第26回 政府の資産所得倍増計画に騙されるな
- ファンクラブ 林則行さん
- 2022年7月29日
- 読了時間: 3分
質問:
「政府が「資産所得倍増計画」を発表しています。
これはどのような政策なのでしょうか?
このようなことを政府が推進して、株価が暴落していく確率が極めて高いいまの時期に、国民に株を購入させたら、多くの国民が資産を大きく減らすことになると思いますが、林さんはどう思いますでしょうか?
回答:
政府が掲げる資産所得倍増計画はインチキものです。騙されないようにしましょう。
第一に、資産所得を2倍にするという目標そのものがわかりにくいです。資産所得とは何か?債券や銀行預金の利子、株式の配当、不動産の家賃収入のことです。これを2倍にする目標です。
資産を2倍にするという目標の方がすっきりしていてわかりやすいのではないですか。しかも、資産が2倍になれば、資産所得は2倍になります。では、何故わかりにくい目標を立てるのか。「資産は2倍にならない」と考えているからに違いありません。
また、所得倍増(=給与倍増)も素晴らしい目標ですが、これも達成不可能と思っているのでしょう。過去10年間にサラリーマンの所得は13%増加しました。このペースが続くとすると、2倍になるには57年かかる計算です。
その点、資産所得は2倍になりやすいのです。利子が最大のポイントです。金利が上がれば利子2倍は簡単に実現します。しかし、ここには大きな落とし穴があります。金利が上がるということは、債券価格が下がることを意味するからです。
例えば、ある債券(期間10年・クーポン1%)の実質利回りが現在0.5%だとして、それが1%に上がる場合、利子所得は2倍になります。これで政府目標は達成できるように見えます。
ただし、この際、債券価格は約5%下がってしまいます。利回りは0.5%増えますが、債券資産は5%減れば、合計では損の方が大きくなります。私たちにとってはこれでは意味がありません。
政府の本音は「貯蓄から投資へ」です。現在個人の金融資産が2000兆円を超えていますが、半分以上は預貯金になっていいます。これが投資に回れば、株価や債券、不動産の価格が上がるだろうと考えているわけです。私たち庶民の懐を豊かにするのが目的ではなく、資産価格上昇による景気向上(維持)が目的なのです。
そのため、少額投資非課税制度(NISA、現行5年)の恒久化や年間上限額(現行約120万円)の大幅に引き上を検討しているようです。また、個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ:掛金を自分自身で運用しながら積み立てていく仕組み)についても、加入対象年齢を現状(65歳未満)からの引き上げ検討を行っているようです。
政府は金銭感覚のない人たちの集まりです。だから、1000兆円の借金を作って、十分な返済計画もない状態になっているわけです。資産所得、資産運用に関して、そうした人たちの意見を聞くことは危険極まりないと言えないでしょうか?
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