第180回 NYダウ800ドル下落の真相
- ファンクラブ 林則行さん
- 5月28日
- 読了時間: 2分
金利差拡大に投資家の不安が現れている
5月21日NYダウは800ドルを超える下落となりました。この真相について
今日はお話しします。
テレビなどでの解説では、「長期金利(10年債)が4.6%へと上昇した」といっ
たことを挙げています。しかし、これだけでは十分な解説になっていません。
大事なのは、超長期金利と長期金利の金利差が広がってきたことにありま
す。超長期金利とは30年債を指します。30年後に償還される国債金利の
ことです。長期金利とは10年債を指します。10年後に償還される国債金利
のことです。
図表1にあるように、超長期金利(青)は1月中旬につけた高値に戻ってい
ますが、長期金利(赤)はそこまでは戻っていません。このため、両者の差
が広がっています。

この金利差の拡大は何を意味しているのか。それは常識を働かせて考えて
みればわかります。債券投資家にとって一番大事なことは、「元本がちゃん
と戻ってくるのか」ということです。
一般に、期間が長くなればなるほど、不確定な要素が増えてきます。その意
味で、1年債より5年債、5年債より10年債、10年債より30年債の方が、
金利が高いのは当たり前です。(金利が高いということは、債券価格が安い
ということであり、それだけ債券に対する需要が小さいということです。)
最近の金利差拡大の意味は、簡単に言うと、「10年後に政府が国債を償還
できると思っていても、30年後には無理かもしれない」と考える投資家の数
が増えてきたということになります。つまり、30年後の償還に対しての不安
が膨らみ始めたということです。
全く同じことは、ITバブル期に株価が下落し始めた頃の状況に似ています。
図表2です。S&P500(青)と30年債/10年債の金利差(赤)で記しました。

これを見ると、株価が天井をつけて、下がり始める時期に金利差が0.0%から
0.4%へと上昇していることがわかります。黄色でシャドーをかけた箇所です。
また、図表3のリーマンショック時においても、金利差が0.1%から0.4%へと広
がった時期(黄色のシャドー期)に、株価の暴落が始まっています。

最近の金利差と株価の状況を示したのが図表4です。金利差が0.2%から
0.5%に上がる過程において、S&P500が大幅に下落したことがわかります。
今後、株価の下落は債券投資家が主導していくことになるでしょう。30年債
の金利上昇は注目すべき指標のひとつです。

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