所得の54%が国家に取られている
私たち国民は平均して所得の46.1%を政府に差し出しています。税金(消費税、所得税、法人税)や国民年金、健康保険の形で国が取り上げているのです。手元に残るのは54%だけ。これは財務省が発表している2023年度の国民負担率の数字です。これに財政赤字の金額(将来国民が払うことになる金額)を加えると54.6%になってしまいます。
ざっくり言えば、半分取られているのです。昔の言葉で言えば五公五民となります。享保《きょうほう》年間(1716~36)までは四公六民だったのですが、それは江戸幕府を築いた徳川家康が、「百姓共をば、死《しな》ぬ様に生《いき》ぬ様に」という思想のもとに決めた比率なのです。五公五民とは江戸時代後期の厳しさだということになります。
ところで、自分が「収入の半分も税金を取られている」という実感がある人は、少ないのではないでしょうか?例えば、年収500万円のサラリーマンの場合、住民税約24万円、所得税約14万円、社会保険料71万円です。これらの合計金額は109万円であり、所得500万円の22%です。手取りは391万円で78%が残る形です。
しかし、この考え方には大きな見落としがあります。
例えば、私たちが100円のティッシュペーパーを買う時、10円の消費税がかかります。また、ティッシュペーパーの製造会社は、会社利益に対して税金を払っています。この税金がもしゼロであるなら、ティッシュペーパーの価格は1100円より安くなるでしょう。また、ティッシュペーパー会社の従業員も、所得税や住民税を払っていいますが、これもゼロになるとしたら、ティッシュペーパーの値段はさらに下がります。
他にも、酒やタバコを買ったときにかかる税金やガソリン税があります。輸入食材ならば牛肉(39%)、バナナ(20-25%)とかかっているのです。
こうした目に見えない形で私たちは取り上げられています。
半分も取っているくせに、財務省は、「日本の国民負担率は決して高くない」と論じています。国際比較を行うと、財政赤字を含んだ国民負担率はフランス77%、ドイツ60%、英国58%、スウェーデン55%となっています。
しかし、諸外国より低いからといって、54%という数字は、国民にとって決して楽な数字ではないことは明らかでしょう。
図表1にあるように、このトレンドは年を追うごとに上昇しています。補助金、交付金の額が上がり、国債の発行額が上がっているのですから、どこからはそれを補わないといけません。私たち庶民は江戸時代の兵民以上に苦しめられることになっていくでしょう。
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