質問:世界の大きなトレンドについて私たちが知っておくべきとはありますか?
回答:
日本ではほとんど報道されませんが、米国が衰退し始めていることです。日本では「米国、欧州、ウクライナ=善人」「ロシア=悪人」と報道されています。世界の常識はこの逆になりつつあります。各国はこれまで米国にいいように痛めつけられてきたので、米国の衰退の兆候が見え始めた今、米国から離反し始めました。ウクライナ戦争がきっかけとなりました。各国は米国経済・株式の暴落、ドルの信用失墜に備えているものと思われます。
1.アラブ諸国が米国から離れつつある。2022年末に中国の習近平がサウジアラビアを訪問した。そこにはアラブ諸国の首脳たちが集められていた。その際、中国は石油ガスなど貿易の決済通貨を、これまでの米ドルから人民元元体制に変えようと提案した。ここで重要なことは、アラブ諸国の首脳たちが集まっていたことだ。中国が何を提案するかは事前にわかっていたであろうから、集まったアラブ諸国は中国に協調姿勢を取ろうとしていることがわかる。
貿易(特に原油)の通貨が米国ドルから他の通貨に代わることは世界史上の大事件だ。米国が世界の覇権国として君臨している象徴は2つある。それは世界最強の軍事力と基軸通貨だ。そのひとつである基軸通貨が国際的な地位低下が明らかになった。これは、将来起きると予想される米国の経済崩壊、株価・債券暴落、通貨デフォルトを見越して、中国を中心とする新興国が米国離れを起こし始めた証拠ととらえるべきだ。
2.国連で米国や欧州に賛同する国の数は多数派ではなくなっている。2022年4月のウクライナ・ブッチャの虐殺問題での国連人権委員会の決議に賛同したのは93か国、2022年11月のロシアにウクライナ侵攻をめぐる損害の賠償責任を求める決議に賛同したのが94か国だ。国連には193か国が加盟しているので、引き算で考えると約100か国が反対・棄権・会議欠席を行ったことになる。米国賛成派は日本、EU27か国、カナダ、オーストラリア、韓国、台湾、シンガポールのほかは弱小国だった。新興国の代表(例:中国、インド、ブラジル、サウジ、トルコ)は米国には賛同していない。
日本では「賛成94か国、反対14か国」(11月の決議の票数)を強調して報道する。圧倒的多数が賛成に回ったように見える。実際は、米国の権威に配慮して棄権・欠席を行った国は実質上の反対だと考えるべきだ。
3.2022年6月17日、ロシアのサンクトペテルブルクで国際経済フォーラムが開かれた際、127か国参加が参加した。ウクライナ戦争開始前の前年は140か国の参加だった。米国から、「ロシアと付き合うな」と号令がかかっている割にはたくさんの国が参加したのがわかる。
4.日本は実質的にはロシアとの友好関係を維持している。それを典型的に垣間見ることができるのが天然ガス開発プロジェクトだ。具体的には、サハリン2プロジェクト(サハリン州北東部沿岸に存在する石油および天然ガス鉱区と関連する陸上施設の開発プロジェクト)とサハリン1プロジェクト(ロシア・サハリン州サハリン島北部東岸のチャイウオ周辺の油田、天然ガス田の開発計画プロジェクト)だ。日本はウクライナ戦争前の出資比率を維持することができた。これに対して、英国(シェル石油)は米国の意向に従わざるをえず、撤退を余儀なくされた。
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