質問:
日本では株価が高い割には景気がいいという実感が湧きません。日本の景気に関して一番心配な点は何でしょうか?
回答:
中小企業の倒産が増えていることです。
解説:
中小企業の倒産件数は2021年を底に上昇傾向にあります。具体的には2021年6030社(倒産金額1.2兆円)から2022年6428社(倒産金額2.3兆円)に増えています。
図1には1955年からの倒産金額の推移を示しました。倒産金額はバブル崩壊の最悪期には25兆円弱に達しました。そのレベルからすれば、現時点の水準はかなり低いですが、2022年に上昇に転じているのがわかります。
気になるのはこの傾向が2023年も継続していることです。図2の月次データを見ても、倒産件数は2021年を底に2022年、2023年と徐々に増加しているのがわかります。(2020年5月はコロナ融資の開始直後で、倒産件数が特別に低くなっているので、景気のトレンドを示してしません。)
大事な点は、図3にあるように、日本の株価(日経平均)との比較です。株価は2023年に入り上昇基調にあります。株価が上昇しているということは景気が良くなっていることを意味します。にもかかわらず、倒産が増えているのはなぜか?
それは2020年に始まったゼロゼロ融資と関連があります。
ゼロゼロ融資とは、新型コロナウイルスの影響で売上が減った個人事業主や中小企業に対して、実質無利子・無担保で融資を行う制度です。
つまり、倒産件数の増大は、利子の支払いが始まり、それが払えなくなった人たちが倒産し始めたということです。元本の返済が始まらないうちから、利子返済負担だけで倒産してしまうのですから、景気はのっぴきならない状況に置かれていたということでしょう。
しかし、ゼロゼロ融資の返済に困った場合は、コロナ借換保証という制度を利用することができるはずです。コロナ借換保証とは、ゼロゼロ融資の返済負担を軽減するために、2023年1月から開始された保証制度です。コロナ借換保証を利用すると、ゼロゼロ融資の残高を新たに借り換えることができ、金利が引き下げられたり、返済期間が延長されたりします。
こうした新制度があるにもかかわらず、倒産件数が増えているのは、中小企業、個人事業主の置かれた状況が厳しさを増しているということが窺(うかが)えます。
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