質問:
2024年6月18日にロシアのプーチン大統領が北朝鮮を訪問しました。報道によれば、ウクライナ戦争に用いる弾薬などを確保するのが狙いだとのことです。ロシアは戦争で窮状にあるのでしょうか?
回答:
ロシアは戦争に余裕をもって取り組んでいる
ロシアは窮状どころか余裕がある状況です。北朝鮮をはじめ、米国から距離を置こうとする数多くの新興国をまとめることに躍起になっています。
解説:
「ロシアがウクライナ戦争で窮している」というのは全く間違った解釈です。
なぜわかるのか?
プーチンがモスクワを離れているからです。戦争で厳しい状況にあるのなら、最高指揮官である大統領が首都を離れることはできません。事実、戦争開始から1年間は全く外遊ができない状況でした。外遊しているという事実から判断できることは、ロシアには余裕があるということです。
ロシアと北朝鮮とでは国家として格が違います。会社でいえば、大会社と下請けのような規模の差です。「弾薬が必要だ」といったレベルの話ならば、電話やZOOM会議で十分でしょう。下請け企業は親会社に可愛がってもらいたいので、喜んで応じるでしょう。
ロシアの狙いは反米勢力をまとめること
ロシアの行動は世界情勢によって大きく影響されています。具体的には、米国の動きに対応して動いています。
最近の米国の振る舞いは看過できないものがあります。G7サミットでは、ロシアの凍結した資産のうち500億ドル(7兆円)をウクライナの復興に用いることが提案されたと報じられています。
この言い方は本質を隠した言葉になっていますが、実際のところは、「ロシアから取り上げた資産を、米国が自国に富をもたらすためにネコババした」という意味です。ウクライナの復興に必要な財やサービスは米国が用意します。その資金をロシアの資産で贖(あがな)うという意味です。つまり、ロシアの資産が米国企業への補助金になるという話です。
米国はロシアの資産を既に「凍結」しています。凍結した資産について、米国は最初から返す気はありませんが、今回ははっきりと、「ネコババする」ということを国際社会に伝えたわけです。
ロシアのドル資産は70兆円以上あります。「米国に逆らうとここまでやられるのか」と国際社会は震えあがりました。ただし、米国は世界の覇権国なので、各国は黙って見ているしかありません。
しかし、米国はこうした各国からの冷たい視線を感じ、自国の行動をできるだけ正当化する必要を感じ始めました。それがG7サミットでの、ロシア資産の復興活用宣言です。G7首脳はこれが米国の利益だけを考えた行動だとわかっていますが、認めないわけにはいきません。G7は米国の子分だからです。
さらに、米国はロシアに圧力を加えることを目的として、平和サミットをスイスで開催しました。これは失敗に終わりました。
NEWSWEEKの6月19日の記事には以下のように記されています。
スイスで先週末開かれた第1回サミットには90カ国以上が参加したが、一部の新興国などは共同声明への賛同を見送り、第2回サミットの開催を申し出る国もなかった。ロシアは招かれなかった
NEWSWEEKは米国を代表する報道機関ですが、それですら、否定的な論調になっていることがわかります。平和会議を行なうのに両方の当事者が出席しないのであれば、平和が達成できないのは当然です。岸田首相はレセプションには出席しましたが、本会議を欠席し、帰国してしまいました。会議に参加する意義を感じなかったからでしょう。
新興国の首脳たちは米国の振る舞いには許せないものがあると感じています。新興国は、嫌われない程度に米国から距離を置こうとしています。
しかし、距離を置いただけでは、米国に対抗することはできません。新興国はひとつにまとまることが必要です。ひとつにまとまるには、そこに中核となる存在がなければなりません。それがBRICSです。この中心メンバーのひとつが中国であり、ロシアです。
ロシアが今行っているのは、新興国の団結を高める行動です。その一環として、ロシアの大統領は北朝鮮だけでなく、ベトナムも訪問することになっています。
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