質問:
MRF (Money Reserve Fund)を証券口座開設時に業者から薦められました。MRFの申し込みをしておくと、証券口座へ入金したお金や株などを売却したお金は自動的にMRFで運用され、MRF以外の有価証券を購入する場合はMRFが売却されて、購入代金に充てられます。便利に運用ができるのがメリットだと聞きました。
これは安全なものなのでしょうか?
回答:
安全とは言えません。
1. 証券会社は銀行より危機に弱い
証券会社が破たんした場合、日本投資者保護基金によって1顧客当たり1000万円までが補償される仕組みになっています。ここまでの話を聞くと安心できそうですが、基金の規模があまりにも小さく、大きな経済危機には対応できません。
基金には584億円しか資金がありません。これに対して、証券界全体を破たんに追い込むような事態が生じた場合、大手証券会社も破たんするでしょう。大和証券だけで3.4兆円の国内外債券を持っていますから、これが全額ゼロになる可能性があります。基金は焼石に水程度の存在です。
しかも、銀行のペイオフ(1000万円まで保護)とは様相が違います。銀行の場合は1銀行当たり1000万円までの保護ですから、5行に分散すれば、5000万円まで保護されます。これに対して、日本投資者保護基金は1顧客あたり1000万円までの保護ですから、証券会社の分散には意味がありません。
2. 銀行のみが破たんした場合はどうなるか?
仮に、銀行だけが破たんし、証券会社は皆元気に生き残ったとしましょう。この場合、MRFはどうなるのか?
MRFは「安全性の高い公社債などで運用される投資信託」とされています。仮に、運用先を短期の国債にしている場合は、MRF全額がゼロになってしまいます。案内書を取り寄せて、運用先を見てみましょう。
野村証券の案内書を見てみました。
野村のMRF運用先は、
6割 CP(コマーシャルペーパー)
1割 コールローン
3割 その他
となっています。
運よく、短期国債は含まれていないようです。
6割を占めるCPは一般企業への資金供与です。一般企業は金融危機には直接影響されません。この部分は安全でしょう。1割を占めるコールローンは銀行への資金供与です。これは安全ではないでしょう。銀行破たん時にはゼロになるリスクがあります。残りの3割は内容がわからないのでコメントできません。
このよう考えると、野村証券のMRFの場合、金融危機発生時に減額になるのは1割~4割にとどまると考えられます。
では、野村證券のMRFの場合、私たちが預けている金額の残りの9割~6割が戻ってくるのでしょうか?
これは違います。
証券会社はどこかの信託銀行にMRF運用のための口座を設定します。銀行があまねく破たんした場合は、この口座も無事ではなくなります。
仮に銀行の破たん時に、1000万円以上の預金が全て5割減にさせられてしまった場合、同じようなことがMRF口座にも起きます。すなわち、野村証券のMRFはすでに1~4割減になっているのですが、ここからさらに5割減になるということになります。
結論をいえば、危機の際は自分のお金は自分で守るのが一番だということになります。
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