質問:
米国では大手銀行が相次いで破たんしました。今後の経済・金価格への影響を教えてください。
回答:
当面は経済は順調に戻る
しばらくの間は何事もなかったかのように経済は動いていくでしょう。株価は順調でしょう。ゴールド価格にはプラス材料です。
野球には「スリーストライクでワンアウト」というルールがあります。打者は2回失敗しても見逃してもらえます。今回はワンストライクにあたります。つまり、1回目の銀行破たん劇だということです。まだ、猶予があるかもしれませんが、その後は金融恐慌の始まりになると思います。
米国のシリコンバレー銀行(3月10日)、シグニチャ―銀行(12日)が破たんしました。シリコンバレー銀行の破たんは過去2番目の大きさ(総資産2090億ドル)、シグニチャ―銀行は過去3番目の大きさ(1103億ドル)です。なお、過去最大はワシントン・ミューチュアル(3070億ドル)ですが、これはリーマンショック時の2008年に起きたものですが、リーマンショックから完全に回復している今、ワンストライクにはカウントされません。
米国大統領は全預金を保護すると発表しました。通常ならば、25万ドル(3300万円)
以上は保護対象ではないのですが、取り付け騒ぎが起きたので、連鎖倒産が懸念される事態となってしまいました。実際、ファースト・リパブリック・バンク、ザイオンズ・バンコープ、キーバンク、トリストフィナンシャル、ウェスタン・アライアンス・バンコープといった銀行で取り付け騒ぎが起き、株価も大きく下がりました。そのため、大統領は全額保護を打ち出したわけです。
大事なことは、過去2番目、3番目といっても決して大きな規模ではないということです。両者2行を合計した総資産額は3193億ドル(42兆円)です。これは米国中央銀行の資産規模(8.34兆ドル(1100兆円))の3.8%に過ぎません。
小規模な銀行は、現時点では株価が暴落していますが、「全額保護してもらえるなら安心だ」といった安堵感が広がるともに、株価も平常時レベルに戻っていくでしょう。米国最大の銀行JPモルガンは全く下げず、大手銀行シティバンクも下げは限定的でした。金融界以外を含めた市場全体の株価も戻り基調です。
最大の懸念は欧州
これに対して、欧州はやや事情が異なります。スイスに本拠地を置くクレディスイス銀行の株価が暴落した際に、スイス金融当局は預金全額保護を打ち出しませんでした。まだ、取り付け騒ぎが起きていないからだったのか、資金に余裕がないせいかわかりませんが、不安は残ります。このため、クレディスイス銀行の株価は暴落したまま戻ってきていません。ツーストライク目は欧州から来ることになるかもしれません。
欧州の動向については逐次情報を更新しています。
私たち投資家にとって大事なことは、「金融恐慌はすぐではないが、すぐそばまで近づいている」ということです。ファンクラブの皆さんは米国株価が順調なうちに準備を進めてください。
金価格にはプラス材料
2行が破たんを発表した週末から週明けにかけて金価格は上がりました。田中貴金属が公表する金の小売価格(消費税込み)は初の9000円台となりました。
この背景にあるのは、今回の破たんを受けて、「米国中央銀行がマネーの拡大に舵を切ることになった」と人々が思い始めたことにあります。マネーが増えれば、その価値が下がるからです。しかも、さらに重要なことは、金の生産量が2022年第4四半期に入り、減産になったことです(詳しいレポートは定例発信2月4日第102回)。生産量が減じれば、価格が上がる――金は野菜と同じような価格決定構造になっているのです。
このような理由から金価格は堅調に推移するものと思われます。
米国で複数の銀行に取り付け騒ぎが起こるようになると、当然ながら海外にもその情報は拡散されます。日本でも経営基盤の弱い銀行が不安視されるようになるでしょう。国際的にゴールドの魅力が高まることになるでしょう。
やや詳細な解説は定例発信に載せましたので、ご覧ください。
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