質問:
親会社の楽天は巨額の赤字が続いています。その傘下にある楽天銀行は金融危機が訪れた際に、破たんしてしまうのではないでしょうか?
回答:
楽天銀行の破たんリスクはまずないでしょう。
➊楽天銀行は絶好調
2023年3月期の決算によれば、楽天銀行は経常利益39%増となっています。口座数の伸び率は12%、預金残高は18%です。口座数1370万件、預金残高9兆円ともネット銀行最高であり、預金金額を見ると、日本の地方銀行との比較では7位程度になります。
❷危ない資産は少ない
親会社が破たんする場合、最大の懸念は楽天銀行のキャッシュローンビジネスがどうなるかです。当社は楽天カードのキャッシングを担当しています。このビジネスは楽天銀行(単体)の資産12兆円のうち2兆円になっており、これが消滅してしまうと経営に大きな打撃が生じます。しかも、楽天銀行の伸びは親会社のビジネス拡張に支えられているので、それを喪失してしまうことは大変な問題となります。
しかし、楽天親会社が破たんした場合、そのビジネス自体が全消滅してしまうことは考えにくく、別の会社がそれを引き継ぐものと思います。その会社の傘下において、楽天銀行がビジネスを継続できるとすると、キャッシュローンの問題は考える必要はなくなります。
❸唯一の懸念は国債の増加
会社の公表資料によると、前期に国債の購入を増やしています。2023年3月末で3606億円となっています。これは純資産の2136億円に比べて大きいです。つまり、国債がデフォルトなった場合は、純資産ではまかないきれず、破たん状態となるわけです。
ぼくは親会社が楽天銀行の増資を行い、純資産の不足分を補うと考えています。子会社の銀行が破たんしてしまうと、親会社やグループ会社が行う決済がすべてストップしてしまうので、親会社としても死活問題になるからです。純資産の不足分は1500億円程度ですから、親会社の保有する現金4.5兆円(連結ベース)でカバーできます。
❹親会社は赤字縮小へ
楽天(親会社)の赤字は縮小に向かっています。赤字の大半はモバイル事業によるもので、その赤字幅は図表1にあるように、四半期を追うごとに小さくなっています。
消費者が楽天モバイルを選ぶ理由は料金の安さにあります。大手3社に比べて料金が3分の1程度であり、大手のサブブランドと比較しても割安です。現状では「まだつながりにくい」という声があるものの、モバイルの基地局整備も目標値の85%にまで達しました。
モバイル事業の最大の問題は通信品質です。「家の中でつながりにくい」「地下でつながりにくい」と言われています。繁華街、高層ビルでも同様です。ただし、そうした苦情のTWEET数は図表2にあるように、2020年4月時点から2023年4月時点で40分の1に減少しています。
この解決策として、同社では十分な量のプラチナバンドを当局から供給してもらえるまで、大手携帯会社からプラチナバンド回線を借りることで乗り切ろうとしています。
設備投資の大幅減少も赤字幅の縮小に寄与するでしょう。設備投資は2022年12月2960億円から2023年12月期3000億円を見込むものの、その後は半減する見通しとのことです。設備投資は減価償却費用を生みますから、設備投資が縮小すると、営業赤字額も減少することになります。
楽天(親会社)の最大の魅力は各ビジネスが大きく拡大しているところです。流通総額12%の伸び、トラベル13%の伸び、カードショッピング26%の伸び、証券口座数21%の伸びとなっています。jこうした伸びが続けば、非モバイル事業から生まれる営業利益がモバイル事業の損失を補うようになるでしょう。
新規事業には赤字がつきものです。投資期さえ乗り切ることができれば、大きな収益源となるはずです。アマゾンは1994年に創業し、黒字化したのは2003年でした。その後は皆さんもご存じの通り、米国の時価総額で第3位の規模の会社にまでなっています。楽天の将来も悲観的に考える必要はないのではないでしょうか?
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