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執筆者の写真ファンクラブ 林則行さん

第75回 金を最も安く買う方法を教えてください

質問:

ゴールドの地金を買う場合、最も安い買い方は何でしょうか?


要約:

商品先物取引会社を利用すると一番安く手に入ります。どれほど安いかは日々異なりますが、田中貴金属に比べて、最大で10万円以上(1キロ当たり)安くなります。キロ単位でゴールドを買う人にはお薦めの方法です。


この方法は、株式の注文とほとんど同じですから、一度でも株式取引をしたことのある人ならば、誰でも簡単にできます。それでも、一般には普及していません。皆がやらないからこそ安く買えるわけです。


田中貴金属より安く買うコツを伝授

方法は簡単です。まず、商品会社に口座を開きます。これは無料です。その上で、商品会社を通じて、市場(商品先物取引市場)に買い注文を出します。これは株式の注文と同じやり方で、田中貴金属といった小売り業者や商社のプロが行っている方法でもあり、これ以上に安い購入方法は世の中にありません。


一般に、たくさんの商品(例:100個)を買うと1個を買う場合より安くしてもらえることがありますが、ゴールドにおいては数量の大小にかかわらず全く同じ値段です。すなわち、私たちが取引市場に注文する際は1キロだけ買う場合でも大量の注文を行う大口の人たちと全く対等な価格になるということです。つまり、最安の方法だということです。


具体的に見ていきましょう。仮に4月12日に注文した場合です。




注:買い付け価格は当日市場が開いて最初に成立した価格を用いた。

消費税は買い付け価格をもとに設定した仮の金額(後述参照)。

郵送希望者はこれ以外に送料が必要。




田中貴金属より安く買うカラクリ

上の例では田中貴金属と10万円以上の差が出ていますが、この差額は日々変動します。例えば、前々日の4月10日の場合ならば、5万円超の差額でした。田中貴金属の店頭小売価格は1日ごとに変動しますが、市場価格は1日の間に何回も変わります。そこで両者間の価格差がその時々に変わってくることになります。


私たちは田中貴金属で買うよりできるだけ安く買いたいわけです。そのためのコツをお教えします。田中貴金属の価格が朝発表になったら、現在の市場価格と比較してみてください。割り算を行います。

つまり、田中価格÷市場価格

です。2023年4月12日の例ならば、

9535÷8569=1.113

となります。市場価格が11.3%安いという計算です。この比率(%)が大きいほど差額が大きくなります。10%は消費税分ですから、私たちが受け取る差額の利益は1.3%になります。同じ計算を4月10日に行なうと差額は0.7%でした。商品会社に注文を出す際のコツは、この差額が0.5%以上の時にすることです。



商品会社を利用する大きなメリット

ここで大事な注意点があります。それは消費税は先物取引日には決まらず、後日(取引決済日)決まるということです。取引日は先物を買った時点であり、実際のゴールドは買っていませんから、消費税はかかりません。決済日に本物のゴールドを受け渡してもらうのですから、ここで消費税がかかります。そのため、決済日の金価格で消費税が決定するわけです。そんなわけで、上で示した差額とは仮のものであり、実際の金額より大きくなることもあれば小さくなることもあります。


なお、4月12日に買っても4月10日に買っても、決済日は4月28日です。(決済日は2か月に1度、偶数月の月末付近です。)この日のゴールド価格(税抜き市場価格)は8663円でした。つまり、この金額に対する消費税を払うことになり、1キロあたりでは866,300円です。


これを用いた4月12日、4月10日の総コスト、田中貴金属との差額は以下の表のようになります。





4月10日の例を用いるなら、実際の差額は38,525円ですから、仮に消費税があと38,525円だけ上昇してしまえば(つまり、消費税額が

866,300+38,525=904,825円になってしまえば)、差額はゼロになり、それ以上に上昇すれば、「田中で買った方がよかった」ということになります。


そのようなリスクがあるにせよ、ぼくはこの方法が良いと思います。理由は決済日の価格が購入日より下がることもあるからです。その場合は、田中貴金属よりぐっと安くなります。


皆さんはこのことをリスクだと考えるかもしれませんが、ぼくは大きなメリットだと思っています。その理由は、本体価格と消費税分(全体の約1割)を別に買うからであり、一種の分散投資になるからです。1回で買うより2回で買った方が平均的にはいいに決まっています。



驚くほど人気がない

ところがこの方法は人気がありません。北辰物産(商品先物取引の大手)によると、4月28日の決済日にゴールドを手にした同社の顧客はたった4人だったということでした。決済日は2か月に1度しかないので、1か月に2人しかお客さんがいなかったことになります。


小売店でお客さんが1か月に2人しか来なかったなら、どんな業種の小売店であれ、倒産間違いないでしょう。商品先物会社は先物の売り買いを行う客を中心に営業しており、ゴールドを実際に買い取る客はほとんどいないという前提で営業しているようです。


最後に、事務手数料について述べると、これは商品会社によって異なります。北辰物産が安いようです。

北辰物産 5,500円

A社     18,040円

B社 8,646円

C社 8,580円

(北辰物産のホームページより抜粋)



デメリットは商品会社の破たんリスク

デメリットについても述べておきます。自分の取引中(先物の購入日から決済日までの間)に商品会社が破たんした場合は資金の回収が難しい場合があります。これが唯一のリスクです。


また、ゴールドバーの銘柄は指定できません。自分が手にすることになるゴールドバーの刻印は田中貴金属のものかもしれないし、三菱マテリアルのものかもしれないということです。


デメリットよりメリットが大きいと思う方はぜひ試してみてください。購入は1キロ単位です。


詳細については、商品先物取引会社に電話をかけて聞いてみてください。なお、この方法を「現受(げんう)け」と言います。顧客がゴールドの現物を受け取ることから付けられた名前なのでしょうが、あまりに一般受けしない名称ではないでしょうか。だから普及しないのかもしれません。皆がやらないからこそ儲けがあることを心に刻んでおいてください。

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