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第206回 イカ墨からわかる鉱物開発の話

  • 執筆者の写真: ファンクラブ 林則行さん
    ファンクラブ 林則行さん
  • 3 時間前
  • 読了時間: 4分

新資源は採算に合わないほどの高コスト


今日は、地中や海底の奥深くに眠る鉱物資源の発掘についてお話します。一言で言うと、こうした鉱物資源から利益を売るには、10年単位での時間が必要だということです。話題が沸騰したとしても、直近の現実には何らの変化もありません。


日本の南鳥島沖の海底深くにレアアースが埋蔵されているという話が出てきており、2026年からプロジェクトが始まるそうです。他には、中国では推定埋蔵量1000トン、推定価値12兆円とされる「世界最大級」のゴールド鉱脈が発見されたとか、米国でも推定埋蔵量2000万トン、推定価値31兆円分とされるリチウムの鉱物資源が発見されたとの話が出ています。


こうした話題を目にすると、多くの投資家が、「関連企業の株が上がるのではないか」とか、「ゴールドやレアアースの供給過多により価格が下がるのではないか」といった一喜一憂を始めます。


しかし、こうした話題は「夢のまた夢」であると考えてください。今日はその理由を食材に例えながらわかりやすくお話しましょう。


世界三大珍味の一つといえば、フォアグラです。これは、ガチョウやアヒルにたくさんの餌を与え、肝臓を肥大させることによって、美味しい食材を作るのです。ぼくが驚くのは、「人間がどうしてそんなことに気づいたのだろうか」ということです。食べ方をいろいろ試した上に、出来上がったに違いありません。


また、イタリア料理では、イカ墨のスパゲッティが有名ですが、タコ墨はありません。これについても、ありとあらゆる動物の内臓やそのエキスを試した中で、確立した食材でしょう。


中国料理に目を移せば、その三大料理の一つが、ふかひれです。普通、人間が最初に食するのは、魚の白身・赤身です。ふかについても身を最初に試したに違いありません。でも、美味ではなかった。あれこれ食べていくうちに、「ヒレがうまい」ということに気づいたのでしょう。


日本料理の高級食材であるフグも、もとは“危険な魚”として人々に恐れられていました。 それでも古代の人々は、まずは身を試し、時に命の危険を伴いながら、「どこに毒があり、どこが安全なのか」 を少しずつ学んでいったのでしょう。 そうした長い試行錯誤の積み重ねの末に、安全な調理法が確立され、今の“上品な味わい”として評価される食材になったのです。


納豆は、煮た大豆を藁(わら)に包んでいた際に自然発酵したことから生まれたと考えられています。 最初に口にした人は驚きつつも、「意外と美味しい」と感じたのでしょう。


このように考えると、人間はありとあらゆるものを食べ、その中で、どれが美味しいのかを見極めてきたことがわかります。


これは鉱物資源の発掘にも同じことが言えます。つまり、地表近くの場所で取れる鉱物は全て取り尽くしているわけです。アフリカの奥地や無人島に行けば、まだ誰も手をつけていない未開の土地がある、といったことはありえないのです。


日本も昔はジパングと呼ばれ、金がザクザク出る国だと言われました。

これはマルコ・ポーロの『東方見聞録』で「ジパングでは金が非常に豊富で、宮殿の屋根も金で覆われている」という『黄金郷伝説』のようなイメージとして広まりました。

しかし現在は、金は取りつくされ、ほとんどの鉱山は閉山しています。


今後新しく出てくる鉱物資源は、今までのコストと比べると、考えられないような高い開発費のかかるものしか残っていません。南鳥島沖にしろ、中国の金鉱山にしろ、どのぐらいのコストがかかるかという話が全く聞こえてこないのは、まだ採算ベースには全く合わないからです。


商業化には10年単位の月日が必要でしょう。もしくは、その資源価格が今から5倍とか10倍まで上がらなければ、採算が取れないものばかりだと思った方がいいでしょう。

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