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第167回 ホンダ・日産経営統合

執筆者の写真: ファンクラブ 林則行さんファンクラブ 林則行さん

日本政府が裏で操っていた

2024年12月23日、ホンダと日産自動車は、経営統合に向けて、本格的な協議に入ることを発表しました。最近になって統合案が破たんしました。


「この背景で動いているのは日本政府であろう」というのが、ぼくの見立てです。なぜそうしたことを感じるのか。これは日産のこれまでの歴史を見ればわかります。


❶日産をルノーから取り戻した


日産はルノーの子会社となり、最大で43.4%の株をルノーに握られていました。「これをぜひ奪還したい」というのが日本政府の意志でした。このために用いたのがカルロス・ゴーンの逮捕です。カルロス・ゴーンを2018年の11月に逮捕し、ルノー社に対して、日産から手を引くようにと圧力をかけたわけです。


用済みとなったカルロス・ゴーンは、日本においておく必要がありません。2019年3月に保釈し、12月に国外逃亡を許しました。具体的には、カルロス・ゴーンはプライベート用の小型ジェット機に音楽機材を乗せ、その箱の中に隠れて海外に出たのです。


「プライベート機の場合、中身をチェックする場合としない場合とがある」とマスコミ報道がなされていましたが、これは嘘でしょう。たまたまカルロス・ゴーンを乗せたプライベートジェットの荷物をチェックしなかったとしたら、それをしなかった(カルロス・ゴーンの逃亡を見逃した)空港責任者は厳しい処分を受けるはずです。ところが、処分の話は全く聞こえて来ませんでした。日本政府の意向だったからです。


このようにして、2023年には日産のルノー持ち株比率を15%にまで下げることに成功しました。しかし、問題はまだ残っていました。日産の業績が芳しくないのです。


❷日産を日本の会社にしておきたい本音


株価を見ても2015年を天井に下落基調にあり、同業のトヨタと比較すると、大きな格差が生まれていることがわかります。今期上期(2024年4月~9

月期)は、前年同期比で経常利益がー72%となっています。


前年の2024年3月期は、比較的好調だった年度ですが、1株利益は111円でした。これは2018年3月期の191円から比べて、低水準にとどまっていると言えます。しかも、その後日産は2020年3月期、21年3月期とそれぞれー172円―115円と大きな赤字(EPS)を計上しています。


「このままでは、日産の自立は危うい」と判断した日本政府はホンダに働きかけて、経営統合を実現させたかったのです。会見の席で、マスコミから、「日産のどこに惚れ込んだのか」という質問を受けたホンダの社長は、苦笑するばかりで、それに回答することができませんでした。


結婚したい相手ではなく、結婚させられた相手だったからです。なぜ政府がここまでして経営統合を目指したのか。それは、家電製品の歴史を見れば明らかです。1970年代、80年代において、日本の家電製品はお家芸であり、世界に冠たる製品を生産していました。


松下電器(現パナソニック)の他、三洋電機、シャープ、東芝といった家電会社が、群雄割拠していた時代です。三洋電機はその後中国のハイアールに買収され、シャープは台湾の鴻海に買収されました。東芝の家電部門は、中国美的集団に買収され、現在は東芝ライフスタイルという会社に生まれ変わっています。


つまり、家電製品で、日本の会社はパナソニックだけになってしまったのです。日本政府としては、こうした状況をぜひ避けたいと考えています。


その理由の一つは、日産の生い立ちにあります。日産という名前からわかるように、「日本を産む」と漢字で書いています。これは、第二次大戦前に存在した日本産業コンツェルンが基本になっているからです。このコンツェルンは15大財閥の中で、三井、三菱に次ぐ3番目の大きさでした。


しかも日産のコード番号に重要な情報が含まれています。それが7201です。この01番というのは、各業界の代表銘柄になっています。例えば、9901東京電力9101日本郵船といった具合です。


ですから、政府は日産をどんなことがあっても、日本企業のままにしておきたいという意向を持っていたと考えられます。


日産の業績が悪く、ホンダは対等な統合には後ろ向きだと言われています。そのため、日産子会社化という話が出てきました。「統合したくないなら、やめたらいい」というのがごく普通の発想のはずです。自分の意志でそうした選択はできないのです。ホンダが子会社化の話をしたのは、日産が自発的に統合話から降りるように仕向けたいからでしょう。


報道によると、日産に対して、台湾の鴻海(ホンハイ)が近づき、副社長から「日産を買収したい」という話があったように報じられています。これはおそらく誤りであろうと思います。自分たちの買収計画が明確に決まる前に、相手に自分の手の内を見せる馬鹿はいないからです。


もし、この話が本当であるとするならば、鴻海の副社長は、日本政府の意向を受けた代理人であったということになります。

 
 
 

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