第101回 ゴールドの生産量は今後増えていきますか?価格の下げ圧力になるでしょうか?
- ファンクラブ 林則行さん
- 2023年11月3日
- 読了時間: 3分
質問
「ゴールドの生産量が多いと価格が下がる」という話を林さんから聞きました。今後の生産量の見通しを教えてください。価格は下がる方向になるのでしょうか?
回答
ゴールドの生産量は大きく増えていくことはないでしょう。生産量が前年比プラスのうちは、価格が大幅上昇することはないかもしれませんが、いずれは前年比マイナスとなり、価格を押し上げる要因となるでしょう。
鉱山投資が極端に減少中、長期増産は無理
解説:
ゴールドの生産量が大きく伸びていかないとい考えられる理由は、鉱山会社が新規鉱山・鉱脈の開発に積極的でないからです。それは図1に示された鉱山投資額の推移を見れば、一目瞭然です。

図1はゴールド価格と世界最大の金鉱山会社バリックゴールドの設備投資(主に鉱山開発)額とを示したものです。設備投資は金価格がピークをつけた20212年が最高で70億ドル(1.1兆円)でした。その後だんだんと縮小傾向となり、今ではピークの10分の1にまで減っています。
業界全体の設備投資のデータがあればいいのですが、そのような統計は存在しません。鉱山会社は横並びなので、最大手の動向が業界全体の動向を示していると考えていいでしょう。
ここまで減ってしまった理由は何か?それは鉱山会社が儲からないからです。儲かれば(将来に夢があれば)、どんどん投資するのでしょうが、鉱山会社は「先が見通せない」と思っています。
夢を感じていたのは2012年まででした。その際は、図1にあるように、金価格が上がるとともに新規鉱山投資も伸ばしてきたのでした。
最近では鉱山は儲かりません。図2は鉱山会社(バリックゴールド)の株価と利益(一株当たり純利益)を示したものです。最高益をあげたのは2011年で、その後何年も赤字を計上しています。

注目は2019年から2022年度の4年間です。金価格が持ち直してきているのに、利益が減少傾向にあります。このため、2013年以降の株価はゴールドそのものの価格に比べて低迷気味です。(図1の金価格と比べてみてください。)
しかも、鉱山会社は2013年以降の損失の合計額をいまだに取り返していません。2013年には過去最高の赤字を計上し、その後も2014年、15年、18年と4期にわたって赤字でした。
これに対して、2013年以降黒字だったのは、2016年、17年、19~22年です。これらの黒字を合計した金額は大きくありません。つまり、損からまだ立ち直っていないということです。
鉱山会社は近年の環境問題の激化を受けて、環境改善に大きな投資をするように要請されています。それはコスト増となり、利益が圧迫されてしまいます。そのため、上で述べたように、「ゴールド価格が上がっても儲からない。だったら、新規開発は控えよう」という態度になっています。
最新の四半期(2023年第二四半期)の金生産量は3.9%増で、過去2年間では最高でした。価格が上がってきたので、鉱山会社は新規投資をできるだけ絞った形で、増産しているものと思われます。
健康を例に取れば、カンフル剤注射しているようなものです。抜本的な投資を行わずに、最低限のコストで最善の効果をあげようとしているのですから、生産増は長くは続かないでしょう。
このように考えると、生産量の観点からいえばゴールド価格に対する価格下方プレッシャーはあまり続かないものと思います。
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