終結してしまい、今後の危機の演出に使えなくなったので、米国は他を捜していたようですが、台湾問題も使えないことが明らかになってしまいました。

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第百十一回 NY株式の暴落はいつ頃始まると考えますか?

2023年6月18日

質問:

銀行の破たん、景気の悪化など各指標からNY株式市場の天井が近いという話をファンクラブサイトで聞いています。林さんはズバリ、いつ頃株式の暴落が始まると考えていますか?


回答:

3か月程度で株価が天井を打ち、そこから暴落が始まると考えます。


解説

株価の暴落を示唆するサインが金融市場や経済に関する指標から出ています。サインには

赤信号(暴落がいつ来てもおかしくない)

黄信号(暴落が近い)

青信号(暴落はまだ先。余裕がある)

の3つがあります(図表1)。


図表2には、現在のどの指標が赤なのか、黄なのか、青なのかを記しました。それぞれの指標の内容については今日は触れません。これまでの定例発信、WIZで解説してきましたので、そちらをご参照ください。


現状では赤信号の指標が4つで最も多く、黄信号の指標が3つ、青信号指標が2つになっています。赤が優勢ですが、すべてが混在している状況です。


すべての指標が一斉に赤や黄、青を点灯するのであれば、読み方は簡単なのですが、多くの場合はこのような混在型の状況から解読することになります。


ぼくの予測では黄信号は近いうちに赤信号に変わるでしょう。また、青信号のうち最低ひとつは3か月以内に赤になるだろうと考えます。そのあたりが株価の天井となり、そこから暴落が始まると考えています。最後のひとつの指標(現在は青信号)は暴落開始とともに赤に変わるかもしれません。


5月下旬に赤信号に変わった騰落レシオ

騰落レシオが赤信号に変わりました。具体的には、株価が上がったにもかかわらず、レシオが低迷している状況が生まれています。図表3にレシオの弱気のサインを示しました。


実際の株価とレシオの関係は図表4です。S&P500は2月2日に4180ポイントをつけた後低迷していたのですが、5月中旬にはこの値を抜き、下旬には4200ポイント台にまで上昇を始めました。一方、騰落レシオは2月2日につけた値をいまだに抜くことができずに低迷しています。


騰落レシオの定義は第46回定例発信(2021年1月9日)に記しました。簡単に述べると、騰落レシオは日々の上昇銘柄数から下落銘柄数を引いたものです。騰落レシオが低迷しているとすれば、それは上昇銘柄数が増えていないことが原因です。


一方、平均株価が高値をつけてきたということは、一部のトップ銘柄だけによって平均株価が引き上げられているということになります。楽観的なムードが市場全体に波及していないと解釈できます。これは弱気のシグナルです。


このあと、騰落レシオが盛り返して、2月の高値を抜いていることも考えられます。しかし、通常はそうしたことは起きません。この状況が続けば数か月以内に株式市場が天井をつけることになります。

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第百十回 米国経済の現在を端的に教えてください

2023年6月9日

質問:

林さんの最近の記事によれば、米国経済は近いうちに天井を打つだろうといった話が書かれていました。実際に、現在はどのような状況になっているのか、それが端的にわかる統計データを紹介してください。


回答:

米国の小売の売上と失業率を見ると景気減速の兆しが明確に現れています。


第一に、インフレを除いた実質上の小売りの売り上げ(前年同月比)がマイナスになっています。


図表1には小売りの売り上げと共に、株価(S&P500、対数目盛)が表示されています。これを見ると、小売り売上がマイナスの時期には、株価が大きく下がっています。景気が悪くなると、人は物を買い控えます。すると、企業の業績は下がり、株価が下がります。


具体的には、2000年をピークにしたITバブル(株価約5割下落)、2007年をピークとしたリーマンショック(約6割下落)の時も、小売り売上はマイナスでした。


物が売れない世の中になれば、従業員を減らす動きが始まります。米国景気減速の現象を示す第二の統計は失業率の増加です。図表2にあるように、メタ(旧フェイスブック)、アマゾン、マイクロソフト、グーグルといったIT産業の大手が相次いで大型の解雇計画を発表しています。


図表3でわかるように、そうした動きがやっと失業率にも現れるようになってきました。2023年1月と4月に記録した3.4%はコロナ発生後の最低の数値だったのですが、5月には3.7%となり、過去7か月間の最高値になりました。


今後は小売り売上がさらに減少し、失業率が高まる傾向が続くでしょう。株価のピークが近いものと思われます。


なお、金融面の問題(短期金利>長期金利という逆ザヤ問題)がもたらす弊害については、本日掲載のWIZにて解説しました。

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第百九回 債務上限問題に目途がついた米国は株価が上がっていくでしょうか?

2023年6月2日

質問:米国が抱えていた債務上限問題の解決に目途がつきつつあるようです。米国のデフォルトリスクは回避されたので、ここからは株価が大きく上がると考えていいのでしょうか?


回答:目先の株価は上がるでしょうが、中期的には逆に株価が下がるリスクが増えたと言えます。


金(かね)の切れ目が相場の切れ目

解説:

株価が中期的に下がる理由は経費削減が約束されたことです。共和党が提出した法案によると、2024年度予算は0.1兆ドルの削減が見込まれます。さらに、民主党のバイデン大統領は今後10年間に4兆ドルの削減を約束するようです。


バイデン大統領の4兆ドル削減は空手形でしょう。つまり、口約束であり、やる気はありません。私たちが夏休みの宿題を毎日やらずに、最後の数日にまでため込んでいたように、政府の削減も10年間最後の数年にやるようになるでしょう。宿題は学校の先生に提出するので、必ずやらないといけませんが、政府にはそれ以上に強い権力は存在しませんし、これから7,8年も経てば経済状況も変わるので、古い約束は反故(ほご)されてしまうでしょう。政府はいつもこの手を使っています。


つまり、本当に実行されるのは来年度の予算削減0.1兆ドルだけです。しかし、これは大変な問題を含んでいます。


米国政府の予算規模は2023年度で1.7兆ドルです。これが1.6兆ドルになるわけです。前年比で6%の削減です。これ自体では対して大きな削減にはなっていないように思う人が多いかもしれませんが、株価にとっては一大事です。


2009年以降、株価を大きく引き上げてきたのはマネーの増大でした。お金が市場にどんどん供給されるので、その歩調に合わせて株価が上がってきたのです。図を見ると、3回の大きなマネーの供給(マネーの前年同月比%)があることがわかります。


ところが、2022年に入り株価は軟調になりました。原因はマネー不足です。マネーの対前年変化率も下がり、2022年12月にはマイナスになってしまいました。


政府の支出が6%削減になるということは、マネー供給も前年比マイナスが続く可能性が高いです。一言で言えば、「金(かね)の切れ目が相場の切れ目」になるということです。


NYダウは2021年につけた36,300ドルが最高値ですが、これを抜いて株価が上伸していく可能性はほぼなくなったと言えます。これからつけるのは2番天井になるわけです。そこからは大きな下落相場の始まると予想されます。

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第百八回 ゼレンスキー大統領来日の真相は何ですか?

2023年5月26日

質問:広島においてG7サミットが開かれ、ウクライナのゼレンスキー大統領も来日しました。その真相を教えてください。今後の国際情勢を考えるうえで役立つ情報はありますか?



回答の要旨:

ウクライナ大統領の来日からぼくが得た情報は次の通りです。

●ウクライナ戦争はほぼ終息。ロシアに接収された領土の回復は無理。

●戦争の指揮はウクライナ国が行っていない。

●ウクライナの最大の関心はもはや戦勝ではなく資金繰り。

ぼくの著作を読んだことのない人は「いったいなんでこんなことを言い出すのか?」と思うでしょう。来日という事実からあまりに飛躍していると思うかもしれません。その理由を解説でわかりやすく説明します。


解説:

ウクライナ戦争はほぼ終息

詳細な回答を記す前に、「ウクライナ戦争はほぼ終わっており、収束に向かっている」という事実から示しましょう。TV報道では得られない見方ですが、世界の投資家はそのように見ています。


図表1には世界の小麦価格(NY先物)を記しました。2022年2月の開戦後、4月には史上最高値をつけました。ウクライナからの輸出が減るのを見越した動きでした。実際、2022年の同国の小麦生産は前年比42%減となりました。


ところが、小麦価格はその後暴落を続け、今では開戦前の水準を大きく下回るレベルにまで下がっています。「戦争はほぼ終息した。小麦生産は元のレベルに戻るだろう」と人々が考え始めているからです。


同じことは天然ガス価格についても言えます。これについては、定例発信第103回(2月10日:ウクライナ戦争は世界の脅威ではなくなっている)に記しました。簡単に要旨を示すと、9ドルまで上昇した天然ガス価格が開戦前の水準を大きく下回り、現在2ドル近くにまで下がっています。戦争終息後のロシアは欧州に対する天然ガスの供給減(または停止)をやめて、元通りに戻すだろうという見方に変わったためです。


つまり、小麦(ウクライナ側)から見ても、天然ガス(ロシア側)から見ても、「戦争終息に間違いなし」というのが世界の投資家の標準的な見方です。これに対して、日本や欧米のTVでは戦争は継続中であり、不安定な地政学的な情勢が続くと宣伝しています。



国際情勢の読み方:

それでは、ゼレンスキー大統領来日の真相について話を進めましょう。


ここで、見方の基本をお話ししておきます。国際情勢を読み解くために最も大事なことは、偽ることのできない事実だけに基づいて事態を解明していくことです。逆に、最もやっていけないことは、TV報道や政治家などの発言を鵜のみにすることです。例えば、G7サミット後に発表された宣言文などは全く価値がありません。発言は後日どのようにでも修正、撤回できるからです。


最も大事な事実とは、「大統領が来日した」という点です。これは偽ることのできない事実です。では、このことがどうしてそんなに重要なのか?


戦争は当事国にとっての一大事です。戦勝のためには全力を傾けないといけません。そのためには、大統領は自国にいることが必須です。刻々変わる戦況に基づき、指示をいろいろ出す必要があるからです。敵は一般に不意を突いてくるもので、何が起きるかわかりません。戦況以外についても、例えば、治安、自然災害、食料確保、電力、福祉といった各方面にも指示を的確に出す必要があるでしょう。外遊している余裕はありません。


このため、ウクライナに支援を行うと表明したG7諸国は相手国まで出向く必要がありました。事実、2023年3月、日本が訪問し、G7全7か国が訪問した形になりました。


ところが、ゼレンスキー大統領は2023年5月になって独仏伊英を訪問し、その後サウジアラビア、日本を訪問しています。長期的に国から離れています。戦争中の国家の代表者ができることではありません。事実、敵国のロシアのプーチン大統領の外遊は2日間のタジキスタンとトルクメニスタンの訪問で、軍事支援の要請を行っただけです。


大統領が長期の外遊を実行できた背景は、戦争がほぼ終結したからでしょう。


大統領外遊の裏事情

では、ウクライナの大統領が最近になって、なぜ日欧を歴訪したのか。どうしてもしなければならない事情が出来たのでしょう。それは資金繰りが相当に厳しくなったからだと推定できます。


このことは、私たちの日常生活から考えればわかるでしょう。私たちが先輩や恩師に会う場合、また、頼みごとがある場合はこちらから出かけます。相手に向かって「こっちへ来い」と呼び出すことはありません。自国に外交も全く同じ原理で動いています。戦争が終結に近いと世界の首脳陣が気づいているのに、G7諸国を再度ウクライナに呼び出すのは無理です。だから、ウクライナ大統領は外遊の必要がありました。頼みごととは資金援助です。


さらに言えることは、戦争が終結に近いとは言うものの、完全に終結していない段階では大統領の長期外遊はまず不可能です。ということは、大統領自身が戦争の指揮を取っていないからこそ可能になっていると考えることができます。


誰がウクライナ戦争の指揮を取っているのか?世界の覇権国の米国以外にはありえないでしょう。米国は軍需産業振興のために戦場を必要としており、ウクライナ戦争をここで終わらせたくはありません。そこで、ウクライナ大統領を広報官のように仕立てて、世界各地を回らせ、「領土奪還(=平和)が実現するまで戦う」と表明させています。


米国が背後にいる以上、ウクライナ戦争は形の上では続くことになるでしょう。気の毒なのは、いつまでも荒廃から立ち直ることのできないウクライナ国民です。


ウクライナから私たちが学ぶこと

このように見ていくと、TV報道と真相との間には180度といっていいほどの乖離があることがわかります。


さて、ここで話は金融問題に戻ります。

米国をはじめとするG7諸国は債務負担に耐え切れず、近いうちに破たんの道を歩むことになると思います。しかし、それが発表される直前までは、「財政は問題ない。債券の返済は確実に行う」という公式表明とそれに基づいたTV報道がなされるだけでしょう。


ただし、小麦価格や天然ガス価格のように、国際情勢の真相を伝える情報がどこかにあるかもしれません。それをお伝えすることがぼくの責務だと思っています。


  •  *  *

国際情勢の真相を知る最大の目的は賢く生きるためです。具体的に言うと、これから起こるかもしれない日本の金融危機・恐慌において、自分の資産を守ることのできる人になることです。


身近な例で考えてみましょう。学校で子供がいじめを苦にして自殺をしたり、タレントがセクハラ問題を起こしたりした場合、学校や所属事務所は「状況を全く把握していなかった」と言うでしょう。それを聞いた私たちは、「そんなはずはない。しらを切っているに違いない」と思うでしょう。責任問題を抱えたくない組織としてはありふれた対応です。


同じようなことが国際社会でもまかり通っています。ただし、国際社会の方が嘘を見抜きにくいです。理由は政治家だけでなく、TVをはじめ、マスコミも皆ぐるになって私たちを騙(だま)そうとするからです。


今日は、騙されずに賢い人になれるよう、ゼレンスキー大統領の来日の目的の読み解きながら、国際情勢の読み方についてお話ししました。

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第百七回 円高になるとゴールドの儲けが目減りしませんか?

​​2023年5月19日

質問:

米国で大きな金融恐慌が起きた場合、ドル安・円高が進行するのではないでしょうか?仮に1ドル65円となった場合は、ゴールド価格は半減し、儲けどころか損になってしまいませんか?


回答:

その心配はないです。大幅な円高は投資家にとっては怖いものではなく、むしろ望むところです。もし1ドル65円ではなくて、50円とか30円とかになれば、ゴールド投資からの儲けはさらに大きくなるでしょう。


解説

為替と金利が同時に動く

現在の価格(おおよそ):

ゴールド                    NY価格 (オンス)                     2000ドル 

田中貴金属小売価格               9700円

ドル円相場                                                           135円


さて、ドルが急落し半分の価値になるとします。すなわち、ドル円相場は半分の67.5円になるとします。その場合、NY価格2000ドルは日本円では9700円の半分の4850円になってしまいます。これでは、利益の目減りどころか、大きく損になってしまう人が出てくるのではないか。これが質問の趣旨です。


ご安心ください。そのようなことは決して起きません。

金融市場ではひとつの価格(この場合、ドル円相場)だけが大きく動いて、それ以外が静止しているということはありません。


ドル相場が大きく下がる場合、何が起きているのか?簡単に言えば、米国が非常に悪い状態になっていることになります。その場合、NYダウ平均株価や金利、ゴールド価格にも大きな変化が訪れていることでしょう。

その変化とは何か?


通貨が大きく下がるということは、その通貨の信用が下がっていることになります。国内外で「ドルは信用できない」と思われ始めたら、債券価格の暴落が始まります。リーマンショック直前(2008年)にはGDP比64%だった米国の債券発行額はコロナ後の2020年には最高で135%を記録しました。お金の量が経済の規模をはるかに超えて増えることに人々が警戒心を抱いた時に、債券暴落は起きます。



通貨暴落:アルゼンチンの実例に学ぶ

債券が暴落するは金利が上昇することになります。


実例は図にあるように、2001年前後のアルゼンチンです。アルゼンチンの通貨であるペソはドル:ペソ1:1から3.85:1にまで下がりました。すなわち、約4分の1(正確には3.85分の1)に下がったということです。価値が約26%となりました。(下落率は74%です)


この際、国内の金利は暴騰しました。10%未満だった金利は最高で80%近くにまで上昇してしまいました。


米国で同様なことが起きれば、ドルで表示されたゴールド価格が高騰することになるでしょう。理論的にいえば、人々がドルの価値を半分しか認めないようになれば、通貨が半分の価値になり、ゴールド価格は2倍になる計算です。


ただし、それは理論的な計算に過ぎません。実際は、「頼りになるのは紙切れのドル紙幣ではなく、やっぱり本物の通貨ゴールドだ」ということになり、人気が殺到しゴールド価格は2倍どころか大幅高騰が必至でしょう。


世界にあふれるドル金融資産は150兆ドル程度あると推定されています。これに対して、人類が歴史上掘り出した世界中のゴールドはその10分の1程度の価値しかありません。ゴールドはドルに対してレアものなのです。希少価値という観点からも大幅上昇が見込めるようになるでしょう。


そのようなわけで、大きなドル安は投資家にとっては願ってもない幸運をもたらすものだと考えてください。

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第百六回 6月に米国がデフォルトするリスクがあるという噂を聞きました。どう対応したらよいでしょうか?

​​2023年5月12日

回答の要約:

米国債はデフォルトしないでしょう。ただし、米国債が経済を破壊しつつあることは事実です。3月からの銀行破たんの責任は米国債の大量発行にあります。


解説:

政府機関の一部停止は起きるかもしれない

6月デフォルト説の根拠は財務長官が連邦議会指導部に送った書簡です。その中で、「資金繰り策が6月1日にも行き詰まる可能性がある」と指摘し、デフォルトを避けるために政務債務の上限を引き上げるように求めました。


米国の債券は政府が勝手にどんどん発行できないように、議会が上限を定めています。この歴史は1917年にさかのぼります。100年を超える歴史がある中で、債務上限が問題となって、政治上経済上の大混乱が起きたという前例はありませんから、今後も大きな心配はないでしょう。最近では2011年、2013年、2015年、2017年と債務上限が問題になりましたが、大きな混乱はありませんでした。


それでも、小さな問題は生じる可能性はあります。私たちの記憶に新しいのは、2013年10月1日から16日まで政府機能が一部停止したことです。債務上限問題を発端として予算成立が遅れ、政府機能の中で重要でないものが停止されました。例えば、図書館や国立公園です。投資家に関係する分野であれば、鉱山会社や機関投資家の先物ポジションの公開も停止となりました。



米国の現状は江戸時代の通貨に似ている

政府は簡単には破たんしません。理由は自分でお金を生み出せるからです。私たち個人や企業はお金がなくなると、生活や事業ができなくなります。借金をしていた場合はそれが返済できなくなり、倒産状態になります。お金が有限だからです。


これに対して、政府はお金を発行できるので、破たんが近づいたら、お金を発行すれば、それを防ぐことができます。私たち個人や企業は破たんしないようにお金を稼ぎ続けなければなりませんが、政府にはそうした努力は要りません。債券を発行すればいいわけです。そのため、どんな国でも借金の額がうなぎ上りに増えてしまっています。


政府に絶大な信頼がある場合は、そうした債券発行は認められますが、信頼が薄れ始めた場合、一気に借金問題が火を噴(ふ)くでしょう。


日本の例を挙げるならば江戸時代の天保通宝(てんぽうつうほう)です。額面が100文で、寛永通宝(かんえいつうほう)の100倍の価値があると当初決められました。ところが、通貨の含まれる金属の含有量からは寛永通宝の5~6枚分の価値しかありませんでした。幕府は鋳造するだけでぼろもうけになるお金を発行したのです。この通貨は1835年から1870年の間に4.8億枚が発行されたという記録があります。各地でにせの天保通宝が作られたこともあり、現在でも1~2億枚が残っていると言われているほどです。


そんな通貨でしたので、当初は100文の価値を保っていましたが、すぐに巷(ちまた)では80文の価値しか認められなくなってしまいました。また、のちに大きなインフレを引き起こす起爆剤にもなりました。後世になっても、新時代に乗り遅れた人やそれに適応するだけの才覚の足りない人を揶揄(やゆ)して「天保銭」と呼ぶこともあったほど、天保通宝の悪銭ぶりは庶民にまで浸透したのです。



銀行の破たんの責任は大量の米国債にある

米国の債券は天保通宝の道を歩み始めた可能性があります。それが3月に始まる3行の銀行破たんです。3行とも昨年12月の決算までは業績やバランスシートは健全そのものでした。それが一気に破たんに追い込まれたのです。


その理由は図を見れば明らかです。図は米国全銀行の証券の含み損益を示したものです。これを見ると2022年に入ってから巨額の含み損が生じていることがわかります。


なぜこのようなことになってしまったのか?それは米国政府が債券を発行し過ぎたためです。2008年のリーマンショック直前、政府の発行した債券はGDP比64%でしたが、コロナの大流行時の2020年には135%にまでになってしまいました。


発行された債券を多く引き受けたのが米国の銀行です。2008年から2022年の間に貸出が1.5倍しか増えなかったのに対し、証券投資は3.0倍に増えました。従って、米国の銀行は債券価格の変動によって収益が大きく左右されるようになってしまったのです。


しかも、米国政府は金融機関の債券保有を促す会計基準を設定しています。それは「満期まで持つ意志がある場合は、途中では含み損を計上(=開示)しなくて良い」というものです。債券は(発行した会社や政府が倒産しない限り)、最終的には額面の100に戻ります。だから、途中の価格の下落には目をつぶってよいというものです。銀行が債券投資に熱心な理由のひとつはここにあります。



開示義務のない含み損があまりに大きい

図をみればわかるように、2022年の計上(=開示)義務のない含み損は計上義務のある含み損と同額くらいに大きくなっています。金利水準が上がってきたので、大量に抱えた債券から大きな損失が生まれたのです。


大口の預金者たちの中にはこの大きさが心配になり、預金を引き出し始めたものと思われます。噂(うわさ)が噂を呼び、ついに預金引き出しは銀行破たんの規模にまで達しました。銀行が貸出を中心に営業を行っていたら、このような事態にはならなかったでしょう。


米国債そのものに信用不安が出てきたわけではありませんが、米国債が原因となって脆弱銀行を破たんに追いやったのは確かです。今後もこうした破たんは続くものと思われます。

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第百五回 米国の金融危機は今後どうなるのでしょうか?

―史上2番目大きさの破たんが起き、心配です。

2023年5月5日

質問:

2023年5月1日朝にファーストリパブリック銀行が破たんしました。今年に入ってから3番目の破たんです。今後のこのような状況が続くのでしょうか?



回答:

銀行破たんはだらだらと続くでしょう。次の破たん候補はパックウエスト銀行です。ただし、当面は米国の経済や金融の屋台骨(やたいぼね)を揺るがすような事態には至らないでしょう。


●市場には安堵感がある

市場はこの銀行の破たんを冷静に受け止めていることがわかります。ファーストリパブリック銀行の破たん(史上2番目の大きさ)発表を受けて、5月1日のNYダウ平均株価はわずかー0.1%の下落にとどまったからです。「このクラスの銀行がつぶれても、経済全体には影響しない」と安堵していたようです。


それでも5月2日から3日間ダウ平均は大きく下げました。市場は「5月1日の冷静な対応は間違っていたのかもしれない」と思い始めているのかもしれません。しかし、事態が本当に大きな問題につながるのであれば、当日から大きく下げたはずです。投資家の間には「米国はまだ安泰」という気持ちがあるようです。


●ファーストリパブリック銀行は少し前まで健全な銀行だった

ファーストリパブリック銀行の破たんは3月に破たんした2行と同じ構造を持っています。健全な銀行が一気に劣悪な銀行に変身してしまったということです。


図表1にあるように、2020年から2022年のファーストリパブリック銀行の業績をみると、順調に拡大してきました。総資産、純資産は2年間に5割以上も伸び、一株あたりの利益も4割伸び、一株当たりの純資産は3割の伸びを示しました。


一株当たりの純資産(2022年末)は74ドルです。これは、会社が2022年末に解散した場合は、株主は一株当たり74ドルもらえるということです。理論的には株価は74ドルを割り込まないとされています。


ところが、事態が急変すれば、一株当たりの純資産や過去2年間の業績は預金者にとって何らの価値もなくなってしまいます。2月には147ドルあった株価が3月にはあっさり74ドルを割ってしまい、シリコンバレー銀行、シグニチャー銀行が破たんした3月中旬には31ドルになってしまいました。約8割の下落率です。最終的には5月1日の破たん直前の株価は3.5ドルであり、2月の高値から98%の下落となりました。


4月下旬に発表になったファーストリパブリック銀行の第一四半期の業績によると、預金が4割も減少してしまいました。預金減少幅は575億ドルでした。しかも、同行は大手銀行団から300億ドルを預金してもらい、預金額の増加を図っていました。この300億ドルがなければ、預金額の減少は875億ドルだったということになります。預金減少幅6割です。これでは破たんの道しか残されていないのがわかるでしょう。


●次の破たん候補はパックウエスト銀行

現時点では破たんが間近に迫った銀行があるかと言われれば、パックウエスト銀行です。図表2に下落率の大きな銀行名を挙げました。2月の高値から43%~88%の下げ幅であり、筆頭が約9割下落のパックウエスト銀行です。ファーストリパブリック銀行の例でわかるように、いったん預金者の不信をかうと、一気に株価が落ち、破たんの道を転げ落ちてしまいます。


パックウエスト銀行は2023年第一四半期(1~3月)においても、預金が増えています。具体的に言うと、2022年末には271億ドルだった預金が3か月後には282億ドルになっています。11億ドルの増加です。しかも、4月25日現在、さらに7億ドルが増えたと発表しています。


最後の7億ドル増加の発表には同行の並々ならぬ危機感が現れています。

通常決算の発表(この場合、2023年3月末までの四半期決算)にはそれ以降に起きた事象(翌月4月のこと)は含めないことになっています。例外は株価に悪影響を与える悪い事態(例:地震や火事、食中毒発生で会社に大きな損害が発生した場合)が起きた場合で、この際は報告義務があるのですが、良いことは触れないのが通例です。同行がわざわざ「預金が増えています」と発表したのは、「当社には問題はありません」と言いたかったのです。


●ファーストリパブリック銀行破たん後に株価が暴落

パックウエスト銀行には大きな弱点があります。それは同行の第一四半期の収益が大きくマイナスになったことです。具体的には、昨年の第一四半期の一株当たりの利益が0.33ドルだったのに対し、今年は10.22ドルのマイナスでした。実額で12億ドルのマイナスです。


会社の通常業務は順調だったのですが、のれん代の償却が一時的に発生したと発表しています。のれん代は現金がマイナスになるのではなく、帳簿上でマイナスが出たに過ぎません。ただし、預金者にはこのような違いはよくわかりませんから、「パックウエストは赤字になった。危ない」と認識されてしまえば、株価はさらに下落し、破たんにつながってしまうことでしょう。


図表3を見ると、ファーストリパブリック銀行の破たん以降に株価が大きく下がったのがわかります。「次はパックウエストだ」と思われ始めた可能性があります。

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第百四回 中央銀行はゴールドを買い続けるだろう

2023年5月1日

各国中央銀行のゴールドを買い続けるだろう。

中央銀行は順調に買いを進める唯一の需要家だ。金の需要家を4つに大きく分けると図表1のようになる。


全体の46%を占める宝飾需要は長期減少傾向にある(図表2)。ゴールドよりも別の宝石や貴金属への関心が高まっているようだ。テクノロジー(図表3)も同様に減少傾向だ。技術開発の進展とともに電子機器ひとつ当たりに用いるゴールドの量が減少しているからだ。


これに対して中央銀行(図表3)は需要増加の傾向にある。2010年には79トンだった中央銀行の買いは2013年になり600トンを超えた。400トンを割った年もあったが、2022年になり大幅に伸びた。


中央銀行も投資家の一面があり、今後ゴールド価格が上がると思っているからこそ買いを進めているのだ。それも、一般の投資家に比べ、長期的な視点に立っている。長期的な視点とは、「ドルはその価値をもう維持できないだろう」という予測に基づくものと考えられ、今後も買いが進むものと思われる。


図表4によれば、現在ゴールドを買い進んでいる代表国はロシア、インド、中国、トルコだ。これ以外にも年間に30トン以上買っている国々を見ると、米国に友好的な国々は少ない。米国の凋落がよく見えるのだろう。しかも、これらの多くの国が過去にデフォルトをした経験を持つ。「通貨は安全なものではない。いったん信用を失えば、あっと言う間に大崩れとなる」ということを身をもって体験しているのだ。


なお、短期的に最も変動するのは投資需要(図表2)だ。価格が上がってくれば買いが増える。価格が下がれば売りが増える。といった構造になっている。


ゴールド価格が2000ドルを超えた今、投資需要は年末にかけて増えていくだろう。中央銀行の堅実な需要増と相まってゴールド価格の押し上げ要因になると思われる。

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第百三回 機関投資家は金価格をどう見ていますか?

2023年4月22日

質問:

今週のWIZの解説において、鉱山会社の人たちがゴールド価格の今後に強気であることがわかりました。これに対して、世界の機関投資家はどのように見ているのでしょうか?


回答:

ゴールド価格があまり上がるとは思っていません。

これはとてもいいニュースです。通常、機関投資家は間違えるからです。逆を行くと儲かることがほとんどです。


『株の暴落サインを見抜く方法』(宝島社)では機関投資家が如何に無能かを過去の実績をもとに論じました。機関投資家は相場が下手であり、「価格が上がればどんどん買う。下がればどんどん売る」という発想です。これでは勝てません。しかし、それは私たちにとってとてもありがたいことです。その人たちの手口がわかっているからです。逆を行きましょう。


話に入る前にお伝えしておくことは、機関投資家は顧客からのマネーが常に入ってくるので、買いポジションを取るのが普通だということです。ここが鉱山会社と大きく違う点です。


図の中のAとBとCの地点に注目してください。買いポジションがマイナスになっている時期です。この時期は買いよりも売りが多くなっている時期です。よく見ると、その後大きく相場が上がっているのがわかります。機関投資家が底値で売っている様子が明らかになっています。


AとBの時期ともにその後相場が上昇しています。同じようなことが起きるとするなら、Cの地点(直近の売り越し時期)は2022年秋ですから、ゴールドの上昇相場はまだこれからも続くと考えられます。


ただし、注意点があります。機関投資家のポジションが急速に変わる点です。図中に3か所丸印(点線がついた丸印)があります。大きな買いポジションを積み上げた時期です。(つまり、その後相場が軟調になることを示唆した時期です。)丸印の前の時期を見ると、売り越しから急速にポジションを拡大したことがわかります。


機関投資家がこのような行動に出た時は注意が必要です。今のところは、大きな買い越しに向かう兆候は見えませんが、そのような兆しが出始めた場合は皆さんにお知らせします。

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第百二回 これからくるのは軽微な金融危機だ

2023年4月15日

金融危機には重大なものと軽微なものとがある。これから訪れるのは軽微な金融危機だろう。その2つの危機はどのように見分けたらいいのだろうか?


簡単な方法がある。それは金利を見ることだ。正確に言うと、長期金利(10年国債の金利)を見ることだ。10年債の金利は最も一般的なもので、金利と言えば、これを指すと言ってよい。


重大な金融危機の例 図1

実例は2010年に始まるギリシャの金融危機だ。株価がピークから半分以下になった時点で金利は上昇に転じた。5%未満だった長期金利は最終的には2011年末に30%にまで上昇した。金利がここまで上がるということは、お金の価値が信頼を失ったということだ。失業率が上がり、賃金はカットされ、庶民の生活は困窮した。


軽微な金融危機 図2

実例は米国のリーマンショックだ。図2にピンクで色づけて示したように、株価は6割下がったが、金利は5%台から2%近くまで下がった。金利が下がるということは、国債が買われたということだ。つまり、国家に対する信頼は失われなかったというより、深まったといえる。


リーマンショックは第二次大戦後、米国最大の金融危機だったが、傷ついたのは主に金融機関であり、一般人の生活が困窮したということはなかった。サブプライムローンを借りていた人は抵当としていた物件を手放すことになったが、それ以上の負担はなかった。その後10年も経つと、リーマンショックの跡がどこにも感じられないようになった。


これから来る危機 図3

これから来る金融危機はリーマンショック型だろう。その理由は現在の長期金利を見ればわかる。シリコンバレー銀行が破たんした3月10日から金利は低下傾向にある。これなら、金融危機は怖くない。


最終的には金利上昇を伴う金融危機が起きるだろうが、それはまだ先の話だろう。長期金利を見る習慣を身につけて欲しい。

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​第百十一回 金融危機は再び起こるだろう

2023年4月7日

シリコンバレー銀行とシグネチャー銀行の経営破綻による金融危機は当面は沈静化したかのように見える。

理由の第一はNYダウの上昇(図1)だ。金融危機発生前の高値(2月13日)は34,245ドルだった。金融危機が発生し、上記2行が3月12日までに国有化され、株価は13日に31,819ドルまで下落した。5%の下落だった。ここからNYダウの上昇が始まり、4月6日現在33,485ドルにまで回復している。下落幅が小さかったうえに、NYダウは急速に戻しているということになる。


理由の第二はジャンク債金利の低下(図2)だ。(ジャンク債金利については、定例発信2022年11月11日の「ジャンク債の調べ方」参照)

2023年3月6日には4.37%だった金利が金融危機を受けて上昇し、3月17日には5.42%まで上昇した。しかし、その後は下落に転じ、4月5日現在5.05%となっている。

金融市場は危機が去ったかのように振舞っていると言っていい。


ところが、本日同時公開したWIZのチャート(図2:ゼオン銀行)は、金融危機がまだ遠のいていないことを示している。

どちらが正しいのだろうか?


プラスとマイナスの情報が錯そうした場合、マイナスが優勢になるのが通常だ。投資家はリスクに敏感だ。少しでも危険な兆候があれば、資金を引き揚げる。


このように考えると、脆弱銀行には金融危機が再来するだろう。2行の国有化決定以降も株価が続落するような銀行は信用できない。いつかはこうした銀行も破たんする日が来ると人々は考え始め、やがては取り付け騒ぎに発展するリスクが高い。取り付けが1行にでも発生すれば、米国政府はそれを受けてさらなる手を打つことになるだろう。


事態が落ち着けば、NYダウと脆弱銀行の本格的な上昇が始まるはずだ。投資家は米国政府の画期的な銀行救済策を待っていると考えられる。

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第百十回 米国発の金融危機はまだ暗い影を落としたまま

2023年3月31日

米国が金融危機から脱するにはもう一段の施策が必要なようだ。

本日掲載のWIZにて詳しく述べたように、金融危機の行方を考えるには、株価を見るのが最も適切な方法だ。大手銀行と脆弱銀行では株価の動きが大きく違うことがわかる。


米国最大手のJPモルガン銀行、最大手の一角をなすシティバンク、ドイツの最大手銀行のドイツ銀行の株価を見てみよう。3行とも2022年10月につけた安値を割り込んでいない。つまり、投資家は「3行とも半年前の時点より、経営が悪化していない」とは考えていることになる。しかも、この中で一番大きく下落したドイツ銀行ですら2023年に入ってからの下げは3割に過ぎない。人々は「大手は安泰」だと思っているのだ。


これに対して、脆弱銀行は様相が違う。実質倒産状態にあるクレディスイス銀行は1年以上前から株価が続落してきた。国有化の次の対象候補としてやり玉に挙がっているファースト・リパブリック銀行は2023年に入ってから9割下がり、「次の次」の候補のひとつとなってしまったゼオン銀行は5割の下げだ。


現状が続けば、「大手は安泰だが脆弱銀行は危ない」という投資家の考えが庶民層に徐々に浸透してしまい、最終的には米国に20行程度あるとされる脆弱銀行は皆破たんしてしまうだろう。それはさらに大きな金融危機を引き起こしかねない。「今のままの政府の施策では、金融危機は防ぎ切れない」と投資家は思っているのだ。従って、政府はある種の基準(脆弱銀行の基準)を決めたのちに、「この基準を満たした銀行の預金は全額保護する」といった第二弾の安定策を打ち出すことになるだろう。


注目はファースト・リパブリック銀行の株価だ。同行が40ドルまで戻った時点を「金融恐慌が沈静化した証拠」と考えていいだろう。


銘柄コードは以下の通りです。株価の検索方法については、本日掲載のWIZをご覧ください。

銀行名:銘柄コード

JPモルガン:JPM

シティバンク:C

ドイツ:DB

ファースト・リパブリック:FRC

ゼオン:ZION

クレディスイス:CS

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第百九回 クレディスイス銀行救済の真相について、私たちが知っておくべきことはなんでしょうか

2023年3月25日

質問:クレディスイス銀行救済の真相について、私たち投資家が知っておくべきことは何でしょうか。


回答:

クレディスイス銀行の救済は完全に終わったものではありません。2つの点で大きな問題を抱えています。今後の金融危機の引き金となるリスクもまだ含んでいます。以下の解説を加えます。


1. UBSはクレディスイス銀行を買収しないで逃げる可能性がある。

最も大切な点は「UBSとクレディスイスが年内の合意を目指す」とした点だ。クレディスイスの救済を行うために急遽まとめられた合意にしては、あまりに期間が長すぎではないか?


UBSは年内いっぱいをかけて、クレディスイスの資産を洗いざらい調べるつもりだろう。その中で、「3月の合意の時点では隠されていた含み損が多額であり、到底合意を履行することができない」と突っぱねるつもりだろう。または、スイス金融当局から再度の多額の融資を引き出す作戦だろう。また、買収が長引けば、その間にクレディスイスが倒産してしまう可能性がある。UBSはそれを狙っている可能性もある。


こうしたUBSの戦略はビジネス上は正当なものだが、欧州全体を巻き込む金融危機を引き起こすリスクがあることも事実だ。


クレディスイスの資産内容はよほど悪いらしい。2023年3月17日時点(合意直前)の株価の時価総額が74億フランだったのに対して、UBSは30億フランで買収することに合意した。「買収に半額以下しか出しません」としたわけだ。さらに、政府から90億フランの保証を得た。これは、買収の際に生じ得るかもしれない損失に引き当てるためだ。その上、政府に頼んで、クレディ・スイスの約160億フラン相当の債券を無価値にしてもらった。


これらを合計すると、74億+90億+160億=324億フランを得たことになり、それを30億フランで買収するという話に聞こえる。だとしたら、おいしい話だ。しかし、実態はそうではなく、これから300億フラン程度の損失が出てくるというのが政府やUBS関係者の見方だということだ。300億フランは4.3兆円であり、この損失が明るみになった時点で金融界は動揺するだろう。


2. 欧州の債券市場(劣後債)が大荒れになる可能性がある

今回のクレディスイス買収劇最大の問題は、スイス金融当局がクレディスイス発行の債券(AT1債:下注)160億フラン(2.3兆円)を無価値にしたことだ。これはやってはならないことだ。


通常、会社が倒産状態になると、最初に弁済義務があるのは株主だ。つまり、株価はゼロにさせられる、その次がAT債の投資家だ。AT1債は株よりは安全だが一般の債券よりはリスクが大きいのが特徴のはずだった。


しかし、スイス金融当局はこのルールを破り、株主を保護する一方、AT1投資家に迷惑をかけさせた。順番が違う。AT1債の投資家は怒り狂っている。


このため、AT1債の市場は大混乱だ。図はAT1債に連動するETFの価格を示したものだ。2023年3月に入ってから暴落している。AT1債の市場規模は33兆円程度だと報じられ、クレディスイスは2.3兆円のAT1債を発行していた。


国別の詳細情報はないが、AT1債は欧州の金融機関が発行したものが多いという。クレディスイスやそのほかの大手金融機関(例:ドイツ銀行)に大きな問題が発覚すると、AT1市場全体が消えてなくなるような大暴落が起きる可能性がある。それは大きな金融危機につながってしまうことになるだろう。



注:

今回無価値になったA1T(Additional Tier 1)債は金融機関が発行する永久劣後債。元本の返済の必要はなく、金融機関はクーポン(利子)だけを払っていればよい。金融機関の資本比率が一定の水準を下回ると、株式に転換されたり、元本が減額されたりする可能性がある。

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第百八回 米国大手銀行の破たんから学んだこと(詳しい説明)

2023年3月18日

米国経済の真相はかなり悪い


米国のシリコンバレー銀行(3月10日)、シグニチャ―銀行が破たんし、国有化された。今回の破たん劇で学んだことは、米国経済の真相は決して明るいものではなく、一皮むけば、地獄のような暗さに満ちているということだ。今後は、大統領の「全額預金保護」発表によって事態は好転し、株価や景気は堅調に推移するだろう。


それでも「自分の預金は本当に大丈夫だろうか」という不安は残る。そのため、全額保護という政府発表ににもかかわらず、預金を引き出す人は増えてくるだろう。特に欧州で銀行破たんのニュースが出てくれば、米国民の心配度は大きくなってくる。


やがては、人々は政府の楽観的な発表や施策を信じなくなり、自衛行動を続けるようになる。具体的には、政府の「全額保護」施策にもかかわらず、預金引き出しが止まらなくなるだろう。いったん事態が悪化すれば、あれよあれよという間に恐慌に突入していくことになるだろう。


ただし、それはまだ先だろう。

予測ができなかった2行の破たん


今回の2銀行の破たんは2つの点で今までと違ったものであった。第一番目は米国株価が高値から25%下落した時点で起きたことだ。危機が始まるのは通常はもっと深刻な事態が起きた時点(例:株価50%下落)であることが多い。


両行の破たん時の株価にも注目だ。図表1の株価のチャートを見ても両行とも高値からは大きく下がってはいるものの、破たんが発表となった時期の株価は通常なら破たんが起きるレベルではない。具体的に言うと、シリコンバレー銀行は高値から65%下落した時点、シグニチャ―銀行は75%下落した時点だった。欧州の巨大銀行(ドイツ銀行、クレディスイス銀行、ウニクレデイト銀行、ナットウエスト銀行)は既に高値から90%以上の下落となっている(しかも破たんしていない)のと好対照だ。


第二に、業績も順調だった。図表2に業績をみると、シグニチャ―銀行は純資産、一株利益とも2021年から2022年にかけて伸びている。シリコンバレー銀行の場合でも、2022年(12月決算)には2021年より純資産、一株利益とも下がっているが、大きな下落ではない。これも破たん会社の特徴が現れているとはいえない。

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第百七回 米国の経済基調はまだ明るい

2023年3月10日

米国の経済はまだ明るい。人々は先行きを楽観視している。それを端的に現わしている統計が個人消費だ。直近2023年1月は前年比7.9%の上昇となっている。図1を見ると、米国の長年の消費の伸び率は5%程度だから、現在の基調の強さがわかる。


失業率も低く推移している。直近2023年1月は3.4%であり、コロナ後の最低値だ。ところが、アマゾン、グーグル、マイクロソフトなどは既に各社1万人を上回る解雇を発表しており、それが今後は本格化する。したがって、社会全体の失業率は増加に転じるだろう。ただし、それまでの短い間は人々は経済の良さを謳歌しているものと思われる。


図2にあるように、失業率(の逆数)と株価は相関性が高い。失業は徐々に大きくなっていくだろうから、株価はそれまでの間、当面は強く推移することになるだろう。

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第百六回 1000万円までの預金は本当に守られるでしょうか。

2023年3月3日

1000万円までの預金は本当に守られるでしょうか?日本の国債がデフォルトしたら、銀行はすべて破たんすると聞きました。その際、預金を守るだけの十分な資金があるのでしょうか?



回答:1000万円まで守られるという政府の公約は信用しない方がいいでしょう。


政府はインフレを起こす

日本にはペイオフ制度があり、政府が「1000万円までの預金は守る」と言っていますから、おそらく(表面上だけでも)実行するでしょう。


それでは、本当に安全なのかと言えば、それは違います。インフレを起こせば必ず達成できるからです。例えば、物価が100倍になれば、返却する金額は実質100分の1になります。1000兆円の借金が10兆円になってしまう計算です。これなら、借金は返せます。100倍のインフレとは日本にて第二次大戦敗戦後(1944~1950年)に実際に起きた事態です。


政府は、「嘘はついていない。預金は全額守った」と言い張るでしょう。国債もデフォルトせずに全額返却するでしょう。しかしながら、実質は私たちの財産はほとんどが奪われる事態となります。


「政府がインフレを起こす」と書きましたが、実際は市場が起こします。図表1を見ればわかるように、これまで下がり続けてきた英独の国債金利は昨年から急激に上昇しています。政府にデフォルト危機が迫れば、市場はさらに金利を上昇させます。国債は暴落し、インフレが始まります。


銀行の損失の具体像はこんな感じ

銀行がどのような損失を被るのか、具体的なイメージをつかんでおきましょう。


図表2には現在のみずほファイナンシャルのバランスシートを記しました。237兆円の総資産、9兆円の株主資本です。

図表3にみずほファイナンシャルの金融危機時の損失を記しました。国内外の国債(36兆円)が実質デフォルトするほか、株価が半分にまで落ち(損失4兆円)、2割の貸し出しが焦げ付くと予想します(17兆円)。すると、現在ある237兆円の資産に合計57兆円の損失が生じます。


こうした事態により、株主資本(9兆円)はゼロ、社債(10兆円)はデフォルト(債務不履行)になります。また、保護されない預金(全体の1割と予測:15兆円)は全額没収になり、それ以外の負債も23兆円が返済不能になります。


図表4にあるように、237兆円あったバランスシートは57兆円の損失により、180兆円に縮小します。ペイオフ非対象の預金は全額没収と考えるべきです。


預金保険機構は預金を守ってくれるのか?

日本の預金総額は2022年度で1405兆円あり、このうち9割がペイオフ対象の預金です。実額は1268兆円です。これに対して、預金保険機構が準備している資金はたった5兆円です。


5兆円では全く足りません。実際に緊急事態が起こった時には政府はこの金額を大幅増額するかもしれません。しかし、それは先に書いたように、大幅なインフレ下で行うものになりそうですから、問題が解決しないのは言うまでもないでしょう。

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第百五回 NY株式市場は高値が続くだろう

2023年2月27日

騰落レシオが先行きの強さを示している


図にあるように、S&P500は2022年8月の高値を2023年2月の時点ではまだ抜いていない。これをもって、多くのアナリストが、「米国株が下落基調に戻る可能性が高い」と言い出している。


これは間違いだ。騰落レシオの高値(2023年2月)が前回の高値(2022年8月)を抜いた。これは投資家が強気である証拠だ。一般に、騰落レシオの方が実際の株価よりも市場の実態を早めに示す。騰落レシオは数か月程度先の強弱を示す指標なので、当面は強気相場が続きそうだ。


騰落レシオについては第46回定例発信(2021年1月9日)を参照してください。

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​第百四回 大混乱の米国金融市場

2023年2月18日

「米国の景気が格段に良くなる」という指標と「悪化が近い」という指標が混在している。米国金融市場は大混乱だ。

まず、今後の景気回復を示す指標から見てみよう。


1.ジャンク債の金利低下

ジャンク債金利の低下が続いている。現在、1997年以降の最低値となっている。


ジャンク債金利とは、正確には、ジャンク債金利と国債の金利差を指す。景気が悪い時はジャンク債(経営の不安定な会社が発行している債券)は売られやすく、結果、金利が上昇する。一方、国債には安心感があるので、金利は上昇しない。従って、両者の金利差が開くことになる。

実際、図表1にあるように、IT暴落期、リーマンショック期、コロナ暴落期にはジャンク債金利差が大きく拡大した。


これに対して、景気拡大期ではこの逆のことが起こる。ジャンク債が買われるので、両者の金利差が縮まる。現状は金利差が97年以降の最低値(1.2%)であるから、これから米国が迎えるのは、再びの景気拡大期であると結論づけることができるかもしれない。


ここで全く別のことを示唆する指標を示そう。


2.米国の長短金利差の逆転

米国の金利には、「近い将来に株価が天井に達するらしい」という兆候が現れている。具体的には米国の短期金利が長期金利を上回り始めたのだ。


短期金利と長期金利を比べると、通常は短期の方が小さい。それは私たちが銀行で定期預金を作る際に実感している。

ただし、景気の最終局面になると、一時的に短期金利が長期金利を上回る事態が生じる。これが金利の逆転現象だ。これが発生した場合、その前後の時期に株価の天井が訪れる。


図表2にあるように、現在の長短金利の逆転幅は過去3回(図表3)に比べて大きい。大きな経済変動が起きる兆しだ。



3.さて、どちらの指標が正しいのか?


どちらも正しいのだろう。示唆する時期が違うのだろう。

常識を用いて考えてみよう。


ここまで続いた好景気が今後長期的に格段に良くなるとは考えにくい。従って1で示したジャンク債の金利低下はこれから直近に起きることを示していると考えるべきだ。さらに長いスパンでは、株価暴落の予兆を示している2の指標に注目すべきだろう。


つまり、短期では景気良好、長期では景気悪化と考えるべきだ。

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第百三回 ウクライナ戦争は世界の脅威ではなくなっている

2023年2月10日

TVではウクライナ戦争の悲惨さ、ロシアの巨悪さが日々報じられているが、実態は違う。世界各国の人々にとっては、ウクライナ戦争は本質的にほぼ終了している。


それがわかるチャートを2つ示そう。図1は天然ガス価格だ。ロシアが欧州にパイプラインで輸出しているもので、ウクライナ戦争の勃発(2022年2月)前から、価格が上昇を始めた。具体的には2ドル(単位mmBtu)だった価格が9ドル以上に跳ね上がった。

ところが今ではまた2ドル台に戻ってきている。改戦前の水準だ。


また、図2にあるように。、海運市況も落ち着いてきた。ウクライナ戦争前に大きく上がったのだが、今では平時のレベルになっている。

これらからわかることは、戦争は世界経済にとって本質的には問題ではなくなっているということだ。戦争が理由で物価が上昇することはないどころか、今後は物価低下が明確になっていくだろう。


このことは株価や金価格にとって、当面はプラス要因として働くだろう。

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第百二回 金価格は上昇基調に入った
2022年第4四半期の金の生産量 -0.9%減

2023年2月4日

1月31日に発表された統計によると、金の生産量(第4四半期)が前年同期比で-0.9%減となった。6四半期続いた増産が終わり、減産期が始まった可能性がある。


金価格は生産量と逆相関がある(図表1)。生産量が増えると価格が上がり、生産量が下がると価格が下がるという構造だ。野菜などの生鮮品と同じだということだ。


つまり、減産は価格に対してプラス効果がある。


ひとつの四半期の結果だけでは、今後も減産基調になるか否かは判断ができないが、鉱山会社の新規投資が歴史的な低レベルに推移してきたことを考え合わせると、増産基調に戻ることは考えにくいだろう。

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第百一回 物価低下によって株価は当面上昇する

2023年1月27日

米国の物価が落ち着きを見せ始めた。2022年6月には9.0%まで上昇した消費者物価は昨年12月には6.4%にまで下がってきた。


この理由はウクライナ戦争が下火になってきたことにある。欧米の報道は全くの作り物で、ロシアが断然に優勢になっているのだ。それを明確に示すのが天然ガス価格の下落だ。天然ガスは2022年8月には9.7ドルまで上昇したが、今では3.3ドルまで下がっている。


図1にあるように、株価を押し上げてきたのはマネーの供給だった。2009年以降、3回にわたる大きなマネー供給の跡が見て取れる。また、昨年株価が下落した最大の理由はマネーの伸びが下火になってきたためだった。2022年12月には0%にまでなってしまった。物価上昇を引き起こしてしまったので、マネー供給を絞らざるを得なかったためだ。

ところが、この状況が改善しつつある。天然ガスのみならず、原油、そのほかの資源価格も落ち着きを見せ始めたためだ。


このため、米国中央銀行はマネーの供給を再開するだろう。そのため、当面のところ、米国株は上昇することになるだろう。


ただし、マネーを供給し過ぎれば、再び物価上昇を招いてしまう。このため、当局のマネー供給は限定的なものにならざるを得ない。株価の上昇幅の限定的だろう。

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第百回 物価低下によって株価は当面上昇する

2023年1月20日

米国の物価が落ち着きを見せ始めた。2022年6月には9.0%まで上昇した消費者物価は昨年12月には6.4%にまで下がってきた。


この理由はウクライナ戦争が下火になってきたことにある。欧米の報道は全くの作り物で、ロシアが断然に優勢になっているのだ。それを明確に示すのが天然ガス価格の下落だ。天然ガスは2022年8月には9.7ドルまで上昇したが、今では3.3ドルまで下がっている。


図1にあるように、株価を押し上げてきたのはマネーの供給だった。2009年以降、3回にわたる大きなマネー供給の跡が見て取れる。また、昨年株価が下落した最大の理由はマネーの伸びが下火になってきたためだった。2022年12月には0%にまでなってしまった。物価上昇を引き起こしてしまったので、マネー供給を絞らざるを得なかったためだ。

ところが、この状況が改善しつつある。天然ガスのみならず、原油、そのほかの資源価格も落ち着きを見せ始めたためだ。


このため、米国中央銀行はマネーの供給を再開するだろう。そのため、当面のところ、米国株は上昇することになるだろう。


ただし、マネーを供給し過ぎれば、再び物価上昇を招いてしまう。このため、当局のマネー供給は限定的なものにならざるを得ない。株価の上昇幅の限定的だろう。

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第九十九回 低PBR戦略はうまくいかない

2023年1月13日

質問:

株価が暴落した際に株式投資を行うのは危険だ」という趣旨の定例発信(第95回、2022年12月15日)を読みました。これには賛同できるのですが、低PBR戦略はどうでしょうか?これならば、株価を底値で買うことができるのではないでしょうか?


回答:

1.PBRとは何か?

低PBR(純資産倍率 Price to Book Ratio)作戦は大儲けを狙うのではなく、負けないための戦略です。機関投資家向けの方法です。PBRが1倍(=会社の純資産と時価総額が同額)は理論上の底値と言われています。


現在の株価(株数に株価を掛けた合計金額)が会社の純資産と同じ価値ならば、その株価は帳簿に載っていない事柄(例:ブランドイメージや今後の成長力)は全く考慮していないことになります。それは安すぎだ、という考え方です。

ただし、この考え方には問題があります。それは、「底値付近で株を買うことはできるかもしれないが、儲けにつながるかどうかはわからない」ということです。



2.東証1部に見る過去の実績

図1は日経平均とPBRです。

IT暴落後ではPBRが1倍前後で株価は底値になりました。この時点で買えば、大きく儲けることができました。


一方、リーマンショック後は0.7倍まで下落してしまいました。PBRが1倍で株を買った場合、4~5年待つことになりますが、株価は次第に上がりました。


では、基準をさらに厳しくしてPBR0.7倍で買う戦略を立てた場合はどうでしょうか?この場合、リーマンショックの底値付近で買うことができたようです。ただし、IT暴落の底値では株式は買えなかったことになります。

3.PBR1倍が底値にならない日が来る可能性

大きな問題が東証2部市場と日経平均の関係に現れています。図2です。

PBR1倍で買うと高値づかみになります。PBR0.7倍で買う戦略を立てた場合は、底値で買うことができますが、それでも問題は残ります。


それは、リーマンショック後、PBRはほ0.7倍のまま横ばいだということです。この戦略を採用した場合は、2009年以降ずっと株式を買い増すことになってしまうわけです。


なぜ、東証1部のPBRが2部のPBRより高い時期が続いたのか?それは成長力の違いを投資家が考慮したためでしょう。

日本に比べて成長力の高い米国のPBRは現在4.0倍です。

現状は、日本グロース市場(4.2倍)>米国(4.0倍)>日本プライム市場(1.2倍)>スタンダード市場(0.8倍)となっています。


仮に今後経済成長力が現状より低下すると投資家が考えた場合、東証のプライム市場が過去の東証2部市場やスタンダード市場のように評価されるようになるかもしれません。株価暴落時には特にそのようなリスクがありえます。


こうした理由から、低PBR戦略は採用しない方が得策だと考えています。

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第九十八回 2023年相場予測

2023年1月日

結論:

2023年は節目の年になるだろう。世界の株式市場は上昇を続け、年央あたりに天井を打つだろう。そこから大きな暴落相場が始まるだろう。


株式市場が当面上昇する理由

①米国の失業率が最低レベルで推移

コロナ前の失業率(最低値)は2020年2月に3.5%を記録し、コロナ後の失業率も2022年7月、3.5%にまで低下した。ここから見ると、経済がコロナ前と全く同じレベルまで回復しているかのようだ。これは株価の押し上げ要因だ。


ただし、失業率は景気の悪化とともに急速に悪化することがあることを忘れてはならない。コロナ前の2022年2月の3.5%から、コロナが世界を襲ったとされる翌月3月には4.4%、4月には14.7%と急上昇したのだ。

②ジャンク債の金利が低下中

ジャンク債の金利が下がっている。具体的には2022年7月に6%をつけた金利が現在は3%ちょっとにまで下がった。


正確に言うと、ジャンク債の金利とは「ジャンク債金利と国債の金利との差」を指す。ジャンク債とはつぶれやすい会社が発行する債券だ。不況が来た場合は、最も危険な会社群となる。従ってジャンク債の投資家は不況が到来する前にジャンク債をすばやく売り始める。つまり、ジャンク債金利が大幅に上昇し国債との金利差が大きくなる。


現在のところ、投資家は景気の先行きに楽観的になっているようだ。これは株価の押し上げ要因だと言える。

年後半から本格的な暴落を予想する理由

①企業業績はピークアウトしている

企業業績(S&P500ベース)は悪化傾向にある。直近の数値は2022年6月期の数字で、現在は9月期の数字が集計中だ。2021年12月をピークに数字が小さくなっている。具体的には54ドル⇒46ドル⇒43ドルで、2022年6月期は-12%の減益(前年同月比)となっている。


リーマンショックの景気の底から長い間米国景気は拡大してきた。その間の最大の景気暴落期はコロナ発生時だった。企業業績から見れば、それに次ぐ大きな景気悪化が始まっているようだ。

②先行株の動きが相場天井を示唆

先行株とは、市場全体に先駆けて天井を打つ銘柄群を指す。金融緩和(量的緩和)相場で最も好影響を受けるのは金融であり、その代表が銀行だ。現在の先行株は銀行株ということになる。


図表1によれば、NY市場は2021年12月に天井を打っているが、シティバンクはその6か月前、JPモルガン銀行は2か月前に天井を打っている。


2022年に入り、銀行株の下落率は著しかった。シティバンクは2022年の高値から直近の安値まで47%下落し、JPモルガン銀行は39%下落した。市場の下落率25%をはるかに上回った。


業績も芳しくない。2022年第3四半期の業績(前年同期比)はシティバンクは赤字継続、JPモルガンは-92%だった。


同様のことは、GAFAと言われる米国代表株にも言える。図表2にあるように、株価は2022年に入り大きく下落している。業績に関してはアップルのみが増益だが、ほかの3社は大幅減益だ。

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第九十八回 2023年相場予測

2023年1月日

結論:

2023年は節目の年になるだろう。世界の株式市場は上昇を続け、年央あたりに天井を打つだろう。そこから大きな暴落相場が始まるだろう。


株式市場が当面上昇する理由

①米国の失業率が最低レベルで推移

コロナ前の失業率(最低値)は2020年2月に3.5%を記録し、コロナ後の失業率も2022年7月、3.5%にまで低下した。ここから見ると、経済がコロナ前と全く同じレベルまで回復しているかのようだ。これは株価の押し上げ要因だ。


ただし、失業率は景気の悪化とともに急速に悪化することがあることを忘れてはならない。コロナ前の2022年2月の3.5%から、コロナが世界を襲ったとされる翌月3月には4.4%、4月には14.7%と急上昇したのだ。

②ジャンク債の金利が低下中

ジャンク債の金利が下がっている。具体的には2022年7月に6%をつけた金利が現在は3%ちょっとにまで下がった。


正確に言うと、ジャンク債の金利とは「ジャンク債金利と国債の金利との差」を指す。ジャンク債とはつぶれやすい会社が発行する債券だ。不況が来た場合は、最も危険な会社群となる。従ってジャンク債の投資家は不況が到来する前にジャンク債をすばやく売り始める。つまり、ジャンク債金利が大幅に上昇し国債との金利差が大きくなる。


現在のところ、投資家は景気の先行きに楽観的になっているようだ。これは株価の押し上げ要因だと言える。

年後半から本格的な暴落を予想する理由

①企業業績はピークアウトしている

企業業績(S&P500ベース)は悪化傾向にある。直近の数値は2022年6月期の数字で、現在は9月期の数字が集計中だ。2021年12月をピークに数字が小さくなっている。具体的には54ドル⇒46ドル⇒43ドルで、2022年6月期は-12%の減益(前年同月比)となっている。


リーマンショックの景気の底から長い間米国景気は拡大してきた。その間の最大の景気暴落期はコロナ発生時だった。企業業績から見れば、それに次ぐ大きな景気悪化が始まっているようだ。

②先行株の動きが相場天井を示唆

先行株とは、市場全体に先駆けて天井を打つ銘柄群を指す。金融緩和(量的緩和)相場で最も好影響を受けるのは金融であり、その代表が銀行だ。現在の先行株は銀行株ということになる。


図表1によれば、NY市場は2021年12月に天井を打っているが、シティバンクはその6か月前、JPモルガン銀行は2か月前に天井を打っている。


2022年に入り、銀行株の下落率は著しかった。シティバンクは2022年の高値から直近の安値まで47%下落し、JPモルガン銀行は39%下落した。市場の下落率25%をはるかに上回った。


業績も芳しくない。2022年第3四半期の業績(前年同期比)はシティバンクは赤字継続、JPモルガンは-92%だった。


同様のことは、GAFAと言われる米国代表株にも言える。図表2にあるように、株価は2022年に入り大きく下落している。業績に関してはアップルのみが増益だが、ほかの3社は大幅減益だ。

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第九十七回 NY株は高値を目指す

2022年12月30日

NY株は底値を打ち上昇に転じている。その天井はまだ先になるだろう。


その理由の第一はウクライナ情勢だ。事態は落ち着きつつある。図は最近の原油価格を示している。原油価格はウクライナ戦争が始まった2022年2月に比べて低くなっている。投資家は戦争の戦禍が経済に悪影響を与えないと考えているのだ。


第二の理由は米国の消費者物価が落ち着きを見せ始めたことだ。

前年同期比は6月に最高値(9.0%)をつけてから徐々に低下し、直近の数値は7.1%になっている。


これらをもとに投資家は米国の景気が再度上昇基調に転じると考え始めるだろう。ファンドマネージャたちも買いのポジションを大きく取り始めるだろう。

こうした傾向が当面続くと考えられる。


もちろん、このあとに続くのは大きな暴落なのだが、それは先の話だろう。

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第九十六回 国債デフォルト後の金価格はどうなるか

2022年12月23日

G7各国の国債がデフォルトになった場合、金相場がどのように動くかは現時点では予測できません。

ここでは2つの可能性についてお伝えします。


一つは、図1にある銀相場のように、デフォルト時期に大幅に上がり、混乱が収まった際には元の価格に戻っていくパターンです。先進国7か国のデフォルトという前代未聞の事態を受けて世の中は大混乱に陥ります。通貨価値は地に落ちます。その際、人々が安心して保有出来るのは本物の貨幣(ゴールド)です。


しかし、ゴールドは大混乱のために暴騰するのですから、混乱が終われば、価格がもとに戻ると考えるのは自然な発想です。銀価格の図にあるように、価格急騰が大幅なものであればあるほど、時間の経過とともにゴールドの売りが増え、価格は急速に下がっていくことになります。

ただし、ゴールド価格予測に関してもうひとつの考え方があります。図2が参考になります。デフォルトを起こした国は通貨の信用が長期にわたって低下することを示したものです。通貨の価値が下がるということは、ゴールドの価値が上がることにつながります。この場合は、長期でゴールド価格が上昇することになります。


ぼくはゴールド価格はこの2つを統合したような価格形成になるのではないかと思っています。

つまり、デフォルト時期には暴騰し、その後下がり、落ち着く。ただし、元の価格には戻らずに毎年少しずつ上昇を続ける、といったパターンです。図1に戻れば、銀の21世紀に入ってからの暴騰相場のイメージがやや近いかもしれません。


この考察からわかるように、デフォルト発生の混乱期には手持ちのゴールドは最低半分は売るべきでしょう。


なお、売却時期も含め、その後のゴールド相場の予測については、適宜ぼくなりの考えを皆様にお伝えする所存です。

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第九十五回 暴落時に株を買うのはいいアイデアですか?

2022年12月16日

質問:株式の暴落が起きた場合、株を買うのはいいアイデアでしょうか?


回答:ぼくは薦めません。

                                

このサイトの根本的な考え方は、「緊急恐慌はから身を守る」ことにあります。そうした理由から、銀行預金などの通貨(日本円)資産をゴールドに換えることを薦めています。しかも、資産をゴールドに移すだけで、身を守るだけでなく、大きな利益を手にすることができるでしょう。


ただし、それは、自然災害に遭遇して、自分が掛けていた損害保険で思わる利益が生じたことに似ています。儲けるために損害保険を掛けるわけではありませんよね。


利益を上げることを目的として株式投資をしたい人は、ぼくの著書『株の公式』(ダイヤモンド社)の方法を順守することを薦めます。そこで、その内容を一言で表わすならば、「株は高くなったら買う」です。安い株を買ってはいけません。


投資はスーパーマーケットの買い物とは違います。スーパーでは安い方がいいです。これに対して、投資は転売が目的です。誰かが自分より高い価格で買ってくれるのを前提として、投資をするわけです。だとしたら、現時点で評価が高い投資先が、将来もより高い評価を受けると考えることはできないでしょうか?


米国では日本車が米国車より高値で取り引きされるのは、転売後の価格が高くつくからというのが理由のひとつです。投資でも同じ理屈が成り立つと思ってください。


上昇相場(日経平均が50%上昇するような局面)と下降相場(日経平均50%下落)では事情が全く違います。下落相場では個別銘柄は皆同じように下がります。指数が50%下がる時に、個別銘柄の下落率は-35%~-65%程度になります。


一方、上昇相場では、2倍(100%上昇)になるものとほとんど上がらないもの(0%の上昇)とが混在します。そのような事情を考えると、リターンの高い銘柄を選びたい場合、少し上がってきたものから選択すべきです。


株式投資をする人は、暴落が収まり少し株価が上がってきた時期を持つべきだというのがぼくの考えです。


参考までに大恐慌後のNY株式(図)を見てください。恐慌の下落時に株を買うと、とんでもないことになります。どこまで下がるかわからないからです。買うのは、株価が上がってきて、直近の高値を抜いたあたりです。

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第九十四回 ゴールドは株価暴落の初期に下がるだろう

2022年12月9日

金価格(ドル建て)とNY株式が連動している。この傾向は今年になってから強まっている(図参照)。

これは金投資家にとって、嬉しい話ではない。今後NY株式が暴落を始めた場合、連動して下がる可能性があるからだ。


本来、金価格の動きは2つの要素で決まると考えてよい。金の生産量と市場の需給バランス(=鉱山会社と機関投資家のポジション)だ。現時点では、金価格は前者から見た場合弱含むと考えられ、後者から見た場合は強含むと考えられる。


両方の要素が打ち消し合うので、横ばい圏を動くというのが妥当な考え方になる。


しかし、これはNY株価が大幅に動かないという前提の話だ。

金価格(ドル建て)とNY株式が連動している。この傾向は今年になってから強まっている(図参照)。

これは金投資家にとって、嬉しい話ではない。今後NY株式が暴落を始めた場合、連動して下がる可能性があるからだ。


本来、金価格の動きは2つの要素で決まると考えてよい。金の生産量と市場の需給バランス(=鉱山会社と機関投資家のポジション)だ。現時点では、金価格は前者から見た場合弱含むと考えられ、後者から見た場合は強含むと考えられる。


両方の要素が打ち消し合うので、横ばい圏を動くというのが妥当な考え方になる。


しかし、これはNY株価が大幅に動かないという前提の話だ。

金の需要の半分は宝飾需要だ。これは景気連動の代表選手だ。


すなわち、NYが大きく上昇した場合、米国をはじめとする世界経済の展望は明るいと考えられ、宝飾需要が伸び金価格が上昇傾向になる。反対に、NY株価が大きく下落した場合、世界経済は不況色が強まると考えられ、宝飾需要の減少に伴い、金価格が下落すると考えられる。


今年の金価格がNY株式に連動しているのは上記のような見方をする投資家が多いからだろう。


株価が大幅な暴落となれば、本物の通貨として金が脚光を浴びるだろうが、それまでの間は金価格はNY株価と連動して下がるリスクがあると想定していた方がいいだろう。

では、NY株価が高いうちにゴールドをいったん売り、NY株価の暴落の途中で再び買うのはいいだろうか?経験上、こうしたトレードはうまくいかないことが多い。


相場は理屈通りに動かないことが多いからだ。案外早くゴールドと株式の相関が終わるかもしれない。ゴールドはやはり長期保有が最善だろう。

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第九十三回 米国主要株の勢いはどこへやら

2022年12月3日

米国の株価の行方を考える目的で、主要株の動きを見てみよう。かつて、GAFA(ガーファ)と呼ばれた代表株群だ。

G=グーグル

A=アマゾン

F=フェイスブック(現在のメタ)

A=アップル

図表1は2020年初を1とした株価の動きだ。ここからわかるように、2021年秋までには天井をつけ、下落傾向になっている。米国市場が天井を打ったのが2022年12月だから、先行して天井をつけたことがわかる。アップルを除いて、ここまで下落した3社の株価が再度最高値に向かうことはなさそうだ。


図表2は業績(一株純利益の前年同期比)だ。順調だったのは2021年夏までで、その後は減速傾向が著しい。特にメタとアマゾンがひどい。なお、この図表にはマイクロソフトの業績も加えた。

再び増益に転じない限り、GAFAの復活はないだろう。

このことは米国株式全般に言える。

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第九十二回 欧州危機の本命はドイツか?

2022年11月25日

米国の株価が下がれば、世界各国の株価が下がる。今後、米国の株価が大天井を迎え、下落に転じた際、どの国が大きく下がるだろうか?


それは、2021年の最高値から2022年秋までの下落率を見ればわかる。図1にあるように、イタリアが大きくその次がドイツになっている。これに対して、日本と英国は下落率が穏やかだった。


注目はドイツだ。イタリアが経済劣等生だということは良く知られた事実だが、ドイツは違う。欧州の雄として、「欧州全体が危機の際にはドイツが力を発揮する」と考えられている。ドイツの下落率が英仏より大きいことを見れば、それが無理だということがわかるだろう。


図2にはドイツの最大銀行である、ドイツ銀行の株価(2007年以降)が示されている。これによればドイツ銀行はこの期間に93%も下落してしまったのだ。100が7になったということだ。


最近ではスイス第二の銀行、クレディスイスが破たんのうわさが流れている。この銀行は図2にあるように、ドイツ銀行と同じ下落率だ。つまり、ドイツ銀行破たんのうわさがいつ始まっておかしくない状況だということだ。

ドイツ銀行の総資産は1.5兆(約200兆円)ドルと大きく、破たん懸念が市場に広がるだけで、欧州全体が動揺するだろう。


図3にあるように、ドイツの最大の問題は貿易黒字の急激な悪化にある。ウクライナ戦争によって、ロシアからの天然ガス輸入が細り、高い価格で調達せざるを得ない状況になっている。欧州全体の景気悪化により輸出が減少していることも要因だ。このため、貿易黒字が過去にないスピードで減少している。失業率も上昇を始めている。


ウクライナ戦争が終結しない限り、ドイツの厳しい状況には変化は出てこないだろう。

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第九十一回 米国の会社業績は下向き

2022年11月18日

米国が発表している数値の中で比較的信頼できるのは会社業績だ。米国を大きなひとつの会社としてとらえる場合、株式市場全体でどのくらいの利益を上げたのかをみることができる。具体的にはS&P500社の平均利益(一株当たりの利益)を見るのがよい。


添付の図がこれだ。直近の数値は2022年6月期の数字で、現在は9月期の数字が集計中だ。2021年12月をピークに数字が小さくなっているのがわかる。具体的には54ドル⇒46ドル⇒43ドルで、2022年6月期はー12%の減益(前年同月比)といなっている。


図からわかるように、ここまで大きな下落はコロナ暴落時を除けば初めてのことだ。米国が景気減速に入っている明確な証拠だろう。これから迎える株式市場のピークが大天井になることを、業績面が示唆していると言える。

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第九十回 ジャンク債の調べ方

2022年11月11日

11月2日のパンローリング主催の番組後、最も質問が多かったがジャンク債の調べ方でした。本日はわかりやすく解説します。


①ジャンク債金利の調べ方

検索画面に以下の英単語を入力する。

Junk bond FRED

すると、図1のような検索結果が現れる。

​(続きは図1から図4を参照してください。)

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第八十九回 
金価格は横ばいを続ける
2022年第3四半期の金の生産量 2.3%増

2022年11月4日

11月19日に発表された統計によると、金の生産量(第3四半期)が前年同期比で2.3%増となった。第2四半期が2.1%だったので、増産が継続中だと言える。


金価格は生産量と逆相関がある(図表1)。生産量が増えると価格が下がり、生産量が下がると価格が上がるという構造だ。野菜などの生鮮品と同じだということだ。


つまり、増産は価格に対してマイナス効果がある。


ただし、金の生産コストが世界平均で1700ドル前後だろうと推察されるので、これ以上の価格下落は考えにくい。この価格帯で横ばいを続けると考えられる。

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第八十八回 金利が株価天井の到来を示唆している。

2022年10月28日

米国の金利には、「近い将来に株価が天井に達するらしい」という兆候が現れ始めました。具体的には米国の短期金利が長期金利を上回り始めました。


短期金利と長期金利を比べると、通常は短期の方が小さいです。それは私たちが銀行で定期預金を刷る際に実感しています。


ただし、景気の最終局面になると、一時的に短期金利が長期金利を上回る事態が生じます。金利の逆転現象です。これが発生した場合、その前後の時期に株価の天井が訪れます。

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第八十七回 最後の大天井に向かう年末株式相場

2022年10月21日

図にあるように、米国銀行株はコロナ暴落の底から上昇したが、その後下落に転じ、上昇幅の8割以上を下げてしまった。

これが意味することは何か?


銀行株は米国株式市場の先行株を役割を果たしている(拙著参照)。つまり、銀行株が下がるとその後市場全体が下がる。市場の下げが確定的になったということだ。


現在は株式市場は上昇基調になっている。その理由は10月14日の定例発信に記したように、ファンドマネージャがあまりにも弱気になり、売り過ぎの状態になったからだ。


この状態が解消される時期が、株式市場の大天井となるだろう。

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第八十六回 NY株式は反転へ
ファンドマネージャーが弱気、つまり株価上昇へ

2022年10月14日

米国株は転の兆しが出てきた。当面は上昇基調に戻ると考える。


最大の理由は、ファンドマネージャーが弱気に転じたことだ。10月4日時点の統計によると、ファンドマネージャーの56%が弱気、44%が強気だ。(正確には、買いポジションが56%、売りポジションが44%)


図を見ると、50%台半ばになると、相場が反転するのがわかる。金融市場はファンドマネージャーの反対を行くのが常だから、年末あたりまでは上昇傾向に入ると考えるべきだ。

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第八十五回 世界経済の崩壊が始まっている

2022年10月7日

風邪が流行すると、最初に病気になるのはからだが弱い人だ。最後まで元気に残るのはからだの強い人だ。同じことは経済にも言える。

経済の弱い国がそれを露わにし始めた。それも、各大陸ごとに現れ始めた。

欧州代表:  英国

アジア代表:  韓国

南米代表:  ブラジル

イスラム圏代表:  エジプト

アフリカ代表:  南アフリカ


経済悪化が最もわかりやすく現れるのは通貨だ。図表1にあるように、対ドルレートを見ると、英国は過去最低値にほぼ近い。韓国も21世紀の最安値だ。図表2では、ブラジル、エジプト、南アフリカの通貨下落の様子を示した。

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第八十四回 ゴールド相場は底入れから横ばい圏へ推移

2022年9月30日

結論

金相場は底値付近にあります。経済的に余裕のある方はゴールドの買い増しをするのはいいことだと思います。

ただし、ここから大きく上昇するかというと、それはまだ先の話になるでしょう。


見方

1ゴールド価格は底入れしつつある。

ゴールド価格の動きを最も的確に予想するのは、鉱山会社と機関投資家の手口情報です。鉱山会社は世界の生産量に関して正確な数値をつかんでおり、今後生産量が減少に転じる(=価格が上昇する)と判断した場合は先物の売りポジションを縮小します。実際、先物ポジションが縮小する時は、ゴールド相場が底入れすることが多いです。

逆に、機関投資家は相場が下手であり、「価格が上がればどんどん買う。下がればどんどん売る」という発想になっています。機関投資家が売り越しに転じた場合(買いポジションがマイナスになる場合)は相場が反転して上昇する傾向があります。


現時点では図表1(鉱山会社の売りポジション)、図表2(機関投資家の買いポジション)とも減少傾向にあります。これはゴールド相場が底入れをしつつあるサインです。


しかも、ゴールドは世界平均の生産コストが1700ドル程度(定例発信8月12日)であると推定されることから、これ以上の下げはありえないだろうとみています。

2 大幅上昇はまだ先

ゴールド相場が大きく上がるには以下の2つの条件のうち一つが実現する必要があります。

①米国株式の暴落

②ゴールド生産量の減少

米国株式については、9月23日の定例発信に記したように当面は上昇基調にあります。この上昇相場は今後数か月は続くものとみています。すなわち、ゴールド相場を上昇に向かわせる力にはなりません。


また、ゴールド生産量については7月31日の定例発信に記したように、生産量の増加が続いています。生産量の統計は3か月ごとに発表され、次回の発表は10月末です。この時点で生産量の減少が確認されれば、相場は大きく反転する方向に向かうでしょうが、それまでは横ばいの動きになるでしょう。

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第八十三回 米国株式市場の上昇はまだ続く

2022年9月23日

米国の長短金利から見ると、米国株式市場の上昇はもう少し続くだろう。


株式市場の天井と長短金利とは高い相関がある。

図は株価(S&P500)と米国長短金利差を示したものだ。

グラフの見方

1.株価は対数グラフになっている。

2.長短金利差は10年債と3か月の金利を用いている。逆メモリになっていることに注意。すなわち、金利差が小さくなるほど、グラフの上では上がっているように見える。


これを見ると、ITバブルの際もリーマンショックの際もコロナショックの際も、長短期利差がゼロより小さくなっている。つまり、短期金利の方が長期金利より大きくなっているということだ。金利差の逆転の頃、株価天井が生じることは以前からよく知られた現象だ。

現在、米国中央銀行は短期金利を大きく上げている。9月21日までに、3回連続で0.75%の引き上げを行った。長短金利差は0.2%程度まで縮小している。


しかし、まだ長短金利の逆転までには至っていない。今後も中央銀行は短期金利の引き上げを行うであろうから、逆転していく可能性が高い。これが株式市場天井を迎えるサインとなるだろう。


それまではまだ株価は波乱はありながらも上昇の道にあると考えるべきだ。

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第八十二回 イタリア発の恐慌リスクは高いか?

2022年9月17日

質問:

イタリアの経済状況はひどいです。欧州第三の経済大国イタリアが破たんすれば、欧州全体が恐慌に陥り、ひいては世界全体が恐慌に陥ると思われます。現時点においてこの危険性は高いでしょうか?


回答:

ある国が恐慌に近いのか、そうでないのかを見分ける最善の方法は投資家の総意に耳を傾けることです。自分で考えてもわかるものではありません。投資家は自分のお金をかけて金融市場に投資していますから、あらゆるリスクを考慮します。総意がわかれば、それに従うのが賢い方法だと言えるでしょう。

1.最大手の銀行は破たんが近い。

投資家の総意はチャートに現れます。早速、イタリア最大銀行のウニクレデイトのチャート(図表1)を見てみましょう。


この株が長期下落傾向にあります。リーマンショック前には200ユーロを超えたこともある株価が今では10ユーロ未満であり、95%以上の下落率です。2017年以降は下げ止まっているようですが、低迷している状況には変わりません。イタリアが経済危機に陥れば、この銀行が真っ先に破たんするのは確実のようです。


2.イタリア経済は悪くない

では、イタリアの国全体の状況はどのようになっているのか?

これは平均株価に現れます。図表2のチャートを見ると、リーマンショック後の底値から最高で3倍になりました。これは日本(約4倍)には及ばないものの、英国(約2倍)より高パフォーマンスです。


しかも、その際に、リーマンショック前につけた天井を抜いています。


これが意味するところは、近年のイタリアは順調な回復を遂げているということです。直近では株価は下げ相場になっていますが、2020年からの上昇幅の半分までは下げていません。これも投資家がイタリアの前途に希望を持っている証拠です。

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第八十一回 米国が債券を買い支えれば、債券・通貨暴落は起きないのではないでしょうか?

2022年9月9日

質問:

米国は債券価格が下がれば、どこまでも買い支えるつもりではないでしょうか。2010年ごろからそうしてきました。そうだとすると、通貨暴落が起きることはないのではないでしょうか?



回答:

ぼくは市場で仕事をしているので、投資家は不安になったらいつでも保有株、債券を売るということを感じています。


極端な例で考えてみましょう。

米国経済の繁栄の終焉が来たと皆が思い始めた際に、米国株は下がり、債券価格は下がり、為替は下がり始めます。これらを保有する世界の投資家は保有する株や債券、ドルを売ります。現物を売るだけでは飽き足らず、空売りをもするでしょう。

一方、上がりそうな為替(例:ロシア通貨)やゴールドを買うでしょう。

中央銀行が平静を保つには、これらについてすべて反対売買をし続けなくてはなりません。つまり、米国株、債券、ドルの買い、ゴールドの空売り、ロシア通貨の空売りです。これらを無限に行っていかなくてはなりません。


スイスは欧州金融危機の際、安全な通貨として評価が上がり大きく買われました。これはスイスの輸出産業には大ダメージとなります。そこで、通貨に対して介入を行ったのですが、全く効果がありませんでした。損失が2兆円

(GDPの15%)に達したところで、介入をあきらめています。(図表参照)


さらに、街では通貨不安から品物の価格が上がっていきます。これは現物経済の世界ですから、中央銀行だけでは手に負えません。TV報道を駆使して、「米国はこれまで以上に繫栄が続く。今まで以上に力強い」と歌いあげないといけません。そこまで庶民が信用するかどうか。

これは無理だろうというのがぼくの考えです。

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第八十回 経済危機が来れば、世界大戦が発生しますか?

2022年9月2日

質問:

1929年に始まった世界大恐慌は、アメリカでは1943年にようやく脱した、とする経済学者が多いですが、これは戦争によるものだったとされています。

今度の経済危機は「第二次世界大恐慌になる」と主張している人もいますが、今度もまた、世界大戦レベルの戦争が勃発しないと抜けられないと思いますか?

回答:

図にあるように、米国の失業率が1929年に始まった世界恐慌以降で下がった理由は、第二次大戦に参戦したからです。1929年には3%台だった失業率は1933年には25%にまで上昇してしまいました。その後、ニューディール政策などにより、米国の景気はやや回復したものの、本調子ではありませんでした。失業率を15%にまで下げるのがやっとだったのです。

そこで、米国は第二次大戦への参戦の機会を狙ってきました。日本の首相、国防大臣クラスを米国のスパイにし、うまく操って真珠湾攻撃をさせたわけです。参戦の結果、失業率は急激に下がりました。


大不況が来れば、失業者が街にあふれます。米国は同じことをするでしょう。その準備をすでに始めています。それがウクライナ問題です。


これまでの流れをおさらいすると、米国は2014年にウクライナの政権を転覆して極右とすげ替え、極右民兵団などがロシア系住民を殺そうとする内戦状況を作り出しました。さらに、昨年末から、ゼレンスキー政権を動かし、ウクライナ東部のロシア系住民への攻撃を強めさせました。


ロシア政府は、ウクライナ在住の同胞(ロシア系ウクライナ人)を守ること(邦人保護)を重視し、ウクライナに侵攻せざるを得ない状況になりました。米国は「ロシアが手を出した。ロシアが悪い」という報道を広めました。

現在では、「ウクライナ側=善、ロシア=悪」から、「ロシアに加担する勢力だけでなく、ウクライナに加担しない勢力もすべて悪である」と決めつけています。米国が怖い欧州や日本は米国の言いなりです。一方、中国やインド、その他の新興国は米国に痛めつけられてきた歴史があり、真実を十分に見抜いています。


ウクライナ問題に関しては、西側報道は全く嘘で、ロシアの圧勝でほぼ落ち着いてきています。それでも、米国は将来の大戦争につながるような布石を残すことができないかと躍起なっているところです。事態はまだ流動的な部分もありますから、ウクライナ問題が契機となって、将来は世界大戦につながっていく可能性はあるでしょう。


世界情勢の変化については、私たちの資産運用にも影響がありますので、今後とも必要な情報を皆さんにお届けしていきます。

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第七十九回 決済税によって、財政問題(国債000兆円)は解消されますか?

2022年8月27日

質問:

国会議員の中には、決済税(私たちが行うすべての取引から薄く税金を徴収するもの)を導入すれば、これまでの国税、地方税を廃止できるばかりか、国家の財政問題(国債残高1000兆円超)までも解消されると主張する人がいます。これは正しい主張でしょうか?


回答:決済税の件について、以下のようにぼくの考えを述べます。

結論

決済税が導入されれば、庶民は重税にあえぐようになるでしょう。政府を国債の重石から解放することができるようになるかもしれませんが、私たちはその分負担増になります。


青山繁晴議員は決済税を130兆円にするといっています。現在は国税、地方税を合わせて77兆円ですから、約2倍を負担することになります。「税負担が増えるのは、企業であって、個人ではないのではないか?」と考えたとしたら、それは甘い考えです。企業が増税になれば、それは必ず最終消費者に転嫁されます。


ごく基本的に考えてみてください。赤字国債を出さないで済むほどに税収が増えるということは、増税になるということです。青山議員は税の本質がわかっていないのではないでしょうか?


決済税とは

お金の動きを決済と言います。決済税とはすべてのお金の動きに税金を徴収する方法です。現在の消費税に似ていますが、消費税以上に幅広くお金の動きから税金を取る方法です。現金のやりとりを無視するならば、それ以外の取引は送金です。決済税は送金税という言い方をしてもいいかもしれません。


消費税との違いを明確にするために、例を挙げておきます。会社からの給与にも決済税が導入されますし、親が子供のお小遣いを送金するなら課税されます。銀行口座を2つ以上持つ人が、A銀行からB銀行に送金すれば、両者の口座が自分のものであっても課税されます。


全銀ネットワークを用いた決済は年間で4000兆円程度ですから、この0.3%は12兆円です。青山議員はこれ以外の決済からも税金を徴収しようと考えていることになります。


その最大のものは、銀行間のコール市場での取引で、日々100兆円単位のお金が動いています。ただし、この利回りは限りなくゼロに近い値ですから、ここから0.3%の取引税を取るとなると、コール市場にお金を出す銀行は皆無になり、市場そのものが崩壊します。


また、国債については現在0.25%程度の利回りですから、0.3%の決済税が実施されると、購入者は買いと売りの往復で0.6%を支払わなくてはなりません。購入者が激減することが予想されます。同じように、株式を買う場合は、購入代金全額の0.3%が徴収されます。株式手数料が購入代金の0.5%だとすると、それが0.8%になる計算です。


それ以外にも、土地の購入代金にも課税されます。(現在、消費税は無税です)


このように見ていくと、決済税は資産取引から主に税金を取りたてる方法です。金融業には重税になるでしょう。この重税は最終顧客に転嫁することになるので、私たち一般庶民が金融サービスを利用する機会は減るでしょう。

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第七十八回 企業倒産のサイン:全国の倒産金額を見よ

2022年8月19日

質問:

会計事務所に勤務している者です。

いまそこにある経済危機は、世界的な規模で発生し、ものすごく深刻な被害になり、多くの企業が倒産する、と本に書いている著者もいます。

会計事務所の関与先企業は零細企業が80%くらいですので、大企業よりも先に倒産するものと思われますので、とても不安に思っています。「そこで質問なのですが、この企業の倒産についてのサインはありますでしょうか?」

回答:


倒産金額の推移をみる

日本全体の倒産金額の推移をみるのはいい方法です。図をみると、1990年から始まる大不況により、体力の弱い企業がだんだんと持ちこたえられなくなり、90年代後半から徐々に倒産が増えました。97年には金融危機が勃発、さらに倒産が増え、2000年にピークとなりました。

また、小さな山が2009年にあります。リーマンショック時です。

この図をみると、7-8兆円あたりが大型倒産に向かうラインのように見えます。

倒産金額は商工リサーチから毎月発表になります。この数字を注視することは意義があります。


最もわかりやすい指標は株価

バブル崩壊不況の際は株価が8割下がり、リーマンショックの際は株価が6割下がりした。

「株価が5割が下がったら、大きな不況がやってくる、その際は倒産が増えると考える」のが最もわかりやすい見方かもしれません。先行性があるので、倒産金額よりも早めにトレンドを把握できます。

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第七十七回 金の生産コストから今後の価格が予想できますか?

2022年8月12日

質問:

金の生産コストは現在どのくらいですか?金の生産コストから今後の金価格が予想できないでしょうか?


 **結論**

今後の金価格については、

●生産コストから考えると、1700ドル以下に落ちることはまずないだろう。

●生産コストは毎年上昇しているので、金価格の底値も毎年上昇するだろう。

●生産コストが急上昇中です(図表)。特に金価格が2年前の1800ドルを超えたあたりから急速な上昇を始めました。今までは儲からなかった劣化鉱山を掘り出したからでしょう。ここから察すると、生産維持コスト(世界平均)は1700ドル以上だとわかります。

●金価格の上昇を受けて、目一杯生産を行い始めた模様です。ただし、2010年代後半に設備投資を最低限に控えてきた金鉱山業界は、近いうちに生産拡大が行き詰まると推定されます。このことは金価格の押し上げ方向に働くでしょう。

**金の生産コストについて**
金の生産コストは、WORLD GOLD COUNCILが発表しているのですが、これが全くあてになりません。

生産コストには3種類あります。

①直接費:実際に掘るのにかかる費用

②生産維持コスト:直接費に加え、会社の間接経費などを加えたコスト

③総コスト:すべてを含んだコスト

の3種類です。

投資家に最も大事なのは3番目の総コストですが、これについては最近では発表しなくなりました。

業界団体が発表を取りやめたので、自分で推定するしかありません。


**推定方法**

世界最大の産金会社バリックゴールドのアニュアルレポートに次のような数字が出ています。

当社は2018年度は赤字で、その年の平均金価格は1268ドルでした。2019年度は黒字で、その年の平均金価格は1408ドルでした。

ここから察するに、当社の当時の生産総コストは1300ドル台だったでしょう。


ところが、アニュアルレポートをみると、2018年の生産維持コスト664ドル、2019年828ドルと記されています。これが本当の数値であるなら、毎年黒字を続けていないといけません。つまり、生産維持コストは実際はすべてのコストを含んだ概念ではなく、鉱山のある国や都市への税金、環境整備費、会社の金利負担などが含まれていないものと思われます。


含まれていない金額はどのくらいなのか?


約1300ドルから664ドルまたは829ドルを引いた金額が含まれていないことになります。大雑把に考えて500ドル以上はあるものと推定できます。


この会社と同様のことが業界全体に起きていると考えることにします。すなわち、現在WORLD GOLD COUNCILでは世界全体の生産維持コストが1200ドル超だと発表していますので、ここに500ドルを加えて1700ドル台になるというのがぼくの見解です。

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第七十六回 

金価格は横ばいを続ける

2022年第2四半期の金の生産量 4.0%増

2022年7月31日

7月29日に発表された統計によると、金の生産量(第2四半期)が前年同期比で4.0%増となった。第一四半期が2.1%だったので、増産が継続中だと言える。


金価格は生産量と逆相関がある(図表1)。生産量が増えると価格が上がり、生産量が下がると価格が下がるという構造だ。野菜などの生鮮品と同じだということだ。


つまり、増産は価格に対してマイナス効果がある。


一方、機関投資家の買いポジションがマイナス1.9万枚となった。つまり、空売り実施中ということだ。機関投資家は通常間違えるから、これは近いうちに相場が反転する兆しだと言える。加えて、鉱山会社の売りポジションが2.5万枚まで減少した。数年前に底を入れた時と似たレベルにまで減少している。


図2,3参照。それぞれのポジションの意味については拙著を参照していただきたい。

鉱山会社が金価格に強気になっており、機関投資家が弱気になっている。これは底入れの条件だ。金価格は足固めに入っている。


金の生産量から見たら、価格は下がる方向だが、ポジションから見たら、上昇方向に見える。

どちらが正しいのか?


生産量が最重要だ。

つまり、価格はこれ以上は下がらないが、大きくは上がらないと考えるべきだろう。

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第七十五回 大幅な物価高騰が起きる兆しを教えてください

2022年7月31日

質問:

大幅な物価高騰の兆しを教えていただけますでしょうか。

たくさんあれば、大事なサインのベスト3を教えていただけないでしょうか。


回答:

米国ドルと中国人民元の間の為替レートを見るのが最も簡単な方法です。


劇的な物価高騰はまだ先

現状の物価上昇が続いても、劇的な物価高騰にはつながりません。

日本では「O月はマヨネーズがOO%上がる」「O月はユニクロが00%上がる」といったように、各品目が少しずつ値上げになっています。


私たち消費者には大きな打撃ですが、大事なポイントは、企業が値上げを行う際に、消費者が離れていかないような範囲に留めていることです。いわば、「思いやりのある」値上げです。実際、日本の最新のデータ(4月の物価上昇率)は2.5%にすぎません。


劇的な物価高騰が起きる時

これに対して、劇的な物価高騰は一気にすべての品目で起きます。企業側も消費者を思いやる余裕がありません。なぜか。物価高騰が自社の努力ではどうしても避けることのできないものになるからです。


具体的には通貨の暴落を契機に物価高騰が始まります。例えば、1ドル100円が130円に下落すれば、すべての輸入品目が30%の同時値上がりです。


物価高騰(つまり、通貨の暴落)は米国ドルの崩壊から始まるでしょう。その際、G7各国の通貨はすべて暴落を始めるでしょう。そこで、暴落をしない通貨(代表:中国人民元)との為替レートを見るのが最善の方法です。


具体的には米国ドル/中国人民元レートが6.0以下に下がり始めたら危険な兆候の始まりです。なお、現状では、通貨暴落、国家のデフォルトがすぐに起きることはありません。


皆さんには随時状況をお知らせしていきます。

仮に上昇したとしても、過去の範囲から考えれば、儲けは2%未満だろう。大きな儲けにはならない。

米国ドルから香港ドルに転換する理由はこうだ。


米国政府は将来、デフォルトを選択しざるを得ない状況になるだろう。その場合、米国ドルは大幅な暴落をするだろう。


香港ドルはどうか?固定レートが維持され続ければ一緒に暴落するが、中国政府はそれを望まないだろう。固定レートは解除され、香港ドルは中国ドルと化すだろう。


香港ドルはリスクヘッジなのだ。

仕事上などの理由で、どうしても米国ドルを保有しざるを得ない人が、米国ドルを日本円やユーロに切り替えるにはリスクがある。将来、不利なレートで再び米国ドルを保有しざるを得なくなる可能性があるからだ。

これに対して、香港ドルは米国ドルとほぼ連動するからそのようなリスクはない。しかも、香港ドルは米国ドル暴落対策にもなっている。


なお、米国ドルを現在保有していない人に対しては、この投資戦略は薦めない。金(ゴールド)が最善だ。

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第七十四回 外貨は格安の香港ドルに逃避せよ

2022年7月22日

結論:

香港ドルが格安だ。外貨(主に米国ドル)を現在保有している人は米国ドルから香港ドルへ転換することをお薦めする。これは、仕事上などの理由で外貨(主に米国ドル)をある程度保有しざるを得ない人向けの推薦だ。


理由:

香港ドル(対米国ドル為替レート)はある一定の幅に固定されている。中心レートは7.8だ。現在は最安値付近になっている(図参照)。


「最安値だったら、もう下がることはまずない。上がるだろう。だったら、買いだ」という理屈はわかりやすいが、それが米国ドルから香港ドルへの転換を薦める理由ではない。


仮に上昇したとしても、過去の範囲から考えれば、儲けは2%未満だろう。大きな儲けにはならない。

米国ドルから香港ドルに転換する理由はこうだ。


米国政府は将来、デフォルトを選択しざるを得ない状況になるだろう。その場合、米国ドルは大幅な暴落をするだろう。


香港ドルはどうか?固定レートが維持され続ければ一緒に暴落するが、中国政府はそれを望まないだろう。固定レートは解除され、香港ドルは中国ドルと化すだろう。


香港ドルはリスクヘッジなのだ。

仕事上などの理由で、どうしても米国ドルを保有しざるを得ない人が、米国ドルを日本円やユーロに切り替えるにはリスクがある。将来、不利なレートで再び米国ドルを保有しざるを得なくなる可能性があるからだ。

これに対して、香港ドルは米国ドルとほぼ連動するからそのようなリスクはない。しかも、香港ドルは米国ドル暴落対策にもなっている。


なお、米国ドルを現在保有していない人に対しては、この投資戦略は薦めない。金(ゴールド)が最善だ。

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第73回 マスコミ報道に騙されないー世界情勢を見る視点

​2022年7月16日

マスコミ報道はウソだらけだと思うべきだ。その傾向はここ数年非常に強くなってきた。

日本では「ロシアは悪党だ」と報道されている。このレッテルが通用するのは主に欧米だ。G20の中でもロシア制裁に賛同するのは、G7と韓国、オーストラリア、EUにすぎない。ほかの10か国は制裁に反対なのだ。

騙されないためにはどうしたらいいか。金融市場の数値に注目するのが良い。数字はウソをつかないからだ。

ウクライナ問題で実例を挙げよう。

①ウソ:ウクライナ問題は長引く

   本当:実質はほぼロシアの勝利で決着している。


原油価格と天然ガス価格の推移を比較してみよう。図表1では2021年初の価格を1として表記した。

これによると、天然ガス価格はロシアのウクライナ侵攻が始まった頃から急激に価格上昇に転じたことがわかる。戦争が本格化すれば、ロシアが天然ガス供給を武器に揺さぶりをかけるだろうと人々が思ったからだ。しかし、6月下旬には天然ガスはピークをつけ、急激に下落に転じた。


現地の天然ガス事情に詳しい人たち(早耳筋)が、「ウクライナ侵攻は峠を越えた。天然ガス事情がここから悪化することはない」と読んだのだ。実際に、7月に入ってウクライナ戦争の報道が減ってきている。


なお、最近になって天然ガスと原油の価格格差が再び開き始めた。ウクライナ戦争の勝者となったロシアが日欧米に対して、世界の覇権を握ろうとし始めたからかもしれない。その際は、再度天然ガスが武器になる。

②ウソ:ロシアはデフォルトする

   本当:ロシアは世界の金本位制の中心国になる


図表2はロシアの為替レート(対米ドル)だ。これを見ると、ロシアのウクライナ侵攻が始まり、レートは急激に下がった。5割の下落となったのだ。

その後、レートは急旋回した。ロシアの金本位制導入が発表され、レートは2020年以降の最高値まで進んだ。


もし世界が「ロシア信用ならない国だ」と思っているとしたら、金本位制についても信じないだろう。その場合は、為替レートが高くなることはない。


今までは米国が怖くて、金本位制を導入する国はなかった。そこにロシアが先鞭をつけた。金本位制にすれば、信用が高まり、ドル崩壊が起きても、自国通貨を守ることができる。新興国の多くは自国が破産した歴史をもっているので、通貨が如何に脆弱なものかを知っている。


産油国などの豊かな国は金本位制の導入を進めるだろう。

③ウソ:経済は国際的に不安定な状態が続く。

   本当:G7を中心に経済は悪化する


図表3には、ロシアウクライナ侵攻以降の株価を記した。簡単に言うと、最も上がったのがロシアであり、欧米が下がった。これが今後の経済動向を示していると考えていい。


ロシアからの天然ガスやそのほかの資源の輸入を差し止めた欧米は価格の高騰を招き、自分の首を絞める結果となったのだ。

逆に、ロシアは価格高騰の利益を受けることができた。


今後は資源不足によりインフレ状態が続くだろう。資源国が有利であり、先進国は物価高騰に悩む事態が長引くだろう。

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第72回 金価格は底固めから上昇へ

​2022年7月9日

鉱山会社・機関投資家の手口が底値を示唆


6月28日の統計データによると、機関投資家の買いポジションが3.6万枚まで減少した。鉱山会社の売りポジションが4.3万枚まで減少した。数年前に底を入れた時と似たレベルにまで減少している。


図1,2参照。それぞれのポジションの意味については拙著を参照していただきたい。


鉱山会社が金価格に強気になっており、機関投資家が弱気になっている。これは底入れの条件だ。金価格は足固めに入っている。


定例通信66回(5月27日)にも同様の記載をした。ポジションが低位で推移しているのだ。1か月前にl比べて、金価格の上昇の確率は高まっていると言えるだろう。

注意:生産量が最重要

手口以上に重要な統計は生産量だ。これが減少の方向を見せないと、金価格は底入れはするものの、大きく上がることがないと考えるべきだ。最新の生産量は増加傾向を示しており、これが価格上昇の足かせになっている。

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​第71回 経済危機がくれば、世界大戦が発生しますか?

2022年7月1日

質問:

1929年に始まった世界大恐慌は、アメリカでは1943年にようやく脱した、とする経済学者が多いですが、これは戦争によるものだったとされています。

今度の経済危機は「第二次世界大恐慌になる」と主張している人もいますが、今度もまた、世界大戦レベルの戦争が勃発しないと抜けられないと思いますか?

回答:

図にあるように、米国の失業率が1929年に始まった世界恐慌以降で下がった理由は、第二次大戦に参戦したからです。1929年には3%台だった失業率は1933年には25%にまで上昇してしまいました。その後、ニューディール政策などにより、米国の景気はやや回復したものの、本調子ではありませんでした。失業率を15%にまで下げるのがやっとだったのです。

そこで、米国は第二次大戦への参戦の機会を狙ってきました。日本の首相、国防大臣クラスを米国のスパイにし、うまく操って真珠湾攻撃をさせたわけです。参戦の結果、失業率は急激に下がりました。


大不況が来れば、失業者が街にあふれます。米国は同じことをするでしょう。その準備をすでに始めています。それがウクライナ問題です。


これまでの流れをおさらいすると、米国は2014年にウクライナの政権を転覆して極右とすげ替え、極右民兵団などがロシア系住民を殺そうとする内戦状況を作り出しました。さらに、昨年末から、ゼレンスキー政権を動かし、ウクライナ東部のロシア系住民への攻撃を強めさせました。


ロシア政府は、ウクライナ在住の同胞(ロシア系ウクライナ人)を守ること(邦人保護)を重視し、ウクライナに侵攻せざるを得ない状況になりました。米国は「ロシアが手を出した。ロシアが悪い」という報道を広めました。

現在では、「ウクライナ側=善、ロシア=悪」から、「ロシアに加担する勢力だけでなく、ウクライナに加担しない勢力もすべて悪である」と決めつけています。米国が怖い欧州や日本は米国の言いなりです。一方、中国やインド、その他の新興国は米国に痛めつけられてきた歴史があり、真実を十分に見抜いています。


ウクライナ問題に関しては、西側報道は全く嘘で、ロシアの圧勝でほぼ落ち着いてきています。それでも、米国は将来の大戦争につながるような布石を残すことができないかと躍起なっているところです。事態はまだ流動的な部分もありますから、ウクライナ問題が契機となって、将来は世界大戦につながっていく可能性はあるでしょう。


世界情勢の変化については、私たちの資産運用にも影響がありますので、今後とも必要な情報を皆さんにお届けしていきます。

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第七十回 プラチナ投資はやめましょう

​​2022年6月17日

質問:

ゴールドではなく、プラチナに投資するのはどうでしょうか?

回答:


プラチナに投資したいという人は多いです。

一般に、ゴールド会員とプラチナ会員というと、プラチナ会員の方がランクが上です。

しかし、価格チャート(図表1)を見ると、プラチナの方が安くなっています。高い時はゴールドの2.3倍あったプラチナ価格は今では半額です。こうしたことから、将来は逆転劇が起こり、再びプラチナ隆盛の時代が来るかもしれないと考えるわけです。同額にまで戻ったとしても、ゴールドの2倍は上がる計算です。


これは全く間違いの発想です。

図表2を見るとわかるのですが、ゴールドは新高値に近い

値動きをしており、プラチナは最高値から半分以下になっています。


投資のルールは、「高いものを買う」です。

野菜や日用品ならば安い方がいいです。それは消費してなくなってしまう性格のものです。一方、投資は将来高値で転売することを狙っています。誰かが高く買ってくれないと困るのです。

そのためには、今から高値で取引されているものがいいわけです。


米国で日本車が高値で買われるのは中古市場で高く転売できるからです。

同じ理屈で考えましょう。


安いものはどこまでも安くなるか可能性があります。

図表3に、金と銀の価格差を示しました。1760年ごろには金の7%

あった銀価格は今では1%程度になっています。

仮に、「銀は金価格の3%にまで落ちてきた。安い」と思って買ったら、

そこからまだ下がって1%にまでなってしまったことになります。この場合、金を買った方が3倍は儲かった計算になります。

安いことを理由に買ってはいけないのです。

プラチナが安い理由は需要要因に現れています。

図表4を見ると、プラチナの需要の40%は自動車の触媒です。

これは電気自動車には不要ですから、ますます需要が

小さくなっていくことは目に見えています。


こうしたことを総合して、プラチナ投資は避けるのが無難です。

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第六十九回 機関投資家の手口サイトの見つけ方

2022年6月17日

質問:

「機関投資家は馬鹿だ。その逆をいけば儲かる」という話を書いたところ、たくさんの方から、「どのようにしたら、機関投資家の手口のサイトにたどりつけるかわからない」という質問を受けました。以下に回答します。


回答:

①以下のURを開きます。

Historical Compressed | CFTC


②すると、以下のようなサイトが出てきます。

ここで色をつけた個所をクリックしてください。

Traders in Financial futures; Futures Only Reports

と書かれた箇所です。似た名称が多いので注意してください。

③EXCELのところをクリックします。大きなEXCELが出てきたら、参照する個所は以下の表のオレンジと緑の個所になります。A欄の先物名、LM欄のアセットマネージャの先物ポジション(枚数)に注目してください。

A欄:  E-MINI S&P 500 - CHICAGO MERCANTILE EXCHANGE

L欄:  Asset_Mgr_Positions_Long_All

M欄:  Asset_Mgr_Positions_Short_All

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第六十八回 テレビの経済解説を信じるな

​2022年6月10日

質問:

テレビを見ていたら、「米国長期金利と円相場はほぼ連動する」という内容が放送されていました。米国金利が2%から3%に上がっている期間に、円相場が120円から130円になっているというものです(図1参照)。この連動は今後も続くのでしょうか?


回答

「テレビの言っていることは信じない方がいい」とぼくは常に言っています。これもその例です。図1にはトリックがあります。それは期間を2022年の初めからにしているところです。似ている期間だけを取り上げています。


もっと期間を長くしたチャートを見てみましょう(図2参照)。2018年初から2020年初めまでは相関がないです。多くの場合、期間を長くすると化けの皮が剥(は)がれます。

一般的言って、「2つのグラフに相関関係がある」というチャートには注意してください。インチキが多いです。ぼくは昔、「帯広市の気温と日経平均は連動性が高い」というチャートを作って発表したことがあります。北海道の一都市と日本の株価には何ら関係はないのですが、たまたまある期間だけを取ると連動して見えることがあります。

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第六十七回 米国通貨の信用が揺らぎ始めた

​2022年6月3日

日本の定説:

「ロシア=悪者、ウクライナと欧米=いい者」

これはG7諸国での常識でもある。


世界多数派の見方(現実)

「米国=悪者、ウクライナ=被害者」

ウクライナ戦争で勝利しつつあるのは、ロシアであり、ロシアは欧米からの経済制裁には屈していない。


解説

ロシア通貨(ルーブルの対ドル為替レート)はロシアのウクライナ侵攻後大きく売られ、一時は5割下落した。ところが、ロシアが金本位制を導入すると、為替レートは一気に回復した。


現在では2020年以降の最高値になっている(図参照)。金本位制は確かにルーブルの価値を上げているが、ロシアが欧米からの制裁を受けて経済的な苦境に陥っているならば、為替レートはここまで上昇しないだろう。

為替レートが示すところは、米国に対する非難が高まっているということだ。世界の多数派は、米国がロシアとウクライナをそそのかして戦争状態を作り出したことを気づいている。米国に対する信用が揺らぎ始めた証拠だ。

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第六十六回 金価格はやや上昇へ

2022年5月27日

鉱山会社・機関投資家の手口が底値を示唆


その理由は手口だ。5月20日発表の統計データによると、機関投資家の買いポジションが3.8万枚まで減少した。鉱山会社の売りポジションが4.3万枚まで減少した。


図1,2参照。ただし、図2の機関投資家のポジションは最近の急激に変化したため、 4.3万枚になったことが確認できない。(それぞれのポジションの意味については拙著を参照していただきたい。)


鉱山会社が金価格に強気になっており、機関投資家が弱気になっている。これは底入れの条件だ。金価格は足固めに入っている。

生産量が最重要

手口以上に重要な統計は生産量だ。これが減少の方向を見せないと、金価格は底入れはするものの、大きく上がることがないと考えるべきだ。最新の生産量は増加傾向を示しており、これが価格上昇の足かせになっている。

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第六十五回 NY株式は反転へ

​〜ファンドマネージャー が弱気、つまり株価上昇〜

2022年5月20日

米国は昨年末から下落傾向が続いてきたが、反転の兆しが出てきた。当面は上昇基調に戻ると考える。


最大の理由は、ファンドマネージャーが弱気に転じたことだ。ファンドマネージャーの59%が弱気、41%が強気だ。(正確には、買いポジションが59%、売りポジションが41%)


コロナが世界中に広まった2020年3月、株価は大きく下がった、この際は弱気が57%にまで縮小した。これに近いレベルにまで弱気が近づいたのだ。


金融市場はファンドマネージャーの反対を行くのが常だから、年末からの下げ相場もいったん終了すると考えるべきだ。図参照

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第六十四回 金を孫にまで残すのは有効な投資法か?

2022年5月13日

質問:

これから迫りくる経済危機におてもゴールドを売らずに保持し、子供や孫にまで残そう思います。このような投資法は有効でしょうか?


回答

金持ちが実践している方法

有効です。世界の金持ちはゴールドを売ることなく、超長期で保有しています。その代表が王族です。歴史を見ればわかるのですが、国家の紙幣や通貨は無価値なものになることがあります。王族はそうした事情をよく知っているので金で蓄財しています。金持ちが実践済みの方法です。

庶民はいったん売るのがいい

経済危機が山場を迎えれば、金価格は暴騰し、その後ピークを打つでしょう。私たち庶民はそこで売ることをお薦めします。


金相場は1933年から上がり始め、47年後の1980年に40倍になりました。そこでピークをつけました。価格は826ドル。その後価格は7割下がり、260ドルになりました(図)。


1980年の高値を抜くのに28年かかりました。これから来る経済危機は史上最大規模になるでしょうから、金価格の高騰もそれに応じた大型のものになるでしょう。


山高ければ谷深しで、その後は長期にわたって金価格は低迷するものと思われます。7割の下落、28年の辛抱は庶民向きではありません。

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第六十三回 20世紀に起きた大型の金相場歴史から学ぶことは何か?

2022年5月6日

47年間に40倍になった金価格。

ここから学ぶことは何か?


事実のおさらい

1933年21ドルから1980年826ドルまで

約40倍となった。


上昇相場は3段階で進む

ホップ期

金相場上昇の幕開け。1933年に米国は庶民の保有する金を没収した。金が不足したからだ。この結果、金価格(当時は固定価格)を翌年に69%引き上げた。金価格は35ドルとなった。

ステップ期

1971年のニクソンショック

金とドルの交換を停止したものだ。ドルに対して金が不足し始めたのが理由だ。

この日からドル紙幣は金の裏付けがなくなった。金価格が固定相場から自由価格へと移行した。価格上昇ペースに弾みがつく。


ジャンプ期

1978年

金価格が200ドルを超えてから、上昇スピードが速くなった。需要に対して、生産が追い付かない状況だったため。

歴史から学ぶこと

①ホップ⇒ステップ⇒ジャンプと期が進むにつれ、上昇速度が速まる。

②ホップ期、ステップ期への移行は社会的な事件がきっかけ。



これからの金相場

①現在はホップ期(山ならば、2合目程度)

②ステップ期はNYの株式暴落で始まるだろう

③ジャンプ期は米国や先進国のデフォルトがきっかけとなるだろう

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第六十二.五回 金価格は横ばいへ

2022年第1四半期の金の生産量 2.6%増

 (確定値)

​2022年4月30日

4月28日に発表された統計によると、金の生産量(第1四半期)が前年同期比で2.6%増になりました(図表1)。「前四半期は減産に転じた」という3か月前の統計値は変更され、0.8%増になりました。減産はなかったことになります。この結果からすると、金価格は横ばい圏の動きに逆戻りするものと思われます。


金価格は生産量と逆相関があります(図表2)。生産量が増えると価格が上がり、生産量が下がると価格が下がるという構造です。野菜などの生鮮品と同じです。

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第六十二回 金価格は横ばいへ

2022年第1四半期の金の生産量 3%増

 (速報値)

2022年4月29日

4月28日に発表された統計によると、金の生産量(第1四半期)が前年同期比で3%増になりました(図表1)。前四半期は減産に転じたのですが、また増産に転じました。この結果からすると、金価格は横ばい圏の動きに逆戻りするものと思われます。


金価格は生産量と逆相関があります(図表2)。生産量が増えると価格が上がり、生産量が下がると価格が下がるという構造です。野菜などの生鮮品と同じです。

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第六十一回 金利上昇は株価下落につながらない〜ジャンク債の金利差が重要〜

​​2022年4月22日

米国の金利上昇が始まり、多くの方から、「株価暴落の引き金になるのではないか」というお問い合わせをいただいた。図1を見ると、今年に入って米国金利(10年債)は上昇基調にある。ジャンク債も同様だ。


しかし、大事なのはこの2つの金利差だ。この差を記したのが図2だ。これは今年に入って拡大したものの、最近ではまた縮小気味になっている。しかも、金利差はコロナ拡大前の安定期(赤いシャドー期)よりも小さい。

この図が意味するところは、暴落はまだ先だということだ。


ロシアが世界の悪者になり、時代が不安定な様相を見せせ始めている。「だから株も下がるのではないか」と考える人が多いが、それは短絡的な発想だ。コロナの流行が始まって世の中が暗くなったが、株価は新高値となった。

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第六十回 消費者物価8.6%増 株価への圧迫要因

​2022年4月15日

米国の消費者物価(対前年比)

  1月  7.5%増

  2月  7.9%増

  3月  8.6%増


ここのところ毎月、消費者物価が上昇を続けている。

株価圧迫要因だ。ウクライナ問題で資源の供給に問題が生じている可能性もある。


IT相場の天井時、リーマンショック前の相場天井時には、消費者物価がそれぞれ3.8%増、4.4%増となって、景気の過熱感が物価に現れていた。その後5割を超える株価暴落となった。


物価上昇率は当時以上になっている。


すぐに下げ相場につながるわけではないが、下がり始めたら5割~6割は当たり前になるだろう。

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第五十九回 ロシア、金本位制に移行、長期的に金需要増大へ

​2022年4月8日

ロシアは3月末から金本位制が取り始めた。これは金価格を長期的に上昇に向かわせる動きだ。


ロシアでは3月28日から、中央銀行が金地金を1グラム5000ルーブルの固定相場で民間銀行から買い上げ始めた。この発表ののち、ルーブルの対ドル為替レートからは投機的な動きが消え、金相場に準じた動きとなった。


つまり、金価格が5%上がればルーブル(対ドルレート)が5%上がるというものだ。たった今、金価格とルーブルの為替レートを検索したところ、次のような数値だった。

●金価格 1922米ドル(1 トロイオンスあたり)

●為替レート

●金価格から計算される理論上のレート 1ドル80.91

       ●現実の為替レート 1ドル=81.85

若干の差があるが、金価格も為替レートも始終変動しているので、この程度の差は誤算の範囲だ。なお、ルーブル/金の固定相場は3か月ごとに見直される。


ロシアは国際決済機関から外されたので、ルーブルのドルへの変換ができなくなった。「ドルに変換できない通貨は持ちたくない。不安だ」という声を受けて、金との固定相場を打ち出した。金との固定相場になったルーブルはドル以上に信頼感のある通貨に変身した。


4月1日から、非友好国がロシアから天然ガス(気体状)を買う場合、ルーブルで支払うことが義務づけられた。EUはまだルーブル払いを拒否しているが、スロバキア、ハンガリー、オーストリア、ラトビアなどは、ルーブル払いをやむを得ないこととして受諾しつつある。欧州全体がルーブル払いを受け入れて対立解消しそうな感じに変わっている。


資源国(特に中東)はこうした動きに追随していくだろう。金本位制の通貨になれば、通貨の国際的な地位が上がり、為替レートも上がるからだ。特に、イランやイラクは米国からいじめられてきた歴史があり、金本位制に積極的なはずだ。最近ではサウジも米国離れをしつつある。これは長期的に金に対する需要を大きくする可能性が高い。

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第五十八回 ロシアのウクライナ侵攻から得た教訓

​2022年4月1日

金融に関する教訓が2つある。


  • デフォルト通貨の価値は半減する

拙著にも記したように、国家が、「お金がありません。国債の利払いを停止します」とデフォルト宣言すると、通貨は約半額になるのが通例だ。


今回のロシアの侵攻でもこの経験則は正しかった。

ロシアの通貨(ルーブル)は国際決済機関から締め出されたため、ロシアは海外の国債保有者に対して、利払いができなくなりそうになった。事実上のデフォルト状態に陥った。


2021年10月には0.01435だったルーブルは、2022年2月、ウクライナ侵攻が開始されるや否や大幅下落となり、3月には0.00701まで下がった。約5割の下落となった。(図表)



  • 米国は庶民に非道な政策をとるだろう

制裁を目的にロシア国家をデフォルトさせると、国債を保有している外国人投資家はとばっちりを喰う。投資家は何らの罪のない人たちなのに、この人たちが購入したロシア国債は利払いを受けられないばかりか、額面がゼロになってしまう可能性がある。


いざとなれば、政治上の目標達成が優先され、経済は二の次となる。それが歴史上繰り返されてきたことだ。


ここから見えてきたシナリオは次の通りだ。


今後、米国がデフォルトに近い状態に陥った場合、米国は国際決済機関の機能を停止させるだろう。理由はサイバー攻撃とか決済銀行の破壊(テロ行為)になるだろう。その際、米国のみならず、すべての国際取引が不能になる。


「悪いのは米国ではありません。決済機関が機能しないので利払いができません」と宣言するだろう。


このことからすると、地金を持つことが最良だと思う。

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第五十七回 通貨下落は二段階でやってくる

​2022年3月25日

質問:

地金を銀行の金庫に預けています。通貨が下落すると本に書いてあったと思いますが、たとえば半分になるとします。金が一番高くなった前後に、すべて売りたいと思っていますが、その時はまだ通貨が下落していなかった場合、売って現金に買えたら、そのあと半分に下落したら、その分損をしてしまうのではないでしょうか?でも、金が一番高くなったあと、金の値段がどんどん下がってしまったときに、通貨の下落が止まったとすると、その時に金を売っても、やっぱり損をするのではないでしょうか?どうすればいいか教えてもらうとうれしいです。』




回答:

金(ゴールド)をたくさんお持ちのようですね。利益が積みあがっているようで何よりです。


金の最高値と通貨の下落の最安値はほぼ同時に来ます。だから、金が最高値で売れるようならば、通貨のことは心配する必要はありません。


ただし、ここにはさらに注釈が必要です。通貨の下落は2段階でやってくるということです。政府が国債の返済をあきらめた時(つまりデフォルトした時)から数か月以内に、通貨の最安値が来ます。この時が金の売り時です。金は最高値になります。金から驚くほどの利益が生み出されることになるでしょう。


さて、2段階目とはここからのことを指します。通貨はその後10年以上にわたって下落基調となるでしょう。図表にはデフォルト国家(ブラジル、ロシア、メキシコ、アルゼンチン)の為替レートをつけました。この時点では金価格は歴史に残る最高値をつけた後なので、下落基調になっているでしょう。


この長期間においては、すでに金は売却しているので、通貨が下落すると、現金を持ったままでは自分の資産が減ってしまうという問題があります。

ただ、それは先のことであり、その時点になってから対策を考えればいいでしょう。そのような時期が来たら、ぼくはファンクラブのサイトにその時点の最適な資産運用方法を掲載します。



もうひとつ大事な点をお話ししておきます。あなたのメールを読むと、「最大利益を狙いたい」という気持ちがありませんか?投資をする人の大半がそのような姿勢で臨んでいるので、珍しいことではありません。


ただし、ぼくはそのようには考えていません。「自分だけが利益を最大化するなんてできない。ほどよく儲けることができればいい」とぼくは思っています。


自己資産の極大化にばかり目を奪われると、経済を動かす大きな構図を見逃してしまうことになりかねません。そこでぼくは、一歩引いた態度を取るようにしています。それが結局は利益を積み上げる道だと思います。


相場は考えても、思い通りに動かない時がいっぱいあります。「金で少しずつ儲けが増えてきた。今後もそうなっていくだろう」とおおらかな気持ちになるのが投資成功のコツかもしれません。

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第五十六回 純金積立かスポット買いか

​2021年3月18日

40代の男性です。

私は株式投資をしたことがなく興味もありません。

本を読んで、初心者なので純金積立を数年前に始めました。

質問です。

分散買いがいいということなので純金積立をしていますが、手元に多少まとまったお金があります。

積立は毎月の給料でできますので、いっそのことスポット買いをしようかと思っています。

それとも、銀行預金はそのままにして、純金積立だけをやればいいでしょうか?

本には、

「手元に生活費だけを残して、あとは金に投資した方がいい」と書いてありますが、

「分散買いがいい(純金積立がいい)」とも書いてあるので、迷っています。

次元の低い質問ですが、ほかの投資をしたことがない人にも役立つと思い、勇気を出して質問させていただきました。』



回答


現状の純金積立を続けてください。いつから始めたのかは記載がないのでわかりませんが、積み立てた金から利益が出ていることでしょう。

あなたにとって、これはおそらく初めての投資なのでしょう。最初から利益が出ているのですから、素晴らしいことではありませんか?


あなたは質問の文頭に、「株式投資に興味がない」と書かれていましたね。どちらかといえば、投資には縁遠い人です。そういう人は欲を出してはいけません。まとまったお金を突っ込むのは現時点ではやめておきましょう。


ぼくが金投資を薦めるのは、資産を守るためです。ぼくの考え方は、「全資産における金投資の比率を高めれば高めるほど、資産を守れる度合いが増えるとともに、大儲けのチャンスも増える」というものです。「守りができて、儲けも増えるならいいことだらけじゃないか」と思うかもしれませんが、投資ですから、リスクも当然増えます。


リスクを大きくすることは今のあなたにはふさわしくないと思うのです。ぼくのところにはたくさん質問が来ますが、リスク許容度の高い人は、「まとまったお金があるのですが、全額一気に買ってもいいですか?」といった質問をしてくることが多いです(もちろん、そんな危ない投資はダメです。)今のあなたはそういう人ではありません。


あなたがもう少し前向きになった時、またメールをお寄せください。その時は、ぼくへの質問の論調が変わっているでしょう。その時が投資の実行のチャンスかもしれません。

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第五十五回 ウクライナ問題は金価格に影響なし

​2021年3月11日

戦争が始まると、TV画面で見ているだけで暗い気持ちになるが、金価格や株価には影響は少ないといえるだろう。


次ページには1948年以降の主な11の戦争の3か月後の金価格と株価を示した。


株価は戦争3か月後に平均して1.0%上昇した。これはこの期間の平均上昇率(1.9%)よりやや低い。また、金価格は戦争後3か月後平均の上昇率が0.1%で、この期間全体の変化率(-0.3%)を上回った。(金は価格が自由化されている期間のみ変化率を算出)


ここから、「開戦後は株価が不調になり金が上がる」というとらえ方ができなくもないが、利益につながるような大きな変化ではない。


戦争は気にしないことだ。金が上がるとすれば、生産量がより重要だ。

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第五十四回「株価暴落はまだ先か?」

​長期金利差から考える

​2021年3月4日

株価暴落はまだ先ではないか。長短金利差からそのように考えることができる。


●長短金利差とは

長期金利(10年)と短期金利(2年)の差額(%)

普通は長期金利が大きく、短期金利が小さい。銀行の定期預金を考えればすぐわかることだ。

これに対して、景気の最終局面では長期・短期金利の差がゼロになったり、マイナスになったりする。特異な時期だ。


●金利差ゼロの時期

図表上には黒い〇(丸)が3回ある。金利差がゼロになってしばらくすると、株価が天井を打ち大きく下がるのがわかる。(3回目のコロナ暴落は暴落の期間が短かった)

●現状

金利差は徐々に小さくなっているが、まだゼロ近辺というところにまでは達していない。このことからすると、株価暴落はまだ先だという推論が成り立つ。


お詫び:本件についてのこのご質問をチャット機能上で昨年受けていたのですが、ファンクラブ事務局がファンクラブのサイトにチャット機能があることに気づいていませんでした。そのため、回答が大変遅れました。お詫びします。

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第五十三回「原油価格は天井圏」

​2021年2月25日

原油価格は天井圏にあり、ここから大きな上昇はないだろう。先物市場の手口に現れている。原油価格は専門業者の先物ポジションの動きと相関関係が高い。


最近、原油の開発、販売にかかわる専門業者が買いポジションを持ち始めている。一般には専門業者は実際の原油を開発・保有しているので、通常、売りポジションになっていることが多い。(図表上、マイナスは売りポジション、プラスは買いポジション)


現在の買いポジションは過去最高のレベルだ。


注:この見方は金の鉱山会社のポジションの見方と同じです。拙著をご覧ください。


お詫び:2月6日に本件についてのご質問をチャット機能上で受けていたのですが、ファンクラブ事務局がサイトにチャット機能があることに気づいていませんでした。そのため、回答が遅れました。お詫びします。

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第五十二回「株価大暴落はまだ先」

​ジャンク債金利に動揺なし

​2021年2月19日

株価が暴落する前にジャンク債が上がるのが通常だ。

現時点ではジャンク債は静かなままなので、大きな株価暴落は近い将来には起きないだろう。


米国の国債金利(10年債)は昨年末1.5%から昨日2.0%にまで上昇している。0.5ポイントの上昇だ。これに対して、ジャンク債金利(正確には国債金利との差)は0.7ポイントしか上がっていない。この程度の上昇ではジャンク債投資家が動揺しているとは言えない。


過去を見ると、ITバブル崩壊期、リーマンショック暴落期といった株価大暴落時は、その数か月以前から、ジャンク債が上がり始めている(図表1 詳しくは拙著参照)。これに対して、最近のジャンク債金利はコロナによる株暴落の以前の水準より低い(図表2)。

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不況の接近を教えてくれる大事な図

第五十一回「消費者物価は株価圧迫要因」

​2021年2月11日

米国の消費者物価(対前年比)2 月11日発表

  10月  6.2%増

  11月  6.8%増

  12月  7.1%増

    1月  7.5%増


ここのところ毎月、消費者物価が上昇を続けている。

株価圧迫要因だ。


IT相場の天井時、リーマンショック前の相場天井時には、消費者物価がそれぞれ3.8%増、4.4%増となって、景気の過熱感が物価に現れていた。その後5割を超える株価暴落となった。


物価上昇率は当時以上になっている。


すぐに下げ相場につながるわけではないが、下がり始めたら5割~6割は当たり前になるだろう。

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第五十回「原油価格が株価を引き下げる」

​2021年2月5日

原油価格が90ドル台になってきた。

これは株価下落につながる危険な兆候だ。


通常は原油と株価は同方向に動く。景気がいい時は原油も株価も上がり、景気が悪い時は双方とも下がる。


ところが、景気過熱期には原油価格は高騰を続け、企業収益を引き下げるまでになってしまう。リーマンショックの際、最終的に株価下落の引き金になったのは原油価格だった(図表1)。


今年に入ってから株価は軟調だが、原油は堅調だ(図表2)。まさにリーマンショック時の株価天井圏での出来事に似ている。

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第四十九回「金価格は底入れから上昇へ」

​​2021年1月29日

2021年第4四半期の金の生産量 1.1%減



1月28日に発表された統計によると、金の生産量(第4四半期)が1.1%減になりました(図表1)。第3四半期の増加量が4.4% から1.3%に引き下げられ、減産の傾向が明らかになっていす。この結果からすると、金価格は底入れし、やがて上昇に転じると思われます。


金価格は生産量と逆相関があります(図表2)。生産量が増えると価格が上がり、生産量が下がると価格が下がるという構造です。野菜などの生鮮品と同じです。

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第四十八回「2022年の相場予想〜「金は本当に暴騰するのか」に答える〜」

​​2021年1月21日

金価格の予測

NY株式が暴落すれば、金価格は当面は軟調に動くと考える。ただし、それは最初のうちだけだ。暴落が深まれば金融市場には不安が増し、安定資産への渇望が始まって、金価格は暴騰を迎えるだろう。今年は、金買い増しのチャンスが訪れるだろう。


予測の3つのポイント

1.金は生産量の増加に逆比例した動きをする 図表

金価格の動きに最も影響を与えるのは生産量の増減だ。生産量が増加すると、金価格は軟調になる。生産量が減少すると金価格は上昇する。現時点では金は生産増が続いている。


2.株価と金価格の相関は一定ではない

NY株が暴落に転じた時点で、金価格の動きには2つの可能性がある。

①強気シナリオ:不安定な時代に頼れる資産は金しかない。金価格の独歩高が始まる。

②弱気シナリオ:景気のピークアウトにより、金の最大需要先である宝飾マーケットが縮小する。それを嫌気して金価格は株価と同じように下げる。


景気と金価格の過去の相関をみると、リーマンショックの際は、②のもと、金価格は下げた。ITバブル崩壊期には金価格は景気とは全く異なった動きをした。


3.今年の展開

上記を総合して考えると、金価格は株価暴落と共に軟調になる可能性が高い。ただし、それは当初に過ぎない。その後、金融市場の不安定さを心配する投資家が金投資へと向かうだろう。金価格の高騰は株価暴落に遅れて始まることになるだろう。

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第四十七回「2022年の相場予想〜「株価は本当に暴落するのか」に答える〜」

​​2021年1月14日

2022年の相場予想


「株価は本当に暴落するのか」に答える

本ファンクラブに、「本当に株価暴落が来るのか?そんな兆候があるのか?」という声が寄せられます。こうした疑問の解消を目指して、ファンクラブ会長の私から、「どうして株価暴落が必至なのか。金価格暴騰が起こるのか、について初心者にわかりやすく書いた本を出して欲しい」と林則行さんに依頼しました。その結果、相場の初心者である私が質問をし、林さんが回答する形の書籍を刊行することになりました。現在執筆中で、5月に店頭に並ぶ予定です。


2022年予測

①世界の景気・株式市場:

年央には景気がピークアウトし、株式市場は下落に転じるだろう。

②金価格

金価格の上昇は株式暴落と同時にスタートするのではなく、遅れて始まるだろう。

③投資方針

●金はポジションを積み増す好機。長期的な上昇に備える。

●株式投資については、保有株を手仕舞うのが安全だ。



株式市場暴落のサイン

世界経済の中心地であるNYの株式について、暴落を示唆するサインが出始めている。

次の5つのシグナルの内、1つがまだ暴落サインを示していない。5つすべてのシグナルが点灯した時点が暴落のスタートになるだろう。

①物価高 暴落サイン出現

物価高が株価をピークアウトさせるだろう。消費者物価は1982年ぶりの高さ。企業物価は統計(1987-)を取り始めての史上最高。原材料価格はオイルショックにほぼ並ぶ。IT相場の天井時、リーマンショック前の相場天井時には、消費者物価がそれぞれ3.8%増、4.4%増となったのちに、5割を超える株価暴落が起きた。現在は既に6%を超えている

参考:ファンクラブの記事:企業収益の悪化が明確化

2021年12月17日解説


②先行株 暴落サイン出現(図表)

株式市場に先行した動きをする銀行株が軟調になっている。

シティバンクは2021年6月にピークアウトし、上昇幅の半分を下げている。最優良行のJPモルガン銀行も2021年10月にピークアウトしている。弱小銀行から下落が始まるのが常で、今回も理論通りに展開している。

③騰落レシオ 暴落サイン出現

NY株式市場に先駆けて軟調な動きを始めている。騰落レシオは中規模・大規模の双方の株価天井に出現する。

参考:ファンクラブの記事:中長期的な波乱予想されるNY株式市場

2021年12月24日解説

④ファンドマネージャの強気 暴落(中規模)のサイン出現

NY市場に投資するファンドマネージャ(機関投資家)はかなりの強気だが、その度合いにはまだ上昇の余地があると考えられる。現在は75%のファンドマネージャが強気で25%が弱気だ。ここまで強気派が増えてくると、株式市場は中規模な下落を引き起こす可能性が高い。ただし、大きな暴落にはさらに強気派が増えてくることが必要だ。リーマンショックに至る前の大天井では85%のファンドマネージャが強気になっている。

参考:ファンクラブの記事:NY市場は中期的な下落が予想される

2021年9月17日解説

⑤ジャンク債の暴落 株価暴落のサイン未出現

債券市場はいまだに安定しており、ジャンク債も同様だ。ジャンク債が弱気に転じた時点(ジャンク債金利が上がり始めた時点)がNY株式市場のピークアウトとなるだろう。

参考:ファンクラブの記事:株価大暴落はまだ先

2021年12月3日解説

​来週は2022年の相場予想〜「金は本当に暴騰するのか」に答える〜をお送りします。

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第四十六回「騰落レシオ」

​​2021年1月9日

質問:

お世話になります。

ファンクラブ定例発信の内容について質問させてください。


今回の発信は騰落レシオが弱気に転じているとのことでしたが、

この騰落レシオはNYSE全体のものでしょうか。

また、何日平均の騰落レシオでしょうか。


通常騰落レシオというと、何日間かの平均なので、あるレンジで動くものですが

今回掲載されているチャートは右肩上がりになっているので、

どういうものなのかが気になりました。


お忙しいところお手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

回答:

騰落レシオの計算については、添付のパワーポイント をご覧ください。

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第四十五回「デフォルト国家の通貨はどうなるか」

​​2021年12月31日

借金が返せなくなり、国家がデフォルトを選択した場合、通貨はどのようになるのか?過去の事例を見てみよう。


図は経済危機勃発の4国、メキシコ(発生時1994年)、ロシア(1998年)、ブラジル(1999年)、アルゼンチン(2001年)の対ドル為替レートを危機発生時から20年後までを示したものだ。注目は2点ある。


❶即座に5割下がる。仮に日本のみがデフォルトし、米国がしなかった場合、1ドル100円の為替レートが200円になるということだ。


❷下落は長期に続く。図中のブラジルには回復した時期があるが、総じて長期的に下がっている。いったん信用を落とすと、なかなか回復しないのだ。

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第四十四回「中長期的な波乱予想されるNY株式市場」

​​2021年12月24日

NY市場は中期的な波乱が予想される。


理由は騰落レシオが弱気に転じているからだ。一般的には、騰落レシオが崩れ始めると、そのあとを追って、NY株式市場が崩れる。


物価高による企業収益の悪化が懸念されており、株安につながる可能性が高い。


ただし、現状では、ジャンク債の債券価格は崩れていないので、NY市場の大天井の明確なサインは見出せない。

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第四十三回「企業収益の悪化が明確化」

​​2021年12月17日

物価上昇は根強い。

11月  消費者物価    6.9%

  企業物価  16.9%

  原材料価格  22.8%


消費者物価は1982年ぶりの高さ。企業物価は統計(1987-)を取り始めての史上最高。原材料価格(図表1)はオイルショック(22.9%)にほぼ並ぶ。


企業物価が上がったのに、消費者には十分転嫁できない場合は、企業が値上げ分を負担しなくてはならない。収益にマイナスだ。そのマイナス幅が史上最大になっている。図表2参照。

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第四十二回「物価上昇は根強いトレンド」

​​2021年12月10日

物価上昇は根強く続く。

コロナにより外国人労働者が帰国したせいか、米国は人不足が深刻になっている。図表1を見ると、失業率低下(逆メモリ)と物価上昇が同時に起きているのがわかる。


似た現象は第一次、第二次オイルショックの際にも起きた。図表2にあるように、人手不足と物価上昇の時期が重なっている。人手不足が解消しても物価上昇が続いている点にも注目だ。


物価上昇は株価に大きなマイナスとなる。

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第四十一回「株価大暴落はまだ先」

​​2021年12月3日

最近の株価の下がり方を見て、「大暴落が近いでしょうか」という問い合わせが多い。現時点での回答は、「大暴落はまだ先」というものだ。


株価が暴落する前にジャンク債が上がるのが通常だ。

ジャンク債金利は少し上がってきているが、まだよくある正常の範囲に過ぎない(図表1)。長期で見ると、動揺しているようには全く見えない(図表2)。


過去を見ると、ITバブル崩壊期、リーマンショック暴落期といった株価大暴落時は、その数か月以前から、ジャンク債が上がり始めている(詳しくは拙著参照)。これに対して、最近のジャンク債金利はコロナによる株暴落の以前の水準より低い。

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第四十回政府がデフォルトを避ける方法」

​​2021年11月27日

質問:政府の借金がかさみ、デフォルトするリスクが高いと思いますが、それを避ける方法はありますか?


回答:金利の支払いや借金元本の返済額が少ない調達方法に今から変更していくことで、デフォルトのリスクを軽減することはできます。


❶ゼロクーポン債の導入

今の国債は年に2回利払いがあります。それをゼロにしてしまう方法です。

例えば、50年後に100円で返金する債券を60円で売り出します。途中の利払いはなしです。投資家は50年間に40円儲かます。利回りは約1%です。


「50年も元金が戻ってこないものを買う人っているの?」と思うかもしれませんが、いくらでも存在します。金融市場があるので、翌日からいつでも売ることができるからです。10年後に売ると、金利水準が変わらなければ、65円くらいで売れるかもしれません。元本60円に対して5円の儲けです。


❷償還期限の長い債券の発行

現時点では10年債までが大半を占めますが、20年、30年、50年といった長期の債券を発行します。これならば、長い期間、元本を返す必要がありません。


長期になるほど、利子をたくさん払う必要があります。米国の場合なら、本日現在、1年債なら0.2%、5年債が1.3%、10年債が1.6%、30年債が2.0%です。それでも、ゼロクーポン債ならば、現金での実際の支払いはずっと後なので、当面は心配要りません。


❸問題はいつ行うか。

こうした方法をいつ行うかが最大の焦点です。これらの方法は問題を先延ばしにする対処療法であることとは、誰でも知っているからです。


仮に、株価が暴落を始め金利が上がり始めた時に行うと、投資家たちは、「トリックを使って負担軽減を図った」と思い、国債の信用度を低く見積もるようになるかもしれません。これは逆に大幅な金利高につながってしまうリスクを抱(かか)えます。


タイミングが悪いと、逆効果になってしまうということです。好例はジンバブエのリデノミ(通貨切り下げ)です。インフレ退治のために、2008年8月に100億分の1に通貨を切り下げましたが、インフレは収まらず、翌年2月にさらに1兆分の1に切り下げました。物価上昇の真っ最中にリデノミを行っても効果がないのです。頃合いが大事だという教えです。


ゼロクーポン債、超長期債導入の絶好のタイミングは今です。景気の悪化する前に始めれば、市場から怪しまれることがありません。しかし、政府には先を読む力がないので、金利が上昇し始めてから問題に取り掛かるでしょう。おそらく、金利支払いや元本返済軽減策は取られないまま、デフォルトの道に進むものと考えています。

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第三十九回円安相場は反転へ向かう

​​2021年11月20日

ファンドマネージャを下手の見本として扱うと成功する。


ファンドマネージャの売り残(売り残ー買い残)は円相場との相関が高いからだ。


一般にファンドマネージャが売り越す(=円高に賭ける)と、相場は円安に触れる。買い越す(=円安に賭ける)と、相場は円高に触れる。


図表を見ると、ファンドマネージャは10月に入って、7万枚の売り越しをしている。これは過去最高の記録だ。

ここまで来れば、反転が近いとみていいだろう。

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第三十八回米国物価高騰が急速:株価下落の引き金へ

​​2021年11月12日

消費者物価10月6.2%増 31年ぶり

   原材料は22%増、オイルショック並み

米国の消費者物価(対前年比)

  7月  5.3%増

  8月   5.2%増

  9月  5.4%増

  10月   6.2%増


6.2%増は1990年ぶり。特に、上昇スピードが速い (P2)。また、商品価格の上昇が激しい(P3)。10月は前年比22%増。オイルショックと並ぶ水準だ。


IT相場の天井時、リーマンショック前の相場天井時には、消費者物価がそれぞれ3.8%増、4.4%増となって、景気の過熱感が物価に現れていた。その後5割を超える株価暴落となった(P4)。

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第三十六回金のETFは富裕層に大きなメリット

​​2021年10月29日

累進課税(=所得の多い人ほど税率が高い)というのは原則に過ぎない。所得税の税率は所得に応じて5%から45%まで上がっていくことになっている。地金での儲けもこの税率だ。


ただし、実際に課税されている税率は違う。図にあるように、所得税の税率はゼロからスタートし、徐々に上がり、1億円でピークの28%を迎える。1億円を過ぎると税率は徐々に下がってついには15%になってしまう。日本の高額所得者は15%しか税金を払っていない。


この理由は高額所得者の所得の大半が株式、ETFなどから来るからだ。この税率が一律約15%(住民税は別途5%)だからだ。岸田首相はこれを不公平だとし、就任直後にその是正を唱えたが、選挙直前ということもありすぐに撤回した。


この図をみると、1500万円以上の所得のある人は地金よりもETFにした方が納税額が少なくて済むようだ。

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​​第三十五回「米国物価高騰 9月4.5%

​増 商品は20%増、オイルショック並

​​2021年10月22日

米国の消費者物価(対前年比)

  4月  4.2%増

  5月  4.9%増

  6月  5.3%増

  7月  5.3%増

  8月   5.2%増

  9月  5.4%増


特に、商品価格の上昇が激しい。9月は前年比20%増。

オイルショックと並ぶ水準だ(1/2)。


IT相場の天井時、リーマンショック前の相場天井時には、消費者物価がそれぞれ3.8%増、4.4%増となって、景気の過熱感が物価に現れていた。その後5割を超える株価暴落となった(2/2)。

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​​第三十四回「ジャンク債に注目 株価大暴落はまだ先」

​​2021年10月15日

株価が暴落する前にジャンク債が上がるのが通常だ。

現時点ではジャンク債は静かなままなので、大きな株価暴落は近い将来には起きないだろう。


米国の国債金利が上がり始めた。これを心配する声がある。ただし、ジャンク債(正確に言うと、ジャンク債と国債の金利差)は全く動揺していない。


過去を見ると、ITバブル崩壊期、リーマンショック暴落期といった株価大暴落時は、その数か月以前から、ジャンク債が上がり始めている(図表1 詳しくは拙著参照)。これに対して、最近のジャンク債金利はコロナによる株暴落の以前の水準より低い(図表2)。

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​​第三十三回「金価格は底で足固め」

​​2021年10月8日

鉱山会社・機関投資家の手口が底値を示唆


8月9日の1678ドルが当面の安値になる可能性が高い。


その理由は手口だ。9月28日発表の統計データによると、鉱山会社の売りポジションが4.2万枚まで減少した。図表2を見ると、ポジションは減少傾向にある。また、機関投資家の買いポジションが3.1万枚まで減少した。

(それぞれのポジションの意味については拙著を参照していただきたい。)


鉱山会社が金価格に強気になっており、機関投資家が弱気になっている。これは底入れの条件だ。金価格は足固めに入っている。

鉱山会社

図表1に鉱山会社の長期の売りポジションを記した。2018年8月に3.7万枚まで減少したあと、金価格は急上昇した。図表1では最近のデータが見えないので、図表2をつけた。


機関投資家

図表3に機関投資家の長期の買いポジションを記した。これによると、現状のような低いポジションレベル(3.1万枚)になると、価格が反発することが多い。図表3では最近のデータが見えないので、図表4をつけた。



生産量が最重要

手口以上に重要な統計は生産量だ。これが減少の方向を見せないと、金価格は底入れはするものの、大きく上がることがないと考えるべきだ。最新の生産量は大幅増加を示しており、これが価格上昇の足かせになっている。11月にQ3データを発表。

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​​第三十二回「株価の天井が見え始めた」

​​2021年10月1日

長い間上昇を続けてきた米国株価の天井が見え始めた。


商品市況の値上がりが尋常ではなくなってきたのだ。株価指数は多数の銘柄の合成だから動きが鈍いが、商品は一銘柄の動きだから、鋭角に動く。わかりやすいのは原油だ(図参照)。穀物、天然ガス、銅といった商品にも似た現象が起きている。


原油と株価の天底は一致する。正確に言うと、天底の時期が全く一緒だというのではなく、原油が大きく疾走して上昇(下降)した時、株価は天井(底)をつけている。


2020年春のコロナ暴落時には原油はマイナス価格にまでなった。(この先物は一般の人は取引できないものだったので、図のチャートではマイナス価格は表示されていない)その後価格が疾走して上がり、今では75ドルになっている。

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​​第三十一回「米国消費者物価の高騰は株価暴落の兆し」

​​2021年9月24日

米国物価高騰 8月5.2%増

   株価暴落の最有力シグナル

米国の消費者物価(対前年比)

  4月  4.2%増

  5月  4.9%増

  6月  5.3%増

  7月  5.3%増

  8月   5.2%増


物価は株価の天井に最も影響力のあるシグナルとなっている。ここのところ毎月、消費者物価について記載しているのはそのためだ。


IT相場の天井時、リーマンショック前の相場天井時には、消費者物価がそれぞれ3.8%増、4.4%増となって、景気の過熱感が物価に現れていた。その後5割を超える株価暴落となった。


すぐに下げ相場につながるわけではないが、下がり始めたら5割~6割は当たり前になるだろう。

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​​第三十回「NY市場は中期的な下落が予想される」

​​2021年9月17日

アセットマネージャが強気、実はこの逆が真理


アセットマネージャのS&P500の先物のポジションが78%となっている。買い建てをしているのが78%あり、売り建てをしているのが22%だということだ。

つまり、アセットマネージャは強気だ。


ところが、アセットマネージャは馬鹿だから、この逆が市場の真理となる。図表で〇印をつけた箇所を見ると、80%弱になった時点で株価が崩れているのがわかる。


近いうちに、下落相場が来ることになる。


ただし、これが最大級の下げに直結するかというと、そうとは限らない。リーマンショックの際はアセットマネージャの9割以上が弱気になった。


長期での転換点は他のシグナルと合わせて考える必要がある。

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​​第二十九回「銀行株に株式市場暴落の兆し」

​​2021年9月9日

図表1の解説

米国銀行株は高値更新が出来ていない。これは市場全体が暴落する兆しだ。

最大手のJPモルガンも経営基盤が弱いシティバンクも2021年上期は好業績だった。にもかかわらず、株価が市場の上昇に追いついていない。危険シグナルだ。


図表2の解説

銀行株が上げ過ぎたのが原因だ。JPモルガンが時にそうだ。ここまで派手に上げれば、直近の業績が良くても株価は頭打ちになる。「だとしたら、ゆっくり休んで横ばいの動きを続け、また後に上昇基調に戻るのではないか」というのは考えが甘い。

一般的には、これが暴落の予兆になってしまう。


暴落は3~6か月あとに来るのが通常だ。

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​​第二十九回「NY」

​​2021年9月3日

米国の金融緩和政策の縮小(テーパリング)が金価格にどのような影響を与えるかについての質問が多い。

ぼくの回答は「全く無関係。気にする必要なし」だ。


図表1:2021年8月の金価格

8月9日:  テーパリングの開始が近いとの噂を受けて急落。

    1700ドルを一時割り込んだ。

8月27日:  FRB議長のテーパリング開始決定の報道を受けて上昇

図表2:長期の政策金利と金価格


時期を3分割し、大きな動きをとらえる

①政策金利上昇、金価格上昇

②政策金利下降、金価格下落の後、上昇

③政策金利横ばい、金価格上昇


図表1と2が示すことは、政策金利は金価格に無関係だということだ。



大事なのは生産量と鉱山会社の手口だ。

金価格の分析にあたってはそれだけに集中しよう。

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​​第二十九回「銀行株に株式市場暴落の兆し」

​​2021年9月9日

図表1の解説

米国銀行株は高値更新が出来ていない。これは市場全体が暴落する兆しだ。

最大手のJPモルガンも経営基盤が弱いシティバンクも2021年上期は好業績だった。にもかかわらず、株価が市場の上昇に追いついていない。危険シグナルだ。


図表2の解説

銀行株が上げ過ぎたのが原因だ。JPモルガンが時にそうだ。ここまで派手に上げれば、直近の業績が良くても株価は頭打ちになる。「だとしたら、ゆっくり休んで横ばいの動きを続け、また後に上昇基調に戻るのではないか」というのは考えが甘い。

一般的には、これが暴落の予兆になってしまう。


暴落は3~6か月あとに来るのが通常だ。

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​​第二十七回「米国消費者物価高騰は株式下落につながる」

​2021年8月27日

米国物価高騰 7月5.3%増

前月に続き、株価暴落の引き金に

米国の消費者物価(対前年比)

  4月  4.2%増

  5月  4.9%増

  6月  5.3%増

  7月  5.3%増


ここのところ毎月、消費者物価について記載している。

それは株価に影響力の高いシグナルだからだ。


IT相場の天井時、リーマンショック前の相場天井時には、消費者物価がそれぞれ3.8%増、4.4%増となって、景気の過熱感が物価に現れていた。その後5割を超える株価暴落となった。


すぐに下げ相場につながるわけではないが、下がり始めたら5割~6割は当たり前になるだろう。

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​​第二十六回「鉱山会社ポジション」

​2021年8月21日

​金価格は底値に近い

鉱山会社・機関投資家の手口が底値を示唆


先日発表された金生産量の大幅な増加を受けて金価格は急落し、8月9日には1678安値ドルをつけた。これが当面の安値になる可能性が高い。


その理由は手口だ。8月13日発表の統計データによると、鉱山会社の売りポジションが4.8万枚まで減少した。また、機関投資家の買いポジションが3.5万枚まで減少した。

(それぞれのポジションの意味については拙著を参照していただきたい。)


鉱山会社が金価格に強気になっており、機関投資家が弱気になっている。これは底入れの条件だ。

鉱山会社

図表1に鉱山会社の長期の売りポジションを記した。2018年8月に3.7万枚まで減少したあと、金価格は急上昇した。図表1では最近のデータが見えないので、図表2をつけた。


機関投資家

図表3に機関投資家の長期の買いポジションを記した。これによると、現状のような低いポジションレベル(3.5万枚)になると、価格が反発することが多い。図表3では最近のデータが見えないので、図表4をつけた。



生産量にも注意

手口以上に重要な統計は生産量だ。これが減少の方向を見せないと、金価格が底入れはするものの、大きく上がることがないと考えるべきだ。

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​​第二十五回「財産税でどのくらい取られるのか」

​2021年8月14日

質問: 財産税が行われると仮定して、どのくらい徴収されると考えたらいいでしょうか。


回答:

❶過去の例から学ぶ

終戦直後(1946年)の財産税参考になります。

現在の貨幣価値で4000万円(当時の金額10万円)以上の預金者に対して、25%~90%の課税を行いました(図表1)。

例えば、8000万円の預金者なら1640万円が徴収されました。税率21%です(図表2)。

今後財産税を導入する際には、この前例が為政者の頭にあるでしょう。

❷恒久的な財産税

「O月O日現在の預金額に対して課税する」という方式ではなく、「今後各年の預金の平均金額(平残)に課税していく」という方式を導入する可能性があります。


銀行に預金すると、日々の預金額の増減により、1年間につく利子の合計額が異なってきます。同じように、日々の預金額の増減によって、財産税を増減させるやり方です。


現金での支払が減り、ペイペイのような口座間の移動による支払いが主流になれば、私たちはたんすに現金を置く量が減ります。その場合、恒久的な財産税が導入しやすくなります。


❸金投資で財産税を免れる

金の現物を持てば、それを税務署が把握することは難しいですから、課税の対象にはならないでしょう。税務署は私たちが金小売業者(例:田中貴金属)で購入した日時や量を把握してはいますが、購入者はその後金を誰かに譲渡することもあり、購入者が所有者とは断定できません。ということで、現物への課税は無理でしょう

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第二十四回 「中期的な下落が予想されるNY株式市場」

2021年8月6日

質問: 最近のNY市場についてどのように考えたらいいでしょうか。


回答:騰落レシオが弱気に転じています。一般的には、騰落レシオが崩れ始めると、そのあとを追って、NY株式市場が崩れます。


図表内の2020年9月前後に好例が記されています。騰落レシオが横ばいから下落に転じた後も、NY市場は上昇を続けましたが、その後ピークを打って大きく下落しました。


なお、騰落レシオは中期的な天井を示すサインとして有効ですが、それが大天井につながるか否についての回答するものではありません。


現在のところ、債券価格や銀行株からはNY市場の大天井の明確なサインは見出せません。

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第二十三回 「金価格は横ばいの動きへ」

2021年7月30日

​クリックして全4枚をご確認ください。

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第二十二回 「金の果実は安全なのか」

2021年7月23日

質問:金の果実(ETF)は安全でしょうか?仮に三菱信託が倒産した場合、どのようになりますか?


回答:

ETFで金を買うのは決して悪い方法ではありません。手数料が低く、少しずつ買っていくにはもってこいの投資対象です。金価格とほぼ同等の値上がり益が期待できます。


ETFの中では、三菱信託が出している金の果実がお薦めです。外国のETFは実際に金を買っているかどうかについて、ぼくは信頼していません。


同社の説明によると、金の果実で投資家から集めた資産(=金の地金現物)は三菱信託の会社資産・負債とは別勘定になっていて、国内の倉庫に保管されているとのことです。

このことが事実ならば、三菱信託が倒産しても、保護されることになります。


また、同社が倒産すれば、同社株(三菱UFJフィナンシャル)は上場廃止になりますが、金の果実はそのまま上場を続けることができます。


唯一の問題は、大銀行が潰れるような状況下では証券市場が混乱し、一時は市場全体が取引停止になるでしょう。その間は売買できないことになります。その期間は金価格が大幅に上がる時期になるでしょうから、金は保有し続けた方が有利です。そのように考えるなら、金の果実を保有すること自体には問題はないことになります。


ただし、三菱信託の倒産に伴い、金地金の管理者が一時不在になるので、金の果実の取引停止期間はやや長めになるかもしれません。


また、金の値上がり益が大きくなった場合、ETF(金の果実)の方が地金に比べて課税金額が低くなるというメリットもあります。


このように考えれば、金の果実への投資はリスクが低いと判断できます。


最後に、ぼくが一番に薦めるのは、やはり金の現物買いです。ぼく自身もそうしています。銀行が潰れるかもしれない時代に大事なものは身近に保管しておくことを薦めているわけです。

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第二十一回 「米国物価高は株価暴落の引き金に」

2021年7月16日

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第二十回 「金本位制で金価格はいくらになるのか」

2021年7月9日

質問


金(ゴールド)本位制になると、金価格はどうなりますか?金本位制とは、そもそもどのような仕組みなのでしょうか。その復活はありえるでしょうか。




❶金本位制とは?

金本位制とは、全ての銀行が田中貴金属のようになることです。田中貴金属に行くと、現金とゴールドを交換してくれます。これと同じように全ての銀行が現金を金に換えてくれるようになるということです。


過去の例について言えば、日本では1871年、新貨条例が定められ、この時金平価は1円=純金1.5グラムとされましたが、その後1897年の貨幣法施行で金平価は半減され、1円=純金750ミリグラムとなりました。


ゴールドへの転換の際、銀行は田中貴金属のように手数料を取ることはありません。現金が金の交換証書のような役割になるからです。商品券で買い物をする際に、手数料が取られないのと同じです。現金は金の代替として用いる商品券のような位置づけになります。

現金の預金口座以外に、ゴールド預金口座もできるようになるでしょう。


❷金価格

金本位制はありうるのか?と聞かれれば、ぼくは導入はないだろうと思っています。以下に示すように金価格があまりに高くなってしまうからです。


●理論的な価格:地球上のすべてのお金と金の総量が等しくなることです。

米ドルベースの金融資産が150兆ドルあると言われ、それが地球上に存在する全ての金と交換することになるなら、

金20万トン=150兆ドル

となり、これを計算していくと、

1グラム75,000円

1オンス23,300ドル

となります。今の価格の10倍以上です。


●現実的な価格:

私たちが全てのお金をゴールドに引き換えることはありません。現金をゴールドに換える人は多くて1割でしょう。その場合、銀行が保有しなくてはならない金は150兆ドルの1割あればいいでしょう。


また、世界中の金を銀行に持ってくることもできません。装飾品の金、携帯電話の中の金メッキはそのままになるでしょう。銀行が保有できる金は装飾品の一部と退蔵された金地金でしょうから、最大で20万トン(人類が算出した総量)の4割がいいところでしょう。


金8万トン=15兆ドル

で計算すると、

1グラム18,800円

1オンス5830ドル

となります。


●価格の動き

金本位制になったからといって、金価格が固定されるとは限りません。円ドル為替レートのように日々変わることも考えられます。


金本位制が発表になれば、金価格は上記の現実的な価格を目指していくことになるでしょう。「目指す」とは山の頂上のように、そこを最終地点として価格が動いていくということですが、注意すべきは、1グラム18,800円が最高価格だというわけではないということです。


相場ですから、その値段よりも高くなる時が来ます。市場は「高すぎた」と思って相場を崩しにかかります。ある時点では安すぎとなり、再び上昇に転じる、といった動きを繰り返しながら、だんだんと「現実的な価格=18,800円」に近づいてきます。


普通に考えれば、金価格の天井は18,800円の数割高になるはずです。


●大増産が始まる

金価格が大幅に上昇すれば、金の生産業者は増産に拍車をかけます。現在は海水中の金は生産コストが高すぎなので、採取されませんが、それも可能になるかもしれません。今まで金を生産してこなかった人たちが、この産業になだれ込みます。コロナで、マスクの需要があると見た人たちが一斉にマスク市場に流れ込んだのと同じです。


これは中期的な金価格の下落につながります。

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第十九回 「米国物価高騰は株価暴落への道」

2021年7月2日

米国の消費者物価(対前年比)

  4月  4.2%増

  5月  4.9%増


IT相場の天井時、リーマンショック前の相場天井時には、消費者物価がそれぞれ3.8%増、4.4%増となって、景気の過熱感が物価に現れていた。その後5割を超える株価暴落となった。


ただし、2005年秋、2011年秋には、物価が4%内外まで上昇したものの、短期間で収束したため、株価暴落につながらなかった。


物価の高騰が続けば、株価暴落への道が確定する。

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第十八回 「金価格底入れの兆し」

2021年6月27日

❶鉱山会社は今の値段では金が安すぎで売りたくないと言っている。

鉱山会社の売りポジションが5.6万枚(6月26日発表)となり、過去2年間のほぼ最低値となった。つまり、売り玉を絞っているということだ。


❷通常、売りポジションの底と価格の底が一致する。売りポジションがどこまで下がるのかは不明だが、金貨価格が底値に近づいたとは言える。



❸現在金価格が軟調なのは、4月に発表された生産量が8四半期ぶりの前年比プラスだったためだ。生産量が増えれば、価格にはマイナスだ。


仮に、7月末発表予定の生産量統計が前年比マイナスの場合は、それが契機となって金価格が上がっていくと思われる。

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第十七回 「海外で資産運用するのは得策か?」

2021年6月18日

質問:

日本は税金が高いので、海外で資産運用を行い、税率を下げることはできないでしょうか。


回答:

日本に永く暮らすことを望む人は、日本からの税金を逃れる方法はまずないといっていいでしょう。


5000万円以上の海外資産は毎年申告する決まりになっています。申告した場合、キャピタルゲインを日本と同率で徴収されてしまいます。これでは海外に資産を移すメリットはありません。


海外送金については、一般には10万円を超える送金はその使途が問われます。ぼくは3万円の海外送金について、使用目的を細かく聞かれたことがありました。「マネーロンダリング対策です」と担当者は言っていました。3万円の金額でマネーロンダリングだというのです。


海外に現金を携帯し、飛行機に乗って外地に行くことで、海外に持ち出すことはできます。上限は100万円までで、それ以上持ち出す場合には税関に申告が必要ですが、申告しない場合の罰則規定はありません。金は1キロ未満(1キロ=660万円)は申告なしで持ち出すことができます。


そのお金を海外で運用することはできます。運用すれば、資産が増えるかもしれません。そこまではいいのですが、問題はここからです。運用したお金を行きと同じように、飛行機に乗って、日本へ持ち帰ることになるかもしれません。それは不便でしょう。


また、海外で日本人(日本居住者)が口座を開くことを認める金融機関は珍しくありませんが、英語でのやりとりが必要です。パスポートの切り替え(10年ごと)時には、その国を訪れて更新する必要があり、その際も英語で対応する必要があります。


このように考えると、海外での資産運用は得策とは言えないでしょう。

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第十六回 「金の長期価格のダウンロード(無料ツール共有のご提案)」

2021年6月12日

質問:

金の価格データをエクセルに取り込んで分析をしようと思っています。

自分が利用している先物商品会社では価格データの提供をしていません。

どのようにしたら、データを手に入れることができるでしょうか。

無料で、会員登録の必要がないのが希望です。


回答:

ぼくが知っている範囲で、無料で、かつ、会員登録が必要ないのは、

楽天証券:MARKET SPEEDII

マーケットスピード II | 楽天証券のトレーディングツール (marketspeed.jp)

です。

このツールをダウンロードする必要はありますが、楽天証券に会員登録は不要です。


ログインページにはIDやパスワードを入れる箇所がありますが、下の方に「ビジター接続」という項目があり、ここを選択すると、誰でも入ることができます。

金以外の主要な先物、日米株式指標、為替、日本の個別株の長期データを得ることができます。


なお、ファンクラブの皆さんの中で、「自分はこういう無料ツールを知っている」という方がおいででしたら、是非ぼく(questionhayashi@yahoo.co.jp)に教え下さい。価値のある情報は全員で共有しましょう。

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第十五回 「銀行管理基準(バーゼル)の変更は金価格に影響なし」

2021年6月4日

質問

バーゼル(国際的な銀行の管理基準)の変更(III)の導入によって、金価格に影響があるでしょうか。バーゼルIIIでは金の空売りが実質的にできなくなる可能性があり、金価格上昇につながるのでしょうか。


回答

バーゼルIIIは金価格には無関係だと考えていいでしょう。


1.これまでの先物取引の計上方法

これまでは、先物取引(買い建て・売り建ての双方)で含み益が出た場合は、その利益を含み益として資産計上することができました。例えば、先物を100枚売り建てて、決算時に利益が2億円の含みが出た場合、その2億円は資産として計上できたということです。


なお、先物の100枚の売り建て玉そのものについては、計上することはありません。注釈に、「この2億円は先物取引(売り建て100枚)から来ています」といったことを書くくらいです。


2.新しい計上方法

今後は、銀行が100枚分の金現物を保有ない限り、そうした計上ができないことになります。現実的には、銀行が大量の金を保有することはないので、売りで得た含み益は計上できないということになります。


3.トリック

ここまでを読むと、「銀行はもう売り建てをするメリットがないのではないか」と思う人もいるでしょう。ところが、ここには抜け穴があります。


含み益が出ている場合、決算直前に手仕舞えばいいわけです。買い注文を執行するということです。ここで用いた例なら、2億円は含み益ではなくて、現金として計上できることになります。


ただし、その際、同時に売り建て100枚も行います。

これはクロス取引という手法で、売りと買いを同時に同枚数出すので、自分で市場価格を動かすことが全くありません。クロス取引は金融界で一般的に行われている手法です。


こうして、決算時には、新しい売り建て玉100枚が含み益ゼロの状態となります。現金は2億円増です。含み益がないのですから、資産として計上する必要がもともとないわけです。

銀行はこの手法によって、従来通りの売りを行うでしょう。



なお、今回の質問に関連した記事が田中宇「田中宇の国際ニュース解説 会員版」に出ています。興味のある方は以下も読んでみて下さい。

田中氏は金価格に大きな影響があると説いているようですが、この解釈は正しくないと思います。



*********************


田中宇の国際ニュース解説 会員版」から引用


オルトメディアの界隈で最近「金先物に対するバーゼル3の適用開始で、来年にかけて金相場が高騰するのでないか」という予測が出回っている。「バーゼル3(Basel III)」とは、主要国(G10など)の中央銀行が集まって世界の金融機関の経営を健全化するための規則・基準を決める「バーゼル銀行監督委員会」が作った基準の第3弾のことだ。バーゼル1は米英主導の世界的な金融自由化(債券金融システムの拡大=巨大なバブル膨張)が始まった直後の1988年に策定、バーゼル2はリーマン前の金融バブル化がひどくなった2004年に策定された。バーゼル3はリーマン危機後の2010年に策定され、2027年までに完全実施の予定だ。

ハーゼル3では、金融機関によるコモディティ(金や銀や穀物など)の売り先物の取引について、建玉の85%に相当する現物の地金を保有して紐つけることで、この建玉を優良資産(ティア1、RSF)として決算に計上できると定めている(NSFR)。現物に紐付けられていない売り先物の建玉は優良資産として認められず、不良債権として扱われるので、金融機関はバーゼル3の適用後、紐付けなしの金銀などの売り先物(空売り)の取引をやれなくなる。世界に先駆けて、EUでは6月28日からこの項目(NSFR=安定調達比率)の適用が開始される。英国では来年元日から適用される。(もともとの適用開始予定はもっと早かったがコロナ危機を理由に延期されていた)

これが適用されると劇的に様相が変わるのが、世界の金相場を主導するロンドンの金市場だ。ロンドン(など世界の多くの)金地金市場は、取引のほとんど(9割以上?)が現物をともなわない紐付けなしの先物取引だ。ハーゼル3では、金融機関によるコモディティ(金や銀や穀物など)の売り先物の取引について、建玉の85%に相当する現物の地金を保有して紐つけることで、この建玉を優良資産(ティア1、RSF)として決算に計上できると定めている(NSFR)。現物に紐付けられていない売り先物の建玉は優良資産として認められず、不良債権として扱われるので、金融機関はバーゼル3の適用後、紐付けなしの金銀などの売り先物(空売り)の取引をやれなくなる。

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第十四回 「金の現物価格データの取り込み方」

2021年5月28日

質問


金(ゴールド)の現物価格の調べ方を教えていただけないでしょうか。

自分は今、先物取引業者のサイトから金の先物価格を取り込んでいますが、現物価格も知りたいです。



回答

一番いい方法は今のまま、先物価格を取り込んでいくことです。現物価格も先物価格も大差がありません。それが一番簡単な方法です。

ぼく自身は先物価格を見ています。


それでも、質問にちゃんとお答えすることにして、現物価格の出し方を示します。


①現物価格(円もドルも)はWORLD GOLD COUNCIのサイトから引き出すことができます。1980年からの長期(日々)データですが、更新は月に1回です。


見方は以下の通りです。

Home>Data>Price & Performance>Explore the Data

このようにやっていくと、EXCELデータを取り出すことができます。

ただし、World Gold Councilにサイトは入りにくいことがあります。


②日本円の現物価格で手っ取り早いのは、田中貴金属です。

田中貴金属工業株式会社|日次金価格推移 (tanaka.co.jp)


ここに、小売買い価格、売り価格があるので、この中心値が日々の価格とみて差し支えありません。


これらを取り込んでわかるのは、結構面倒だということです。

それだったら、おつきあいのある先物取引業者が提供している先物価格が最も簡単でいいのではないかと思うようになります。

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第十三回 金の購入は待つべきなのか(緊急発信に関する質問)

2021年5月21日

質問


5月15日の緊急発信についての質問です。私は、2月下旬から3月、4月とゴ-ルドが安くなっていたので大量に購入しました。ゴ-ルドの産金コストから考えて1800ドル以下は、底値になると思ったからです。今後更に、価格が下がるのであれば、それを待ってから購入するべきで、現在は、購入を控えた方がよろしいですか?



回答

1800ドル以下で買ったのであれば、いい買い物だったのではないでしょうか。大量に買ったのであれば、今後はペースを落として買っていってもいいのではないでしょうか。

ここから上昇局面に入るまでに時間がかかるかもしれないというのが、2021年Q1の生産量増加から考えられる推論です。


ただし、価格が下がることについて考えすぎないようにしてください。生産量が増加になれば、軟調な動きになるというのが一般的な見方ですが、それが実現しないこともあります。


大事な投資ルールをお話しますね。

「できるだけ安く買うことが大事ではない」ということです。それって、「どうして?安い方がいいに決まってるじゃないか!」と思うでしょう。


ぼくは「損をしない買い方」が最善だと思っています。

将来の価格は全くわかりません。下がる可能性も常にあるわけです。

もちろん、急騰の可能性も同様にあります。


もし、生産量の増加が理由で価格が下がり、評価損が出ると、人間は合理的とは思えない行動に出てしまうものです。長期では上がると思っていても、現在の価格がさらに下がるかもしれないという恐怖心から、底値で売り放ってしまうことだってやってしまいます。


逆に、「ここからぐんぐん上がって、今度買うタイミングが1900ドルとか2000ドルになってしまったら、どうするんだ?今なら1800ドル買えるのだから、100ドルも200ドルも取り損なうことになるぞ」と思うかもしれません。


取り損ない(機会損失)はどうでもいいことです。

基本は、「今日買っても明日買ってもどちらでもいい」と思ったら、遅く買うことです。そうすれば、価格変動のリスクを1日だけでも少なくすることができます。


相場の格言に「頭と尻尾(しっぽ)はくれてやれ」というのがあります。ぼくの好きな格言です。


ここで述べたことが投資家を長年続けてきたぼくの大事なルールです。

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第十二回 証券会社は安全なのか

2021年5月15日

証券会社の倒産リスク

問:ご著書では銀行や生保についての倒産リスクを触れていましたが、証券会社についても教えて下さい。私たちが証券会社に預けている預かり金は安全なのでしょうか。


回答:

証券会社は会社の資産と個人(お客様)の資産とを別勘定にしているはずなので、それが守られている限り安心です。証券会社がそれを守っていない時は、仮に倒産となった場合、投資者保護基金制度によって、個人の投資家は1000万円までは保護されます。(機関投資家は保護されません)


そうはいっても、証券会社が倒産したら、当面は保護預かりになっている株券を取引することはできないでしょう。この「当面」がどの程度の期間になるかがわかりません。普通に考えたら数か月は無理でしょう。事態が大きく動いている時期に数か月も身動きが取れないことは問題です。


そこで、倒産しにくい証券会社と付き合いことをお薦めします。見分け方は、「国債をもっていないと思われる会社」です。HPを見て、国債の販売に熱心な会社は国債を持っている可能性が高いです。


野村、大和といった大手は大量に国債を持っています。大和は決算資料の中に、債券残高を公表しています。2020年3月末時点で2.8兆円(資産に占める割合12%)です。この債券の数字の中には、社債、外国債も入っていますが、大半は日本の国債だと思っていいでしょう。日本の国債がデフォルトになれば、純資産が1.2兆円(5%)なので、即倒産になります。


これにたいして、ネット証券は持っていないのでないでしょうか。比較的安全です。

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​第十一回「国債のデフォルトを避ける方策」

2021年5月7日

質問:

ご著書の中で、「G7各国政府がデフォルトをするだろう」という考えを披露されていますが、そんなことになれば、大変な経済危機を引き起こしてしまいます。政府は何とかそれだけは避けるのではないかと思うのですが、その方策は全くないのでしょうか。


回答:

デフォルトを避ける方策はあります。それは、中央銀行を政府が吸収合併することです。これなら、国債について、自分が発行したものを自分が持っているだけなので、相殺できます。


ぼくが婚約者のA子さんにお金を貸していたとしましょう。結婚と同時に2人の銀行口座を合併すれば、A子さんは毎月の返済を自分の口座にすることになるので、実質的に返済不要になります。


中央銀行は日本政府が発行している国債の半分を持っているので、この相殺によって、国債残高を半分にでき、金利支払いを半分にできます。


ただし、この場合はぼくとA子さんの結婚・口座合併とはやや異なります。夫婦の場合は貸した・借りたという関係は家族内の問題となり、他人からみれば、「借金はない」とみなすことができますが、政府と中央銀行の合併の際はそうはいかないということです。それは政府が国債を発行して、中央銀行が引き受けた際、大量のお金が市中にばら撒かれるからです。


投資家たちは、「合併で金利支払いは確かに減るが、市中に(裏付けのない)お金をばら撒いた事実は残っている。返済をしない(裏付けのない)お金を撒いた」という目で政府を見るでしょう。国債をデフォルトさせる時ほどではないでしょうが、それでも、通貨の価値が下がり(つまり、インフレが起こり金利が上昇し)国債の信用が低くなって、投資家は国債の保有を減らすでしょう。


特に、問題はこうした合併をいつ行うかです。現時点のような金融市場に問題がない時点で行えば、見逃してくれるかもしませんが、政府は土壇場まで追い込まれないと、そのような大きな決断はしないでしょう。例えば、金利が上昇に転じた時点(例:5%)で行えば、市場は政府と中央銀行の合併をやぶれかぶれの作戦とみなすでしょう。その場合、投資家は政府に対抗するように、国債を売ってくるでしょう。さらなる金利上昇となります。


この場合、金利は10%以上になるでしょう。それに伴って失業率は10%を超えてくるものと思います。それでもハイパーインフレにはならないので、希望が持てる方法かもしれません。


デフォルトよりはましな(かなりいい)方法ですが、瀬戸際まで来た際に、G7各国にこの政策をとる余裕が残っているか否かはわからないところです。


合併の際に、投資家が国債を売って金利をどんどん上昇させるかもしれません。政府は「金利がここまで高くなるのだったら、やはりデフォルトしかない」という姿勢になるかもしれません。市場に促されて、デフォルトに追い込まれたということになれば、インフレは一段と激しいものになってしまうでしょう。


そのリスクを考えたら、「最初からデフォルトを選んだ方が穏便だ」という結論に達する可能性もあります。合併を選ぶか否かは、その頃の金利情勢次第で決まるものと思います。

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​第十回「機関投資家と資産運用会社」

2021年4月30日

質問:

昨年の4月頃から、株の暴落、国債のデフォルトなど、マイナス面の経済記事(情報)が多くなる一方で、今年に入り、景気楽観論も多く報道されています。
林さんはこれらのマスコミの報道や、マスコミでコメントをされている機関投資家や経済学者やエコノミストの方々のコメントをどのような思いで聞いていらっしゃるのでしょうか?
本には、機関投資家はダメ(バカ?)と書いていらっしゃいましたが、全員がダメだとは私には思えないのですが


回答:
機関投資家が馬鹿な発言を繰り返す背景には、構造的な問題があります。

資産運用の顧客先に今後の市場予測を述べる際、運用会社は楽観的な明るい未来予測をする必要があります。「これからは株(債券)の価格が下がります。株や債券は買うと大損しますが、是非私どもで資産運用をさせてください」と発言したら、誰が運用を依頼するでしょうか。そこで、顧客に対して強気な意見を述べることになります。証券会社が顧客にセールスを行う際も全く同様です。これは世界的な業界標準です。

その上、私たちは一般に明るい話が好きです。マスコミはそれに迎合して、明るい未来論を展開する専門家を好んで登場させる傾向があります。

このような理由から、悲観論を述べる人は比較的自分の考えに自信がある人に限られます。悲観論はいつも当たるということではないですが、外れた場合には、その人は業界全体から後ろ指を刺されることになるので、勇気のある人しか、本音(悲観論)を述べないことになってしまうようです。




質問:

林さんの3つのキャリアの話、とても興味深く読ませていただきました。アブダビ投資庁のお話しで、林さんが株式以外の先物商品(今回はゴールド)にも精通されている理由がよくわかりました。また、最高幹部の方のコメントも素晴らしいと思いました。
質問させていただきます。
日本の資産運用会社を変革させることはできないのでしょうか?日本は製造業、サービス業などの「現場力」が圧倒的に優れているのに、ホワイトカラーの人たちの生産性が低いため、経済が停滞してしまったと思っています。これから厳しい時代に入ると私も思いますので、とても憂いています

回答:
ぼくは日米の数多くの会社を訪問し、その代表者(CEO)に会う機会を得ることができました。そこで感じている最大の違いは、「日本は現場が優秀だが、トップが弱い。米国はこの逆で、トップが優秀だが、現場が弱い」というものです。

日本の新幹線の年平均の遅刻時間は1分以内です。これは大雪や台風で電車が動かなくなった日のデータも含んだ数値です。海外ではありえない正確さです。これが日本の誇る現場の優秀さです。

これに対して、日本のトップは不甲斐ないです。ぼくの「御社の中期戦略の最大のポイントは何でしょうか」といった問いに答えられないCEOが沢山います。日本のトップは現場で最優秀だった人がなるポジションのようで、いわば、「従業員の代表」という印象です。会社の経営には将来を見つめたビジョンを描くことが重要ですが、従業員の代表という立場に立脚すると、どうしても従業員を大事にすることが優先され、リストラを含む大幅改革は難しいのでしょう。

そのためか、日本の企業で働いている人たちの方が海外の従業員に比べて、いきいきとしているように見受けます。皆さんも海外旅行で、海外のお店で買い物をしたことがあるでしょう。日本に比べて、冷たい印象を持った経験はありませんでしたか?

このように考えてくると、元来の日本の良さ(一般社員が優秀)がトップの不出来を生んでいるということもあることがわかります。

それにしても、日本の政界、経済界のトップは海外に比べてかなり見劣りがします。
ファンドマネージャは会社で言えば、トップに位置する仕事であり、現場の仕事ではありません。日本人が苦手とする分野の仕事かもしれません。

では解決策はないのか?日本人でもトップの仕事が向いている人はたくさんいます。起業に成功して、若いうちから上場を果たす人はいますし、海外にお店を開いて繁盛させる人も数多くいます。「やりたい!」と希望する人に門戸を開き、完全自由な裁量権を与え、「失敗したら、責任をとってもらうが、やる気があるならやってみろ」という厳しい条件で、やらせてみる仕組みが出来るといいかもしれません。

企業内では社内ベンチャーが盛んで、「どんどんチャレンジせよ。失敗しても会社が責任をとる。」という話はよく聞きます。ただし、これではだめです。会社が責任をとるということは、若手に完全自由な裁量権を与えないということです。失敗すれば、即解雇。その代わり成功すれば、望外な報酬や出世で応えるというものでなければなりません。

普通なら、「そんなリスクの高いことはお断りだ」と思うでしょう。でも、中にはその方が心地いい人たちがいます。ぼくもそうでしたし、仲のいいファンドマネージャたちもそうでした。

起業者もスポーツの世界でもこうした条件のもと、成功者が出ています。同じような登用制度をビジネス内に持ち込むことができれば、運用のみならず、多くの分野で年齢に関係なく、本当にやる気のある社員が活躍できるようになるでしょう。

定例発信: ニュース

​第九回「株と不動産」

2021年4月23日

質問:マイホームの購入は、しばらく待った方がよいのでしょうか?

株も、不動産も、これから下がるという基本的な見方でよろしいのでしょうか?


回答:

❶株が下がる時期には不動産も下がります。


住宅価格(全国平均)は国土交通省が2008年4月に不動産価格指数を発表するようになってから、2020年12月までの間、8%しか上昇していません。株価に比べれば、微弱な上昇率と言えます。


「たいして上がっていないのだから、不況が来てもあまり下がらないだろう」と考える人がいるかもしれませんが、それは相場の常識のない人の発想です。「他の経済指数と一緒に上がらない場合でも、下げは一緒に下げる」と考えるべきです。


経験則に基づけば、株が5割超下がれば、不動産も5割超下がると考えるのが自然でしょう。1990年からの日本株大暴落時には、それに近い事態になりました。


東京都の土地価格については、長期の統計があります。それによれば、土地価格が最高だったのは、1987年で指数は350を超えていました。2008年まで指数は下がり続け、100を割りました。7割以上の下落になったわけです。これは株式の下落率(8割)よりはややましな程度です。


土地価格の下落が株価の下落よりも長期にわたっている点が注目です。これは、株価の大底時になったのちに、不動産はまだ買い時が来る可能性を示唆しています。


不動産価格の点から考えれば、株価の底が確認できてからでも、不動産の上昇はまだ起きないと考えられ、十分に間に合うことになります。


❷マイホームの購入は価格だけでは決めることができません。資金(借入)が十分かどうかも考慮しなくてはなりません。


資金は銀行からの借り入れでしょうか。その場合は、お勤めの会社からの給与が減額になるか、会社倒産の可能性も考えて、「それでも返せる」と判断できるかどうかが大事です。


また、株価が大幅下落するような時期は銀行は保守的になって、人にお金を貸さないかもしれません。その場合は、不動産が安くなったとしても、買うことができません。


さらに、国債がデフォルトする時期が来れば、話は若干複雑になってきます。

インフレが始まり、物価が上がっていきます。不動産も上がります。これは1990年からの株価大暴落時にはなかった現象です。


この時期には借金が多い人は、実質的な返却金額が減っていくので、得になります。


ただし、この時期に銀行に行っても、銀行は新規の貸出をしない状況にあるかもしれません。


こうしたことを考えた上で、不動産の購入時期を考えてみてください。

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第八回 「林さんの過去の仕事〜アナリスト・ファンドマネージャー・投資庁運用部長〜」

2021年4月17日

質問:

アナリストとはどのような仕事なのでしょうか。林さんはどのような仕事をされたのでしょうか。



回答:

アナリストはファンドマネージャの補佐役です。

ある特定の業種を担当し、そこに属する会社を分析し、買う株、売る株をファンドマネージャに推薦します。


任されるのは、1人あたり数十銘柄で、これらの会社の業績動向、新商品、業界のトレンドに精通するようにします。ファンドマネージャが全ての上場企業に精通することはできないので、マネージャから、「あの会社はどうなっている?」と聞かれた際に、十分な答えができないといけません。


ファンドマネージャの保有銘柄については、「この銘柄を保有したままでいいのか」という観点から注視し、非保有銘柄については、「この会社は保有するメリットがあるのではないか」という点から注視します。


ぼくの会社は米国ボストン市にありました。ぼく以外は全員米国人でした。そんなわけで、ファンドマネージャに説明するには英語で伝えないといけませんでした。でもぼくは英語が苦手でした。


それでも、ぼくはジム・ロジャーズに分析方法を学んでいたので、「投資は最後は数字(伸び率)の勝負だから、なんとかなるだろう」と思いました。ファンドマネージャたちは部下の英語の出来不出来には興味がありません。ぼくが日本人であることも知らないようでした。ファンドマネージャたちは自分のファンドの成績が上がることだけを念じていたので、「上がりそうな株の話には本能的に乗って来るだろう」と思っていました。


ぼくは米国では電器が担当でした。エアコンの製造業者を推薦しました。当時、エアコンは海外から輸入品の勢いに押され、儲かる業界ではありませんでしたから米国ではほとんどが撤退し、専業は1社だけになっていたのです。将来性がなく、株価は低迷していました。


いくら海外品が優秀でも、さすがに米国の会社がたった1社になれば、撤退した米国ライバルのシェアを少しは奪うことができるので、シェアが伸び利益も上がります。その会社は利益が倍増となり、株価は3倍になりました。


これを機会に、言葉は駄目でも、米国人から信頼されるようになりました。




質問:

ファンドマネージャとはどのような仕事なのでしょうか。林さんは日本では外資系銀行でどのような仕事をされたのでしょうか。


回答:

ファンドマネージャは投資対象の全ての銘柄から最も魅力のある銘柄を保有することが仕事です。通常はアナリストを数年~十年くらい経験し、多くの業界に精通したあとになる職種です。


ファンドマネージャは幅広い銘柄に詳しいだけでなく、市場全体がどのように動いていくのか(つまり、株価指数が上がっていくのか、下がっていくのか)を考え、保有銘柄全体のリスクについて考えることも不可欠です。


景気の初期、中期、後期では組み入れる銘柄が変わるかもしれません。また、保有銘柄(例:IT株)が極端に偏ってしまうと、業界に大きな異変が起きた際に、大けがをしてしまいます。


ぼくは日本の外資系銀行でファンドマネージャになり、機関投資家の運用方法に幻滅しました。資産運用の業界全体が相場で儲けを生まない構造になっているのがわかりました。


先の質問で答えた、エアコンの会社のようなものを探して、それだけでポートフォリオを作ればいいはずなんです。

ところが、それが許されません。

業種が少しでも偏ったり、小型株が多すぎたりというのは、「リスクが高い」とお客様に判断されてしまうのです。


資産を預けて下さるお客様(年金や政府系資金)としては、成績が振るわない業者を外せばいいだけの話です。プロ野球のチームはそのようになっていますよね。


ところが、お客さまにはコンサルタントがついており、その人たちが「こんな運用では駄目だ」と言うのです。コンサルタントは何か文句を言わないと仕事をしたように見えませんから、運用の現実を知らない素人たちが理屈をこねるのです。


お客様としても、自分の財産ではないから大きく儲けなくても構わないんです。それより、大きな損が出ると、責任問題になります。結果、事なかれ主義に走るのです。


こちらはお客様側の主張なので、「ごもっともです」と申し上げます。そこで、コンサルタントの主張を取り入れた「おとなしい」ポートフォリオに仕上げます。すると、各社とも似たり寄ったりのポートフォリオが出来上がり、成績も年間で1%内外の違いしか出ません。インデックスに近いパフォーマンスになってしまいます。これが「運用業界のリスクの少ないパフォーマンス」だと評価されます。


実は、運用会社もこの方が楽なのです。大きな失敗がないので、お客様から資金を引き上げられる心配がないからです。こうして、業界全体が「何もしない方が得」という構造になっていました。



質問:

林さんはアラビアのアブダビ投資庁の運用部長として、どのような仕事をされたのでしょうか。


回答:

ファンドがひとつの場合は、運用部長とファンドマネージャでは仕事がほとんど同じです。唯一の違いは、部長になると、部下の人材育成が加わることです。


アラブ首長国は投資収入が石油収入より大きな国です。そうした国では、投資業界の仕事は人気があります。国の有力者の子弟が投資庁で働きたがっていたようです。ところが、それが一大問題になっていました。裕福な人たちは働く意欲がありません。湯水のようにお金がある立場の人たちがまじめに働くことはないということです。



日本での運用に嫌気がさしてきた頃に、アラビアから電話が突然かかってきました。その頃には、業界でもある程度の知名度があったので、どこかでぼくの名前を聞いたのでしょう。相場も英語もできるという人材はごく少数でした。


アラビアは自己資金(王様のお金)の運用です。コンサルタントなどが入っていませんでした。そこで、比較的自由に運用をすることができました。


入社当日、ぼくは最高幹部に呼ばれ、「イスラムの教えでは酒や豚肉を食してはいけないことになっているのは知っているだろう。だが、だからといって、ビール会社や食肉会社の株を買ってはいけないということは全くない。儲けることだけに注力して欲しい」と言われました。


株式市場全体が上がらないと思えば、株を買わないのも、日経先物を売り建てるのも自由でした。自分の好きな運用ができ、充実した日々でした。

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第七回 「1億円の預金管理と香港の安全性」

2021年4月10日

質問:


林先生のご著書「株の公式」を読んでからのファンです。

私は個人でも投資をしているのですが、税理士資格に挑戦しながら、会計事務所で仕事をしている関係で、関与先(顧客)の経営者の方からの財務的な相談を受けることがしばしばあります。


企業の中には、内部留保をしっかりとしている中小企業もあります。

そこで質問なのですが、1億円ほどの内部留保をしている企業は、預貯金を千万円以下に分割するためには10行以上の銀行に分散する必要があります。

それでは不便ですし、全額を金投資に換えることはできません。運転資金としてこの程度の現金は確保しておく必要があるからです。どうしたらいいでしょうか。



回答:

普通預金を当座預金に切り替えてください。

預金保険機構のホームページを見ると、当座預金については、1000万円を超えた預金額であっても、全額保護されることが記されています。なお、利息のつかない普通預金(①決済サービスを提供できる、②預金者が払い戻しをいつでも請求できる、③利息がつかないという三つの要件を満たしている預金)も同様です。


ぼくのところにメールを下さる個人の方の中にも、大口の預金者がいます。そうした方々には当座預金をお薦めしています。




質問:

最近の香港の動きをどう見ますか?香港に銀行口座を持っているのですが、安全でしょうか。


回答:

心配しなくてもいいのではないでしょうか。資産の預け先として、日本と香港のどちらが安全かと聞かれれば、ぼくは「香港の方が安全でしょう」と答えます。日本政府は預金収奪を行う可能性が高いですが、香港ではそのようなことは起きないであろうと、と考えているからです。


香港はますます中国化していくでしょう。ただし、それは言論の問題であって、経済は別です。中国はせっかく繁栄している経済圏を自ら潰すことはしないでしょう。


世界の投資家が香港をどのように考えているのか。それは香港株指数の動きに現れていると考えられます。


香港株指数を中国株指数で割ったものを見ることにします。

この回答を作成している日時現在(4月1日)では、

香港指数(ハンセン指数)28938

中国指数(上海総合指数) 3485

です。香港指数を中国指数で割った比率は、8.3になります。


この比率が大きい程、香港が買われていることになり、比率が小さい程、香港が売られていることになります。


この比率を2009年のリーマンショックの株価の底から12年間眺めてみましょう。最低値が5.5程度で、最高値が11.5程度です。この2つの中間は8.5です。


このようにみると、現在の香港は割安でも割高でもない位置にあります。つまり、人権問題で香港を毛嫌いしている様子を見出すことはできない、ということです。

定例発信: ニュース

第六回 「ファンクラブ発起人からの4つの質問」

2021年4月2日

全会員向けテーマ:ファンクラブ 発起人からの質問

質問全文

『林則行先生殿

(CC:ファンクラブ 会長)


ファンクラブを代表して質問させていただきます。

明日の「定例発信」に掲載していただければと思っています。


なお、私の質問が適切でない場合は、質問を修正せず、回答の冒頭に、

「この質問は、以下の質問に変更します」と書いてご回答いただければと思います。


昨日(2021年3月29日)の午後9時、BSテレビ東京の経済番組(日経ニュースプラス9)で、ジム・ロジャーズ氏へのインタビューがありました。


この中でジムさんは、以下のような発言をなされました。


(1)「アメリカのバブルは今年中に崩壊する」

番組MCの質問「FRB議長、国務長官たちはだいじょうぶだと言っていますが?」

ジムさん「彼らは学者にすぎない。私の予想が正しい」


質問1 「林先生は、このジムさんの発言についてどう思われますでしょうか?」


(2)日本の投資は以下の4テーマ

①金(最高値の20%)

②銀(最高値の50%)

③米ドル

④農業関連株(農地と、農機メーカー株、肥料メーカー株など)


質問2 「林先生は、金だけをお薦めされていますので、師匠のジムさんとは見解が違っています。林先生は、銀についてどう思われていますでしょうか?」


質問3 「米ドルの買いについては、いかが思われますでしょうか?」


質問4 「ジムさんは、日本の農業関連株をお薦めされています。このことは昨年の本にも書いてありますが、林さんはすべての株への投資を薦められていません。この点も師匠と異なりますが、ご意見をいただければ幸いです」


以上4つの質問へのご回答をお願いいたします。

なお、回答は定例通信にお願いします(私のメールへの回答は不要です)。


ファンクラブ発起人』

回答全文

​『質問1 「林先生は、このジムさんの発言についてどう思われますでしょうか?」


回答:

ぼくは「3年以内に株価が暴落し、高値から70%下がる」と言っています。その立場からすると、ジムの考え方には異存はありません。


ただし、「今年中に株価がピークを迎える」ということについては、ぼくには確証はありません。ジムはその根拠となるものを示していないと思います。


金融市場を見ると、暴落に向かっていると判断できる指標はまだ少数派です。現時点では少数派だとしても、今年中にその兆候が増えて多数派になり、ピークになる可能性は小さくありません。指標を見ていくことが重要だと思います。


ジムの言うように、政治家は楽観的なことしか言いません。信用してはいけません。

例えば、日本では1997年に三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券が破たんし、98年には、長銀、日債銀が破たんしています。こうした事態が起きる前、政治家は「日本は大丈夫だ。日本の金融システムはゆるぎない」としか言っていませんでした。




(2)

質問2 「林先生は、金だけをお薦めされていますので、師匠のジムさんとは見解が違っています。林先生は、銀についてどう思われていますでしょうか?」


回答:銀は優れた投資先かもしれませんが、ぼくは一般の人には薦めていません。

理由は以下の通りです。


❶銀投資はタイミングを上手に測る必要がある

20世紀には大きな貴金属相場が2回ありました。1980年の際は、銀が10倍になり、金は6倍になりました。2011年には銀は11倍になり、金は7倍になりました。

ここだけを見ていると、銀の方が魅力的だと映ります。


注意しなくてはならないのは、私たちが最高値で金銀を売ることができるとは限らないということです。


例えば、金は1980年に850ドルの高値をつけました。これはその後28年間破られることのない突出した高値でした。6か月前は300ドル台だったのです。そこから大幅に上昇しました。

800ドル台はたった2日、700ドル台は9日(営業日)だけでした。皆さんは自分がこの11日にうまく売り抜ける自信はありますか?


(ぼくは皆さんに「金の高値に近づきました。そろそろ売りましょう」といったサインを提供する予定ですが、1980年の例で言うならば、600ドル台でシグナルを出すのが精いっぱいでしょう。天井を700ドル台や800ドル台だと言い当てるのは難しいでしょう)


銀の高値の突出度はもっと極まっているのです。

2011年に高値をつけた銀はその後1年半の間に半値になりました。金の下げ幅は高値から20%程度に収まった時のことです。


銀に投資する最大の理由は「大きく上がるから」ですが、一般の投資家がその高値で売れるとは限らないとぼくは思っています。



❷投資先として、先物投資が中心となる。

本日現在、金価格は銀価格の70倍です。仮に、金地金に1キロ投資しようとしている人が、金に代えて銀地金を買う場合、その70倍の70キロを買うことになります。これでは運ぶのに大変です。


銀のETFはありますが、人気がないので、流動性が低いです。つまり、自分が売りたい時に値段を大きく下げないと、買い手が現れません。また、銀鉱山の株式というものは、ぼくの知っている範囲ではありません。銀を発掘している会社は同時に金も発掘しているケースがほとんどですから、そうした株は金鉱株になってしまいます。


そこで、先物に投資することになります。

先物は少ない証拠金で大きな利益の出る投資先ですが、相場が逆方向に向かった際には、大きな損が出てしまいます。金銀価格が上昇するとしても、途中には大きな谷も待っているでしょうから、その際の先物の評価損はかなりの大きさになってしまうでしょう。一般の人は先物投資からは遠ざかるのが賢いと思います。




❸金の上昇率が高くなる可能性がある

投資で最も大事なことは、過去の値動きを見ることではなくて、「上がる理由は何か」を考えることです。その点では金が銀に勝ります。


金は「お金に換わる投資先」としての価値があります。これに対して、銀は産業用として利用される側面が高いです。金の産業用途が全体の10%に対して、銀は56%もあります。景気が悪くなった場合は、産業用途の需要は減るので、価格を押し上げる力が下ってしまいます。


ぼくが予想したように、国債がデフォルトする事態となれば、金に対する需要がそれまでと全く違ったスケールになってくるでしょう。大化けの可能性があるのです。


2020年に入って、金は史上最高値を更新しました。一方、銀は2011年の高値の半分以下にとどまっています。金が大きく買われている理由は、一部の投資家が国債のデフォルトを予想しているからでしょう。金に賭けるのが正攻法の投資だと思います。




❹分散投資にならない

分散投資という考え方を好む人たちがいます。例えば、「株と不動産を半々ずつ所有すれば、リスクが半減する」という考え方です。上がる確率が50%の倍、投資先がひとつなら、上がる確率は5割ですが、2つの投資先がある場合は、どちらか一方でも上がる確率は75%になります。


こうした発想のもとに「金だけでなく、銀も買おう」と思ったとしても、それはうまくいきません。金銀は貴金属として、それぞれの高値がほぼ同時につきます。また、下げも同じようなタイミングで起こります。


金と大豆先物を買うのならば、違ったサイクルで動くので、分散投資にはなるでしょうが、金銀は分散にはならないのです。





質問3 「米ドルの買いについては、いかが思われますでしょうか?」


回答:非常に悪い選択です。論理的に破たんしています。

ジムは「米国株が暴落する」と言っています。日本株についても同様です。


日米の下落幅について、ジムは言及していないと思いますが、日本株の方が米国株より下落幅が大きい、と判断しているようです。「状況がより悪い国にお金を置いておくのではなく、少しでもましな国にお金を置いておきなさい」という発想です。


仮に、米国株の予想下落幅が10%で、日本株が20%ならば、ジムのような理屈も成り立つでしょう。ジムはインタビューでは正確な暴落幅には言及していないようですが、暴落と言っている以上、「米国株は半分以下になる」と述べているのでしょう。


仮に日本株の下げ幅が7割で、米国株の下げ幅が5割だったとして、皆さんは、5割も下がる国の通貨を持っておきたいでしょうか。


株価がそこまで大きく下がると予想する場合、世界全体の経済もかなりの悪化になっていると考えるべきです。そういう状況においては、経済の基本となる通貨そのものは投資対象から外すべきです。








質問4 「ジムさんは、日本の農業関連株をお薦めされています。このことは昨年の本にも書いてありますが、林さんはすべての株への投資を薦められていません。この点も師匠と異なりますが、ご意見をいただければ幸いです」


回答:日本の農業関連株への投資は非常に悪い選択です。

理由は質問3に同じで、論理的に破たんしています。


ジムは「日米株が大幅に暴落する」と予想しています。

通常、株式市場の下げ幅が大きい場合、どの株も同じように下がっていきます。もう少しわかりやすく言えば、市場の暴落幅が50%の時は、個別株の下げ幅がこの±15%くらいに収まります。つまり、個別株の下げ幅が35%~65%というイメージです。


これに対して、上昇相場の場合は、個別株の上昇幅には大きな開きがあります。市場が50%上昇する場合は、±50%くらいの幅が生じます。つまり、個別株でみれば、そのパフォーマンスは0%~100%になります。


統計に詳しい人なら、「平均と標準偏差の考え方だな」と気づかれたことでしょう。市場平均がー50%の時は標準偏差が15%であり、市場平均が+50%なら、標準偏差が50%だということです。

もうかしたら、農業関連株は他の株式に比べてパフォーマンスが良好なのかもしれません。それでも、市場が-50%の際に、-35%にとどまると言った程度でしょう。

そもそも、株価が全般的に暴落するのに「その中に宝物を探そう」という発想自体が間違っていると思いませんか?​』

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第五回 「金は下がっているが、今が買い時なのか」

2021年3月26日

全会員向けテーマ:下がっている金

質問:

金価格が下がっています。今は買い時でしょうか。


回答:

どこで下げ止まるかを予測するのは難しいですが、そろそろ反転する材料が見えてきました。


『株の暴落サインを見抜く方法』P41に記した機関投資家の投資行動が弱気に転じています。

(P41の内容は右の図です。)

現在は機関投資家の買いポジションは3万枚を割ってきました。明確に、「OO万枚まで下がれば金相場が反転する」とは言えないですが、反転が近づいたことは確かです。機関投資家の手口の調べ方はP249です。

(p249には、検索方法、『ヤフーやグーグルで米国先物取引委員会のサイトを検索し、「U.S. commodity Futures Trading Commission」→「Market Data &  Economic Analysis」→「Commitments of Traders」→「Historical Compressed」→「Disaggregated Futures Only Reports」と進み、数ある商品の中から金のデータを取り出す』、という手法が説明されています。)


上級の投資家は手口情報に敏感になってください。

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第四回 「円VSドルとゴールドvsダブルインバース」

2021年3月22日

ゴールド会員向けテーマ:円建てかドル建てか


質問:

金のETFを買おうと思うのですが、円建てとドル建てはどちらがいいでしょうか。ご著書には「金は7000ドルになる。円では2万円になる」と書かれています。もしこの通りになるなら、ドル建てでは今から4倍で、円建てでは3倍です。ドル建ての方を選択すべきでしょうか。



回答:

どちらを選んでもパフォーマンスは全く同じです。だとしたら、東証に上場している円建ての方が手軽で、いいかもしれません。


ドルで4倍の利益、円で3倍の利益だとしたら、一見すると、ドル建ての方がいいように思えます。しかし、この時、為替が3/4倍になる(ドルの価値が75%になってしまう)という仮定があることを忘れてはいけません。つまり、25%の円高です。


現在の金価格(1オンス)

1733ドルは187,614円です。(1ドル108円とします)

これを1グラム当たりの円建て価格にすると、約6600円です。


将来の金価格(仮定)

7000ドルは567,000円です。(1ドル81円になると仮定します。)

これを1グラムあたりの円建て価格にすると、約2万円です。


6600円の3倍が約2万円です。

つまり、米ドル建てで、本日1733ドルで金を買い、将来7000ドルで売った場合、ドルを保有している場合は4倍の利益ですが、円に変換した場合は、為替差損が出て、利益が3倍に縮小してしまうわけです。


ただし、金を売ってドルに換えた際に、ドルが1ドル108円(現在値)のままだとしら、円建てでの利益はドル建ての場合と同じで4倍になります。逆に、円が75円になっていたら、金からの利益は3倍未満になってしまいます。


このように考えればわかるように、リスクの少ない円建ての方がいいかもしれません。


 プロ会員向けテーマ:ゴールドかダブルインバースか


質問:

株価が暴落し、ゴールドが上昇するのであれば、日経ダブルインバース(1357)の買いでも良いのでは・・・・という考えが、どうしても頭をよぎってしまいます。日経ダブルインバース(1357)のデメリットにつきまして、お聞かせいただけると幸いです。


回答

ダブルインバースについて

日経ダブルインバースは逆方向に2倍に動きをするものですから、株式が暴落すれば利益が2倍になるわけです。問題は「いつから暴落するか」です。


日経平均がここから20%上昇した時点で天井を打つとした場合、このETFでは40%の損が出てしまいます。怖くなって途中で(損がかなり大きくなってから)投げることになりかねないのではないでしょうか。


この質問の根底の考えとして、「できるだけ儲けを大きくしたい」と思っていませんか?ぼくはそうは思っていないんです。

そこそこ儲けることを目指します。

「そこそこって、それでプロか?生ぬるいやり方じゃないのか?」

と思うでしょう。そのくらいの姿勢の方が安全であり、長期的には資産が増えることが経験からわかっています。

この話は拙著『株の暴落サインを見抜く方法』のP32あたりに書きました。

最大利益を追求すると、リスクが大きくなってしまいます。


金は比較的安全に資産を大きくできる投資先です。だから、お薦めしています。

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第三回 「タイミングと地金vsETF」

2021年3月11日

ゴールド会員向けテーマ:金の買いのタイミング


質問

金価格が下げているので先日購入したばかりですが、買い増しのタイミングでしょうか?明日の購入も検討しております。


回答

相場ではいろいろなことが起きます。焦らずに、ゆっくり取り組んでください。大事な資金ですから、慎重にされるのがいいでしょう。

(「株の暴落サインを見抜く」)241ページに時間分散の大切さを述べています。

(時間分散は、投資素人でも、負けない買い方である、ということを説明なさっています。)


プロ会員向けテーマ:ETFの方が地金より税制上有利ではないか。

質問

税金を考慮するとETFの方がいいと思うのですがなぜ地金を薦められるのでしょうか。株式市場が閉鎖されるような状況ですと地金自体の売買も難しい状況になると考えています。


回答

金をたくさん買う方にとって、ETFがいいのは税金の観点からは確かです。ただし、問題があります。ETFは業者が本当に地金を買っているかどうかわかりません。その中で、「金の果実」は安心だと思います。


「金の果実」は三菱信託銀行が主体になっています。拙著にあるように、国債デフォルトが起きた場合、日本中の銀行は倒産状態になります。三菱信託銀行も例外ではないでしょう。その場合、「金の果実」がどのような扱いになるかが明確ではありません。


難しい理屈は捨てて、こう考えましょう。

株価が7割下がる事態が来るとします。

そんな時に、既存の金融機関や取引所が信用できますか?

何が起きてもおかしくないでしょう。

地金は本物のお金なので、私たちを裏切ることはありません。

これが僕の言いたいことです。

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第二回 「ETFと不安」

2021年3月3日

プロ会員向けテーマ:日銀のETFの買いで株は上がり続けるのではないか

質問

ご著書の説明にある、株が下がる理由には納得できるのですが、現状では日銀がETFを買い入れるので大きく下がらない印象です。

日銀がETFの買い入れから撤退することはあるのでしょうか。

撤退するとしたら、外圧くらいしか思いつきません。例えば、「日本は日経平均を政府と日銀が操作している」との海外投資家からの圧力があれば、日銀が撤退することが考えられますが。



回答
日銀はETFの買い付けを続けると思います。

日銀は2月末現在712兆円の資産があり、そのうち、株式関連は37兆円です。これは国債の日銀保有額539兆円に比べて小さいので、まだまだ買いの余地があります。東証1部の時価総額は690兆円ですから、日銀の買いが続けば、相場が上がっていくことは十分予想されます。


ここまでのロジックは完璧なのですが、相場の世界には「そうは問屋が卸さない」という部分があります。日本の株式相場が崩れるとしたら、それは欧米と同時でしょうから、その際に日本だけ株価が高騰することはありえません。


「欧米も中央銀行が株を買い続ければ、株価上昇が世界的に継続しないのか」という考えも悪くはないのですが、問題は金利です。

金利が上がり始めれば、株価対策どころではなくなります。


債券市場の方がずっと大きく、また、金利が上がると新規の債券発行が出来にくくなっていくので、給付金政策を縮小するとか、予算削減を考えるとかしなくてはならなくなってきます。


株価下落の前に金利の高騰が始まるでしょう。



ゴールド会員向けテーマ:不安を解消する

質問

はじめまして。

知人から凄い先生がいる、本を買って読んだり、パンローリングのユーチューブを見たりしています、この度も、新刊、ありがとうございます
すぐに買いました。
私みたいな、投資がわからない者にも、読みやすいです
今までの、先生の本に書かれてた事が、現実になっているので凄いなっと、ただただ、思うばかりです
私は、投資は、さっぱりわからないですけど、経済は、歴史に学ぶ、また
繰り返される事が、起こるんだと、自己流な考えでいます
先生が、ゴールドが良いと、いつもお話されているので
ゴールドの現物、積立、ETFなど、4000万円、昨年の夏に買いました
今は、少し下がっていますが、気にしていません、積立ても、まだ、しています。
円は、あまり持たなくていいかなって思っています
先生の、個人的な意見で結構です
金をひたすら、買えばいいですか
何か、ほかのものは、いらないですか
どんどん、実態のないのに、株価は、上がっていますよね
先生は、もう少し、上がるかなって、お話されていましたね
今年は、日経平均上がっていくばかりでしょうか
ドルも少しあります
私は、インフレになったり、円の没収されて
生活ができなくなるのが、恐いんです、贅沢はしたいと思っていません
65歳まで生きてきて、人生の後半、生活ができなくなるのが、不安です
あと、2000万円投資、やっぱりゴールドですかね
株価暴落したら、アメリカ配当株とか、買ってみたい気もします
けど、私みたいな、投資が、わからない者お金が少ない者は
やはり、金だけがいいですか
先生のご意見をお聞きしたいです。お忙しいとこ、宜しくお願いします。



回答:

金だけを買えばいいです。

今度の本の1章の通信簿のところを見たでしょうか。金(ゴールド)だけ持つ戦略が過去6年間、かなりよかったことがわかるでしょう。

あれこれ手を出すのはいけません。

多方面に知識があるなら別ですが、ぼくを含めて普通の人はひとつくらいにしか集中できないものです。


それより現金が1000万円以上あったら、銀行を分散させてください。預金収奪のリスクが激減します。


ほかにもご質問があればいつでもメールをお寄せ下さい。

ぼくはすぐに返信しています。

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第一回 「林さんのプロフィール」

2021年2月18日

​​林さんのプロフィールについて、五つの質問を行いました。

Q.プロフィールに日本の大学名がありませんが、海外の大学しか卒業していないのですか?

A.いいえ。早稲田大学政治経済学部の卒業です。

アメリカの大学名は、その大学に投資の師匠がいたので記しましたが、学歴についてはあまり書かないようにしています。投資の実力には関係がないと思っているからです。

寿司屋の職人が、自分の師匠や働いてきた店の名前を著書に書くことはあるでしょうが、学歴は披露しないでしょう。同じような気持ちです。


Q.出身地とか書いてないのですが、個人情報は出さない方なのですか?

A.いいえ、別にそんなことはありません。

これも投資成績に関係ないので、お話ししていませんでした。

A.東京の出身です。セミナーの動画を見ていただければわかりますが、ベランメ~調になる時がよくあります。お行儀のいい話し方は苦手です。


Q.率直に聞きますが、林さんは頭がいいのですか?

ぼくは人に比べて頭がいいということはありません。

A.先日、IQを調べたら、97~104の間だとの結果が出ました。つまり、ほぼ100であり、平均です。

小学生の時は、真中からやや下くらいの成績でした。社会人になって最初に入社した会社では、あまりに仕事ができないので、「できないやつは立っていろ!」と立たされたこともありました。


Q.では、投資の世界で活躍できた理由は何だったのでしょうか?

A.世界でもトップクラスの投資家に教えてもらったことです。

ジム・ロジャーズがその一人ですが、他にも外国人、日本人の師匠がいます。シェフ、陶芸家、落語家といった職人たちが自分の経歴を披露するのに、

「○○先生に師事した(門下生だった)」といったことを挙げています。

どうして自分の師匠に言及するのかが自分の体験でわかるようになりました。師匠たちの影響は決定的と言えるほど大きいからです。


Q.ジム・ロジャース氏はコロンビア大学での師匠でしたよね?

A.ネットには「世界三大投資家」と書いてあります。このレベルの人を師匠に持てば誰でも成功できるのでしょうか?

ジムの教え子の中には、資産運用の世界で有名になった人材は何人もいますが、全員が成功したということはないでしょう。有名店で修業した料理人がすべて成功するかというと、そうでないのに似ていると思います。


あとは熱意が大事です。ぼくは出会った時に、

「この人だ!この人のようになりたい。ノウハウを吸収したい」と思い、自宅を訪ねて質問攻めにしたことがありました。

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