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  • 執筆者の写真ファンクラブ 林則行さん

第125回 金の果実が割高になっています。どのように対処しましょうか?

質問:

最近の「金の果実」(純金上場信託1540)の値動きを見ると、割高になっているようです。買ってもいいのでしょうか?買わない方がいいですか?どのように対処すべきでしょうか?

 

回答:

「金の果実」は急速に値上がりしています。現時点ではスポット買いは控えた方がいいでしょう。それでも、毎月積み立てて買っている人は継続しても構いません。

 

解説

金の果実が割高な理由

「金の果実」の価格が異常な動きをしています。図表1にあるように、最近は地金国際金価格に対して、金の果実が大きく上がっています。これをわかりやすくしたのが図表2です。図表2は、金の果実を国際価格で割ったものです。





 

金の果実は地金そのもののはずでから、両者の価格は一定であるべきです。それが図表2の24年3月20日までの価格に現れています。

しかし、その後、金の果実は大きく値上がりし始めました。

 

この理由としては、大口の買いが入っているものと思われます。

金の果実は上場信託ですから、利益に対して所得税が15%となっています。これに対して、地金は一般的な所得税の税率が適用されますから、最高税率は45%になります。

 

長期で保有する場合、地金と金の果実はどちらが税的に得か?

5800万円以上の利益が出た場合は、金の果実の所得税の方が税額が少なくて済む計算になっています。このため、大口の買いが入っているのでしょう。

 

こうしたことから、金の果実は割高に推移しています。

このため、東証もこの割高価格に関して注意喚起を行っています。

この注意喚起は4月17日に出されています。

 

この割高な動きは是正されると考えていいでしょう。

 

金の果実に対する投資方針

仮に、現時点で金の果実のスポット買いをしようとする場合、10%余分に支払わなくてはなりません。その場合は地金を買った方が割安になるでしょう。バーチャージのかからない500グラム以上(日本マテリアルなら100グラム以上)の購入ならば特にそうです。

 

大口の買いが収まれば、やがて価格は以前と同じ一定の割合に戻ります。その時点まで購入を待てる人は待った方が得策でしょう。(ただし、その時点の地金価格が現在より高いか安いかは判断できません。)

 

一方、日頃から金の果実を積み立てて買っている人はそのまま継続して購入しても問題は大きくないでしょう。仮に現在金の果実を持っているとして、1%を追加購入する場合、10%のプレミアムは全体のコストを0.1%だけ押し上げる効果しかないからです。

 

金の果実の異常な値動きは大口購入者の仕業です。金が多くの人から注目されていることがわかります。これは将来の価格高につながる動きだと解釈して差し支えありません。

 

 

混乱を招いた三菱UFJ信託銀行の説明

三菱信託銀行では4月16日に「基準価格と市場価格との乖離に関するお知らせ」を発表しました。この中で、金の果実は1口あたり、現在0.9426グラムであると公表しています。2010年の運用開始時期には1口当たり1グラムだったものが、0.9426グラムに減少しているということです。

 

この表記が投資家に混乱を招いています。

今年の初めには1口当たり1グラムだったものが、3月末から急にグラム数を減少させたように読めてしまうからです。

これは間違いです。2010年には1口あたり1グラムだったものが、翌年にはやや減少し、その翌年にはさらに減少しています。これは信託報酬を差し引いているからです。

 

信託報酬は0.44%です。つまり、地金価格が1年間全く変わらなかったとすると、年初100万円だった金の果実は年末には99.56万円になってしまうということです。この積み重ねで、現在の関係(1口当たり0.9426グラム)が出来上がっています。1年後にはさらに0.44%の減額が予定されているわけです。

 

このことは、最近の大幅な金の果実の価格上昇とは一切関係がありません。しかし、同じお知らせの中に、0.9426グラムの話を記載したために、多くの投資家が「三菱UFJ」銀行は投資家に無断で、勝手に条件を変更した」と考えてしまいました。

 

金の果実は日本で上場する金ETFのうちシェア8割弱を占める商品です。どのETFも同じような信託報酬の差し引きを行っており、金の果実が特異だということではありません。今後も投資対象にすることに問題はありません。

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