質問:
米国では不動産価格が下がり始めていると聞きます。これは景気後退につながるのでしょうか?
回答:
不動産価格の下落は景気後退の兆しです。
① 上がり過ぎた米国不動産価格 図1
不動産価格は2020年から22年にかけて急上昇しました。不動産価格を米国人の平均所得で割った値が110%から140%にまで上がりました。この背景には、コロナ不況脱却のための米国のマネーじゃぶじゃぶ戦略がありました。マネーの総量を前年比25%超にまで伸ばせば、余ったお金が株式や不動産に向かい、資産価格が暴騰するのは目に見えていました。
ところが、不動産は自分が住むために買うものですから、値上がりすぎれば買える人が減ってきます。そのため、価格が2022年第一四半期から下げ基調になりました。
② 住宅着工に景気後退が現れている 図2
不動産を景気後退のシグナルとして用いるには、住宅着工を見ることが最善です。住宅は一生に一度の大きな買い物ですから、誰もが慎重です。「景気が悪くなるかもしれない」と人々が思うようになると、住宅着工は急速に萎(しぼ)みします。
サブプライムローン(=返済能力もない人への貸出)の全盛期(2001年~06年)には住宅着工が大幅に増加しました。ネコも杓子(しゃくし)も住宅を建て始めたのです。しかし、そうしたバブルはいつかは頭打ちになります。それが2006年1月でした。株価の天井が2007年10月でしたので、1年半以上前に住宅着工が景気後退のサインを点灯させたことになります。
最近についていえば、2022年4月に住宅着工が頭打ちになっています。ここでの落ち込みは、コロナで経済が瞬間的に凍結された時期(2020年春)を除けば、最大の落ち込みになっています。しかも、米国株価が2021年12月に株価が天井を打ったのと時期をほぼ同じにしています。
マネーの総量が縮小気味(2023年5月-4%(前年比))であることから、買い手に資金の余裕がなくなっていることがわかります。株価とともに下落方向に向かうでしょう。住宅は小売り実質売上高(2023年5月-2%、定例発信第110回、6月9日参照)とともに米国景気後退のシグナルを発しているようです。
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