株価9割下落もありうる
10月21日、シンガポールに行き、ジム・ロジャーズに会ってきました。
彼は、これから大きな暴落がやって来ると語っています。株式のみならず、債券、為替といった金融商品すべての大暴落です。
その理由は何なのか。
一言で言うならば、国の借金が莫大な金額となり、返せないレベルとなっているからです。図表1にあるように、米国を例に取るならば、1990年~2008年の間、米国の借金はGDPに対して、60%内外で推移していました。ところが、リーマン・ショック不況から立ち上がるために、政府は大量のドル紙幣を印刷し始めました。この負債比率はみるみるうちに上がって、2016年には100%を超えてしまったのです。2020年になるとコロナ危機が起こり、政府はさらに大量の紙幣印刷をしなければならない事態となりました。GDPに対する負債比率は133%にまで達しました
これだけの短期間に60%から133%に増大してしまったのです。借金はいつかは返さなければなりません。政府に「返済しよう」という意図がない場合、市場は暴落という形で、借金の返済を迫っていきます。
具体的に言えば、貨幣への信用の度合いが落ち始めます。政府が発行する債券を信用できなくなってくるわけです。これは価格暴落という形になるでしょう。債券価格が下がれば、金利(物価)が上昇することになります。仮に物価が2倍となれば、借金の実質返済額は半分になります。物価が10倍になれば、返済額は10分の1になります。このようにして、市場が借金の返済を求めるということです。
この場合、庶民の手元にあるお金や預金の価値は2分の1,10分の1になってしまいます。つまり、実質的に借金返済を行うのは私たち庶民だということになります。
しかも、米国景気は2009年から現在(2024年)まで好調を続けています。これだけの長い期間、景気が持続したことは、過去の歴史の中で例がありません。ダウ平均株価も5倍以上に上がりました。こうしたことを踏まえると、これから来る暴落は、1929年の大暴落と同規模になる可能性があるというのがジムの予測です。9割の株価下落です。
9割とはどのようなレベルなのか?
それは最近起きた株価暴落と金融危機の規模を考えることで明らかになります。
2023年、株価がトップから15%下落した際に、米国の大きな三銀行が破綻してしまいました。この破綻総額は5486億ドルとなり、2008年に破たんした銀行を合計した額(3736億ドル)よりも大きくなってしまったのです。ここで大事なことは、株価が15%しか下がっていない段階で、こうしたことが起きたということです。
2008年には60%の株価下落で金融市場が破壊されそうになった経験があります。リーマンショックです。具体的には図表2のような破たんが発生しました。株価60%の下落で、これだけ大きな金融危機が起きたのですから、それを超える株価下落が生じた場合には、さらに大きな痛手となるでしょう。
これから起きることは何か?
失業率は1930年代と変わらないような水準(25%)に達するでしょう。飲食店や旅行、宝石、骨董、ブランド品といった、贅沢消費は影を潜め、こうした企業は軒並み倒産していくでしょう。空売りの最有力候補です。さらに大学や美術館、博物館といった組織も、破綻していくものと思われます。
銀行・証券・保険の破たんで、庶民の預金やそのほかの資産が収奪され、物価上昇、失業拡大などの事態が先進各国で広がるでしょう。
こうした大きな危機に備えなければならないというのが、ジム・ロジャーズの基本的な予測なのです。
「暴落はいつ始まるのでしょうか」
「近いだろう。でも、来週ではないと思うよ」
というジムの軽妙なトークに笑う林則行
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