質問:
ゴールドの最新の需給状況を教えて欲しいです。ゴールド価格が連日上がっているので、買うのが怖くなっています。どんどん上がっていってしまうのでしょうか?需給の点からはどのようなことがわかりますか?
回答:
ゴールドは今後横ばいの動きに入る可能性があります。ゆっくり買っていく方針でいいでしょう。
最新の生産統計が5月5日に発表になりました。それによると、2023年第1四半期(1-3月期)は前年同期比1.5%の増加となりました。ゴールドは野菜と同じように生産量が増加に転じれば価格が下がるか横ばいになります。この傾向は図表1をみれば、一目瞭然です。
ここで2022年第4四半期(10-12月)の生産額についても説明します。ぼくが2月の時点で皆さんに示した際は-0.9%減と発表されていました。これが第一四半期の発表とともに見直され、1.3%の増加に変更になっていました。
ゴールドの統計は最初の発表後数字が変わることが多いです。一言でいえば、ゴールドの統計はいい加減だとも言えます。統計を発表するワールド・ゴールド・カウンシルはそのような団体だと認識していいでしょう。
しかし、それ以外に四半期統計を発表している機関はないので、投資家の多くがこの統計を見ているのも仕方ないことです。
ここで、先物市場における鉱山会社の売りポジションが役に立ちます。生産量がプラスに逆戻りしても、価格が大きく下がるか言えば、それは違うと思います。なぜなら、鉱山会社の売りポジションはゴールド価格が2000ドルを超えた今でも、たいして増加していません。「まだ上がりそうだから売りを最小限にしておこう」という意志の現れだと考えていいでしょう。
鉱山会社が強気な理由は米国の金融危機にあります。「危機の際はゴールド需要が増える」ということがわかっているからです。図表2を見ると、昨年秋からドルが売られ、ゴールドが買われ始めたのがわかります。逆相関になっています。投資家たちがドル通貨からゴールドに乗り換え始めたためです。(なお、ここで用いたドルレートは世界各国のドルレートの平均値を用いたもので、このドルレートの先物がNYに上場されています。)
このように見てくると、ゴールド価格はプラス要因(金融危機)とマイナス要因(生産量増加)の2つから成っていることがわかります。2つの要因があれば、どちらかがより大きく影響する時期が生じ、時には横ばい/下落に入る時期も生まれることでしょう。だから、「どんどん上がる」と考える必要はありません。いつも皆さんに申し上げているように、「ゆっくり買っていく」ことが最良の戦略だという結論です。
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