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執筆者の写真ファンクラブ 林則行さん

第84回 マンションは有望な投資先ですか?

質問:

東京都23区内のマンション平均価格が2023年5月に1億1500万円になったと聞きました。マンションは不況時にも強い投資先になるでしょうか?



回答:

純粋な投資を考えるのであれば、値上がり幅や換金性の点でゴールドが勝るでしょう。ただし、ご自分が住むことを前提に、「将来は売ることも視野に入れている」という程度に考えている人にとってはマンション購入は悪くない選択だと思います。


マンションを購入する人の中には、最初は小さな物件からスタートして、だんだんと広めの価格帯の高い物件に買い替えていく人も結構いるようです。こうしたアプローチはマンションに合致した資産形成法かもしれません。その理由は、下で述べるように、マンションはだんだん劣化する資産だからです。ただし、売却する場合は、「高く売ろう」と意気込むよりも自分のライフステージにあわせて住み替えを優先すると満足度が高いでしょう。



解説

図をご覧ください。1973年からのマンション価格(首都圏)と株価(日経平均)の推移です。





➊基本的には似たような動きをしています。つまり、株価が上がる(下がる)時はマンション価格も上がる(下がる)というものです。ですから、不況の時は、マンションは買わないのが正解です。ここまでが大原則です。


❷図をよく見ると、マンション価格の動きの方がやや緩やかです。これはマンションを買う人の多くが自宅用として購入するからだと考えられます。自分のために買う人は慎重です。一生を通じてローンを払い続けないといけないのですから、あまりに高い値段では買いません。また、不況期でも家が欲しいという需要はあります。こうした人たちに支えられているので、マンション価格が安定するのです。


これに対して、投資としてマンションを買う人はお金持ちであり、「大きく値上がりしたら、すぐに手放して利益をものにしよう」と思っています。このため、仮にマンションが投資需要だけで成り立っているとしたら、価格は株価のように大きく上下に動くでしょう。


❸マンションについては、投資と考えずに、自宅の購入という考え方に徹するべきです。


その理由は次の通りです。


❸―(1)マンション価格の上昇はマイルド

図にある長期価格の推移ほどには実質価格が上がらないという点です。


ひとつの理由は、専有面積から説明ができます。1973年の平均的な専有面積は56㎡でした。現在は67㎡です。50年間で20%程度広くなりました。マンション価格は50年で6.9倍になりましたが、面積あたりの単価は20%分を差し引くと5.7倍だということになります。


それ以外にも考慮すべき点があります。マンションのグレードの向上です。50年間にかなり質が良くなっているはずです。(グレードについてはどの程度なのか数値で示すことができません。)


つまり、同じ価値のものが50年間に6.9倍になったというわけではないことは頭に入れておくべきです。


❸―(2)マンション価値は年とともに劣化する

マンション価格は10年で建物の価値が20%程度減少するのが一般的だと言われています。仮に、マンションの購入価格全体のうち、土地代金と建物代金が半々だとしたら、10年後にはマンション購入価格全体の10%分が下がってしまう計算になります。


また、マンションは税務上は建物を47年で減価償却します。また設備を

15年で減価償却します。仮にマンション価格から土地代金を除いたものが、建物価格4700万円、設備価格が450万円の合計5150万円だとした場合、最初の15年間は毎年、建物の減価償却100万円、設備の減価償却30万円の合計130万円が償却になります。15年後には設備の価値がゼロになり、47年後には建物の価値がゼロになります。最終的には土地代金だけの価値が残ります。


税務上の計算が必ずしも実勢を反映するわけではありませんが、マンションは少しずつ価値が下がっていく傾向があることは頭に入れておきましょう。


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