第193回 ステーブルコインへの投資は時期尚早
- ファンクラブ 林則行さん
- 2 時間前
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高騰銘柄に潜むデジタルドルの影
最近、日本でも「ステーブルコイン」という言葉を耳にする機会が増えました。特に関連銘柄の株価が急騰したことで、注目している方も多いのではないでしょうか。 しかし、こうした銘柄には安易に飛びつかない方がいいでしょう。今日はその理由をお話していきます。
関連銘柄が急騰しすぎている
まず、1つ目の理由は、既に上がり過ぎたということです。国内の関連銘柄の1つである「電算システムホールディングス(4072)」の株価を例に出してお話していきます。図表1からわかるように、株価が数日で急上昇しています。

こうした局面では、「まだ上がるかも?」と感じて購入したくなりますが、すでに期待が織り込まれた後の価格です。いわゆる「高値掴み」のリスクが非常に高くなっている状態です。
同じようなことは過去にも起きています。たとえば、図表2にあるように東日本大震災の翌日、株価が大幅に上昇しました。しかしその後、業績の裏付けがないまま株価は調整され、一定の期間、安く推移しました。
つまり、注目が集まった直後に買うのではなく、落ち着いてから冷静に投資タイミングを見極めることが重要だと言えます。

海外ではすでに“期待外れ”が現実に
2つ目の理由として、図表3を例に、海外の動向を見てみましょう。 米国では、PayPalが発行する「PYUSD」などのステーブルコイン関連が登場し、リリース当初は大きな注目を集めました。ところが実際には、初期こそ勢いがあったものの、株価はその後あまり伸びていないのが現状です。

その背景には、肝心の業績がなかなか伴っていないという事情があります。
実際、EPS(通期合算)は 2020年3.66 → 2021年3.95 → 2022年2.09 → 2023年3.95 → 2024年4.24 → 2025年(上期)2.58と推移しており、2020年以降はせいぜい小幅増にとどまっています。成長が限定的なままだと、市場の関心も徐々に薄れていくのは自然な流れかもしれません。
日本でも同様に、話題先行で株価が高騰しても、その後実績が追いつかなければ、いずれ調整が入り、元の水準に戻ってしまう可能性は十分にあるでしょう。
そもそもステーブルコインとは?
ここで一度、ステーブルコインについて基本的なことを簡単に整理しておきます。
ステーブルコインとは、米ドルや日本円といった法定通貨と価値が連動している暗号資産のことを指します。たとえば「1枚=1ドル」など、価格が安定しているのが大きな特徴です。
これは、価格が大きく変動するビットコインやイーサリアムといった他の暗号資産とは大きく異なるポイントです。
ステーブルコインの利点
ステーブルコインには、実用面で大きな魅力が3つあります。
① 送金が速い:A口座からB口座へほぼ即時に資金を移せる。② 手数料が安い:条件次第で無料、かかってもごくわずかで済む。③ 手軽に使える:スマホさえあれば誰でも簡単に利用できる。
こうした特徴を活かし、すでに南アフリカやフィリピンなど、銀行インフラが発展していない地域ではステーブルコインの送金サービスが広く利用されています。両国を合わせると、1,700万人以上がスマホ経由で利用しているとも言われています。
将来的には、まるでメールにファイルを添付するような手軽さで、誰かにステーブルコインを送金できる時代が来るかもしれません。それほどまでに、革新的な仕組みと言えるでしょう。
先進国での普及にはまだ時間がかかる
とはいえ、日本のようにすでに銀行のインフラが整っている国では、ステーブルコインの普及には時間がかかると考えられます。
その理由は、新たな送金手段が現状では必要ないからです。ステーブルコイン自体の送金手数料は安くても、「円からステーブルコインへ」あるいは「ステーブルコインから円へ」と変換する際には、意外とコストがかかる点にも注意が必要です。
両替時にはスプレッド(買値と売値の差)が0.5〜1%発生するほか、取引所から銀行口座への出金には数百円の固定手数料がかかります送金時にはチェーン手数料(ネットワーク代)も必要になります。これも数十円から数百円と、場合によっては無視できない金額になることもあります。
こうした制度面やコストの課題を考えると、短期間で一気に普及するのは難しいと見るのが妥当でしょう。
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