質問:
林さんは、「このまま政府が債券を発行し続けるといつかは通貨価値が暴落し、大インフレが起きる」と言っています。そうした事態が生じた際、株式投資を始めるというのはどうでしょうか? ゴールド投資とどちらがいいでしょうか?
回答:
大インフレの時に株式投資をするのはいい考え方です。一般の方にはゴールド投資を薦めますが、銘柄選択に長けた方にとって株式投資は儲けを大きくするチャンスです。
**大インフレが起きるまでの軌跡はこうなる**
大インフレ期は株価が大きく下がったのちにやってきます。何をやっても下がり続ける株価、下落する景気指数を前に、各国政府は景気テコ入れを諦(あきら)め、「選択肢は国債のデフォルトしかない」と決心するでしょう。
実際にデフォルトすれば、債券価格は大幅下落します。つまり、金利上昇、インフレの始まりです。株式市場は当初は動揺するものの、しばらくすれば追随して上昇軌道に入るでしょう。
解説:
株とインフレはほぼ同じくらい上がる
インフレになれば株価が上がります。
この話をわかりやすくするために、明日から物価が10倍になるとしましょう。100円だったパンが1000円になるということです。月に30万円だった給与は300万円になります。単位が変わっただけで、実質は何も変わっていません。
同様に、10億円だった会社の利益は100億円になります。会社の利益が10倍になるのですから、株価も10倍になります。
このように、インフレが来ると、見た目の利益が増えるので株価が上がるわけです。
実例をお目にかけましょう。
図1に、最近になって大きなインフレに襲われたトルコを示します。大型インフレが起きている時期は株価指数も大きく上がっています。注目は、両者がほぼ同時に上がり始めていることです。上昇率については、2021年1月から2023年7月まで株価指数が4.3倍なのに対し、インフレが2.9倍です。株価の方が上がっています。
これに対して、図2(メキシコ)はその逆でインフレの方が上がっているケースです。問題はインフレ開始期です。インフレの開始と株価の下落がほぼ同時に始まっています。1994年に1だった株価が1995年2月には0.55になっています。45%の値下がりです。
その後は株価が上昇に転じます。(この大底から株価とインフレの上昇率を計算すると、似たような数値になります。)
株価とインフレが常に同時期に同方向に動き始めるのであれば、話は簡単なのですが、経済には主原則(=株価とインフレは同方向)以外に、細かな動き(=開始時期の違い)が個々に異なることがあります。
「だったら、ゴールド投資が楽でいいよ」と思う人が多いでしょう。その通りです。しかも、ゴールドはインフレ率を上回るリターンを記録することになるでしょう。
株式:銘柄選択が上手なら大きな利益を生む
それでも、インフレ時期には株に特別な魅力が生まれます。それは、全産業が均一にインフレの影響を受けるのではなく、特に儲かる銘柄群が出現するのです。
例えば、インフレは通貨暴落と一心同体で、インフレと同時にその国の通貨暴落が始まります。日本ならば、デフォルトしない国(例:中国)に対して円安になるということです。この際、中国からの輸入産業は大打撃を受けますが、輸出産業は大幅な利益増になります。
だとしたら、インフレ期では輸出産業の株価パフォーマンスがいいでしょう。
ここで過去の統計を示します。
株価指数が2倍になる場合、つまり、100%上がる場合、個別銘柄のばらつきが非常に大きくなります。統計用語を用いると、標準偏差が100%程度になることが多いです。わかりやすい言葉に直すと、株式市場には上昇率が0%(=100%―100%)から200%(=100%+100%)になる銘柄群があり、これが全体の7割弱を占めるということです。株価指数はそれらの合計から成り、全体ではそれらの平均値である100%の上昇率になるというものです。
一言でいえば、上昇期は銘柄選択が命です。これが上手にできると思う方は是非株式投資にチャレンジしてください。
今週のツイッターのお知らせ
報道の真実を見抜く! G20の真実
講演のお知らせ
関西地区にお住まいの方でまだぼくの顔を直接見たことのない方は是非おいでください。講演のあとに質問会を実施します。至近距離でぼくと対話してください。
直接会って話すことはとても極めて大切です。
ぼくも楽しみにお待ちしています。
実施要項
10月28日(土)10時から1時間
『株価の上昇はあと数か月 暴落のサインを読み取れ』
投資戦略フェアEXPO2023大阪
パンローリング主催
場所:マイドームおおさか
東京地区の講演会:11月23日(祝)
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