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執筆者の写真ファンクラブ 林則行さん

第132回 米国雇用者統計に著しい増加があったのは本当ですか?

質問:

米国の雇用者統計(農業人口を除く)が前月比27.2万人と市場予想の18万人と大きく上回ったとの報道がありました。米国の雇用ならびに経済全般が強いという証拠でしょうか?


回答:

雇用統計と同時に発表された失業率に注目すべきです。4.0%となり、2022年1月以来の高水準となりました。また、雇用者27.2万人という増加は過去から見ると、決して大きな数値ではありません。


解説:

雇用者統計を経済活況のニュースだとメディアが報道しています。これは市

場予想より高かったというだけの話です。TV報道はできるだけいいように見

せかけています。

雇用者の伸びは年々小さくなっています。年平均の数値を並べます。


2021年 60.4万人

2022年 37.7万人

2023年 25.1万人


ここからわかることは、27.2万人は2023年の平均に近い数字に過ぎな

いということです。4月の伸びが16.5万人と特に低かったので、5月が高く見えているだけの話です。

これに対して、失業率は悪化の方向を歩んでいます。図表1には最近の失

業率の推移を記しました。5月には4.0%を記録しました。これは2022年1月につけた数字です。2023年1月には最低の3.4%にまで改善した失業率が高くなる方向に進んでいます。




具体的には、2023年の秋以降、3.8%を中心とした動きとなっていましたが、この5月に4.0%になってしまいました。

図表2にあるように、失業率と米国株価とは深い関係があります。失業率が

上がると(図は逆メモリなので、折れ線グラフが下がると)、株価が下がる傾

向がわかります。




ただし、失業率のピークの月と株価のピークの月とが一致するわけではあり

ません。どちらかが早くなったり、遅くなったりします。

現状では株価に対して失業率が先に悪化しています。このことからわかるこ

とは、近い将来株価も下げ基調に入ると考えられます。

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