第78回 借金の重い日本が世界に先駆けて破たんするリスクはありますか?
- ファンクラブ 林則行さん
- 2023年5月27日
- 読了時間: 3分
質問:日本の国債残高が増えているという報道がありました。日本が世界に先駆けて破たんするリスクはありますか?
回答:ないでしょう。日本はG7の中では安全度の高い国かもしれません。それでも、破たんするとすればG7諸国と同時でしょう。
解説:
国家の安全度は金利に現れる
財務省は5月10日、国の借金(国債と借入金、政府短期証券の合計)が、3月末時点で計1270兆円になったと発表しました。前年同期から29兆円余りの増加です。
日本の借金はうなぎ登りに増えています。国債の発行残高のGDP比はG7の中で最高で、以下の図表1のように日本がダントツです。

多くの人はこうした事実を知っていて、日本が財政破たんに最も近い国かもしれないと考えるのでしょう。それは違います。答えは全く逆で、日本の安定度が最高です。世界の投資家がそのように判断しています。
図表2にG7各国の金利を見てみましょう。日本の金利が圧倒的に低いのがわかるでしょう。金利はその国の経済成長率によって大きく影響されるのですが、もうひとつの側面があります。それは破たんしそうな国の金利が高くなることです。

為替リスクが全くないという前提において、イタリアの国債と日本の国債との利回りが同じだった場合、どちらの国の債券を保有したいと思いますか?世界の誰もが「日本」と答えるでしょう。皆が「日本の破たん懸念は低い」と感じているからです。
同じ理由から、倒産の可能性がまずない大企業と破たんリスクのある中小企業では、前者の発行する債券の利回りが低く、後者の債券が高いです。
危機が訪れると金利が高まる
危機になれば、金利が急速に上がります。図表3は2004年からの日本とイタリアの10年債利回りを記したものです。イタリアは2010年からの欧州金融危機において金利が急上昇しています。また、ウクライナ戦争によって、2021年末から急上昇しています。

「国の財政破たんが近い」と、投資家が少しでも感じ始めると、手持ちの国債を売り出すので金利が高くなってしまうのです。一方、日本の金利の推移を見ると、そのようなことは起きていません。
だからと言って、他国が破たんしても日本が破たんしないのか。それも違うでしょう。日本だけでなく、G7各国は借金を返済する気がないと思います。返すことのできるようなレベルではありません。
国家予算の歳入より歳出を1兆円だけ少なくすれば、1年に1兆円の返済ができます。それを続けたら、日本の場合、全額返済までに1200年かかります。財務省は1980年以降の国債発行残高の推移を公表していますが、この間残高が減少した年度は一度もありません。過去40年以上にわたり全くできなかったことが、1年だけでもできるようになるでしょうか?G7の一国が破たんしたら、それを好機ととらえて同時に日本も破たんさせるでしょう。
正確に言えば、日本の国債の信頼度は他国に比べて「ましだ」というレベルです。世界を襲う金融危機が起きれば、意味を持たない程度の「まし」ということになります。
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