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執筆者の写真ファンクラブ 林則行さん

第135回 年金は老後の頼りになる資金源でしょうか?

質問:

「老後の資金が2000万円足りない」というショッキングなニュースが以前ありました。仕事を退職した身としては年金が頼りですが、今後とも十分な金額が支給されるのでしょうか? 


回答:

多くの識者が年金が破たんすると言っています。ぼくも同意します。経済が順調に成長を遂げると前提に考えても、現状維持は不可能です。支給額を現状維持するには掛け金を2.5倍にする必要があります。


解説:

年金の趣旨は「自分が蓄えたものが将来戻ってくる」

年金がどうして破たんしてしまうのか、わかりやすく説明します。

年金の基本は、「自分が蓄えたものが将来戻ってくる」という考え方です。本来ならば、自分のことは自分で考えて実行していくのが人間のあり方です。若いうちから老後に備えて資金を蓄え備えておけば、年金は必要ありません。


しかし、そうした長期的な視野を持つ人ばかりが存在するわけではありません。そこで、政府は一定の所得を前もって取り上げておき、資産運用を行い、老後に支払う方法を思いつきました。これが年金の当初の仕組みです。


例えば、ある人が20歳から65歳までの間のうちの40年間に年金を掛けておいたとします。支給を受けるのは65歳から85歳までの20年とします。


40年かけて蓄えたものを20年かけて使うのですから、月額の掛け金の2倍を受け取ることができます。なお、ここでは物価の変動がないものとし、自分の掛け金のみを受け取る仕組みとします。


40年間に政府は預かった資産の資産運用を行います。

年平均1%で資産が増加した場合、最初の1年目の資産は1%の40乗を掛けた金額にまで増えます。翌年の資産は期間が39年間になるので、1%を39乗の数字になります。このように計算をし続けます。最終年度の40年目は1年間しか運用できないので、資産増加は1%です。これらを合計すると、資産は49.4になります。もともとの掛け金が40ですから、運用の成果によって1.2倍強になったということです。年金支給期間は40年の半分ですから、支給額は1.2強の2倍、2.5が支給されることになります。


同じように計算をすると、年平均資産成長率ごとの40年後の支給額は

1% 2.5

2% 3.1

3% 3.9

4% 4.9

5% 6.3

6% 8.2

7%      10.7

となります。


一方、現状ではどのようになっているのか?

現在の年金掛け金:   16,520円

平均的な受給額(男性)   164,742円

となっていて、掛け金の10倍が戻ってくるようになっています。


支給額が10倍になるには、上の表から7%弱の年平均成長率が必要です。正確には6.7%程度が必要です。年金の運用先の半分は債券(国内外)であり、半分は株式(国内外)です。債券は3%の利回りを上げるのが精一杯でしょうから、資産全体を10倍にするには株式が6.7%の2倍の13.4%で運用される必要があります。


GDPが2-3%しか上昇しない条件下では13.4%%の株価上昇率は無理でしょう。簡単に言えば、自己資金を増やすだけでは、現状の給付は維持できないということになります。


ではどの程度不足するのか?

仮に3%の割合で年金資産全体が40年間増え続けるとすると、支給額は掛け金の3.9倍になります。話を簡単にするためにちょうど4倍に増えるとします。現状維持には10倍の資金が必要ですから、

自己資金 4倍になる

政府からの補助 6倍になる

となる必要があるでしょう。この場合、掛け金の1.5倍の金額を政府が毎年補助する必要がありあす。自分の掛け金が16,520円だとしたら、政府の補助が1.5倍の24,800円だということです。


また、政府からの補助がない場合、自分の掛け金を現状の2.5倍にしなくてはなりません。


政府は年金の趣旨を根本から変更した

ここまでの話を要約すると、「年金の本来のモデルは破たんしている」ということになります。そこで、政府は年金の当初の趣旨を根本的に変更しました。


つまり、「若い人が年寄りを養う」というモデルです。年金は「自分が掛けたものが将来戻ってくる」という考え方ではない。それでは足りない。だから、現役世代の掛け金も現在の年寄りに回す。


これで年寄り世代の問題は解決されることになりましたが、現役世代が退職した時はどうなるのか?現役世代の年金は年寄りに取られて少なくなっています。年寄り世代でも1.5倍分が不足するというのに、現役世代はなお少ない給付に甘んじなくてはなりません。


政府には年金の根本的な解決策が存在していません。


どうして解決策が見つからなかったのか?

その答えは簡単です。物価上昇も資産運用も全くない状態においては、40年かけて蓄えたものを老後の20年間で使うならば、当初の掛け金の2倍にしかならないはずです。


それを10倍にする方法はもともと存在しないのです。

つまり、掛け金に対して支給額が大き過ぎるのが最大の問題だということです。


年金問題に関して政府は問題を先送りにしているだけです。これは1200兆円に及ぶ国の借金問題でも全く同じことが言えます。

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