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執筆者の写真ファンクラブ 林則行さん

第62回 今年は昇給がトレンドになりますか?

質問:今年は昇給がトレンドになりますか?

ユニクロが給与を最大40%引き上げるという報道がありました。ディズニーランドも7%昇給するらしいです。このような昇給が続けば、消費が回復し、経済が活性化するということになるのでしょうか?



回答:昇給がトレンドになることはないでしょう。


TV報道は信用できない


ユニクロやディズニーランドは広告塔です。大中小企業が昇給する方向に促していると考えるべきです。一般に、TV報道の多くは政府の目的の方向に作られると思った方がいいです。


その好例は最近ではコロナの感染症法上の位置づけ変更です。重症化リスクや感染力が高い結核やSARS(重症急性呼吸器症侯群)と同等の2類から、就業制限や入院勧告の措置が不要の5類に一気に引き下げる予定です。引き下げ時期は5月を予定しています。これが如何に馬鹿馬鹿しいかは、ちょっと考えればわかります。


自然災害(例:台風)では、引き下げも引き上げも状況を見ながら1段階ずつ行われます。すなわち、一度にレベル2⇒レベル5というのは稀だということです。


さらに、状況を見ながらレベル変更するので、「あと3時間したらレベルを3段階引き上(下)げる」というように前もって予定が決められることがありません。これらが緊急事態に対する普通の対処法でしょう。


コロナ感染も急速に悪化・好転することは十分に考えられるはずです。これから3か月の間に何が起きるかわからないといってもいいでしょう。


にもかかわらず、3か月以上前から一気に3段階も下げる方針を打ち出しました。政府は状況にかかわらず引き下げたいという意向だということがわかります。


このように考えれば、政府は自分たちの方針に従った情報を流し、企業に昇給を奨励しているのがわかるでしょう。



賃金が上がらない本当の理由





賃金が上がらない理由は新興国の台頭にあります。好例は米国の賃金(男性)です。図1を見ると、1979年から横ばいといっていいでしょう。例外はコロナ発生時の2020年で、それ以外も高い時期や安い時期がありますが、平均してみれば、あまり変化がないと言えます。


新興国(例:1980年代の日本)の給与は米国に比べ断然安かったです。自国で高い給与を払うくらいなら、新興国の人たちを活用する方が経費が抑えられて得です。資本家はそのように考えます。


「先進国(この場合米国)でしかできないような高度な仕事は給与が下がらないのではないか?」という考え方についても、ぼくは否定的です。


仕事のレベルが低中高と3段階あるとしましょう。低いレベルの仕事は新興国に移ってしまうので、賃金の上昇どころか低下が続きます。


ここで、中程度の仕事をしている人たちの中で、低レベルより若干高いレベルの人に焦点をあてて考えてみましょう。


この人たちは、「自分たちよりやや仕事力の低い人たちの賃金が下がった。自分たちの場合は下がっていない。命拾いした」と思うかもしれません。しかし、同時に、「次は自分たちの番だろう」と予想するでしょう。新興国のレベルが日々向上してきているからです。すると、この人たちは賃下げや低い昇給を受け入れざるをなくなります。


こうした賃金引き下げ圧力は、同じような理由で、中程度の中くらいのレベルの人たちに波及します。こうして中から上の人へ、しだいに低賃金圧力が広がっていきます。六畳一間のアパートの家賃が下(上)がると豪華マンションの家賃がほぼ同時に下(上)がるのも同じような構造です。



日本も同じ道をたどる





図2を見ればわかるように、リーマンショック後の好景気時期において、日本の平均賃金はあまり上がりませんでした。この期間、日本は過去の米国のように新興国から追われる立場となっています。


今後、景気がいい間は若干の上昇はありうるでしょう。問題は不況期です。賃金低下の本番が始まってしまいます。その圧力は新興国との格差がなくなるまで続くでしょう。図1の米国で起きたことと同じようなことを長きにわたって日本も経験することになるでしょう。

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