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執筆者の写真ファンクラブ 林則行さん

第110回 米国のPERは割高でしょうか?

質問:

米国のPERが25倍程度だと聞きました。過去のレンジからすると割高とはいえない水準のような気がするのですが、どのように思いますか? 

 

回答:

長期のPER(CAPEレシオ)から見ると割高になっています。特に割高感が強いのは、株式の時価総額(対GDP比)です。史上最高値に近い水準です。

 

 

解説:

長期のPERは割高を示している

PER(Price Earnings Ratio 株価収益率)をご存じのない方のために定義を書いておくと

PER=

となります。例えば、A社の株価が1200円で、一株利益が40円だとしたら、PERは30倍になります。また、B社の株価が1800円で、一株利益が30円だとしたら、PERは60倍になります。

 

1200円とか1800円という株価だけで見ては、どちらが割高かはわからないのですが、PERを見れば両社はB社の方が割高であることがわかります。

 

PERはこのように株価の割高・割安を測るために用いる指標です。

しかも、米国企業全体の業績を合算してPERを出せば、(=米国をひとつの会社とみなせば)、米国のPERを測定することができます。

 

問題点は業績が短期的に大きく変動することです。不況が来れば利益が半分になってしまうことは珍しくありません。その場合は、PERがいっぺんに2倍になってしまいます。

 

このような問題点を克服するために作られたのがCAPEレシオです(注1)。

ノーベル賞受賞者のシラー教授が作りました。図1です。




 

これによれば、現在のレシオは30倍程度です。過去の高水準だった時期は

1929年:       33倍   大恐慌の前

2000年:       45倍   ITバブルの前

となっています。30倍はそれらよりは低いものの、リーマンショック前の高値(2007年 26倍)よりは高い水準にあります。この時はPERが大きく上昇していないことがわかります。

 

 

注1:CAPEレシオは、単年度の1株当たり利益ではなく、インフレ調整後1株当たり利益の10年移動平均値を用いてPERを計算します。これにより景気循環の影響が除外された株価の割高・割安性が示されます。

 

 

時価総額(対GDP比)は驚くほど割高

 

CAPEレシオに比べてさらに割高感が強いのは、株式時価総額(対GDP比)です。図2に示しました。リーマンショック前の高値では米国GDPの140%のレベルにまで上昇し、そこから50%にまで暴落しました。今ではGDPの170%にまで達しています。一時は200%近くまで上昇しました。




 

これらの指標は長期のものですから、近い将来に株価が天井をつけて暴落に入ることを予測するものではありません。これらのレシオが意味するところは、「現在、株価は高値にあり大幅な上昇は見込めないだろう」というものです。

 

それぞれ要注意の指標ですから、今後もたびたび取り上げて、説明したいと思います。

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