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第168回 トランプ100%関税の真意

執筆者の写真: ファンクラブ 林則行さんファンクラブ 林則行さん

何が何でも守りたい基軸通貨

トランプ大統領はBRICS諸国に対して、100%の関税を実行する可能性に言及しました。今日はこの話を解説します。

トランプは、米国はカナダとメキシコに対し、25%の関税実施を示唆してきました。米国と国境の接している両国が、不法移民の流入に対する適切の処置を取らない場合、関税をかけるというものです。

ここで皆さんに簡単なクイズを出しましょう。25%の関税と100%の関税があります。米国にとって、どちらがより重要な政策なのでしょうか?答えは簡単ですよね。数字が大きい方です。重要度が4倍あるという言い方ができるかも知れません。


この100%の関税はどのような状況下で撤回するのか?

それは、中国とロシアを含むBRICS諸国が、新たなBRICS通貨を導入したり、他の代替通貨を支持したりしないことが条件です。

なぜこの政策が重要なのか。それは、米国ドルが基軸通貨だからです。基軸通貨とは通貨の中の代表通貨という意味です。王座にあり、世界で最も尊ばれるものです。

自分が王様として君臨している間はいいのですが一旦王座を降りるとなると、そのマイナス効果は計り知れないものがあります。日本の例で言うなら、藤原氏や豊臣氏が権力中枢から降りた途端に、一族皆殺しの状態になっています。


この話を分かりやすく解説しましょう。図表1に世界の金融資産の推移を記しました。2022年現在、335兆ドルあると記されています。(実際にどのくらいの金融資産があるかを正確に記している統計資料はありません。この数値も概算です。)2023年~24年は株式市場が好調なことを受けて、金融資産はさらに大きくなっているはずです。400兆ドルを超えていてもおかしくありません。



世界の金融資産の約6割が米国ドルになっていると言われています。僕がよく使う比喩ですが、アフガニスタンの山賊ですら、自分の預金を米国ドルで固めています。

400兆ドルある全世界の金融資産のうち、米国ドルが60%だとすれば、その金額は240兆ドルとなります。

仮に、米国ドルの基軸通貨の位置がやや揺らぎ、その一部がBRICS通貨(これから導入される新通貨)に取って換わるとなった場合、最低でも5%の金融資産は、BRICS新通貨に流れるでしょう。240兆ドルの5%は12兆ドルです。米国のGDPは30兆ドルですから、12兆のドル売りが如何に大きなインパクトになるかがおわかりでしょう。大幅なドル安が起きてしまいます。


問題はさらに続きます。大きなドル安が起き始めた場合、それを見た多くの投資家は、「これは大変だ。ドルから別の通貨に移さなければならない」と思い始めるでしょう。それがさらにドル安を産んでしまいます。ここが基軸通貨の最大の弱みなのです。

こうしたことから、米国は是が非でも、ドルの基軸通貨制を守っていかなければならないと考えています。それがトランプの100%関税という声明に表れていると考えてください。


BRICS諸国は、当面はこうした米国の強い意志を受けて、おとなしくしているかもしれません。しかしいったん、株価の大暴落が始まれば、米国は弱い立場となり、BRICs諸国はそれまでに練り上げたプランを一気に実行することになるでしょう。こうして、米国一強の時代が急速に終わりを告げることになります。



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